慶應法学部教授細谷(ほそや)雄一先生が、戦後70年の平成27(2015)
年に一気に書き上げた「日露戦争からアジア太平洋戦争まで」を扱
ったもので、世界史的視野に立った「歴史エッセイ」と言っていい
のではないかしらん。
★×5に値するすばらしい本だ。論文のように、センテンスごとに参
照文献が巻末に整理されていることもすばらしい(今日の標準形式
かな?)
次はいずれも本書からの引用だ。「歴史認識」とはすなわち「現状
認識」であると言えるのかもしれない。
〇歴史家がありとあらゆる史料を読むことができないとすれば、歴
史家は史料を取捨選択して用いざるを得なくなり、そこに一定の
偏りや、解釈の違い、見解の対立が生じる余地が生まれる。
〇「戦争は、人類と同じぐらい古いものであるが、平和は近代の発
明である」。これは、十九世紀半ばにイギリスの法学者サー・ヘ
ンリー・メインが述べた言葉である。
〇多くの日本人は、パリ不戦条約の意義を、必ずしも世界史的な視
座から理解していたわけではなかった。それゆえに、この満州事
変が国際秩序全体に与える破滅的な影響を理解できなかった。
〇近衛は幣原に向かって、「いよいよ仏印の南部に兵を送ることに
しました」と淡々と告げた。それに対して幣原が、「船はもう出
帆したんですか」と尋ねると、近衛は「ええ、一昨日出帆しまし
た」と答えた。
幣原は事の重大さに気づき、次のように忠告した。「台湾かどこ
かに引戻して、そこで待機させるということは、出来ませんか」。
この言葉に驚いた近衛は、「すでに御前会議で論議を尽くして決
定したのですから、今さらその決定を翻すことは、私の力ではで
きません」という。
それを聞いて、幣原は深刻な面持ちで次のように警告した。「そ
うですか。それならば私は断言します。これは大きな戦争になり
ます」。これには、近衛も驚いた。
●本書では、通常の学校教育で「世界史」と「日本史」に分裂して
いる歴史観を、現代史として一つに統合した上で、二十世紀前半
に国際社会の中で日本が辿った道を描写してきた。
「井の中の蛙大海を知らず」というが、世界情勢の中に日本がある
ことを忘れてはならない?
細谷雄一『歴史認識とは何か』(新潮選書)★★★★★
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