勝手に映画評

私の見た映画を、勝手に評論します。
基本的に、すべて自腹です。

天使の分け前 / The Angels' Share

2013年04月21日 | 洋画(イギリス系)
原題に使われている“Angels' Share”とは、劇中でも説明がある通り、ウィスキーを樽で熟成させる際、空気中に自然に蒸発していく分の事。毎年2~4%蒸発していくといわれるので、10年も熟成させると結構な量が蒸発していっているんですよね。

でも、こう来るか。そうか、そういう事ね。日本的な発想で行くと、不良だった青年が、子供が生まれたことを契機に真面目に更生していくと言う、お涙頂戴的なストーリーになるんでしょうけど、イギリス人が考えると、素直にそう言う感じにはならないんですね~。でも、それならそれで、イギリス人らしく、もっと笑える所があっても良かったかなぁと思います。逆に、ああ言う、クスクス笑う所はあるものの、現実をシニカルに見つめるという所がイギリス的なんですかね?

英語を聞いていると、弁護士・裁判官という人たちは、クイーンズ・イングリッシュを話すわけですが、この物語のその他の登場人物たちは、非常に訛った、ぶっちゃけ何を言っているのかが不明な英語であったりして、階級社会イギリスを意識させられます。舞台はスコットランドなので、もしかしたら、弁護士・裁判官は支配階級=イングランドで、その他の登場人物たちは被支配階級=スコットランドと言う表現なんでしょうか?

それにしても、ウィスキーも、ワインのような表現で語ると言うことは、新たな驚き。まぁ、そうですよね。テイスティングと言う行為があるんだから、表現方法も有るわけで、それは他の酒類を似ていてもおかしくはないですよね。興味深かったです。

タイトル 天使の分け前 / 原題 The Angels' Share
日本公開年 2013年
製作年/製作国 2012年/イギリス・フランス・ベルギー・イタリア
監督 ケン・ローチ
出演 ポール・ブラニガン(ロビー)、ジョン・ヘンショウ(ハリー)、ゲイリー・メイトランド(アルバート)、ウィリアム・ルアン(ライノ)、ジャスミン・リギンズ(モー)、シボーン・ライリー(レオニー)、チャーリー・マクリーン(ロリー・マカリスター)、ロジャー・アラムタ(デウス)

[2013/04/21]鑑賞・投稿

レ・ミゼラブル / Les Misérables

2012年12月22日 | 洋画(イギリス系)
傑作ミュージカル『レ・ミゼラブル』の映画化。映画化したのは、ミュージカル版レ・ミゼラブルであり、ヴィクトル・ユゴーの小説版レ・ミゼラブルでは無いことに注意。ミュージカル版と小説版では、ストーリーに若干に違いがあるらしいです。

“お昼休み”の番組のメインMCの某お笑いタレントではないですが、ミュージカルには若干の偏見を持っている私。でも、そう言いながらも、『CHICAGO』とか『NINE』などのミュージカル映画を見ているわけですが、今回も見てしまいました。結論、良かった。そもそも、小説としての『レ・ミゼラブル』は不朽の名作な訳です。名作を原典としているミュージカルが、つまらない事は無いですよね。あとは、セリフが歌になっている事に違和感を持つか否かということ。割りと自然と物語に入ることができてしまったので、良かったと感じたんだと思います。ぶっちゃけ、ストーリーとして突っ込みどころは色々あります。でもねぇ、それを言ったらオシマイよと言う事で封印します。

ヒュー・ジャックマンのジャン・バルジャンも、ラッセル・クロウのジャベール警部も最高です。特に、冷徹なジャベール警部、怖いです。あと、アン・ハサウェイ。ショートカットのアン・ハサウェイは珍しく感じましたが、幸薄いファンテーヌを見事に演じています。

日本でのプロモーションイベントの際、ネタで(?)トム・フーパー監督から「世界一美しい女優」と言われたアマンダ・サイフリッド。確かに、華があり、カワイイです。コゼットの可憐さが見事に出ていました。ちなみに、先のトム・フーパー監督の暴言にたいして、「ちょっと待ってっ!」とご立腹(?)のもう一人の看板女優アン・ハサウェイに対して、「何か問題?」とヒュー・ジャックマンは見事に突っ込んでいました。

