パルコ劇場が建て替えのため、閉館となる、というので、その前にちょっと行ってみよう、と観てきたのがこれ。
某国際空港にほど近い街にある小さな商店街に降ってわいたような大きな出来事が起こる。
それを巡る商店街や役人たちのドタバタな2日間。
渋谷パルコのエレベーターを最上階で降りたら、劇場入口前は商店街っぽくなっている。
中に入ってしまえばいつもと同じ。
でも、これで見納めかと思うとちょっと寂しい。
ロビーの奥の方、トイレの手前に、コーヒースタンドがあるのだけれど、
おばさんが、ホットプレートでアルミホイルに包んだ焼きおにぎりなんかを焼いて売ってたりするのが微笑ましい。
新しい劇場は、きっとおしゃれなカフェ風になるのだろう。
これもまたちょっと寂しい。
さて、お芝居はと言うと・・・。
商店街の会長を務める薬局の店主(中井貴一さん)の所に一本の電話がかかってくる。
これが事件の発端。
電話の主は外務省のお役人(音尾琢真さん)
来日中のフランス特使の奥様とお嬢様が帰国前に空港に行く途中で商店街に立ち寄りたいとのこと。
この商店街には有名なひな人形の人形師(阿南健治さん)がいて、お二人はその工房を見学したいとか。
同時に、日本ならではの生活感あふれる商店街も見学したいとのこと。
中井さんと奥さんのYOUさんは大喜び。
そこに魚屋(勝村政信)さんも加わり、おもてなしの準備を進めていく。
この3人のやり取りがホントに絶妙で、のっけから大笑い。
外務省からのFAXを確認中に間違って送られてきた、自殺をほのめかすFAXに親切に対応した中井さんに
FAXの主は誤解を重ね、FAXの応酬まで始まってしまう。
あちらこちらですれ違い勘違いのドタバタドタバタ。
一番印象的と言うか象徴的だったのは、「おもてなし」の在り方の違い。
外務省のお役人は、自分の汚点にならないよう、引き算で考えていく。
商店街自慢の和菓子をふるまおうとすれば、お腹を壊したらどうするんですか!というように、
あれもだめ、これもだめ、とにかく見るだけ、と商店街の人たちのことは、モノのように見ている。
一方、商店街の人たちは、降ってわいたようなビッグイベントに浮足立っているのはもちろんだが、
とにかく、どうしたら特使のお嬢さんが喜ぶのかを真剣に考えている。
さんざん準備を勧め、特使母娘が予定より早く到着したところで、思わぬ事実が判明。
人形師はひな人形の頭しか作らない頭師だったため、着物を着せる着付け師のいる京都じゃないと、
完成した雛人形はないという。
ここにあるのは生首のような人形のアタマだけ。
そんなものをみせたら特使母娘の落胆はいかばかりか、と判断したお役人は、急きょ視察をとりやめる、と決定する。
悲しむ母娘の姿に悩む通訳。
それでもなお、おもてなしの心を忘れない商店街の人たちの奇策が特使母娘の心を動かす・・・。
中井さん、勝村さん、YOUさんの掛け合いはもちろんのこと、
それを取り巻く商店街の面々もホントに面白くて、終始笑いっぱなし。
とんちんかんな、でもいかにもお役人って感じの音尾さんも、必死になればなるほどおもしろい。
仮面をかぶったかのように、通訳に徹する、サヘル・ローズさんのだんだん苦悩に満ちてくる表情も素敵。
最後は、特使母娘も満足して、日本に好印象を持って帰っていく、めでたしめでたし、となる。
もともとは立川志の輔さんの落語をいくつか組み合わせたとのこと。
これを一人で話して、世界を造り上げるなんてすごい!
