絵話塾だより

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2023年1月14日(土)文章たっぷりコース第4期・4回目の授業内容/高科正信先生

2023-01-24 16:48:21 | 文章たっぷりコース

この日は最初に「今日のテーマは、『子どもの現実』です」とおっしゃって、

2010年前後に掲載された朝日新聞の連載記事「世界の貧しさと闘う」から、

⑦トットちゃんの恩返し と ⑧国連目指す貧困層半減 を見ていきました。

世界には内戦や飢餓で苦しむ子どもたちが大勢いて、ユニセフの親善大使・黒柳徹子さんのように

彼らを救おうと活動している人がいる反面、日本の子どもたちも7人に1人が貧困にあえいでおり

一日のうち学校の給食でしか満足に食事を摂れない子がいるという現実があります。

地域の「子ども食堂」などでそれをカバーしようとする動きもある一方、

最近は親による子どもたちへん虐待が問題になっています。

20世紀の大哲学者・サルトルの言葉に「飢えて泣く子の前で、文学は可能か?(成立するか・機能するか)」

というのがあります。

飢えて泣く子どもに必要なのは、空腹を満たす温かい食事であり、ゆっくり休める家であり、

病気を防ぐワクチンであり、病気を治す薬や医療でしょう。

日本で子どものための文学や芸術に携わる人は、阪神や東北の大震災の時にそのことを思い知らされました。

震災当時、被災者とって文学や芸術は何の力にもなりませんでした。

ところが、だんだん落ち着いてきた頃には、本が読みたい子どもが現れたのです。

そこで作家たちは、ひょっとしたら何かできることがあるかもしれないと思い

協力して、創作活動に励むことにしたのだそうです。

世界では5歳まで生きられない子どもが大勢います。

その歳まで生きられたら、今度は教育を受けることができるようになります。

教育を受けて知識を得ると、もっと長く生き延びることができるようになるのです。

ところが、ある国(宗教)では “女性には不要” だとして、教育を受けさせてもらえないのです。

  

ここで、ベッツィ・バイヤーズを紹介していただきました。

バイヤーズは70年代頃から活躍するアメリカの作家で、思春期の子どもたちの心情や成長を描いた作品が多いのですが

『うちへ帰ろう』(谷口由美子・訳/今井弓子・絵/文研ジュベニール出版)は、それぞれ家庭環境に問題のある3人の子どもたちが、養子に入った先の家で家族として暮らすうちに変化が訪れるというもの、

『名前のない手紙』(谷口由美子・訳/むかいながまさ・絵/文研ジュベニール出版)は、12歳の子どもとそのシッターである若い女性のひどい現実を描いているものだそうですが、いずれも読後は爽快で

子どもの文学にとって、生きる希望を与えることが重要であり、この世は生きるに値する世界だと教えることが重要だということです。

大人が幸せでも子どもが幸せとは限りませんが、子どもが幸せなら大人も幸せになれます。

いま我が国でも子ども予算と軍事費が重要な課題になっていますが、考えないといけない時期に来ているのではないでしょうか。

 

その後、ガブリエル・バンサンの絵本を紹介していただきました。

バンサンはベルギー出身のアメリカの絵本作家で、80年代に『アンジュール』(BL出版)という文字のない絵本で

日本でも有名になりました。彼女は類い稀なデッサン力で、単色の線画だけで犬の動きや感情を表現したのです。

他にもやはりデッサン絵本『セレスティーヌ』(BL出版)や、同じ登場人物によるこちらは色も文字のある絵本のシリーズ

「くまのアーネストおじさんとネズミのセレスティーヌ」(もりひさし・訳/BL出版)があります。

  

休憩を挟んで、教科書『文章のみがき方』(辰濃和男 著/岩波新書)から、

6. 現場感をきたえる と 7. 小さな発見を楽しむ の箇所を見ていきました。

6. について、「現場」とは自分で五感の営みがおこなえるところ全てとしたうえで

例に上がっている 江國香織、レイチェル・カーソン、開高健 の文章を読み

①視覚だけでなく聴覚・触覚・臭覚・味覚など、全感覚を鋭くはたらかせて書く。

②現場での「驚き」が伝わってくるような文章を書きたいが、思いが強すぎて課題な表現になってはいけない。

③細密な描写を心がける。たとえそれが目を背けたくなるようなシーンでも、それが現場である。

④現場では、人の見ないものを見る努力をすること。

などを重視しましょう、とのことでした。

他に、川島誠や河野貴美子の作品も紹介していただきました。

   

7. については、教科書で例に挙げられていた向田邦子のエッセイ『男どき女どき』(新潮社)から

「ゆでたまご」「草津の犬」を読んでいきました。

彼女が日常の瑣事に強い好奇心を持ち、何かを発見して面白いことを見つけ、

長い間大切にしまいこんで、後日それを作品にする才能の持ち主だったそうです。

その根底にあるのは「本質を見る目」です。

遠いところを見ることができる人や、動体視力に優れた人がいるように、

作家や詩人には彼女のように物事の深いところを見る「洞察視力」が優れた人がいます。

文章を書くうえでこの「洞察視力」は重要で、この力はきたえればきたえるほど強まっていきます。

きたえる方法としては、①ものごとを良く見る ②見たものを文章にする ③人の書いたものを読む

のが良いでしょう。

 

最後に、今回の課題は「わたしについて書く」です。

・私はこういう人である

・私はこういう問題を抱えている

・私とはそもそも何者であるか

等々、考察してください。創作でも良いです。長さや型式も自由です。

書くにあたって、役物(、。「」など)の使い方をまとめたプリントをもらって、この日は終わりました。

さあ皆さん、配られた資料を手引きにして、今日教えてもらった現場感覚のある、洞察視力に優れた文章を書いてください。

よろしくお願いいたします。

 


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