この作品で話題なのは、歌を歌いながら撮影したこと。通常、ミュージカル映画の場合、歌はスタジオで別録りし、演技の際は、その録音した歌に合わせて口パクしながら撮影するらしいんですが、これはそうはしなかったそうです。だからなのか、歌に感情が籠っている感じがして、画面からこちらに迫ってくる感じでした。

いやぁ、実は、小説でも『レ・ミゼラブル』は読んだことがなかったので、この映画でレ・ミゼラブル初体験。150分を超える作品で長いかなぁと思いましたが、こう言う話だと、これ以上短くするのは無理ですね。物語は、まさに“ああ無情”。良かったです。

タイトル レ・ミゼラブル / 原題 Les Misérables
日本公開年 2012年
製作年/製作国 2012年/イギリス
監督 トム・フーパー
出演 ヒュー・ジャックマン(ジャン・バルジャン)、ラッセル・クロウ(ジャベール警部)、アン・ハサウェイ(ファンティーヌ)、アマンダ・セイフライド(コゼット)、エディ・レッドメイン(マリウス・ポンメルシー)、サシャ・バロン・コーエン(テナルディエ)、ヘレナ・ボナム=カーター(テナルディエ夫人)、サマンサ・バークス(エポニーヌ)、

[2012/12/22]鑑賞・投稿

砂漠でサーモン・フィッシング / Salmon Fishing in the Yemen

2012年12月15日 | 洋画(イギリス系)
砂漠の国イエメンで、鮭を釣る。そんな奇想天外なプロジェクトを描いた作品。

イギリス映画ということで、出演俳優陣は、当然イギリス人。でもその割には、あんまりクイーンズイングリッシュを強く感じなかったですね。ちなみに、監督のラッセ・ハルストレムはスウェーデン人のようです。

また、政府を上手く誂っているのもイギリス映画の一つの特徴では無いでしょうか。アメリカ映画でも、政府を誂う事はあるでしょうけど、これほどのユーモア(おちょくり?)で誂うのは、イギリス映画ならではと言って良いのではないでしょうか?

ストーリ的に、特に予想外の出来事はなく、「こうなるんだろうな」と思ったように物語が進んでいきます。いやぁ、ある意味期待通りの予定調和のストーリー。実は、嫌いじゃないです。でも、逆に言うと、ちょっとハラハラ・ドキドキの刺激が足りない気もします。政府のファンドか何かを制作費に活用しているようなので、それも仕方ないかもしれません。

予定調和のストーリーといっても、それなりに盛り上がります。最初は私も「イエメンで鮭って、ねぇ(笑)。」と言う感じだったんですが、物語が進むに連れ、「あ、これはもしかしたらイケるかも。」と言う気になってきてしまいました(笑)。でも、5000万英ポンドと言う、とてつもない巨費を投入するんだよなぁ。それは流石に無理か。

2012年12月13日、第70回ゴールデン・グローブ賞で、作品賞、主演男優賞(ユアン・マクレガー)、主演女優賞(エミリー・ブラント)にノミネートされました。

タイトル 砂漠でサーモン・フィッシング / 原題 Salmon Fishing in the Yemen
日本公開年 2012年
製作年/製作国 2011年/イギリス
監督 ラッセ・ハルストレム
出演 ユアン・マクレガー(アルフレッド・ジョーンズ博士)、エミリー・ブラント(ハリエット・チェトウォド=タルボット)、クリスティン・スコット・トーマス(パトリシア・マクスウェル/英国首相府広報官)、アムール・ワケド(シャイフ・ムハンマド)、トム・マイソン(ロバート・マイヤーズ/ハリエットの恋人)、レイチェル・スターリング(メアリー・ジョーンズ/アルフレッドの妻)