実は私が住んでいる地域は、どちらかと言えば発想がこのお役人的。
誰かが入院した、と言えばお見舞いに行かなきゃ、となるけれど、
心配してるというよりは、建て前重視的。
なのでお彼岸に行っちゃダメとか、お見舞いは現金でなきゃ、お花やお菓子だけなんてとんでもない、となる。
退院したら病み上がりでふらふらでも、すぐにお返しを用意しなきゃ・・・、と田舎者の私は、
気持ちが置き去りにされていることになんとなく違和感を覚える。
ここに住んだころは、なにかとこういうことが多くてカルチャーショックを受けたものだ。
とはいえ、自分がもてなしてる、と思っても相手にとってありがた迷惑ってこともある。
おもてなしに限らず、想像力を働かせることがやはり大切なのかなあ。
私の、おそらく最後のパルコ劇場は、後味の良いすっきりとした舞台で締めくくられたのでした。
某国際空港にほど近い街にある小さな商店街に降ってわいたような大きな出来事が起こる。
それを巡る商店街や役人たちのドタバタな2日間。
渋谷パルコのエレベーターを最上階で降りたら、劇場入口前は商店街っぽくなっている。
中に入ってしまえばいつもと同じ。
でも、これで見納めかと思うとちょっと寂しい。
ロビーの奥の方、トイレの手前に、コーヒースタンドがあるのだけれど、
おばさんが、ホットプレートでアルミホイルに包んだ焼きおにぎりなんかを焼いて売ってたりするのが微笑ましい。
新しい劇場は、きっとおしゃれなカフェ風になるのだろう。
これもまたちょっと寂しい。
さて、お芝居はと言うと・・・。
商店街の会長を務める薬局の店主(中井貴一さん)の所に一本の電話がかかってくる。
これが事件の発端。
電話の主は外務省のお役人(音尾琢真さん)
来日中のフランス特使の奥様とお嬢様が帰国前に空港に行く途中で商店街に立ち寄りたいとのこと。
この商店街には有名なひな人形の人形師(阿南健治さん)がいて、お二人はその工房を見学したいとか。
同時に、日本ならではの生活感あふれる商店街も見学したいとのこと。
中井さんと奥さんのYOUさんは大喜び。
そこに魚屋(勝村政信)さんも加わり、おもてなしの準備を進めていく。
この3人のやり取りがホントに絶妙で、のっけから大笑い。
外務省からのFAXを確認中に間違って送られてきた、自殺をほのめかすFAXに親切に対応した中井さんに
FAXの主は誤解を重ね、FAXの応酬まで始まってしまう。
あちらこちらですれ違い勘違いのドタバタドタバタ。
一番印象的と言うか象徴的だったのは、「おもてなし」の在り方の違い。
外務省のお役人は、自分の汚点にならないよう、引き算で考えていく。
商店街自慢の和菓子をふるまおうとすれば、お腹を壊したらどうするんですか!というように、
あれもだめ、これもだめ、とにかく見るだけ、と商店街の人たちのことは、モノのように見ている。
一方、商店街の人たちは、降ってわいたようなビッグイベントに浮足立っているのはもちろんだが、
とにかく、どうしたら特使のお嬢さんが喜ぶのかを真剣に考えている。
さんざん準備を勧め、特使母娘が予定より早く到着したところで、思わぬ事実が判明。
人形師はひな人形の頭しか作らない頭師だったため、着物を着せる着付け師のいる京都じゃないと、
完成した雛人形はないという。
ここにあるのは生首のような人形のアタマだけ。
そんなものをみせたら特使母娘の落胆はいかばかりか、と判断したお役人は、急きょ視察をとりやめる、と決定する。
悲しむ母娘の姿に悩む通訳。
それでもなお、おもてなしの心を忘れない商店街の人たちの奇策が特使母娘の心を動かす・・・。
中井さん、勝村さん、YOUさんの掛け合いはもちろんのこと、
それを取り巻く商店街の面々もホントに面白くて、終始笑いっぱなし。
とんちんかんな、でもいかにもお役人って感じの音尾さんも、必死になればなるほどおもしろい。
仮面をかぶったかのように、通訳に徹する、サヘル・ローズさんのだんだん苦悩に満ちてくる表情も素敵。
最後は、特使母娘も満足して、日本に好印象を持って帰っていく、めでたしめでたし、となる。
もともとは立川志の輔さんの落語をいくつか組み合わせたとのこと。
これを一人で話して、世界を造り上げるなんてすごい!
実は私が住んでいる地域は、どちらかと言えば発想がこのお役人的。
誰かが入院した、と言えばお見舞いに行かなきゃ、となるけれど、
心配してるというよりは、建て前重視的。
なのでお彼岸に行っちゃダメとか、お見舞いは現金でなきゃ、お花やお菓子だけなんてとんでもない、となる。
退院したら病み上がりでふらふらでも、すぐにお返しを用意しなきゃ・・・、と田舎者の私は、
気持ちが置き去りにされていることになんとなく違和感を覚える。
ここに住んだころは、なにかとこういうことが多くてカルチャーショックを受けたものだ。
とはいえ、自分がもてなしてる、と思っても相手にとってありがた迷惑ってこともある。
おもてなしに限らず、想像力を働かせることがやはり大切なのかなあ。
私の、おそらく最後のパルコ劇場は、後味の良いすっきりとした舞台で締めくくられたのでした。