【高山植物の女王、ウスバキチョウの幼虫の食草】
本州中部以北から北海道にかけて分布するケシ科の多年草。高山帯の砂礫地や岩の間など、他の植物が生息できそうにない厳しい環境下で、地中に長い根を張って群落をつくる。その可憐な姿から〝高山植物の女王〟と呼ばれている。
7~8月ごろ、高さ10cmほどの花茎の先に紅紫色の花を数個、下向きにつける。花の色はうすいものや白っぽいものも。白花はシロバナコマクサと呼ばれる。4弁花。外側2枚は袋状で先端が大きく反り返り、内側2枚は合着して突出する。花の長さは2cmほど。その形を面長な馬の顔に見立ててその名が付いた。(上の写真は愛知県のS・Eさん提供、御嶽山三の池で)
田中澄江著『花の百名山』はコマクサを白馬岳(長野)の代表的な花の1つとして挙げている。御嶽山(同)ではその花の汁で母の病気を治したという娘のお駒の伝説にちなんで「お駒草」と呼ばれる。霊薬「お百草」の原料として乱獲されて一時は絶滅寸前に。主な自生地は他に大雪山(北海道)、岩手山(岩手)、本白根山(群馬)、八ケ岳連峰硫黄岳(長野)など。11日には硫黄岳山荘で「駒草祭」、19日には群馬・万座温泉で「コマクサ祭り」が開かれた。
ただ秋田、福島、群馬、岩手、山形など東北地方を中心に自生地域の多くの県が絶滅危惧種としてリストアップしている。北海道でも準絶滅危惧種。大雪山にはここだけに生息するウスバキチョウ(薄羽黄蝶)というアゲハチョウ科の蝶がいる。別名キイロウスバアゲハ。国の天然記念物だ。この蝶にとってコマクサは幼虫の大切な食草。大雪山でコマクサが絶滅すると、この蝶も絶滅してしまう。「駒草や朝しばらくは尾根はれて」(望月たかし)。