[2012/12/15]鑑賞・投稿

007 スカイフォール / Skyfall

2012年12月08日 | 洋画(イギリス系)
ネタバレがありますので、要注意。

ダニエル・クレイグの007三作目。シリーズ生誕50周年を記念する、第23作目の007作品でもあります。

ダニエル・クレイグの007は、作品史上最もハードボイルドですが、今回もハード。しかも、下手な甘いアバンチュールなど無く、前編ほとんど激しいアクション満載。見応えありますねぇ。

それにしても、ダニエル・クレイグの007はイイ! ショーン・コネリー、ジョージ・レーゼンビー、ロジャー・ムーア、ティモシー・ダルトン、ピアース・ブロスナンと、これまで数々の俳優たちが007を演じていますが、一番好きです。

印象的なのは、物語前半、MI6が爆破され殉職者の棺がユニオンジャックに包まれているシーンと、物語終盤、007が建物の屋上に立っていて、そこから見える多数の建物にユニオンジャックがはためいているところ。今回の物語のベースに、国に対する忠誠心というものがあるんですが、忠誠心を暗示させる映像ですね。

ジュディ・デンチのMはかなりお馴染みになってきていますが、今回はMが狙われます。それと、Qが一気に若返っています。Qと言えば、何やら怪しい武器を007に提供していましたが、今回の若いQは、そう言う昔懐かしいあやしい武器はレガシーと言って提供していません。若いQとの提供する武器は極めてオーソドックスです。

Mがかつて使ったエージェントから命を狙われるという話、Qの若返り、007の能力への疑問と、今回の作品は、過去との決別というテーマがあるような気がしますね。アストンマーチンが出てきますが、それも過去との決別につながっています。

見応えがあります。イイです!

タイトル 007 スカイフォール / 原題 Skyfall
日本公開年 2012年
製作年/製作国 2012年/イギリス・アメリカ
監督 サム・メンデス
出演 ダニエル・クレイグ(ジェームズ・ボンド)、ジュディ・デンチ(M)、ハビエル・バルデム(ラウル・シルヴァ(本名:ティアゴ・ロドリゲス))、レイフ・ファインズ(ギャレス・マロリー)、ナオミ・ハリス(イヴ・マネーペニー)、ベレニス・マーロウ(セヴリン)、ベン・ウィショー(Q)、アルバート・フィニー(キンケイド)、ロリー・キニア(ビル・タナー)、ヘレン・マックロリー(クレア・ダワー)

[2012/12/08]鑑賞・投稿

裏切りのサーカス / Tinker Tailor Soldier Spy

2012年04月22日 | 洋画(イギリス系)
昨日見た『Black & White/ブラック&ホワイト』もスパイモノですが、今日の『裏切りのサーカス』もスパイモノ。ですがテイストは全く違っていて、『Black & White/ブラック&ホワイト』はお馬鹿ムービーですが、『裏切りのサーカス』は重厚なエスピオナージになっています。それもそのはず、原作がスパイ小説の大家ジョン・ル・カレ。そりゃぁ、重厚な内容にもなりますよね。

ただ、その重厚さが話を分かり難くしている事もあります。二重スパイを炙り出す物語と言えば、二重三重に物語が絡みあい分かり難くなるものですが、これもその例外ではありません。ただ、二重三重に物語が絡みあうところで、一体誰が信用できるのかが分からなくと言う要素が多くの場合はあるんですが、この作品の場合、誰を信用すれば良いのか?と言う価値観の所は、あまりどんでん返しになったりはしませんでしたね。その意味では、あまりにも淡々と物語が進んでいってしまうのでドキドキ感が足りないかな。

“もぐら”の正体が判明し、スマイリーが、その“もぐら”から、女と男宛てに手紙を預かるんですが、やっぱりその手紙に最後のシーンを依頼する内容が書かれていたんですかね?今はどうか知りませんが、イギリスのエスタブリッシュメント層では、アラン・チューリングみたいに少なからず同性愛者が居たりしますからねぇ。

さて、イギリスMI6の長官が“C”と称されるのは有名な話ですが、この物語中では“C”は“Control”と呼ばれていましたね。実際のところは“C”が何を意味するかについて諸説あるんですが、一般的には初代長官の名前から来ているという事なんですけどね。“C”をフォネティックコードで読んでいるんだとしたら、普通は”Charlie”で、“Control”にはなりません。どういう事なんですかね?

