絵話塾だより

Gallery Vieが主宰する絵話塾の授業等についてのお知らせです。在校生・卒業生・授業に興味のある方は要チェック!

2020年4月17日(金)文章たっぷりコース12回目の授業内容・高科正信先生

2020-04-19 19:35:01 | 文章たっぷりコース
本日も市外の方は来られませんでしたので、少人数の授業です。

まず、高科先生から嬉しいお知らせがありました。



フレーベル館の「キンダーおはなしえほん」1997年に9月号に初出し、その後ハードカバーにもなっていた
『おおきな おおきな さかな』(作/高科正信・絵/荒井良二)が
今年6月号の「キンダーおはなしえほん」に再掲されることになりました。
釣り好きの高科先生と、まだリンドグレーン賞を受賞される前の若き荒井先生が
タッグを組んだ、とっても楽しい絵本です。
Vieでも税込み400円で販売しますので、興味がおありの方はご連絡ください。(通販可)
ところで、教室に置いてあったこの絵本のハードカバー版がいつの間にか無くなっています。
もし返し忘れているという方がいらっしゃいましたら、郵送で結構ですので返却してください。
よろしくお願いいたします。



職業作家である先生は、作家になりたい人はたとえ書くことが見つからなくても
毎日机の前に座って書く習慣を身に付けている、とおっしゃいます。
そうすることによって、書きたいことができたときにうまく書けるようになるのだそうです。
このことは絵話塾の絵本やイラストの先生もおっしゃっていて
文章や絵を描くための「基礎体力をつける」ことが重要なのですね。

私たちがそこまでするのはなかなか難しいかもしれませんが
授業でも課題に締切があるように、自分で締切を設定して執筆し
出版社やコンクールに送って人に見てもらうのは良いことですから
そういう習慣を付けていきましょう!とのことでした。

ところで、最近は何かのメッセージを伝えたり、啓蒙のため絵本仕立てにした
「絵本まがい」のものがたくさんありますが、それは絵本とはいえません。

出版される本には基本的に約束事があり、商業ベースになると制約もたくさんあります。
しかしそれにとらわれず、好きなものを自由に書けばいいというものではありません。
制約に縛られるというわけではなく、制約の中で自由に書いていくのが文筆家なのです。

たとえば絵本のページは、印刷の効率が良いように、8の倍数からできています。
基本的には1見開き(2p)を一場面に設定し、ストーリーを構成しますが
もっと書き込みたい時は、1pや、漫画のように4コマとかで場面を替えていきます。
本には表裏の表紙と見返しもありますので、
24p、32p、48p はそれぞれ11見開き、15見開き、23見開きで考えていきます。
絵本の文章だけを担当するとしても、ページ構成を考えながら話を進める必要が生じるのです。

今日は、まず黒谷知也さんの『書店員波山個間子』という漫画を紹介していただきました。



書店でブックアドバイザーを務める波山個間子が、お客様からのリクエストに応えて
本を探してお薦めするという内容で、お話しの中に実在の書物が出てくるそうで、
前回習った向田邦子さんの『眠る杯』の中にある短編に関する不確かな情報から
どの作品かを見つけて感謝されるエピソードがあるそうです。
犯罪の犯人を捜すのではありませんが、ある種の謎解きでミステリーのジャンルに含まれるのかもしれません。

そして、漫画の中で波山個間子が探し当てた作品、『字のない葉書』を実際に見ていきました。

「作品の不確かな情報」ということで、児童文学者の赤木かん子さんは
記憶の断片をヒントに、本のタイトルを探す「本の探偵」をやっていて
あやふやな情報を提供すると、教えてくれるようになっています。(公式サイトあり)
昔読んだ本は内容を間違って覚えていることも多く、
後で読み返すと、印象が全く違ってくることがあります。

哲学者の鶴見俊輔も「読者には誤読する権利がある」と言っているように
人間はつい「正解」を求めがちですが、それぞれ好きに解釈をしても良く
こちらの意図が間違われるのも作家冥利に尽きるのだそうです。

ところで、高科先生には動物が主人公のお話は安易に書かないというポリシーがあるそうです。
可愛いだけではダメ、動物のキャラには頼らない、喋らせない、など。
前述の「制約」には、こういうことも含まれるのでしょうね。



そして、月刊かがくのともの『このよで いちばん はやいのは』(文/ロバート・フローマン 翻訳/天野祐吉 絵/あべ弘士)を読んでくださいました。



動物や乗物の早さ比べをする知識絵本かと思いきや、ラストは人間の素晴らしさを教えてくれる深い内容で、
読み終えると拍手をしたくなるような本でした。(実際「お〜!」という声が出ました)

この本を翻訳した天野祐吉さんは、雑誌『広告批評』を主宰するコラムニストで
広告を切り口にしたコラムを書いておられます。



最後に、天野さんの『成長から成熟へ さよなら経済大国』(集英社新書)の一部を見ていくと
読みやすく面白い内容のコラムがたくさんありました。

ここ何回かの授業では、コラムについて学んでいます。
コラムは新聞のコラムのように社会的なテーマで書かなければいけないわけではありません。
短いコラムを書くことは、制約がある中でどうやって文章を引っぱっていく(構成する)と
読者を惹きつけるかの勉強になり、力になるはず、ということでした。

次回5月1日の授業では、前回出ていた「風」をテーマにして自由に書くという
課題の提出を忘れないようにしてください。
教室まで来られない方は、当日の夕方までに届くように郵便で送るか
メールでも構いません。

よろしくお願いいたします。

















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