越水利江子さまの『ガラスの梨』ちいやんの戦争。
2018年7月出版の本ですが、ようやく読み終えたのでご紹介いたします。
昭和16年、大阪。
小学三年生の笑生子(えいこ)は、弟・春男が拾った黒っぽい子犬キラを飼うことに。
森林組合の仕事のかたわら動物園の仕事も手伝っている成年にいやんが、
革を細工してキラに首輪を作ってくれた。
お父やんはタンカーの積み荷の石炭を運ぶ仕事。
きつい仕事なので、クリという馬を借りられた時だけ、成年にいやんが手伝っていた。
貧しくても楽しい生活が、戦争で崩れていく。
成年にいやんに赤紙が来て……
りえ子さまのお母様をモデルに、徹底的な取材のもとに書かれた本。
読み進むのが辛いリアルな場面もある。
でも、読後の心に残るのは、そんな場面だけではない。
夕日が沈む中、疲れた馬のクリの足を川で冷やす成年にいやんのシルエット。
成年にいやんが買ってくれたガラスの「ままごと道具」の中で、空襲にも崩れず輝くガラスの梨。
戦争を生きぬいた同志キラ。
おとぎ電車の車窓を横切る羽虫が、青空に花びらのように吹かれ、いっせいに虹色に光り、
「わ、虹色! 霊虫やっ!」と戦争で亡くなった人を思う笑生子。
児文協の秋の一日講座のオンデマンド配信を聴講させていただいた。
そこで令丈ヒロ子さまが、エンタメと児童文学の違いを話してくれていた。
エンタメは読後に、内容は忘れたけれど面白かった! という記憶が残る。
児童文学は読後に、なにかひっかかる部分、が残る、と。
私が読後にひっかかって残ったのは、やっぱり戦争についてのこと。
「あのときの、アメリカはひどかった。戦争にかこつけて、ゆるされないことをいっぱいやった。
だけれど、日本はひどくなかったのか?
……(戦争へ行った)兄やんは、人として壊れていなかったと、強く信じていた。
しかし、一方で、戦争は人間を壊すのだとも感じていた。
戦争についてわかっていると思っていたけれど、これだけのリアリティのある文学の中の言葉は、心にひっかかって残り続けそう。
りえ子さま、この本は「記録」であり「記憶」であり、次世代への贈る言葉でもあるような気がしました。
りえ子さま、ますますの、ご活躍を!!
こんなに戦争をリアルに感じた読書は、今までになかったような。
読むのに覚悟が必要な本だが、多くの人に読んでもらいたいと切に思った。
今日もびよよよ〜〜ん (*^ __ ^*)