チャコちゃん先生のつれづれ日記

きものエッセイスト 中谷比佐子の私的日記

人形遣い 吉田簑助

2021年07月23日 11時05分36秒 | 日記
本日21時からNHK Eテレビ「吉田簑助」さんを取り上げる 
「日本の芸能 名人の引退 文楽の女に捧げた81年」
そのうち22年間が脳溢血後の演技
それが凄い、もう人形が人間以上に魂を傾けて私達に演技を見せてくれた

初めて取材でお目にかかったのは40年くらい前か、簑助さんがまだ40代だ、「若手の筆頭」と言われていた。エネルギッシュで新しい試みに挑戦もしていた
大阪公演にもお邪魔し、大阪人の江戸時代を勉強させていただいた

そして人形の着付けという撮影をさせてもらった
その時人形の役によって襟の抜き方、身幅の問題、半襟出し方など教えていただいた
細かな寸法は人形を扱う人が独自で考えていく。そればかりではなく自分で縫いながら着物を人形に着せていく
その時に舞台での人形の動きを体の中に注ぎこんでていくのだ

その手順の間お弟子さんたちが集中して師匠の手元を見ている
私には赤裸々に見せているがお弟子さんたちはそれを盗んで自分のものにしていくというのが文楽の中の習わしだ

着物を着せ終わった人形を鏡の中で演技させる。その時もお弟子さんたちは目を凝らして盗んでいる様子が分かる

微に入り細に入り質問をするチャ子ちゃん先生の質問にも、それに答える師匠の言葉を聞き漏らすまじと思う姿勢がひしひしとこちらに伝わる

3日に及ぶ撮影は着物を着る私にとっても学ぶことばかりであった
そのころ東京では劇場以外で文楽に触れるということがあまりなく、着物を着る人にとってとても参考になるので、文楽人形の演技を様々な催しを作って披露していただいた

そうしてあの病気青天の霹靂のようであったが、回復した後の自らのリハビリには鬼気迫るものがあった「生まれ変わっても又人形遣いをやりたい」と常におっしゃっていたので、その努力に余人にはわからない力がこもっている

はたせるかな
手が動き足が動く、5キロから10キロある人形を片手で使えるようになった
しかし言葉は出ない「人形遣いにはこれで充分」とばかり、今までより以上に細やかな心の表現に見る人の心をつかむ

そしてチャ子ちゃん先生は20年東京公演を欠かさず拝見してきた
楽屋に行くと嬉しそうに人形を抱いて出迎えてくれる。言葉が出なくても気持ちは通じる

華が消えた寂しさがあるが、お弟子さんたちは師匠の跡をきちんと継いでいくだろう。応援しながら見続けていきたい
コメント
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