バスクって一体どこ?って思ってる人のために、簡単に説明から入ります。地図にあるように、ピレネー山脈をはさんでスペイン北部とフランス南西部にバスク人という民族が住んでいる。現在のような国境ができるまではこのあたりをバスク国 Basque Country と呼んでいたので、今でも英語ではこう呼ばれる。バスク人の歴史は非常に古く、民族学・言語学的にも謎が多く、外見上は白人の容貌だが、血液型で比較してみると面白いことに、他のヨーロッパ人よりも圧倒的にO型が多くてB型が少ないそうだ。しかも全人類の85%がRHプラスなのに対して、バスク人の85%がRHマイナスだなんて、摩訶不思議だな。
ご想像通り彼らはスペイン人でもフランス人でもないというバスク人の誇りを持っているわけで、私がスペイン・バスクに到着したのはサッカーのヨーロッパ杯でスペインが優勝した数日後だったのに全くお祝いムードはなく、聞いてみたら「イタリア(対戦国)に勝ってほしかったよ」と答えが返ってきた。公用語はバスク語、街中はスペイン国旗ではなくバスク国旗がはためいている。スペイン自治州の中では最も豊かな地方で、一番大きな街ビルバオ Bilbao は鉄鋼の町として栄えていた。
さて、ロンドンから飛行機で2時間でバスクの玄関口、ビルバオに到着。一緒にバスクを旅するオランダ在住の友人のフライトが到着するまで1時間あったので、小さなバーでワインを飲んで待つことにした。リオハの美味しい白ワインが1.2ユーロ、今のレートだと115円!空港でこんな値段ってことは、町中はもっと安いんだろうか、ってワクワクしてきた。
私が初めてバスクを知ったのは、司馬遼太郎の街道をゆくシリーズの『南蛮のみち』を読んで。アメリカに住んでいると日本語の活字に飢えるから、貸してくれる本はなんでも読むわけで、司馬遼太郎は好きでもないんだけど、へ~こんな地方があるんだ~。へ~フランシスコ・ザビエルってバスク生まれなんだ~てな感じで。その後2006年頃から、住んでいたシアトルでバスク料理が流行りだし、スペイン料理とはまた違うバスク料理を食べる機会が増えていった。2012年にスペインでミシュランの三つ星を獲得した5軒のレストランのうち3軒がここにある、って言えば、どれだけ美食の土地か分るかな。だからここ数年、ず~っとバスクに行きたくて仕方なかったわけ。
バスクの話は書きだしたら長くなりそうなので(もうすでに長いけど)、ここいらでまずはピンチョス pintxo の写真を見てため息をついてください。ピンチョスとはパンのスライスに少量の食べ物をのせた軽食、かつては食材を串や楊枝で刺してとめていたのでバスク語で串という意味のピンチョ(ス)と呼ぶそう。今ではタパスの同義語として使われているが、パンがあるなしにかかわらず、cold pintxo、 hot pintxo とその定義に限界はなくなっているようだ。スペインでは生ハムの脚が当たり前に天井から吊るされているカフェバーが早朝はコーヒーショップ、以後はレストランとして夜遅くまでフル回転している。朝からコーヒーとクロワッサンだけでなく、こんなにピンチョスがカウンターに所狭しと並ぶんだよ!。ああ、目移りして困ったよ。胃袋が足りなかったわ~!