2017年に一棟目の建築が始まった、障がい者グループホーム心空(みそら)。
今回の3棟目「心空Ⅲ」で「心空」シリーズがついにファイナル。
2021年夏に着工し、12月末に無事引き渡しを終えた。
千葉県在住の私が、北海道の施設の設計をさせていただいてるので、
今までも現場監理はできずに、施工会社にお任せしていた。
それでも、工事前や途中で何度かは現場に赴いたが、
今回はコロナの影響で、一度も現場を見に行けてない。
12月末ごろからなんとなく落ち着いてきたので、
チケットを手配して、1月末に行く予定・・・だったのに・・・
予定の3日前に私の住む地域が「まんぼう」適用となり、
キャンセルとなってしまった・・・
本当に残念だ。
と落胆していたら、理事長が写真を撮って送ってくださった。
正面玄関側
東側は入居者の方たちのお部屋が並ぶ
裏側(北側)
2階廊下
1階の部屋は車椅子対応なので、廊下にも手摺が付いている
1階は洗面台も車椅子対応
「心空Ⅱ」ではタカラスタンダードの車いす用洗面台を使った。
1棟目のときに使ったパナソニック製の洗面ボールが浅いから、と言うことで、
深めのタカラにしたのだけれど、
パナソニックのほうが掃除がしやすい、と言うことで再びパナソニックに。
ユーティリティは1、2階それぞれにあって
ここで入居者の方たち衣類を洗濯して干す。
(写真は2階)
1階トイレは車椅子の方でも使用できる広いスペース。
手摺もしっかりつけている。
お風呂はリフトをセッティングできる
1台のリフトを、3棟間で必要に応じて使うことになっている
車椅子の方や、歩行が難しい方たちがより使いやすいように
今回は前回よりも玄関が広い
ゆったりと日当たりのいい食堂
ただ、コロナ禍の今、以前のようにみんなで集まってワイワイお食事することはむずかしいそうだ。
進化する「心空(みそら)」
「心空」は
1棟目の建築から少しずつ形を変えて、今回が最終形となる。
1棟目は
理事長が以前に勤めていた施設のプランとほぼ同じ。
理事長が前職を離れて独立後、初めての建築と言うこともあり、
使い慣れている形に、というご希望。
仕様もほぼ同じで私は動線をちょっと整理したくらい。
「設計しました」というよりは
「図面を書きました」という感じ。
2棟目では
利用者のニーズに合わせて、車椅子の方が使える部屋がぐっと増えた。
1棟目を使ってみてのスタッフの皆さんの声を反映し、
お風呂の手摺の位置など一緒に現場で測って決めたりした。
また、1棟目によりも音に配慮した。
完成!障がい者グループホーム「心空(みそら)Ⅱ」 - ゆるゆるらいふ (goo.ne.jp)
そして3棟目は
さらにスタッフの皆さんの声を反映し、
さらにコロナ禍のあれこれにも配慮した建物となった。
防音に配慮した建材選び
「心空Ⅱ」のときも防音には配慮したけれど、
今回はより効果的な建材や建具を使用した。
障がい者グループホームにはさまざまなタイプの方々が一緒に生活する。
ついつい音を出してしまう人や、より音に敏感な人など。
前回も1階の一部屋だけは防音機能のある扉を使い
2階は全部屋「音配慮ドア」を設置した。
ただ、予算の関係で1階の防音扉は地元の建具屋さんが製作したため、
メーカーの扉よりも機能が劣っていた。
今回は前回使えなかった阿部興業(株)の防音引戸を採用。
これはかなり高機能。
引戸でこの防音性能ってなかなかすごい
この部屋は壁の下地に遮音パネル(12.5mm)
天井の下地に遮音シート(2.8mm)も施した
(どちらも大建工業)
さらに2階の部屋の足音や飛び跳ねる振動音を軽減するために
床の下地に厚さ18mmの遮音マットを敷いた
2階の部屋の入り口には「音配慮ドア」を使用。
室内ドア・内装ドア・建具 音配慮ドア居室タイプ引戸・片引|DAIKEN-大建工業
こちらは一般住宅にも使われるもの。
高い防音性能ってほどではないけれど、
リビングの近くにあるトイレの音が気になるとか、
受験生の部屋を静かに、とかいうようなときに使ったりする。
備蓄に配慮した空間づくり
コロナの影響で、備蓄するものも増えた。
消毒液とかマスクとか・・・
その他の生活用品などいろいろなものが品薄になった時期があったことも考えると
トイレットペーパーなどの消耗品や各種備品、なども
ある程度備蓄しなければ・・・
と言うことで今回倉庫を増やし、
収納も付けられるところにはなるべく付けるようにした。
また収納の奥行きを、収納用品に合わせて、調整したところもある。
住宅は3回建てて満足がいくものになる、という話を聞く。
この施設も一棟目から少しずつ進化したけれど、
障がい者施設は本当に奥が深くてまだまだやれることがある気がする。
「施設用」と呼ばれるの設備機器の多くは高齢者の方たちに向けてのもの。
ここに入居される方たちの障がいは多岐にわたるので、
「高齢者向け」では対応できないものも多々あるけれど、
スタッフの皆さんの経験と培ってきたノウハウでなんとか使いこなしている気がする。
ハードよりもソフトな部分がとても重要になってくる、ということを実感する。
毎回思うことだけれど、
「心空」を運営する「みらいのそら」のみなさんは、
入居者の方々のことを本当によく考えていて、
同じものをただ3棟建てる、というのではなく、次はもっといいものを、と
たくさんのご希望を伝えてくださる。
私も毎回勉強させていただいている。
今回、竣工した建物を見ることができなかったのは本当に残念だ。
暖かくなって、コロナが落ち着いたらぜひとも行ってみようと思っている。
何度もzoomでの打ち合わせにご協力くださった理事長をはじめとするスタッフの皆様
丁寧な工事をしてくださった施工会社の皆様
本当にありがとうございました。
またお会いできるのを楽しみにしています。
「心空Ⅲ」
建築主 特定非営利活動法人 みらいのそら
設計 晶設計室一級建築士事務所
施工 (株)北斗商販
建設地 北海道雨竜郡秩父別町