子供のころ、隣のからリヤカーでやって来る小柄な婆ちゃん、前掛けの大きなポケットには布製の袋式財布が、肘まで手を突っ込んでお金の出し入れしている様子、今は時代劇で見ることもあるが。
昭和30年代半ば、自作の棚を備えた大型のリヤカーに積めるだけ積み、「八百屋でござい」と大声で繰り返しながらやってきたSさん、背は高からず、高からず、小太りした体型、坊主頭のおじさん、主婦たちの間で人気者だったよう。
Sさん、年子で4人の子供を育てながらの商売ともなれば、意気込みも並ではなく、奥さんも自宅の店番と子育てに懸命、一緒に生活している爺ちゃんの背中には、いつも孫が張りつけられている。
一時期は、4年続いての入学式と卒業式、4人の授業参観、運動会、遠足などの学校行事は大変だった話を楽しそうに語っていたが、この子供たちも40代になるだろうが。
平成元年に今の地に住んでから、爺ちゃんが運転する軽トラックに乗って自家製の野菜を売りにきた婆ちゃん、最近は姿を見せないが、夫婦喧嘩で婆ちゃんを置き去りにして帰ってしまう爺ちゃん、一人歩いて家に戻る婆ちゃんの姿を幾度か見る。