かぜねこ花鳥風月館

出会いの花鳥風月を心の中にとじこめる日記

北アルプス北部の桃源郷から立ち眩みの下山行

2019-07-28 15:23:00 | 日記
北アルプス白馬山系の奥、雪倉岳、朝日岳を経て、長栂山を起点とし海抜ゼロの日本海に下る栂海新道は、北アルプスに属しながら、人の気配の少なく、とくに吹上のコルで蓮華温泉への下山道と別れてからの栂海山荘への道は、平日とはいえ、たった独りの若者とすれ違っただけであった。
しかしながら、長栂山の照葉の池、アヤメ平、黒岩平に下る3時間半ばかりの下り道は、大袈裟だか人生で歩いた最良の道だったのではないだろうか。遅い雪解け直後のひとときしか現れない浄土。楽園。とりわけ雪渓の急斜面をノーアイゼンで恐る恐る下ったアヤメ平の花園は、ヒオウギアヤメの紫紺、ハクサンフウロの赤紫、クルマユリの朱、トモエシオガマの薄黄などが、今まさに最良の彩りを迎えており、「ああ、オイラの死に場所は、こんな世界でありたい❗️」としばし、カメラをあちこちに向けながら時を過ごした。その後も、ミズバショウ、リュウキンカ、キンコウカ、タテヤマリンドウ、オオバギボウシの草むらが次々と現れ、北アルプスにこんな世界があったんだ、と悦び勇んで下った。

だが、人生そのような甘いことばかりでないことは、大方の予想通り。

黒岩山から栂海山荘の犬ヶ岳までのアップダウンに苦しんで、立ち眩みも自覚され、足が止まる。貧血か、内蔵疾患か、熱中症か。

翌日は、一気に標準9時間の道のりを日本海に下ろうと意気込んだが、白鳥山までのアップダウンに、前日の症状が現れ、足が止まり、標準4時間のコースを6時間で白鳥小屋にて沈。

白鳥小屋から日本海までは、最終日、ほぼ下りの行程に助けられたが、登りに喘ぎ、休んで立ち上がると眩む症状は、海抜ゼロまで退かず、これからの山と人生に翳りか生じた=あの花園の夢に微睡みながらの絶命。

標高600mからの日本海は、優しい青さだった。木陰からそよ吹く風も優しかった。

一気に日本海に下り、波を浴びてのフィナーレとした。

ウェストン像は、北アルプスの末端だという親不知の断崖を静かに見守っていた。












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