ところで、この物語って実際の事件が下敷きになっているようですが、その実際の事件ってやっぱりキム・フィルビーにまつわる、ケンブリッジ・ファイブの話なんですかね?

タイトル 裏切りのサーカス / 原題 Tinker Tailor Soldier Spy
日本公開年 2012年
製作年/製作国 2011年/イギリス=フランス=ドイツ
監督 トーマス・アルフレッドソン
原作 ジョン・ル・カレ
出演 ゲイリー・オールドマン(ジョージ・スマイリー)、コリン・ファース(ビル・ヘイドン)、トム・ハーディ(リッキー・ター)、マーク・ストロング(ジム・プリドー)、キーラン・ハインズ(ロイ・ブランド)、トビー・ジョーンズ(パーシー・アレリン)、ジョン・ハート(コントロール)、ベネディクト・カンバーバッチ(ピーター・ギラム)、デヴィッド・デンシック(トビー・エスタハース)、スティーヴン・グレアム(ジェリー・ウェスタービー)、キャシー・バーク(コニー・サックス)、スヴェトラーナ・コドチェンコワ(イリーナ)、サイモン・マクバーニー(オリバー・レイコン/外務次官)

[2012/04/22]鑑賞・投稿

マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙 / The Iron Lady

2012年03月20日 | 洋画(イギリス系)
『鉄の女』の異名をとった、第71代英国首相マーガレット・サッチャーを映画いた作品。本作品では、2012年アカデミー賞においてメリル・ストリープが主演女優賞を受賞した他、メイクアップ賞も受賞しています。

サッチャーの半生を描いているのは間違いないんですが、過去から歴史を辿ると言う形式ではなく、認知症を患っていると言われる現在において過去を振り返っているサッチャーと言う形の描き方をしています。若干、予想と違っていました。でも、そういう意味では、今のサッチャー像がどの位実際の姿に近いのかが不明ではありますが、認知症と伝えられている今のサッチャー像を垣間見ることが出来て、非常に興味深い内容になっています。良いです。

2012年のアカデミー賞でメイクアップ賞を受賞していますが、それも納得です。いやぁ、メリル・ストリープがマーガレット・サッチャーになっていますよ。加えて、メリル・ストリープはアメリカ人なのですが、少なくとも私が聞く限りは、ちゃんとイギリス英語で演じていました。「そうそう、そう言う感じだったよね。」と思うほど、ちゃんとサッチャーになっています。

その他、イギリス政治史上の人物が数々出てきます。すぐ分かったのは、ジョン・メージャー元首相ですかね。特徴的なメガネなので、多分、あの人がそうだと思います。それ以外にも、フォークランド紛争の件では、当時のアメリカの国務長官のアレクサンダー・ヘイグが登場するシーンがあるんですが、パッと見似た感じの人物を配しています。もっと言うと、最後に、レーガン元大統領とダンスをするシーンがあるんですが、レーガン元大統領もそっくりさん?を配していました。

その、フォークランド紛争のシーンですが、『首相の決断』を垣間見るシーンがあります。“Sink it”と言うセリフです。たった二言ですが、重いです。

この作品を見ると、サッチャーが、旦那さんのデニスを愛していたというのがわかりますね。認知症の症状と言う設定で、亡くなったはずのデニスと常に会話しているんですが、それが、夫を思う妻という感じなんですよね。なんか、最後のシーンは、なんか泣かせます。

