みちのく童話賞スタッフ仲間、田沢五月さまのノンフィクション新刊です。
子どもたちの力が大人を動かす・励ますって、なかなかできないこと。
でもこのノンフィクションはその事実をしっかりと伝えてくれています。
はじめに、岩手県山田町大沢地区の景色。
高台にある大沢小学校には、学習発表会に必ず演じられる劇があった。
一年生から六年生までの児童が全員で演じる「海よ光れ」という劇だ。
「劇団きたかぜ」の協力を得て作られた脚本で、毎年演じられる。
セリフがあるのは六年生で、他の学年はうねる波や海鳥を演じる。
この中で、明治の津波のシーンが演じられていた。
悲しいできごとが起きた。
明治二十九年六月十五日。
大きな地震が来てガタガタ揺れたあとのこと、海の水は、どんどん引けていった。
信じられないことだった。
みるみるうちに、山田湾の底が見え始めた…
「海よ光れ」はもうひとつあった。それは、学校新聞「海よ光れ」だ。
全国大会でも上位入賞をきたし、2011年3月、内閣総理大臣賞の授賞式に新聞部員が東京に行ってきた。
それからすぐに、あの東日本大震災が起きた。
校長は子どもたちを学校に引き留め、全員無事だった。
しかし、大沢地区は孤立してしまう……
佐藤はるみ先生が、「だいじょうぶだよ」という言葉を何度も飲み込んだこと。
そして翌朝、みんなに沢水で顔を洗おう、ランニングしようと言ったこと。
ぼくらにもできることは、学校新聞だと、子どもたちが作り始めたこと。
読んでいくうちに、涙がぼろぼろ出てきて困った。
最後に佐藤はるみ先生の手紙が胸を打った。
震災当時に大沢小は多くのメディアに取りあげられ、取材を拒否する子どもたちもいたこと。
あの時の事は話したくないと言っていたのに、震災から8年経った頃に田沢さまから本にしたいとのお話があった。
ひとりひとりと連絡を取ってその旨を伝えると、なんと全員OK。
成人式を迎えた子どもたちは、自分たちの経験を伝えていかねばという思いをもてるまでになっていたと。
すばらしい本です。
廃校となる前の最後の学校新聞もありました。
この本がなかったら、大沢小の子どもたちのこんな活躍が、全国の子どもたちに伝わらないままだったかも。
田沢五月さまは、令和3年、一般書『田老の町で生きぬいて』で、岩手県芸術選奨をご受賞されています。
さらなるご活躍をお祈りしています!
いやあ、震災の話だというだけじゃなく、内容が胸に迫ってくる。
ぼろ泣きしちゃうのは、私だけじゃないはず。
こんな本を、書けるってすごいな田沢さま。
私もがんばろう。
今日もびよよよ〜〜ん (*^ __ ^*)