絵話塾だより

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2023年2月11日(土)文章たっぷりコース第4期・6回目の授業内容/高科正信先生

2023-02-18 22:02:23 | 文章たっぷりコース

今日は「私とはいったい何者か?」ということについてのお話です。

このことは人類が言葉を獲得し、社会的な存在として集団生活を送るようになって以来、最も古くて根源的は問いではないでしょうか。

ゴーギャンの絵(我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか)にもありましたが、

「人間とは何か?」ということを体系的に学問として捉えようとする一番最初は神学でした。

それでも解明しきれないため、哲学が生まれましたが、人間はどんどん複雑化していき、今度は心理学が生まれました。

シュタイナーが人間を4つに分類したりしますが、それでも答えは出ない。

やがて産業革命が起こって、それまでは「子ども」という認識がなかったのが、小さい人たちには知識を与えなければいけない、そんな場所を作る必要があるということになり、ペスタロッチなど教育を追求する学問〜すなわち教育学が生まれました。

近代化が訪れた後も人間はどんどん複雑になっていきます。

現代でも親による子どもへの虐待、その逆などを含め人間の醜い部分も社会現象化していき、人間というものを捉えられなくなっていきます。

そういう時に、例えば1900年頃になって「人間とは何か」「人間とはこういうものである」ということを教えるために児童文学が誕生したのではないか、と今江祥智が言ったそうです。(元々は神父さんが言った言葉だそうです)

「自分はいったい何か?」「どこから来てどこへ行くのか?」という問いに、答えは出ることはありますが見つかった答えが果たして正しいのかというのは、大変難しいことです。

そこで、先生が紹介してくださったのは、楳津かずおの『わたしは真悟』(小学館)です。

小学6年生の悟の父親の町工場に産業用のロボットが来て、悟は工場見学の時に別の学校の少女・真鈴と出会います。やがてロボットたちが意志を持って移動し始め、二人を自分の両親だと思うようになって…というストーリー。「私はいったい何者なのか」「私はどこから来たのか」「私はどこへ行けば良いのか」という問いかけがされていて、1983年に出版されたこの作品は、先生が読んで最も面白いと思った漫画の一つなのだそうです。

  

「わたし」をテーマにした絵本には、谷川俊太郎の文に長新太が絵を付けた『わたし』(初版は1976年・福音館書店

https://www.fukuinkan.co.jp/book/?id=427)や、

2018年1月号の「こどものとも」(福音館書店)に載った五味太郎の『わたしとわたし』

https://www.fukuinkan.co.jp/book/?id=5417#modal-content)という作品もあります。

神沢利子が井上洋介の可愛い絵とともに、古典的で根本的な難しい問題の答えを子どもの文学で出したのが

『くまの子ウーフ』のシリーズ(初版1969年・小学館)です。

彼女は作品の中でいとも簡単に問いの答えを出したり、子どもに考えさせるように仕向けたのです。

 

『はらぺこあおむし』で有名なエリック・カールの『ごちゃまぜカメレオン』(ほるぷ出版 → 偕成社)は

自分以外の何かになりたいカメレオンの話です。が、最後は自分は自分で生きていくしかないというふうになっています。

    

子どものための作品も多いフランスの詩人、ジャック・プレヴェールの書いた詩に「わたしはわたしよ もともとこんなよ」というのがあり、高田渡が曲をつけて歌っているそうです。

   

イエルク・シュタイナーが文を、イエルク・ミュラーが絵を描いた『ぼくはくまのままでいたかったのに…』(ほるぷ出版)は

クマが人間に間違われて、さまざまな仕事をさせられるという不思議なお話です。

これとは逆に、まど・みちおさんの詩集(『まどさんのうた』阪田寛夫 編・童話屋)には

「くまさん」にしろ「うさぎ」にしろ、自分がクマでありウサギであることが嬉しくて仕方がない詩が載っています。

ここで授業の前半が終わりです。次回も違った角度から「わたしとは誰か」というテーマでお話ししましょう。

 

後半はテキスト『文章のみがき方』(辰濃和男 著/岩波新書)の「Ⅱ さあ、書こう」から、

「3. 書きたいことを書く」「4. 正直に飾り気なく書く」のところを皆で音読していきました。

①書きたい気持ちが沸き起こった時に書く。 

②難しい言葉を使うのではなく、誰にでもわかるような文章で組み立てる。

③ただ単に書くだけではなく、内容が深いかどうかが重要。

④③のようなものを書くためには、観察する力・解釈する力が必要であり、見識を深める・広めることが重要。

ベバリィ・クリアリーの『ヘンショーさんへの手紙』(あかね書房)には、主人公の少年が作家のヘンショーさんに

「僕もヘンショーさんのように文章を書く人になりたいです。どうしたらなれますか?」と手紙で尋ねたところ、ヘンショーさんは

「まずよく見る。それからよく聞く。そしてよく考える。それがうまくできようになったら、それから書く」と答えます。

この教科書の中で、著者の辰濃和男が言っていることと同じですね。

文章を書くために、さまざまな見識を深めていくように心がけましょう。

今回の課題は、「秘密」です。(ひみつ・ヒミツ・ヒ❤️ミ❤️ツ、表記方法はなんでも可)

どんな語り口でも構いません。自分の秘密を告白してもいいし、秘密のお話を考えても構いません。スタイルも、長さも自由です。

ということで、次の次あたりで「秘密」についての内容の授業をしようと思います。

「秘密」の提出は、次回25日の授業時です。よろしくお願いします。


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