リニューアル工事が行われている長浜城歴史博物館(長浜市公園町)
滋賀県長浜市公園町の長浜城歴史博物館が1983年の開館以来、初のリニューアル工事を行っている。長浜に城を築いて天下統一の足がかりとした羽柴(豊臣)秀吉と地元の関わりを紹介したコーナーを新しく独立させて設けるなど、展示内容を充実させたいとする。
同博物館は秀吉が築いた長浜城の跡にあり、展望台付きの模擬天守の建物は長浜観光の目玉の一つになっている。
リニューアルでは秀吉ファンの観光客に足を運んでもらおうと、3階に秀吉のコーナーを設ける。姉川合戦や賤ケ岳合戦など秀吉が居城していた間の出来事を絵巻物風にした年表を新たに作製するほか、築城の様子を再現したジオラマを2階から移設する。
このほか、2階に縦3メートル、幅5メートル、奥行き1・2メートルある最新の密封ケース1基を導入。ケース内は常時、温度20度、湿度60%に保つことができ、貴重な文化財を保存、展示できるようになるという。
リニューアルオープンは2月27日。太田浩司館長(54)は「長浜を訪れる観光客の多くは秀吉に興味がある。秀吉と長浜の関係を分かりやすく紹介したい」と意気込む。
白い天守がそびえる長浜城歴史博物館。長浜城は羽柴(豊臣)秀吉が1574年から4年かけて築城し、同時に城下町も築いたと伝わる。だが、1615年の大坂夏の陣で豊臣家が滅亡した後、長浜城は解体され、遺構の多くが彦根城に活用されたという。
長浜城の再興は市民の願いだった。民俗資料館建設構想で地元出身の実業家が「城型の建物にして」と寄付したのをきっかけに建設の機運が高まった。総事業費10億3700万円のうち約4億3千万円が寄付でまかなわれて着工、開館に至った。
近世の犬山城(愛知県)や丸岡城(福井県)を参考にした模擬天守は、黒壁スクエアなどとともに長浜の観光スポットになっており、今も年間14万人が訪れる。市中心部では1996年、NHK大河ドラマ「秀吉」の放映に合わせて「北近江秀吉博覧会」も開かれた。
同博物館のリニューアル工事は老朽化した空調施設の交換に合わせて昨年12月から総事業費約9300万円をかけて行っている。工事期間中は全館休館で、この機会に学芸員は所蔵品の整理や調査にあたり、受付の職員は観光客に対応できるよう観光地を訪ねるなど研修を積んでいる。
同博物館には一つの強みがある。文化庁の「公開承認施設」に認定されている点だ。国宝や重要文化財の公開手続きが簡素化されるメリットがあり地域へ質の高い企画の発信が求められる。文化庁美術学芸課は「リニューアル後も重要文化財を継続的に広く市民に公開することを期待したい」とする。
リニューアルオープンに向け太田浩司館長(54)は「博物館としてのグレードを高め、観光で訪れる人の玄関口としての役割を果たしたい」と力を込める。長浜観光協会の漣(さざなみ)泰寿副会長(59)も「博物館は市民のシンボルで、長浜の歴史と文化を発信する拠点。秀吉と長浜がキーワードのリニューアルは楽しみ」と期待する。
京都新聞【 2016年01月25日 08時58分 】