タイトル マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙 / 原題 The Iron Lady
日本公開年 2012年
製作年/製作国 2011年/イギリス・フランス
監督 フィリダ・ロイド
出演 メリル・ストリープ(マーガレット・サッチャー)、ジム・ブロードベント(デニス・サッチャー)、アレキサンドラ・ローチ(若年期のマーガレット・サッチャー)、ハリー・ロイド(若年期のデニス・サッチャー)、オリヴィア・コールマン(キャロル・サッチャー/マーガレットの娘)、イアン・グレン(アルフレッド・ロバーツ/マーガレットの父)、アンソニー・ヘッド(ジェフリー・ハウ)、リチャード・E・グラント(マイケル・ヘーゼルタイン)、ポール・ベントレー(ダグラス・ハード)、ロビン・カーモーディ(ジョン・メージャー)、ジョン・セッションズ(エドワード・ヒース)、マシュー・マーシュ(アレクサンダー・ヘイグ)、レジナルド・グリーン(ロナルド・レーガン)

[2012/03/20]鑑賞・投稿

ライフ ―いのちをつなぐ物語― / One Life

2011年09月01日 | 洋画(イギリス系)
『ディープ・ブルー』、『アース』を制作したBBCが制作。

この手の自然観察モノを見るといつも思うんですが、こう言う映像って、一体どうやって撮るんでしょうね? アザラシと一緒に泳いだり、魚の群れに迫ったり、ネズミ(ハネジネズミ)がトカゲから逃げすシーンに迫ったり。ものすごく不思議です。

その中でも一番驚いたのがハキリアリの巣の映像。ハキリアリは、その名の通り葉を切る蟻なんですが、その切った葉を蟻は食べません。巣に運び込んでキノコを栽培して、そのキノコを餌にしているという驚きの蟻です。そう言う蟻の生態もかなり驚きなんですが、その巣の中の映像を撮った事も驚き。人間の気配が有ったらこういうものはNGなはずなので、一体動やって撮ったのか物凄く不思議です。

今回見たのは、日本語吹き替え版。ナレーションは、松本幸四郎と松たか子の父娘だったんですが、オリジナルのナレーションは、何と!ダニエル・クレイグらしい。う~、オリジナル版でも良かったかも。

全般的には、動物の表面的な生活を捉えた映像と言ったらダメでしょうか。その生き物たちの生命行動の背景にあるものの深みを感じることが出来ず、こう言うとなんですが、お子様向けの“動物可愛いね”映画に思えて残念でした。6年もの時間を掛けて世界中で撮影しているんですから、もっと深みのある作品にして欲しかったと思います。でも、そうしたら、重すぎますかね?

タイトル ライフ ―いのちをつなぐ物語― / 原題 One Life
日本公開年 2011年
製作年/製作国 2011年/イギリス
監督 マイケル・ガントン、マーサ・ホームズ
ナレーション 松本幸四郎、松たか子

[2011/09/01]鑑賞・投稿

英国王のスピーチ / The King's Speech

2011年02月27日 | 洋画(イギリス系)
現女王エリザベスII世の父王ジョージVI世の物語。

ジョージVI世となれば、兄王エドワードVIII世に触れないわけには行かないでしょう。『王冠を賭けた恋』と言われたわけですが、その煽りを受けて国王になったのが、ジョージVI世と言う事になります。

この作品の深いところは、英国人の役には英国人かアイルランド人、オーストラリア人の役にはオーストラリア人の俳優が配役されています。日本人には判りにくいことですが、イギリス英語とオージー英語の違いがありますからねぇ。また、エリザベス王妃を演じたヘレナ・ボナム=カーターは上流階級の出身。上流階級には上流階級の話し方もありますしね。出身地や、育ちのリアリティを追求したのだと思います。

驚かされるのが、タバコに関する認識。ジョージVI世の吃音の治療の一環としてなのか、タバコは喉の緊張を弱めるとか言って、タバコが奨励されていたりします。もっとも、ライオネルは体に良くないと言って吸わせまいとしますが。こう言うことも、時代による認識の違いなんですかね。

エドワード王子のケイト・ミドルトンさんとの婚約という慶事に湧いているイギリスですが、チャールズ皇太子の評判がイマイチであるとか、ヘンリー王子の素行が良くないとかと言うこともあり、王室を取り巻くイギリスの世論には厳しい物があります。この時期にこの映画が公開されたのは偶然なのでしょうが、そう言うイギリス世論が背景にあるのか?と勘ぐりたくもなります。

