はりぶろぐ

鍼灸師のブログです。東京都国分寺市にて孔和堂鍼灸院を開業しています。
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いいかげん

2015-02-21 21:30:34 | 鍼灸
私は12年ほど前に整体の勉強を始めて、鍼灸の資格を取得するまでは整体師として働いていました。

整体師としての初めての職場は、私の師匠の一人でもある地元愛媛の治療院でした。
整体の学校で学んだだけでほとんど臨床経験のなかった私は知らないことだらけで、この先生から手技に関して様々なことを教わりました。現在もその時に学んだことや経験したことに助けられています。

指導中に教えていただいたアドバイスの中で繰り返し言われたのは、患者さんに触れる力加減のことです。
「決して押しすぎてはいけない、コリをとらえたらそのコリがどういう状態なのかを指先で把握し、適切な圧をかけていくこと。最初は分からなくても、意識して触り続けているうちに必ず分かるようになる。」というものでした。
患者さんを施術する度に、その方のコリがどういうものなのか、どのような力加減が良いのかを一つ一つ教えていただき、その中で強押しされ続けて硬くなった筋肉の感触とその対応の仕方も学びました。ただそれは、そう言われると何となくそうかも、と思う程度で、自分ではっきりと分かるようにはなかなかなりませんでした。

その後、上京してから数年間整体院で勤めました。その整体院はお客さんの要望どおりの力加減で施術するスタイルだったので、かなりの強押しもしていました。けれど、先生の言葉は忘れないようにいつも意識し続けていました。
多くの患者さんの身体を触っていくうちに、だんだんと適切な力加減が分かるようになり、強押しされ続けている人特有の筋肉の硬さにも気付くようになりました。また、そういった硬さのある人は強い刺激に慣れているために、身体に合わせた適切な力加減では物足りなさを感じているということも分かってきました。

あまりに強い刺激を受け続けていると、身体はその刺激に慣れていきます。でも、実は身体は過剰な刺激に悲鳴をあげていることが多いのです。
そういった強押しの刺激に慣れて特有の硬さになった方でも、適切な力加減、適切な刺激の施術を受け続けるうちに身体本来のしなやかさが戻ってきます。そうすると、今までよりも軽い刺激で疲れやコリがとれるようになりますし、刺激が物足りなく感じていた鍼灸治療にもよく反応するようになります。

刺激の強弱は時と場合により様々で、なかなか難しいものですが、これからもいいかげん=良い加減を心がけていきたいです。
コメント
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