ケン坊のこんな感じ。
キーボーディスト、川村ケンのブログです。




考えてみれば、不思議なものです。

好きになる、ってなんでしょう。

どういうことでしょう。

どうして、好きになって、どうしてたまらなくなるのでしょう。

 

モノを、音を、人を、好きになって、その先には、

手に入れられるならば、手に入れたい、と思う。

どうにかなるなら、どうにかしたい。してみたい。勿論、人は無理だとしても。

あ、でも、ある意味では無理ではないですよね、うん。まあ、でもこの場合はちょっと話が違うので、置いておきましょう。

 

さて、先日のブログでちょっと触れました、ミニモグマニアックスの奇蹟・・・あ、これは正式な呼び名ではありません。僕が勝手にミニモグマニアックスとアックスの奇蹟をかけたもので、利きミニモグの会、とか、ミニモググランプリ、とか、色々です。ただ、この日の段取りを決める際に頂いた厚見さんからのメールのタイトルにはミニモグManiacsとありましたが、メール本文には利きミニモグ大会、とありました。

えー、多分みなさんには”どうでもいいこと”だと思います。でしょ(笑)。

 

でも続けます。さて、厚見さんの影響で、ミニモグと書いておりますが、僕はまだミニムーグという呼び名がしっくりきてしまいます。実はこれはそもそもが間違いだったわけですが、それでも長年、そう呼んでおりましたし、雑誌でもレコードでも、インタビューでも、ずっと社会的に(←小さな社会かもですが(笑))”moog”は”ムーグ”だったわけで、このシンセはミニムーグとい刷り込みが強烈だったからです。

ただ、2002年、開発者のムーグ(Moog)博士が「実は私の名前は”ムーグ”ではなくて”モーグ”と呼ぶのです。なので、みなさんが”ムニムーグ”と呼んでいるマシンも、本当は”ミニモーグ”が正解なのですよ。よろしくねー。」とアナウンスしたのです。ミュージシャンの中には、すぐに”モーグ”と言い換えておられた方もいましたが、僕はなんだかすぐには馴染めず(笑)。でも、それ以来、楽器店、CD表記、キーボード雑誌などでも、カタカナ表記をする際には、ミニモーグ、と書いているはずです。

厚見さんも生前のモーグ博士との交流も持っておられましたし、今では”ミニモーグ”(よく”ミニモグ”と言っておられますが)と発音されています。なので、僕もいい加減に慣れなければいけないのですが、なかなか抜けられず。

えー、”どうでもいいんですけどー”な話ですよね、はい(笑)。

 

そして、好きになってしまったものは、欲しい、という話に戻りましょう。

 

僕も、このミニムーグの音が好きになってからというもの、欲しくて欲しくて、欲しくて欲しくて、欲しくて欲しくて、欲しくて欲しくて、欲しくて欲しくて、欲しくて欲しくて・・・(笑)、ずっとそう言っていたら、ついに、

「川村くん、僕のミニムーグ、買う?」と言ってくれた方がいたんです。その方は「シンフォニア・デッラ・ルーナ」「レダと白鳥」などの作品で有名だった夢幻という日本のプログレ・バンドのキーボーディストのHさんでした。当時、僕の在籍していたバンドがCDを録音する際にディレクターをしてくださったのがお知り合いになった縁でした。やはりHさん所有のPROPHET-5を貸していただいて、それでソロを弾いたのを、今、思い出しました(笑)。そして、そのHさんの家に行きまして、その場で即金で購入したのが(貯めていたお金をはたいたのと、さらに、このために結構な節約と特別シフトでアルバイトをしました)、今の僕のミニムーグです。ちょうど20年前くらいになると思います。

勿論、何故欲しかったかと言えば、もう、当たり前ですが、厚見さんが使っていたからです。厚見さんのミニムーグの音が、プレイが、あまりにもカッコよくて、本当に感心するほどカッコよくて、涙が出るほどカッコよくて。高校生の頃は、毎朝、厚見さんのミニムーグのソロの部分から曲が流れるようにVOWWOWのアルバムの入ったカセットテープをセットして、それで目を覚ましていた、というね(笑)。

