かぜねこ花鳥風月館

出会いの花鳥風月を心の中にとじこめる日記

年金生活者の広瀬川と青葉山散歩

2019-07-10 10:29:06 | 日記

少し長いが、青空文庫に掲載されている宮沢賢治「注文の多い料理店」序文を掲載させていただく。


わたしたちは、氷砂糖をほしいくらいもたないでも、きれいにすきとおった風をたべ、桃ももいろのうつくしい朝の日光をのむことができます。  またわたくしは、はたけや森の中で、ひどいぼろぼろのきものが、いちばんすばらしいびろうどや羅紗らしゃや、宝石いりのきものに、かわっているのをたびたび見ました。  わたくしは、そういうきれいなたべものやきものをすきです。  これらのわたくしのおはなしは、みんな林や野はらや鉄道線路やらで、虹にじや月あかりからもらってきたのです。  ほんとうに、かしわばやしの青い夕方を、ひとりで通りかかったり、十一月の山の風のなかに、ふるえながら立ったりしますと、もうどうしてもこんな気がしてしかたないのです。ほんとうにもう、どうしてもこんなことがあるようでしかたないということを、わたくしはそのとおり書いたまでです。  ですから、これらのなかには、あなたのためになるところもあるでしょうし、ただそれっきりのところもあるでしょうが、わたくしには、そのみわけがよくつきません。なんのことだか、わけのわからないところもあるでしょうが、そんなところは、わたくしにもまた、わけがわからないのです。  けれども、わたくしは、これらのちいさなものがたりの幾いくきれかが、おしまい、あなたのすきとおったほんとうのたべものになることを、どんなにねがうかわかりません。
  大正十二年十二月二十日
宮沢賢治

底本:「注文の多い料理店」新潮文庫、新潮社    1990(平成2)年5月25日発行    1997(平成9)年5月10日17刷 初出:「イーハトヴ童話 注文の多い料理店」盛岡市杜陵出版部・東京光原社    1924(大正13)年12月1日 入力:土屋隆 校正:noriko saito 2005年1月26日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。

国政選挙運動の真っただ中である。最大の争点は、将来の年金不安だとか。マスコミは、(選挙妨害にならない範囲で)連日、年金に関する報道を取り上げており、昨日は、A社が国民年金だけで暮らしている高齢者を紹介していた。夫婦で月当り12万円の生活。

国民年金は、20歳から60歳まで全国民が加入義務となっており、サラリーマンとその専業主婦は国民年金に入ったこととされ、別途厚生年金保険に加入し、保険料を事業主と折半で負担することにより、定年後国民年金分に加えて厚生年金を受け取り、A財務大臣が受け取りを拒否した金融庁の報告書にあるような平均的な厚生年金受給者は夫婦で平均月当たり19万円ちょっとと国民年金のみより大幅に多い。報告書では、平均的夫婦はその他の収入併せて21万円の収入があるというが、それでも毎月5万円が赤字とか。

そのような平均的日本人の生活費と比較し、国民年金のみ生活者の月12万円とは何たる低廉なのだろう。実は、「国民年金加入者は経営者や農漁民、自由業などを職業とするヒトたちであり、定年はないのだから、少ない年金でも死ぬまで収入があり続けるのだから文句はないでしょ」というのが、もともとのお国の考え方。

ところが、非正規と言われ零細個人企業などに雇われ続けた人々で厚生年金加入履歴がなかったりするヒトや、経営者でも体の老齢化や、もうからなくて商売をやめたヒトは、国民年金だけの生活に陥り、生活保護費とあまり変わらない生活を余儀なくされる。報道された月12万円の年金生活者は65歳で電気店を閉めたものとか。零細企業者には、貯蓄どころではなかったヒトビトも数多くいよう。65歳の夫婦は、市営アパート月2万円とか。資産も作れなかった個人経営者は多いのだろう。この国の実態なのであるが、年金の制度設計をしたお国のヒトは65歳でリタイアする経営者など予想していなかったようだ。予想していた役人でも、経営者=金持ちのイメージをもって制度設計したのかもしれない。失敗だった。

報道では、金融庁の平均的夫婦の「交通通信費」と「娯楽教養費」が5万円以上であるのに対し国民年金夫婦は1万にも満たない。どこにも行けないし、何もやれないという、ただ食べて寝るだけという数字なのだが、アンケートでは、娯楽は何かととの問いに、金のかからない「散歩」をしているのだという答えが一番多いとか。

どうりで、というか、オイラも仙台にいるときは、毎日のように広瀬川河畔や青葉山をカメラ担いで歩いているが、日中行きかう人は、年金生活者と思しき高齢者ばかりである。あの報道以来、すれ違う人々が国民年金生活者に見えてくるから「印象操作」というのは怖い。

だが、待てよ、毎日が近所の散歩だけだって、ランニングだけだって、毎日同じ舞台というのはなく、賢治の語るように、風や陽の光を受けた森や林といった森羅や鉄道線路のような万象をも「深く」味わうことによって、宝石やすきとおった真の食べ物を手にすることができる、言い方を替えれば、山川草木悉皆成仏=アニミズムの境地に達することによって幸福になれるじゃないか。

別途、今後の生活不安解消に選挙という武器で声を上げることにしても、今ある生き方を転換していけば、新たな光明というものが射してくるのかもしれない。

かくいうオイラは金融庁的平均的年金生活者に分類されるのではあるが、趣味のカメラは壊れる、防湿庫は壊れる、住まいは老朽化と汚れが激しく、酒は抜けず、旅の中毒は増すばかりで、実質収入は、国民年金派に近いとも言え、不安なのである。・・・・・ゆくゆくは、狂信的なアニミズム教に帰依するしかあるまい。

今は、その修行中でござんす。


心配していたが。広瀬川に今もカジカガエルが鳴いているのを確認した。今日は、青葉山でホトトギスにどっぷり漬かったし、たしかにニイニイゼミの声も聴いた。もう少し暑くなるといよいよ大好きなセミの季節がやってくる。広瀬川の魚止の堰堤にはサギやカモメ、カワウやゴイサギがいつもやってきて遡上するアユやヨシノボリを美味しそうにほおばっている。食われたほうからしたら何が何だか分からんだろうが、多くの仲間は食われずに上流を目指しているのだろう。

G3xの動画機能が撮影

スマホで撮影、青葉山ムササビのヒノキの森でホトトギスを聴く

コメント