人生ブンダバー

読書と音楽を中心に綴っていきます。
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井上寿一『戦前昭和の社会』 嵐山光三郎『追悼の達人』 etc.

2011-05-30 05:00:00 | 読書

井上寿一『戦前昭和の社会』(講談社現代新書) (★★★★★)
いうまでもなく戦前の日本は戦後になって大きく「変革」した。
法体系では戦前の明治憲法、旧民法から戦後の新憲法、民法。戦前の軍国主
義「暗黒時代」から戦後は民主主義の明るい時代。

しかし、私には日本の社会自体は、戦前も戦後もさほど変っていないのではな
いかしらんという「仮説」がある。山本夏彦によれば、「親不孝」は戦後のもので
はなく、大正時代のものだそうだ。

その「仮説」を裏付けるような本が出版された。
井上寿一著『戦前昭和の社会』である。
本書は、戦前の昭和(と現代との<類似性>)を次の3つの観点から記述してい
る。
1.アメリカ化
2.格差社会
3.大衆民主主義

本書の検証によれば、戦時(太平洋戦争)中は「鬼畜米英」などといっていたが、
昭和13~14年頃まで社会的には対米感情の大幅な悪化はなかったようだ。
(p207)(日本が怖かったのはソ連である。)

吉田茂がいうまでもなく、明治維新以来、日本は親米的であり、親米派がリード
してきた。
日露戦争の時に日本の外債を買ってくれた(=戦争の資金を貸してくれた。)の
は英国と米国の銀行(ユダヤ人)だった。関東大震災の時も米国から大きな支
援が寄せられたことも影響しているのだろう。

もしかすると本書は本年度のPHPの山本七平賞を受賞するかもしれない。





嵐山光三郎『追悼の達人』(中公文庫) (★★★★★)
文人は追悼文で勝負する。(男は愛嬌で勝負する?)追悼文の名人になるには
何よりも長生きであることが条件かもしれない。

本書は、49人の作家に寄せられた弔辞、追悼文を「分析」した力作である。
平成11(1999)年に新潮社から出版され、14(2002)年に新潮文庫入り、23
(2011)年の今年中公文庫版で新装刊行された。

石川啄木、宮沢賢治が亡くなった時は無名に近かった等々。その時代でなけ
れば分からないことがことがあるものだ。

文人の追悼文では生身の人間が出る。おもしろくて、読み出すと止まらない。

<明治篇>
1.正岡子規
2.尾崎紅葉
3.小泉八雲
4.川上眉山
5.国木田独歩
6.二葉亭四迷
7.石川啄木

<大正篇>
8.上田敏
9.夏目漱石
10.岩野泡鳴
11.森鴎外
12.有島武郎
13.滝田樗陰

<昭和篇>
14.芥川龍之介
15.若山牧水
16.小山内薫
17.内田魯庵
18.岸田劉生
19.田山花袋
20.小林多喜二
21.巌谷小波
22.宮沢賢治
23.竹久夢二
24.坪内逍遥
25.与謝野鉄幹
26.鈴木三重吉
27.中原中也
28.岡本かの子
29.泉鏡花
30.萩原朔太郎
31.与謝野晶子
32.北原白秋
33.島崎藤村
34.幸田露伴
35.横光利一
36.太宰治
37.林芙美子
38.斎藤茂吉
39.堀辰雄
40.高村光太郎
41.永井荷風
42.火野葦平
43.柳田国男
44.谷崎潤一郎
45.三島由紀夫
46.志賀直哉
47.川端康成
48.武者小路実篤
49.小林秀雄



中公文庫版


<参考図書>
阿川弘之随想集『雪の進軍』、『七十の手習い』等(講談社文庫)
谷川徹三、福田恒存、吉行淳之介、司馬遼太郎等への追悼・追想文が含まれ
ている。中でも『雪の進軍』にある「早すぎた終焉」(開高健に)は何回読み直し
てもジ~ンと来る。(2008年11月20日にも書いた。)



阿川弘之随想集 講談社文庫版




5月某日 図書館へ立ち寄り、横浜市の歴史--大正12年関東大震災の写真
集を見る。東京大空襲後の焼け野原のごとし。
今日では、戦前、戦後というが、その昔は関東大震災前と後という言い方だった。


《「読書」以外》
カール・ベーム没後30年だという。
カール・ベーム(1894~1981)の録音ベスト5といえば、大方の意見一致をみ
るだろう。モーツァルトの「コシ・ファン・トゥッテ」と「レクイエム」、ベートーヴェンの
「フィデリオ」等々である。
しかし、私としてはブラームスの交響曲第1番--それも晩年のウィーン・フィル
盤ではなく、65歳時のベルリン・フィル盤を推したい。男性的なブラ1である。
(これも2009年2月10日に記(しる)した。)


K.ベーム/ベルリン・フィル ブラームス交響曲第1番(1959年10月録音)

     *     *     *     *

以下平成23(2011)年5月28日撮影 次から次に咲く花々・・・・・・

ヤマボウシ
ヤマボウシはハナミズキに似るが、ハナミズキより開花は遅い
このところヤマボウシの花が真っ盛りである



上から見た ヤマボウシ これは大木の部類










ヤマボウシ並木



ここにもあったブラシノキ 原産地はオーストラリア








玄関先で見つけたバラ


バラの香りが・・・・・・


サツキは文字どおり五月(さつき)に咲く



青葉区の慶應義塾小学校・中学校建設予定地 (慶應150周年記念事業)
以前は少年サッカー場だった



5月29日(日) 昨日に続き雨。小田原市民会館に小田原少年少女合唱隊の定
期演奏会を聴く。(詳しくは来週6月6日(月)のブログで)
















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2 コメント

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Re;自己暴露 (katsura1125)
2011-05-30 22:28:52
(大笑い)面白すぎる!(私にしては夜分、失礼します。)minorerさんは、もしかすると漫才の台本作家にもなれるかもしれませんね~。

そういえば、秋田實(あきたみのる)という漫才の作家がおられました。--もう亡くなりましたが。

(順不同で読んでおり)正岡子規の章はまだ読んでおりませんでした。早速、寝床で読んでみます。

ほかの嵐山光三郎も挑戦してみたくなりました。
返信する
自己暴露 (minorer)
2011-05-30 20:50:05
お気づきと思いますが、3月14日の記事に付けたコメントで引用した「父の墓」の詩は
「追悼の達人」からの孫引きです

文人と食について書かれた2冊も読み応えがあります
単なるエピソードの羅列ではなく、文人達の人となりが浮かび上がる文章力
(嵐山氏の表現を借りると「キック力がある」)
まことに嵐山氏は「アネクドートの達人」であります

追悼の達人のことをツイッターというのは本当ですか?
(駄洒落の達人katsuraさんにお聞きします)
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