人生ブンダバー

読書と音楽を中心に綴っていきます。
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野村進『調べる技術・書く技術』

2008-05-20 05:35:40 | 読書
講談社現代新書から4月に珍しい本が出た。(上記タイトル参照)著者はノンフィ
クション・ライターである。
ノンフィクションをまとめるにあたって、「調べる技術・書く技術」が詳しく述
べられている。中にはこんなことを書いていいのかな?--例えば、インタビュ
ーのコツなど「企業秘密」ではないのかしら?というものも含まれている。


おもしろかったのは、次のフレーズ・・・・・・

「これは訊かないほうがいいのではないかという質問がある。このことを尋ねた
ら、失礼ではないか。先方の気分を害するのではないか。いや、それどころか
相手を激怒させはしまいか。
そのようなためらいを抱かせる質問があったら、どうするか。
必ず訊くことだ。ここで腰が引けてしまうと、絶対に後悔する」(p94)

よく新聞記者が他人(ひと)の気持ちも慮(おもんぱか)らない「馬鹿な質問」
をするが、それと似ている。
しかし、著者の違うところは、
「むろん相手の気持ちにはじゅうぶんに配慮し、慎重に言葉を選んで尋ねるの
だが」
という点だ。著者52歳、人生の経験者である。


もうひとつ。著者は本書で、  
有名な『ベスト&ブライテスト』を著したハルバースタムが
「取材を開始した時点ですでに暗殺されていたケネディ大統領や、ハルバースタ
ム本人はインタビューしていない故人のジョンソン大統領の心理描写を、かくも
細密に行うことは、はたして許されるのだろうか。ようするに、
『ケネディはそのとき~と思った』
と断定して書くことは、ノンフィクションの許容範囲なのかという疑問」(p172)
を提起しているが、まったく同感である。このあたりにも著者の<誠実性>を感
じることができよう。

(その他)
著者おすすめのノンフィクション作品(本田靖春『誘拐』など)も列挙されてい
て興味深い。
著者自身の短篇ノンフィクションも具体例として引用されており、親切にできて
いる。

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