学生の時、よく行っていた居酒屋のマス
ターから夏の忙しい時に手伝ってくれと
頼まれて、馴染みの店だったが客から店
のもんに転じてバイトをしたことがある。
もう、とんでもない客数だった。
その時、生まれて初めて業務用のビール
サーバーで生ビールを注ぐ事を習った。
まだスーパードライなどは世に登場して
いない生ビール戦争の頃だ。
最初は泡ばかりで、てんであかんやつやっ
た。教わりながら何度も練習して、最良の
泡状態と注ぎ仕込みを会得して、接客でき
るようになった。
ただ泡を載せて注ぐだけならさして難しく
はない。「最良」でないと、その店では
叱られた。
店は大繁盛でてんてこ舞いだったが、私が
注ぐビールはおいしく提供できていただろ
うか。
でも、焼酎が台頭して来た頃で、一番店で
出たのは、当時人気が沸騰していたチュー
ハイという飲み物だった。サワーなどと
いう小洒落た名称は無い。チューハイだ。
その店のマスターはおもろい人で、いつも
酔っている感じだったが、元学生運動の
闘士だった事は俺だけが知っていた。
年は俺の12上だった。
マスターのそうした事は彼女であるママ
さんも知らない。
よく店を閉めてからマスターと二人で焼
肉屋に行った。カルビクッパの本当のウマ
さをその頃教えてもらった。
夏が過ぎて、私のほうの活動もまた忙しく
なり、店を離れた。
ビールサーバーからの生ビールはなんで
あんなにウマいのだろうと思う。
ここ最近では、二輪乗りの相方と久しぶり
に焼き鳥食おうぜとなり、10数年ぶりに
行った店で飲んだビールが、まるでスキー
場で飲むビールのように衝撃的にウマかっ
た。
ビールの新鮮さと、炭酸の具合と、ママ
さんの注ぎ具合が絶妙な味を出したのだ
ろう。
あのウマさは1988年の北海道のスキー場
以来だった。
今は、家庭用ビールサーバーも普及して
いるらしい。
野外では缶ビールを缶ごと飲むのが定番
ではあるが、やはり、ビールは鮮度と注ぎ
方が命、という面は確かにある。
注ぐ人間によって味が変わってしまう酒、
ビール。面白いね。
よく、お酒飲まない人は、ビールを注がれ
る時にグラスを傾ける人がいるが、あれは
コップでやってはダメ。
理由?
それは飲めば解る。
飲めば知り 知らねば解らぬ 酒の道。(豊玉)
豊玉てのは、土方歳三さんの事ね。
トヨタマじゃないよ。