せっかくここまでやって来たんだから、フランス・バスクにも足を伸ばすことにした。高速バスでピレネー山脈を横切ること2時間、国境に近いサン・ジャン・ド・リュズ Sant Jean du Luz という海辺のリゾート町を選んで1泊した。当たり前だけどフランス語が飛び交い、私の場合、ああ世界はなんて狭いんだろ、ではなくて広いんだろ、って思ってしまう。窓枠が赤や緑色の、典型的なバスクの家々が並び、ビーチと平行して可愛いタウンセンター、商店街が続く。浜辺の遊具もフレンチっぽくてお洒落だなぁ。
この町には元祖マカロンで有名な、1660年創業の老舗パティスリー、メゾン・アダム Maison Adam の本店があることは下調べの時に知ったのだが、この夏日本でも流行しているジュート編みの靴、エスパドゥールの発祥地だとは知らなかった。
1足13ユーロぐらい、たくさん買うとどんどん安くなっていく。店の中はこのように圧巻。反対の壁には、ヒールのあるエスパドゥール・サンダルがびっしり。サンダルはもう少し値段がはったけど、その種類と色に迷い迷い一足買ってしまった。
マカロンは私達が知っている鮮やかな色じゃないし、サンドイッチ形でもない、アーモンドブードルが練り込んである素朴なクッキー。でもこれが噛めば噛むほどねちっとしていて味わい深くなる侮れない美味しさで、ロンドンの友達にお土産に買って帰ったら大人気になった。私もお洒落なマカロンよりもこっちの方が気に入った。
バスクのシンボルマークのついた伝統的なガトー・バスクには、中にカスタードのようなクリームが入ったクレメ creme と、チェリー・ジャムが入ったスりーズ cerise がある。
神戸に帰ってきた数日後に入ったカフェの今月のケーキがこのガトー・バスクだったので、思わず注文してしまった。本物よりはスポンジケーキっぽかったけど、私の中で既にずいぶんと遠くなったバスクがとっても懐かしかった。
町には屋内魚市場、マルシェがあるのだが、毎朝そのまわりにはありとあらゆる食材を売る露店が出て、一大マルシェと化す。おじさん達が可愛い買い物かごをぶら下げて吟味しているのもフランスっぽいのかな。バスクの名産で有名なのは、軒下につっている赤唐辛子、マグロ、イワシなど加工品、そしてチーズ。羊のミルクから作られるブレビチーズはとても複雑な味で、これに名産の黒さくらんぼのジャムをつけて食べたりする。国境など関係なくここでは生ハムやパエリャも名産の一つ。総菜屋のガラスケースの中は美味しそうなものばかり。でも、こんなにすぐ隣がスペインなのにコーヒーは美味しくなかったな。
手作りパテの店↑
左はバスク語、右はフランス語標記のチーズ店↑
2種類のバゲットを買い、つたないフランス語を駆使してそれぞれ縦にスライスしてもらい、、横にも半分に切ってもらい、露天で味見させてもらいながら一本にはパテ、もう一本にはブレビチーズ2種類をスライスしてもらってサンドイッチにし、大好きなオリーブや不思議な形のトマトも買って、ピクニック・ランチにしようと思ってスペインまで帰るバスに乗り込んだ。このマルシェ、正午を過ぎるとみんな店じまいをはじめ、1時過ぎには影も形もなくなって帰ってしまうのがびっくりだった。毎朝ご苦労様だ。
オリーブとドライトマトの店↑
左下も赤ピーマンじゃなくてトマト↑
国境の町でバスを下り、そこからスペイン側の古都オンダリビアに寄ってピクニックしようと思っていた。でも私も友人も昔とは違って他力本願になってしまって二人とも地図も持たずリサーチもしてなくて、そこにはバスも電車では行きようがなく、渡し船で往復しないといけないと分り、断念した。あいにく公共の交通機関、バスも電車も飲食禁止だったので、おなかを空かせたままスペインのサン・セバスチャンSan Sebastian という町まで電車で入り、駅前の広場のベンチでこのバゲット・サンドイッチをほおばった。食べ応えあったな~、トマトは思ったほど甘くなかったけど。1泊だけのフランスだったけど、どれだけスペインが恋しかったことか。スペイン・バスクの方が物価は安いし、ずっと人情深くて親切だと知っただけでも収穫だったかな。ちなみに、行きのビルバオからの高速バスは15ユーロほど、帰りはサン・セバスチャンまでバスと電車で8ユーロという安い隣国への旅だった。