第83回アカデミー賞には、作品賞・主演男優賞・助演男優賞・助演女優賞・監督賞を含む、全12部門にノミネート。まぁ、見てみると、その理由はよくわかりますね。よく出来た話です。って言うか、基本的には実話ですが。

[2011/02/28]追記
結局、作品賞、監督賞、主演男優賞、脚本賞を受賞しました。納得ですね。ちなみに、前評判の高かった『ソーシャルワーク』は、脚色賞、編集賞、作曲賞。こちらも、まぁ、妥当じゃないんでしょうか。

タイトル 英国王のスピーチ / 原題 The King's Speech
日本公開年 2011年
製作年/製作国 2010年/イギリス・オーストラリア
監督 トム・フーパー
出演 コリン・ファース(ジョージVI世)、ジェフリー・ラッシュ(ライオネル・ローグ)、ヘレナ・ボナム=カーター(エリザベス王妃)、ガイ・ピアース(エドワードVIII世)、マイケル・ガンボン(ジョージV世)、ティモシー・スポール(ウィンストン・チャーチル)、デレク・ジャコビ(コスモ・ラング大主教)、ジェニファー・エール(マートル・ローグ/ライオネル夫人)、アンソニー・アンドリュース(スタンリー・ボールドウィン)、ロジャー・パロット(ネヴィル・チェンバレン)、イヴ・ベスト(ウォリス・シンプソン)

[2011/02/27]鑑賞・投稿 [2011/02/28]追記

シャーロック・ホームズ / Sherlock Holmes

2010年03月14日 | 洋画(イギリス系)
実在説も有る(?)シャーロック・ホームズ。今回の映画は、コナン・ドイルの原作には無いオリジナル脚本です。今回シャーロック・ホームズを演じたのは、ロバート・ダウニー・Jr。そして、初老の紳士と言うイメージのあったワトソン医師は、何と!ジュード・ロウ。若いワトソンです。

設定は、1891年。モリアーティ教授と死闘を繰り広げる「最後の事件」も1891年なので、その直前と言う感じですかね。もっとも、「ボヘミアの醜聞」が出版されたのは1891年7月なんですが、この時既に『故アイリーン・アドラー』と「ボヘミアの醜聞」にはあるので、それより前と言うことですね。と言う事で、本当に「最後の事件」の直前ですね、たぶん。

シャーロック・ホームズと言えば、NHKで放送されていたバージョンに出ていたジェレミー・ブレットが思いつくのではないでしょうか? その作品でのシャーロック・ホームズのイメージは、物静かで、日本人がイメージするイギリス紳士と言う感じではないかと思います。彼の演じるシャーロック・ホームズも、一級品でした。乱暴なシャーロック・ホームズなんて、嫌ですよね(笑)。

でも、この映画を見ながら思い出してみたんですが、原作には、ホームズが、明かりを消して煙(タバコ?アヘン?)の充満した部屋に居る描写や部屋で銃をぶっ放す描写、あるいはバイオリンを引きながら色んな思索にふける描写、また、マーシャルアーツやバリツ(バーティツ)の使い手であることの説明、そして何より、結構、銃を持って、ワトソンと共に犯罪現場に踏み込むなどのシーンが有ったことなどを沢山思い出しました。巷では、この「シャーロック・ホームズ」は、『元々のイメージ近い』と言われていますが、本当にそうかもしれませんね。映像で見ると、あの描写は、こういう事だったのかと思いました。

ローザラム卿の事を“首席裁判官”とか訳していましたが、それって、大法官か何かではないかと思いました。

いやぁ、意外でしたが、ロバート・ダウニー・Jrのシャーロック・ホームズは、良いですね。良く考えると、シャーロック・ホームズ一番活躍したこの時期は、脂の乗った壮年期であるはずですから、ロバート・ダウニー・Jr位の年齢が丁度良いのかもしれませんね。あわせて考えると、ワトソンもそうで、ジュード・ロウ位の年齢だったのかもしれません。

