【宝物殿改修のため奈良県立万葉文化館に移して公開中】
鎌倉時代に源頼朝が寄進したといわれる春日大社所蔵の「鼉太鼓(だだいこ)」(重要文化財)の複製1対が、奈良県立万葉文化館(明日香村)で公開されている。春日大社の式年造替に伴い宝物殿の改修工事が始まるため、同文化館の展望ロビーに移されたもの。以前「春日若宮おん祭」の御旅所で遠くから拝見したことはあったが、今回間近で目にして、その巨大さと煌びやかさに改めて驚かされた。
鼉太鼓は舞楽演奏に用いる楽器の一種。その形から火焔太鼓とも呼ばれる。春日大社のものは高さが6.5mもあり、大阪・四天王寺所蔵のものに並ぶ大きさという。頼朝寄進という伝承があり、約40年前までおん祭で使われていたが、傷みが激しいため1976年に数年がかりで複製、本来の極彩色を取り戻した。万葉文化館には昨年12月のおん祭終了直後に4㌧トラック4台で運び込まれた。
桶造りの胴の両側に牛革製の鼓面が取り付けられ、その周りは陰陽思想に基づいて左方(陽)に龍、右方(陰)に鳳凰が彫刻されている。鼓面の模様も左方が三つ巴なのに対し右方は二つ巴。合計4面の鼓面にはそれぞれ大きな牛の革が1頭分ずつ使われたそうだ。本来ならそれぞれの火焔模様の上部に金色銀色の太陽をかたどったような飾りが載るが、スペースの関係で台座の下に収納されているという。
春日大社の式年造替は20年に1度。第60次に当たる今回は今年3月27日に仮殿遷座祭、来年11月6日に天皇のお使いを迎えて本殿遷座祭が執り行われる。それに併せ宝物殿も改築するもので、改築後には1~2階の吹き抜け空間にこの鼉太鼓が収蔵展示される予定。万葉文化館が預かるのは来年6月末まで。このため、今年12月のおん祭ではここから鼉太鼓が御旅所まで運ばれ、また戻ってくることになる。(鼉太鼓の「鼉」はオオトカゲあるいはワニを意味するとか)