願いは叶うもの。

1970年に発売され、11年間で12000台も作られた、当時のシンセではその画期的な小ささと軽さ(←今とは基準といいますか、感覚が違います。持ってみると、ミニムーグは結構重いですよ(笑))、そして何よりもその音の太さで爆発的ヒット商品となったミニムーグ(お値段は495000円。当時の大卒の初任給の三倍程度)のうち一台が、僕の元に来てくれたのです。シリアルNoは5455番。ピッチベンドのホイールがツルとした、いわゆる”ツルツルホイール”の初期型になります(後期型が”ギザギザホイール”になります。まぁ、基盤が交換されていたりするので、必ずしも中身の前期、後期とは一致しないんですけれども。ええ、基盤が違うと、音が違うのです)。

今回揃ったミニムーグのは4台(僕の以外の三台はギザギザホイール)、そして現代版ミニムーグとなります、Voyagerが一台(モーグ博士が開発した最後のmoogです。お値段、50~80万円ほど)、それとモーグのベース(低い音)専用モデル、Taurus(タウラス)が二台でした。このタウラスがまた、

 

・・・あ、いけない

 

いやー、今日は絶対にマニアックな話にはしないはずだったのに、この調子で書いてると、絶対にまずいことになる(笑)。

 

ので、あとは利きミニモグの様子を、お写真で、ささーっとご紹介しましょう

 

奥から厚見玲衣さんのご友人、Gさんのミニモグ(あのアックスの奇蹟で、厚見さんのミニモグの隣にセッティングされていたものです)、そしてスタジオを提供してくださった宇宙征服さんのキーボーディスト&ギタリストのTさんのミニモグ、一番手前が厚見さんのミニモグ、そして、今、まさに真剣な表情で厚見さんが検証してくださっているのが、僕のミニモグ。ああ・・・なんということでしょう。こんなこと、にわかに信じられますか。

撮影はエージさん。すっかり僕のカメラで撮ってくださることに慣れてくださっていて、この日も、厚見さんとお話していたら、側に置いていたD40をスーッと取って、いつの間にかこのような一枚を撮ってくださっていました。他の写真も、僕が写っているものは、基本的に全部エージさん撮影です。ありがとうございました。

 

詳しく解説して下さりながら、僕のミニモグをチェックしてくださる厚見さん。

高校生の時からずっと憧れのポスターの中の人が、あの武道館のステージの上にいた人が、今、目の前で、この人に憧れて買ったミニムーグを、弾いてくれているのですよ。

 

念入りに二台を弾き比べる厚見さん。

 

カタチだけでも真似しよう。

 

そして、

 

厚見さんと並んで、二人でチェック。

 

・・・あのですね、しつこいようですが、信じられますか

 

ちなみに当日は、このミニのパネルを立てる角度まで、色々検証しました。マニアックにもほどがあろうかと思いますが、僕たちはいたって真面目に、時に大笑いしながら、それをしておりました。楽しいの、なんのって、そりゃあもう

 

あ、お気づきですか

 

僕のミニに、厚見さんのサインをいただきました。

 

日付は・・・もう先日の写真と見比べるとおわかりになると思いますが(サインが無いので)、これはこの会合の持たれた1月15日に頂いたサインです。ちなみに一番手前のサインは大変珍しいもので、その横の現在のサインになる前の貴重なものだそうです。わぁい

でね、僕が「日付も入れてください」とお願いすると、厚見さんが「日付か・・・うん。じゃあさ、この日付にしよう」と仰って書いてくれたのです。

 

そうです。そこに書かれたのは、

 

多分、僕を含めた多くの人が20年間待ち続けた”奇蹟”の日付。

 

そして、書き添えてくださった言葉は”To be a Rock Not to Roll”。

 

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さてさて、このミニモグマニアックスの結果は結局どうだったのかと申しますと、

これはですね、Tさんこと、エレカフェさんのmixiの日記にとても詳しく(面白く(笑))書かれております。mixiをご覧になれる方は、是非とも。エレカフェさん独特の視点で語られるこのレポ、本当に大笑いしながら読ませていただきました。

