昭和40年代は農家の嫁不足が叫ばれた時代だった。先輩で仲人暦の豊かな高波さん(故人)を思いい出す。彼の頭の中は、年頃の男女の顔と名前が保存されたカタログのようだつた。
農繁期ともなれば食堂も閉店、冬は鉛色の空の日が続く豪雪地帯、赴任した職員の宿探しから子守の世話など、日常生活での相談役として重宝がられた田舎でも珍しい存在だった。
昨今は、仲人を知らない若者もいるが、縁あって爺は現役時代に頼まれ仲人ながら4組の縁結び役を体験した。今も盆暮れの挨拶のほか、折に触れ老夫婦に元気を運んで来てくれる。
恋愛結婚が殆どの御時世になって、結納、挙式・披露宴での謝礼などの費用、結婚後も盆暮れのご挨拶など、お付き合いが面倒な仲人を立てない結婚式が大勢になった。