く~にゃん雑記帳

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<フウラン(風蘭)> 芳香を放つ純白の可憐な花 別名「富貴蘭」

2015年07月05日 | 花の四季

【古典園芸植物、江戸後期の将軍家斉の時世に一大ブーム】

 日本から朝鮮半島、中国にかけて分布するラン科フウラン属の宿根草。着生ランの一種で、細い気根を出して樹木の幹や渓谷の岩場などに着生する。日本では関東南部から西日本、沖縄まで広く分布する。しかし、森林の伐採や園芸採集などによって自生種は急減、環境省のレッドリストには絶滅の危険が増大しているとして絶滅危惧Ⅱ類に分類されている。

 7月頃、葉腋(葉の付け根)から花柄を伸ばし純白の花を付ける。花弁は長さ1cmほどの線状。距(きょ)と呼ばれる管が後方に湾曲して長く垂れ下がる。「風蘭」の名はその可憐な花が微風にもそよぐことからか。花は芳香を放つ。代表的な古典園芸植物の1つで、「富貴蘭(フウキラン)」とも呼ばれる。文献での初出は江戸時代前期の1664年に発行された『花壇綱目』(水野勝元著)。その30年後、1694年発行の貝原益軒著『花譜』には「桂蘭(けいらん)、一名は風蘭。土なくして生ず……」などと紹介されている。

 江戸時代後期には文化・文政期(1804~30)を中心に一大ブームが巻き起こった。時の11代将軍徳川家斉が大のフウランマニアで、斑(ふ)入りなど珍しい品種の収集に余念がなかった。そのため大名たちは珍品探しのためお国の藩中にお触れまで出す始末。参勤交代の折、駕籠(かご)にフウランを吊るして江戸に向かう大名もいたそうだ。その結果、江戸城の庭に設けられた家斉自慢の〝風蘭棚〟には珍品・貴品が200種も並んでいたとか。1855年には『風蘭見立鏡』というフウラン番付表まで発行された。

 

 フウランを愛する人は今も多い。愛好家でつくる「日本富貴蘭会」は今年5月、東京で「美術品評全国大会」を開いた。今年で66回目。7月10~11日には東京・上野公園の上野グリーンクラブで「彩と香の富貴蘭展示即売会」も開く。奈良県五條市の登録有形文化財「藤岡家住宅・うちのの館」では1日から地元の愛好家が丹精込めて育てたフウランを展示中(写真)。新潟市食育・花育センターでも18~20日「彩りと香りの富貴蘭展」が開かれる。「風蘭や大木をめぐる白き蝶」(岡本癖三酔)。

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