絵話塾だより

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2022年4月9日(土)文章たっぷりコース・10回目の授業内容/高科正信先生

2022-04-15 13:29:24 | 文章たっぷりコース
今年は春になるのが早く、高科先生のお住まいの近所にもツバメがやって来て、ツツジも咲き始めたそうです。
いつも5時から始まる授業も、最近まで暗くなってから始まっていたのに、この日はかなり進んでもまだ明るくて
なんとなく心が浮き立つ感じがしますね。

先日先生のところに「出版されている本を電子書籍にしませんか」という営業の連絡があったそうです。
出版元には何の連絡もせず、著者に直接見積もりを提示して費用を負担させるような話だったので
もちろん断ったそうですが、いろんな商売があるのですね。

書籍を出版するにはいくつかの方法があります。
①公募に応募する
②出版社に持ち込んで読んでもらう
③自費出版

このうち、①大手の出版社が主催している公募が一番可能性が高く、最後まで面倒を見てくれるそうです。
②は五味太郎や田島征三・征彦兄弟、高科先生も、作品が出来たら担当者に持ち込んでいるそうです。
③は、1冊だけ出版できれば良いというのならまだしも、続けて2冊・3冊と出そうとすると難しいものがあります。
とはいえ、工藤直子の最初の本は自家版で、それを読んだ人が実力を認めてくれたといいますし
田島征三も最初の絵本『しばてん』は自作の11冊だけだったそうですから、絶対いけないという訳ではありません。
ただし、その人にとって「初めての本」は一生ついて回るものですので、何が一番良いのかを検討して慎重に進めてください。



この日、テキスト(『日本語の<書き>方』(森山卓郎 著・岩波ジュニア新書))はP121〜138の第Ⅱ部 応用編に入りました。
5章 わかりやすく伝える — 報告文
1.描写における言葉の線条性
 ・線条性ということ
 ・言葉でスケッチしてみる
2.必要な情報を伝える
 ・5W1H で情報は足りるか?
 ・観察報告、どんな情報が抜けている?
 ・数字でどれだけ具体的にできるか
 ・グラフなどの書き方
3.立場
 ・その理由は良いこと? 悪いこと?
 ・「私」を消した報告文
 ・「私」を出した報告文


何かについて説明するとき、映像であれば見ればすぐ分かりますが
同じものを言葉で説明する場合は、一本の流れを作る必要があります。
それが「描写における言語の線条性」です。
伝えるべき情報を分けて、並べ、流れのある文章にしていきます。
例えばあるおまんじゅうを説明する場合、形・大きさ・味・においなど
異なる観点で書いていくことで、おまんじゅうの全体像が分かるようになります。
そのとき書き手は読み手がどんなふうに想像するかに注意して書く必要があります。
誰が読んでも想像できるような文章にしましょう。



5W1H (when、where、who、what、why、how)は情報の基本ですが
伝える相手によって、意味のある情報は変わってきますので、
必要に応じて情報を取捨選択していかなければなりません。
数字やグラフを使えば、より分かりやすくなることも覚えておきましょう。
また、同じ情報でも、書き手のとらえ方によって良いことになったり悪いことになったりしますが
少なくとも、同じ文章の中ではとらえ方を統一するようにしましょう。

物語の場合は、情景描写(絵が浮かぶように)と心情描写(何を思ってそうしているか)をしていきます。
心情描写をきちんと書いてストーリーが進んでいくことは、とりわけ重要です。
レポートや記事を書くときは、姿・表情や内面をきちんと捉えることが大事で
“自分の目で見たり聞いたりしたことを書く” のが基本です。
日常の一コマを、文章でスケッチしてみるのも良いのではないでしょうか。

休憩をはさみ、今回紹介していただいた詩は子どもの詩でした。



灰谷健次郎が編纂した『お星さんが一つでいた とうちゃんがかえってくるで』と
『「ふぁあん」「ふぁあん」宿題せんならん』(理論社)から
小学3年生の谷口のり子さんの「しりたいねん」と6年生の「人じんすり⑴ ⑵」です。

大正7年(1918年)に鈴木三重吉が始めた児童文学雑誌「赤い鳥」(鈴木氏の死により1936年廃刊)を
復活させようとして、井上靖・竹中郁・足立巻一・坂本遼らが始めた
児童詩の雑誌「きりん」(1948〜71)に代表されるように
戦後、子どものつづり方教室が全国に広がり、盛んになっていきました。
『お星さんが一つ 〜』と『〜 宿題せんならん』は、そんなつづり方教室運動でできた子どもの作品を集めた本です。

続いて、前々回の課題だった「わたしが○○だったとき」の参考に
さのようこの『わたしが妹だったとき』(偕成社)を紹介していただきました。



この作品は、11歳の時に亡くなった彼女のお兄さんとの思い出を書いたものです。
森忠明の『ぼくが弟だったとき』(秋書房)も、亡くなったお姉さんのことが書かれていて
ケストナーにも『わたしが子どもだったころ』(岩波書店)という本があります。
あまんきみこは、自分にとって子どもの頃のというのは自分という木の年輪の中心部分であり
人間はそれに支えられ、導かれて、成長していくのだと言っているそうです。
私たちも子どもの頃の思い出を大切にしていきたいものですね。

ということで、今回の課題のテーマは
「くさばな あるいは とり(むし)たちについて」です。
春になり、身近で花や鳥(や虫)を目にする機会が増えましたので
それらに注意を向けて目を凝らし、文章にしてください。
エッセイでも創作でも詩でも大丈夫、形式も長さも自由です。



高科先生の場合、何か物語を書こうとしたときに
周囲にあるものからアイデアを得ることがあるので、皆さんにもオススメしたいそうです。

今回の授業ではテキストで「読み手に分かりやすく伝えるにはどう書けば良いか」を
学んだので、そのあたりを考えながら書いてください。

次の授業は4月30日(土)です。よろしくお願いいたします。





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