仲間内で漫画っぽく書きあうのなら良くありますが、似顔絵のプロに書いてもらったのは今までの人生で一度きりです。
祖父と初めて二人で出かけた時で(たぶんー)、まだ小学校に上がる前、5歳くらいでしたでしょうか。よくもまぁそんな頃のことを憶えているもんだと、我ながらも思いますが、・・・この時の事は結構強烈だったみたいで、記憶の断片としてグッサリと残っています(笑)。
地方の方は馴染みがないと思いますが、上野駅徒歩30秒くらいの、上野公園に上がる階段には似顔絵を書いてくれる「路上プロの」おじさん達がいるんです。ちゃんと大学で絵の勉強した人とかもいるみたいですが、とにかく昔から名物なんですよ。なんたって、僕が書いてもらったくらいですから、少なくとも35年くらいは(笑)・・・いらっしゃいますねぇ。祖父とは、おそらく上野動物園にでも行ったのでしょうかね。この記憶は無いんですけどね(笑)。
祖父は、この階段で思いついたように「似顔絵、描いておもらい」と言い、「お願いします」とおじさんに頼みました。僕は促されるままおじさんの前の小さな椅子に座りました。チラと横を見ると、テレビの中の有名人たちが。後ろを振り返ると、祖父は少し後ろでニコニコしながら、こちらを見て腕を組んで立っていました。この時の祖父の表情は、着ていた茶色い厚手の背広の柄まで一緒にとってもよく憶えています。
絵描きのおじさんは、誰もが子供に言うようなお世辞の引き出しからいくつかと(「かわいいね」か、そうでなければ「利発そうだ」と、んー・・・一般的にはこの二つで足りるかな?)、後はなにやら子供の気を引くような事を言いながら、チラチラと僕の顔と画用紙を交互に見ながら筆を進めます。
これね、「何度も何度も、間近で、すっごく丹念に、知らないおじさんに見られる」、っていう状況です(笑)。これだけでも、結構強烈ですよね(笑)。
待つこと、数十分。
「はい、出来ましたよー。」←おじさん。
「・・・。」←僕。
「・・・ん?わっはっは。よく書けているじゃないか」←祖父。
画用紙の中の子供は、正直な気持ちとして、とても・・・気色の悪い、不気味な子供でした(笑)。いや、そんなことは言いませんでしたよ、書いてくれたおじさんにだって、お金を出して頼んでくれた祖父にだって悪いじゃないですか。そのくらい、子供心にだって空気を読みますよ。ただ、「見たこともない色をした子供」が書かれていたのでビックリしたのを憶えています(笑)。
ほっぺたがやけにピンクだったのはともかく(子供の絵を描くときの、お決まりみたいなものなんでしょうね)、でもね、なんか、だってね、顔なのに、・・・肌色以外に、青とか緑とか紫とかが使われてて・・・。うーむ、なんだったんだ、あの絵は。単なるおじさんの失敗だったのか(笑)、あるいは僕は、・・・宇宙人か(笑)。祖父に絵心があったかどうかは、まったく知りません。もしかしたら、祖父なりに空気を読んだのかもしれません(笑)。
しかし漫画チックならともかく、ああいう似顔絵ってタッチが生々しいだけに、今思い出してもシュールな絵だったですよー(笑)。どこ行っちゃったかなぁ・・・まぁ、無くなっちゃったんだろうなぁ。万が一どこかから出てきたりしたら、絶対にお見せしますよ(笑)。
絵は、・・・中でも人物って難しいものだと思いますが、「似顔絵」って、また普通の絵とも違って、とっても特殊なものですよね。いつも見ている自分を、自分の為に書いてもらうわけですもんね。描くほうも、自分の「絵画的な作品」を描いてるのとは違うのでしょうから、色々と考えるんだろうなぁ、と思えますし。モノクロで、一枚2000円ほどから、カラーで3000円ほどから、という感じのようです。これを高いと思うか、安いと思うか、出来上がり次第でしょうが、それでも人の手で描いてもらうってのは、なんだか温もりがあるような気もしますし、めったにあることじゃないんで、記念にどうですか?
僕は・・・そうだなー、また頼むなら「あのう、宇宙人みたいには描かないで下さいね」・・・と一言、添えることにします。
「えっ!?そ、そりゃあ無理だよ・・・だって、あんたは・・・」って言われたりして(笑)。
ところで、この写真。何気なく撮ったもので、ウチに帰ってきて気づいたんですが・・・描いてもらってる人、・・・総理大臣じゃないですよねぇ(笑)?
まぁそうでなくとも(笑)、この方は、なんで今日、自分の似顔絵を書いてもらおうって思ったのかな・・・。
ではー。