クリームソーダ/ピンクドラゴン
の故山崎眞行さんの残した名言が
ある。
・流行を着るほどダサい
・クリームソーダにトレンドは禁句だ
革ジャンについては、その実用的
な位置での発生から連綿とした定
式がある。
革ジャンの着こなし方にトレンド
はない。
むしろそんなことをする事自体が
ダサダサになる。ミリベレと同じ
なのだ。
革ジャンの着こなしは、トレンド
ではなくトラッドなのである。
革ジャンはゆったりとザックリと
着る。
それが革ジャンの「決め」だ。
ぴっちぴちパッツパツの革ジャン
ほど格好悪いものはない。つまり
ダサい。
最近のネット広告などでは、ダサ
すぎる「分かっていない」モデル
が腹パンパンの様子で革ジャンを
来て「おしゃれでスタイリッシュ
な」などとコピーがつく。
笑わせないでくれ。
革ジャンには流行りは無い。トレ
ンディではない盤石の定番がある
のだ。
革ジャンはこうやって着るのである。
革ジャンはゆったりとザックリ
と着るのである。
ヘソだし短モノやパッツパツや
肩キツキツで身動きできないよ
うな着方はしないのだ。
これはサイズの問題だけでなく、
着こなしと身のこなしも併せて。
とりあえず、ダサ坊にならない
第一歩は、動きが阻害される型
紙の革ジャンは着ない事だ。
緩みと締まりの緩急こそが革
ジャンのカットデザインと着
こなしのキモなのである。
上掲写真から共通項を見つけて
ほしい。小林旭にしろジミーに
しろマックイーンにしろビート
ルズにしろ、肩が落ちる程の
ゆったり目を着ている。
それを不細工に見せないように
着こなしている。
これは革ジャンの発生が、航空
防寒軍服であったことに由来し
ている。
そして、その革ジャンは、飛行
機乗りのウエアが化学素材に変
更される頃に二輪乗りたちによ
って継承された。
二輪でも上半身の動きを妨げる
キツキツなどを着たらマシンの
操縦は不能になる。
ゆえに肩には余裕を持たせてい
ながら、腰元は締まるような
カットのレザーウエアとして存
在してきたのが革ジャンなのだ。
それをピチピチにして着るなど
というのは、革ジャンの何たる
かを解っていない。
革ジャンは水着じゃないんだから。
最近のネット等の広告を見て、
「今はこれが若者にはウケるか
ら、これを批判するのは感性
が古い」と考えるとしたら、
それこそまるで革ジャンの事
を解っていない。
革ジャンはミリタリーベレーと
同じく、不動の定番があるので
ある。
それの連綿と存在する革ジャン
の定理が見えないまま語るとし
たら、それはダサい。
流行とか一過性のもので価値観
が変わる視点でしか革ジャンを
見られていない時点で革ジャン
への理解はほぼ不能になる。
「どんなのでもその人なりに自
由ではないか」などというのは
自由のはき違えだ。
ミリタリーベレーではそんなこ
とは通用しない。「俺式」など
は入り込む余地はないのだ。
革ジャンも然りなのである。
しかし、そのガチガチの不動の
定番の中で自分なりの個性を工
夫して出す。
これはある種、武士の「決まり
の中の装束」という領域の中に
ありながら武士たちがさりげな
く工夫して個性を出す粋さを
発揮した事にも通じる。
そこにこそファッションの妙、
個性発揮の真髄がある。
このことが解らないと、ファッ
ションには暗いといえる。
いくら口先だけで「ファッショ
ナブル」や「お洒落な」とか
「トレンド」を唱えても、それ
は内実空っぽのダサダサでしか
ないのだ。
被服の世界は深い。