近くエージさんも、やはりこの日のレポを書かれるとのこと。楽しみです

 

右から厚見さん、エージさん、Tさんことエレカフェさん、シャッターを押して走って戻ったのにイマイチ間に合わずぶれてしまった人です。おなか出てるし(笑)。

写っていませんが、足元、僕と厚見さんは、Moog Taurusの鍵盤を弾いています。もちろん、手はMinimoogを弾いています。

画面向かって右端のスタンドの上段にはモーグ博士の最後の置き土産でありますVoyagerが、そして、厚見さんが弾かれているのがエレカフェさんのミニ、僕が弾いている(触っているだけ?(笑))のがGさんのミニ、その後ろのエレカフェさんの下が僕のミニ、その横のエージさんの下が厚見さんのミニとなっております。

 

 

で、エレカフェさんの日記を読んでいただくとわかるのですが、僕のミニ、ちょっと調整に出すことに。そして、さらに良くなるために(=厚見さんのに近づけるために)、改造もしていただくことにしました。

 

日本で、いや、世界でも、ミニをちゃんと修理できる人は、もうそう多くはありません。古い楽器ですから。まして、改造となると、音が変ってしまう恐れなどもあるので、簡単には選べないのです。美容整形と同じ、と、までは言いませんが、やはり相当にお医者さん選びには慎重にならざるをえません(この日の会合でもその件でかなり話し合いになりました)。

そして、今回僕は、Hさんという、エレカフェさんいわく”仙人”にお願いすることにしたのです。僕のミニも二回ほどメンテナンスしていただいて、そのたびに好調になっているのと、厚見さんのJUPITER-8も手がけられたということで、今回も。

奇しくも、厚見さんのミニも昨日から長期入院。こちらは、主に海外で活躍されている、世界中のムーグ使いの絶対の信頼を集める、いわば”神”のもとへ。

ちなみに厚見さんとまったく同じ音は、あのミニでないと絶対に出ない、ということがわかりました。元々ミニは個体差が凄い楽器なのですが、それにしても厚見さんのはあまりにも違う。先日の会合でも『うわー、なぜ厚見さんのはこんなに中近東っぽい音がするんだろう』と大騒ぎだったのです。そこで、厚見さんが”神”に訊いてくださって、そこでようやく、厚見さんにとても数十年来の謎が解けたのです。判明。どうやら厚見さんのミニは、世界に一台だけの”独自の”チューニングがされているのです。しかも、新品の段階で(厚見さんは完全に新品を購入されています)、モーグの工場のエンジニアの手によって、・・・言ってみれば”勝手にされたチューニング”だったようなのです。この事実は、昨日、厚見さんがお電話で教えてくださいました。

それゆえか、厚見さんのミニモグにはなんと、「シリアル番号が無い」のです。そんなミニは基本的には存在しません。本当は売るつもりじゃなくて、ちょっとした出来心でやってみたお試しチューニングだったのかもしれません。しかし、そのムーグがどういうわけか、世界一のプレーヤーの手に渡り、世界中でプレイされ、世界一のムーグの音色として、日の目を浴びたです。このムーグを作ったエンジニアさんは、今でもそんなチューニングをしたこと、覚えているのかな。自分が大変なことをしたこと、自覚してるのかな。

 

真っ白な頭と髭を蓄えた”仙人”は、まったくもって普通の、古いマンションの一室にお住まいです。ただし、ひとたびこの扉を開けると、そこはヴィンテージシンセの山、山、山(つまり宝の山(笑))。ギリギリで歩ける隙間と、作業をする机以外は、天井までシンセの山なのです。

 

厚見さんが『もし”仙人”でだめなら、僕のが直ったら、その後にでも(”神”に)出してご覧よ。頼んであげるから』と言って下さいました。・・・うぅ、ありがたいです

『ただし、法外な値段取るけどね』・・・なるほど、”神”とは・・・”ブラックジャック”だったのですね(笑)。

 

ではー。



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