私が20代だった頃、JR東海の
CMで良いミニドラマ物があっ
た。
若い男女の遠距離恋愛で年末
に東京駅で再会するシーンを
描いたものだった。
出演している女優さんたちは、
全員まだ売れていない新人だ
った。
この爆発的人気のCMの影響で、
12月は山下達郎の曲、という
空気ができた。
しかし、それは東日本だけの
ことだったのかも知れない。
なぜならば、大阪以西にその
10年後に転住してみて驚いた
からだ。
このCMは放送されていない。
JR東海が存在しないのだから、
当たり前といえばそうなのだ
が、このCMの存在を知らない
人たちしかいない。話しても
何それ?と言われるのがオチ
なのだ。
うわあ、現実はこうなんだな
あ、と感じた。
このJR東海のCMは関東東京-
関西大阪間の地区でしか放
送されていなかったのだ。
89年牧瀬里穂の編が私は好き
だ。
まだ10代の牧瀬里穂がとても
可愛い。
実はこれは名古屋駅。柱はセット。
こうした物語は絵空事ではなく、
東京ではごく普通に現実世界の
中で起きていた。いや、ほんと
に。
嘘かと思ったら、って今更試せ
ないが、週末の東京駅のホーム
に立つとすぐわかる。
ホームのあちこちで涙と笑顔
の若者たちがピュアな時間の
中にいることが見られた。
この秀逸なJR東海のCMは、決
して荒唐無稽な作り物ではなく、
現実に世の中で起きていた物語
だったのだ。
まだ携帯電話も普及せず、イ
ンターネットも地球上に存在
していない時代。
人はそれでも今よりも濃密に
繋がっていた。心が。
お手軽さは、人の関係性の希
薄さを生む。
そして、上っ面だけの人付き
合いが人の世に蔓延する。
人は人の大切な何かを忘れて
しまう。