【五穀豊穣を願う御田植祭、砂かけが激しいほど豊作に】
廣瀬神社(奈良県河合町)で11日「砂かけ祭り」が行われた。「オンダ(御田)」とも呼ばれる御田植祭。田人(お百姓さん)や牛役が鋤やスコップで参拝者に向かって砂を激しく撒き散らす。参拝者も心得たもので、雨合羽やゴーグル、マスクなどで完全武装。負けじと砂を固めて投げつけていた。砂を雨になぞらえ、砂かけが激しいほど雨に恵まれ豊かな実りの秋を迎えることができるという。
同神社は多くの河川が合流して大和川となる奈良盆地の西部に位置する。砂かけ祭りは1300年前、天武天皇が水の神を祀って五穀豊穣を祈願するため始めた「大忌祭(おおいみのまつり)」が起源ともいわれる。祭りは午前中の「殿上(でんじょう)の儀」と午後の「庭上(ていじょう)の儀」の2部構成。「殿上の儀」は拝殿内で田人や早乙女が苗代作り、モミ撒き、田植えなどの所作を行い、最後に巫女が神楽を奉納。
「庭上の儀」は午後2時に始まった。拝殿前には四方に青竹を立て注連縄が張られた〝田んぼ〟。太鼓の合図で全身白尽くめの田人や木製の牛面を被った黒装束の牛役が登場。反時計回りに一周して田植えの所作が終わるやいなや、砂かけ合戦がスタートした。田人や牛が近づくと逃げる人、逆に追いかけて砂をぶつける人。境内のあちこちで田人や参拝客が入り乱れて激しい砂かけが繰り広げられた。テレビ局の女性アナウンサーは土砂降りの砂を浴びながらカメラに向かって絶叫していた。
5分ほどすると太鼓が鳴って第1ラウンドが終了。それが1時間半ほどにわたって10ラウンドも繰り広げられた。そのたびに境内は混沌とした無法状態に。これを奇祭と言わずしてなんと言えようか。最後に〝田んぼ〟が均され早乙女2人が田植えの所作を行って「庭上の儀」は無事終了。その後、境内中央に置かれたやぐらの上から御供撒きがあった。撒かれたのは松葉で作った「松苗」と薄い小さな四角形の「田餅」。松苗は厄除けのお守りに、田餅はこれを食べると1年を無病息災で過ごせるという。