絵話塾だより

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2024年7月13日(土)文章たっぷりコース第5期・第15回目の授業内容/高科正信先生

2024-07-14 16:46:31 | 文章たっぷりコース

高科先生は、最近クマゼミの鳴き声を聞いたそうです。
例年よりかなり早い〜ということで、セミといえば…と、つづけてアメリカの周期(素数)ゼミの話を。
セミは成虫になるまで数年を要する昆虫ですが、13年周期と17年周期の2種類が221年に一度同じ年に羽化することがあり、それが今年にあたるのでアメリカでは1兆匹もの発生が予想されています。
セミの成虫の寿命は長くないので、死骸を処理するのに大変になりそうとのことですが、考えただけで背中がぞわぞわしますね。

こんなふうに、毎回文章コースの授業は先生のよもやま話から始まります。
とくに身近にある自然から季節にまつわる話など、私たちが普段気づかないようなことに触れられて、なかなか興味深いです。

この日の本題は、ここのところ続けて学んでいる『日本語のレトリック:文章表現の技法』(瀬戸賢一/岩波ジュニア文庫) の続き、【意味を調節する】から始まりました。
「誇張法…度を超して伝える」「緩叙法…ひかえめに伝える」「曲言法…反意語を否定する」の箇所です。

・誇張法は、人に自分の考え方を説明するとき、おおげさに言うことです。
 「蚊の鳴くような声」「涙の海」「仕事が山積み」、ほかには「みんな〜してる」など。
 話し手と聞き手の間に共通の認識がなので、定型句を使うことが多いそうで、
 昔話の中にもよく出てきます。

・緩叙法は、ひかえめに表現して結果的に相手に強く深く伝えることです。
 日本人は直接的なことばで伝えるのは得意ではないため、日本語ではよく使われます。
 「つまらない物ですが」「粗茶でございます」などは、日本語独特の表現であるため外国語には翻訳しにくく、訳しても本意は伝わらないでしょう。

・曲言法は、できるだけ相手にさわらないようにやんわり表現して、曖昧に言いながらも強く出る表現です。「やぶさかではない」「悪くない」「半端じゃない」など。政治家はよく使いますよね。

休憩をはさんで、後半は以前にも取り上げたことがある『中高生のための文章読本 ─ 読む力をつけるノンフィクション選』(澤田英輔・仲島ひとみ・森大徳 編/筑摩書房) から、穂村弘の「麦わら帽子のへこみ ─ 共感と驚異」の箇所を見ていきました。

これは、歌人・穂村弘の著書『短歌という爆弾 ─ 今すぐ歌人になりたいあなたのために』(小学館文庫) からの抜粋で、石川啄木や俵万智の作品を取り上げて、その短い文章のどこに共感(シンパシー)と驚異(ワンダー)を感じるかを解説しています。
石川啄木や俵万智の作品では、読者が自分自身の体験や気持ちを作品上に重ね合わせてカタルシスを得ることができますが、アマチュアだと自分の体験や気持ちを表した作品で読み手を感動させることができません。
また、作品の中にちょっとした違和感を持つことばを入れて驚きを演出し、読者を引き寄せるのが短歌の世界では「クビレ」と呼ばれる箇所で、優れた歌人は意識的にそれをつくるのです。

穂村弘は歌人ですが絵本にも造詣が深く、『ぼくの宝物絵本』(河出文庫) (初出はMOEのコラム)という本も出しています。
酒井駒子さんの表紙が美しいこの本は、穂村氏がコレクションしている戦前から最近までの絵本を約70冊紹介しています。近日絵話塾の書棚にも追加する予定ですので、皆さんもご覧ください。

短歌と絵本という違うジャンルのものでも、表現の世界では近いものがあるので、広くアンテナを張るのはよいことです。
いろんな分野の文章の中から、どうしたら読者に共感してもらえるか、他者の作り方を学ぶのもよいことでしょう。
読者に訴えかける要素は「何か」を考えながら、文章を書きましょう。

早いもので、次回の7月27日で今期(第5期)の「文章たっぷりコース」は終わりです。
学んだことは、皆さんが文章を書く際の役に立ったでしょうか?

さて、今期最後の課題は「おもう(思う・想う・念う・憶う)」です。
今思っていること、考えていることなどを、エッセイ・創作・絵本のテキスト…何でもいいので自由に書いてみてください。文字数なども制限はありません。

よろしくお願いいたします。

 

 

 

 


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