第二回目の校正紙が出来上がったとのこと。
「すぐに送りますから!」と言うので、
「いいよいいよ、取りに行くよ」と、クルマを走らせることにしました。
送ってもらったのでは、明日になってしまう。それだけ、校正する時間が削られてしまうし、何かあったときに、後ろに時間が無いのは怖いものです。
編集氏は今日は休日を返上しての出勤。
彼の頑張りに対してのリスペクトの意味も、勿論あったのですが、
僕にしても、実はその往復の時間を使って、ちょっとゆっくりCDを聴きたかったのです。こういうバタバタしている時期は、家にいると、何かとすることがあって(色々と気になることが出てきてしまって)なかなかゆっくりスピーカーの前に座ってはいられないのですが、クルマとなれば、これは強制的に耳以外は全て運転に使わなくてはなりません。
以前にも書きましたが、クルマは格好のリスニング空間でもあるのです。
今日は、勿論、といいますか、こちらの「月の光」、そして「惑星」の二枚を持ち出しました。
「月の光」は、冨田勲さんのシンセサイザーを使ったものとしては、デビュー作品にあたります。1974年リリース。
当時の日本のレコード会社は、このアルバムを「クラシックでもないし、ポピュラーでもないから」という理由で、発売を請け負わず、冨田さんと契約を結ばなかったのだそうです。そして、冨田さんはこれをアメリカのRCAレコードに持ち込み、そこでリリースされのたのですが(なので、日本には逆輸入のかたちとなった)、これがビルボード・チャートで第2位にランキングされ、グラミー賞の4部門にノミネートされ、36年たった今でも売れ続けるモンスターアルバムとなったのです(・・・この事実を、アルバムの契約をしなかったレコード会社の人は、どういう思いで見ていることでしょう)。14ヶ月という時間をかけて、たった一人で、説明書もないモーグ・シンセサイザーを研究し、その髄までを駆使して作り上げた前人未到のアルバム、「月の光」。
「36年前もにリリースされたアルバムか。じゃあずいぶん昔の音なんだろうね」、などと変な先入観を抱こうが抱くまいが、聴かれたら、もう一発ですよ。スピーカーからは、はるか未来の音が流れ出します。2010年の今、まだ、僕たちは誰も36年前の冨田サウンドの世界に追いついていないことが、ものの30秒でわかると思います。本当に凄い、そして優しい音世界です。ちなみに、帯の紹介文はモーグ博士が書かれています。
そして、「惑星」。有名な「火星 MARS」「木星 JUPITER」などを含む、言わずと知れたホルストの名作を、やはり冨田さんがお一人でシンセサイザーで編曲、演奏されたものです。もしもホルストの時代にシンセサイザーがあったなら、きっとホルストは「惑星」をこのように作りたかったに違いない、とまで言われている、歴史的な作品です。
おいおいー、せっかくの素晴らしい音なんだから、クルマの中でなんか聴いちゃダメだよ、と一部のファンの方には怒られるかもしれませんが(←思っているよりもクルマの中って騒音が凄いのものなのです。エンジンの回転とロード・ノイズで、低い音がブーンってずっと鳴ってますし。・・・あ、ハイブリッド車なら違うのかなー)、
でもね、ドライブがこんなにも心地よくなる音楽って、そうそうありませんよ。
盛り上がる、とか、楽しくなる、とかじゃなくて、
”心地よくなる”んですよ。
本当に。素敵な時間を過ごさせていただきました。月の光を浴びながらの惑星旅行を楽しませていただきました。
そしてね、帰ってきてパソコンを点けてメールチェックをすると、送信者のところに「Isao Tomita」の文字のあるメールが。もう、どうしましょう。
・・・僕が昨日の記事に貼りましたYouTubeの映像を観てくださったそうで、それについて、当時の詳しい解説を書いてくださっておりました。そして「よく(この映像を)見つけましたね」とも。
いやはや、恐縮です。本当に。僕はただただ、アップしてくださった方に感謝するばかり。
もう、色々とお伝えしたいこともあるのですが、校正をしなければなので、また改めましてです。
そうそう、昨日の記事を読んでくれた先輩キーボーディストのTさんが、夜中に慌てた様子でメールをくれました。
「なんだって!世界の冨田さんからメールが来ただって!?」
「凄いね!あの冨田勲さんが、今、川村くんのことを知ってくれたんだぞ!」
と興奮した様子で、メールが綴られておりました。でも、特にキーボーディストなら、それがどのくらい大変なことか、本当にわかりますものね。Tさんがビックリされたお気持ちは、100%わかるのです。僕だって、そう思いますから。
そして、最後にこう書かれておりました。
「・・・もしかして川村君、これで一生分の運を使い果たしたんじゃないか(笑)?」
・・・あ、いやー。それは(笑)。
そのくらいの事なのは承知しておりますが、できたら、まだそうでないことを、祈っております。
でもね、
・・・やっぱり厚見さんなんですよ、全てのきっかけは。
厚見さんが、僕に送ってくださったメールで「世界のトミタさんが博士から本当はモーグっ て発音して欲しい、と頼まれて」と書いてくださって、僕はたまたまそれをこちらに転載させていただいて。
そして、それがKKさんに繋がって。
たまたたあの記事を見たKKさんが、「あ、先生の名前が出てる。先生にメールしてみよう」と思ったのがきっかけですものね。
もしもあの日、厚見さんが「世界のトミタさんが」という一文を書かれなかったら。
そして、KKさんが、あの日僕のブログを見ずに、例えば二週間くらいして見たとしたら、果たしてあの記事に、あの厚見さんの一文に気づいたでしょうか。
すごいですよね。
神奈川県東部の川村さん、今から世界の冨田さんにお礼のメールを書かせていただきまして(←緊張しますなぁ)、そして、いよいよ校正作業に突入させていただきます。
なんだか今夜は、とてもはかどりそうな気がします。
ではー。