聞くところによれば、続編が作られているらしいです。って言うか、モリアーティ教授の存在を匂わすあの描写は、どう考えても次への伏線です(笑)。

第67回ゴールデングローブ賞主演男優賞ミュージカル・コメディ部門(ロバート・ダウニー・Jr)授賞です。第82回アカデミー賞では、作曲賞、美術賞にノミネートされましたが、授賞はなりませんでした。

タイトル シャーロック・ホームズ / 原題 Sherlock Holmes
日本公開年 2010年
製作年/製作国 2009年/イギリス
監督 ガイ・リッチー
出演 ロバート・ダウニー・Jr(シャーロック・ホームズ)、ジュード・ロウ(ジョン・ワトソン)、レイチェル・マクアダムス(アイリーン・アドラー)、マーク・ストロング(ヘンリー・ブラックウッド卿)、ケリー・ライリー(メアリー・モースタン)、エディー・マーサン(レストレイド警部)、ジェラルディン・ジェームズ(ハドソン夫人)、ジェームズ・フォックス(トーマス・ローザラム卿/大法官?)、ウィリアム・ホープ(スタンディッシュ駐英米大使)、ハンス・マシソン(カワード卿/内務大臣)

[2010/03/13]鑑賞・投稿

パイレーツ・ロック

2009年10月24日 | 洋画(イギリス系)
1966年、ブリティッシュ・ロックが世界に発信されていたが、その本家本元のイギリスBBCでの放送時間は一日わずか45分! しかしロックを求めるイギリス国民は、海賊放送を聞いてロックを楽しんでいた。と言う時代背景の下、全てが実話と言うわけではないですが、この時代にあった海賊放送をベースに作られた映画です。

面白いですね。海賊放送が船から放送されているなんて、本当に海賊放送な訳ですが、恐らく沿岸トロール船を改造したと思われる海賊放送局には、なんとスタジオが複数ある設定。そして、“DJ”の名のとおり、MC自らレコードを掛けたりしています。古き良き時代と言う感じです。

面白いのが、この海賊放送が、違法ではないと言う事。流石、自称独立国の「シーランド公国」を生んだ国。ちなみに、この「シーランド公国」も、公海上にあったのでイギリスの司法権が及ばないと言う事で、違法では無いんですねぇ。もっとも、この事件の後、領海が広げられて、「シーランド公国」もイギリスの領海内になった訳ですが、法は訴求適用しないので、今も「シーランド公国」は続いています。

基本、最後の結末の辺りになるまで、物語は、若さと馬鹿さ(!)に尽きますね。1960年代後半の雰囲気を反映して、自由恋愛的な事も数々劇中に描かれています。PG12なのは納得ですね。

イギリス映画なのですが、政府の役人以外は、あまりクイーンズイングリッシュではないですね。この辺りの考証(?)は、割とちゃんとされているようです。1960年代のイギリスの大衆風俗と言う観点でも、非常に面白い題材ですね。流れる音楽も、聴いたことのあるヒット曲が多いです。そう言う意味でも、見に行って損は無しです。

タイトル パイレーツ・ロック
原題 The Boat That Rocked

日本公開年 2009年
製作年/製作国 2009年/イギリス
監督・脚本 リチャード・カーティス
出演 フィリップ・シーモア・ホフマン(ザ・カウント(伯爵))、ビル・ナイ(クエンティン)、リス・エヴァンス(ギャヴィン)、ニック・フロスト(デイヴ)、ケネス・ブラナー(アリスター・ドルマンディ卿)、トム・スターリッジ(カール)、クリス・オダウド(サイモン)、キャサリン・パーキンソン(フェリシティ)、リス・ダービー(アンガス)、ウィル・アダムスデール(ニュース・ジョン)、トム・ウィズダム(マーク)、トム・ブルーク(シック・ケヴィン)、アイク・ハミルトン(ハロルド)、ラルフ・ブラウン(ボブ)、タルラ・ライリー(マリアン)、ジェマ・アータートン(デジリー)、ジャニュアリー・ジョーンズ(エレノア)、エマ・トンプソン(シャーロット/カールの母)、ジャック・ダヴェンポート(トゥワット)、シネイド・マシューズ(ミスC)

[2009/10/24]鑑賞・投稿