チャコちゃん先生のつれづれ日記

きものエッセイスト 中谷比佐子の私的日記

着物が繋ぐもの 490

2022年06月10日 07時13分07秒 | 日記
昨日から田町のSOW CO.Galleryで結城紬の「奥順の新作展」が開催されている。新社長になって新規一新
機屋の創作を並べたという、若い機屋、若い絣つくり、若い糸とりつないだ技術の発表の場だ
「商品」という顔ではなく「作品」

そう着物も作品という顔になってきたのだ
消耗品ではなく、生活衣類でもなく、ステータスを誇るものでもなく、趣味趣向の世界になった
本当に自分に必要なら求める、そして着用して自分自身の歓びとする。その為には蚕が自然に吐いた糸を、無理なく引き出す糸づくり、そして糸を痛めない絣くくり、更に糸と人との呼吸を合わせた地場機での機織り、自然からいただいているという敬虔な気持ちが一反の反物を作り上げていく

それに同調できる精神性がこれからの着物選びの主流になっていくのかもしれない。TPOとか、年齢とかそういった制限は本質から遠くなっていく
先人たちの知恵を学びつつ、自分たちの今を着物に託していく、そうすると自分自身の生活の彩の中に、着物という存在が位置してくるだろう

結城紬というのは古代、養蚕農家の屑繭から誕生したものだが、蚕の吐く繭のありがたさを存分に感じながら糸にし、その素質を生かして作り上げたものだから丈夫で長持ちした。普段着として重宝し、男の着物として活躍、糸取りも機織りにも工夫を重ね、更にデザイン性も加え、色の多様さをもって女達にも愛され始め、ついには日本で絹物として初の「ユネスコ文化遺産」に認定された

だからと言って遺産にしてはいけない、先人たちの知恵を形にして続けることが世界で最も丈夫で美しい絹織物の存在価値があるというものだ

真綿から引いた糸はどう丈夫か、数日間着続けてもピンシャンしている。疲れを知らないこの布に包まれているだけで、着る人の心を安定させてくれる

会期は12日まで


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