人生ブンダバー

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バッハ「マタイ受難曲」--メンゲルベルク

2009-06-08 04:58:56 | 音楽
昭和52(1977)年9月13日、東京厚生年金会館でバッハ「マタイ受難曲」を聴い
た。H.J.ローチェ指揮の聖トーマス教会合唱団の演奏だった。第1曲目の9部合唱
「来たれ、汝ら娘たちよ」ではローチェがインテンポで八分音符を振り分けていた
ように記憶している。終曲に向けて緊張感が高まっていく演奏だった。

この第1曲「来たれ、汝ら娘たちよ」のダブルコーラス+1を、時々メンゲルベル
クで聴く。(--CDからカセット・テープへダビングしたもの。)これは1939
年、アムステルダムで行われたライブ録音でもちろんモノラルで音も貧しい。しか
し、その表現力はインテンポとはかけ離れ、アゴーギクのあるロマン的演奏で筆舌
に尽くしがたい。

Sehet!(Wohin?) Auf unsre Schuld.  見よ!(いずこを?)我らの罪を。

ズィーエットの f とウンスレ シュルトゥの大きなリタルダンドはいかばかりで
あろう。混声のテノールもバランスを崩す一歩手前まで思いっきり歌っていてブン
ダバー!である。今はこれほどの(オーバーともいえる)演奏はもう聴けないだろ
う。


敬愛すべき宇野功芳さんの『名曲とともに』から引用しよう。
  第一部の冒頭、オーケストラによる前奏が始まると、すでに聴く者は悲劇の渦
 の中に巻き込まれてしまう。大波がうねるようなテンポの流動は、“ものすご
 い”の一語に尽き、しかもごく自然である。メンゲルベルクが残した多くのレコ
 ードは、テンポ・ルバートが外側からつけ加えられていて、面白いが人工的であ
 り、、フルトヴェングラーに一歩をゆずる結果となるが、この第一曲に関する限
 り、フルトヴェングラーの域に迫っているといえよう。とくに“われらの罪を”
 という言葉で、崩れるようにリタルダンドする表情に打たれぬ者はあるまい。



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