高知の「こにやん」がぼくが旅行中に知らせてくれた新聞記事です。大分県のことを聞くたびにぼくは高知県の大崎・前教育長のことを連想していました。やはり、そうだった。「僕の8年間に不正は絶対ありません」。大崎さんだからこそ言い切れることで、大崎さんだからこそ信じられる言葉です。
この春、職を辞するに当たり、届いた激励の言葉は数千に達したといいます。この国の闇の深さを暗示すると共に希望の在処(ありか)を力強く指し示す数字です。
大崎さんのような人はそうはいません。まして、「教育長」となれば期待するのが無理かも知れません。しかし、人はどういきればよいのか、どんな人生が楽しく豊かな人生かを教えてくれる貴重な指導者です。僕はまだその謦咳に接したことはありませんが、このような方を知り得たことはとてもとても嬉しいことです。この方のお陰で「こにやん」とも知り合いになれたのです。
嬉しい気持ち、誇らしい気持ちでいっぱいになったので、皆さんにも紹介します。
支局長からの手紙:飛べ、たんぽぽの種 /毎日新聞高知版 8月4日
「僕の8年間に不正は絶対ありません」
大分県教委の教員採用を巡る汚職事件を機に、全国の教育界が揺れています。県教委でも県議に依頼され、元教育長ら元幹部9人が採用試験の合否を個別通知していました。「受験者本人も知った上での要請なら、そのような人間は採用できない」。ある市町村長の依頼を突っぱねたのが、今年3月まで県教育長を8年勤めた大崎博澄さん(63)=高知市桜馬場=です。働きながら夜学に通い、県に入庁後も大学の通信課程で学んだ苦労人です。
就任直後のことです。「不登校は放っておけない」。幹部の反対を押し切って、当事者の親子に会いました。教育長が直に相談を受けるのは前代未聞です。結局、登校にはつながりませんでしたが、一生懸命耳を傾けたことで、「自分を責めることをやめ、生きる道を見つけたようです」。8年後の今も交流は続いています。
相談は次から次へと押し寄せました。退職時にも未解決のままの問題があり、「辞めたから知りませんとはいきません」。引き続き相談を受け付ける「たんぽぽ教育研究所」(090・7626・3543)を開設しました。無償です。まだ建物さえありません。
弱者に目を配る姿勢は体験に基づいています。子どもが保育園から高校までいじめられ、不登校、引きこもり、高校中退に追い込まれました。「20年ほど前は相談窓口がなく、親子で完全に孤立しました」。だからこそ、今、時間をかけて聞くことを心がけます。難しい問題が多く、解決できないこともあります。「教育は水戸黄門のようにはいきません。まずは孤立感を取り除くことです。一人じゃないんだと気づくと、気持ちが楽になります。お母さんがそうなれば、子どもにも伝わります」
知事の交代などを機に、07年12月に辞表を出しましたが、知事に慰留されます。議会との関係も厳しくなり、年明け以降、苦境に立たされます。そんな時、自身、びっくりすることが起こります。「辞めないで」「本当にお世話になりました」。手紙、メール、電話、面談……声援が次々と届いたのです。これまで相談に応じた保護者や先生、一般県民らからでした。「誠実な努力は無駄にはならないのですね。自分のやってきたことに自信が持てました」。激励の数は何千にも及びました。
取材は大崎さんが監事(監査役)を務める高知大で行いました。私が個別の相談事例を具体的に尋ねようとすると、穏やかな口調で「本人が読んで傷つくことがあってはいけません」。いじめと不登校問題がライフワークです。今はたった一人の活動ですが、仲間を増やすべくたんぽぽの綿毛は飛んでいきます。【高知支局長・大澤重人】
大崎さんからの挨拶状 http://blog.goo.ne.jp/keisukelap/d/20080604
この春、職を辞するに当たり、届いた激励の言葉は数千に達したといいます。この国の闇の深さを暗示すると共に希望の在処(ありか)を力強く指し示す数字です。
大崎さんのような人はそうはいません。まして、「教育長」となれば期待するのが無理かも知れません。しかし、人はどういきればよいのか、どんな人生が楽しく豊かな人生かを教えてくれる貴重な指導者です。僕はまだその謦咳に接したことはありませんが、このような方を知り得たことはとてもとても嬉しいことです。この方のお陰で「こにやん」とも知り合いになれたのです。
嬉しい気持ち、誇らしい気持ちでいっぱいになったので、皆さんにも紹介します。
支局長からの手紙:飛べ、たんぽぽの種 /毎日新聞高知版 8月4日
「僕の8年間に不正は絶対ありません」
大分県教委の教員採用を巡る汚職事件を機に、全国の教育界が揺れています。県教委でも県議に依頼され、元教育長ら元幹部9人が採用試験の合否を個別通知していました。「受験者本人も知った上での要請なら、そのような人間は採用できない」。ある市町村長の依頼を突っぱねたのが、今年3月まで県教育長を8年勤めた大崎博澄さん(63)=高知市桜馬場=です。働きながら夜学に通い、県に入庁後も大学の通信課程で学んだ苦労人です。
就任直後のことです。「不登校は放っておけない」。幹部の反対を押し切って、当事者の親子に会いました。教育長が直に相談を受けるのは前代未聞です。結局、登校にはつながりませんでしたが、一生懸命耳を傾けたことで、「自分を責めることをやめ、生きる道を見つけたようです」。8年後の今も交流は続いています。
相談は次から次へと押し寄せました。退職時にも未解決のままの問題があり、「辞めたから知りませんとはいきません」。引き続き相談を受け付ける「たんぽぽ教育研究所」(090・7626・3543)を開設しました。無償です。まだ建物さえありません。
弱者に目を配る姿勢は体験に基づいています。子どもが保育園から高校までいじめられ、不登校、引きこもり、高校中退に追い込まれました。「20年ほど前は相談窓口がなく、親子で完全に孤立しました」。だからこそ、今、時間をかけて聞くことを心がけます。難しい問題が多く、解決できないこともあります。「教育は水戸黄門のようにはいきません。まずは孤立感を取り除くことです。一人じゃないんだと気づくと、気持ちが楽になります。お母さんがそうなれば、子どもにも伝わります」
知事の交代などを機に、07年12月に辞表を出しましたが、知事に慰留されます。議会との関係も厳しくなり、年明け以降、苦境に立たされます。そんな時、自身、びっくりすることが起こります。「辞めないで」「本当にお世話になりました」。手紙、メール、電話、面談……声援が次々と届いたのです。これまで相談に応じた保護者や先生、一般県民らからでした。「誠実な努力は無駄にはならないのですね。自分のやってきたことに自信が持てました」。激励の数は何千にも及びました。
取材は大崎さんが監事(監査役)を務める高知大で行いました。私が個別の相談事例を具体的に尋ねようとすると、穏やかな口調で「本人が読んで傷つくことがあってはいけません」。いじめと不登校問題がライフワークです。今はたった一人の活動ですが、仲間を増やすべくたんぽぽの綿毛は飛んでいきます。【高知支局長・大澤重人】
大崎さんからの挨拶状 http://blog.goo.ne.jp/keisukelap/d/20080604