久しぶりに小説を読む休日。
小川糸さんの『ライオンのおやつ』を完読しました。
最近は小説を読むことがなく、少し前にテレビドラマで同作を見たのがきっかけで読みたいと思い手に取りました。
余命宣告を受けた主人公が、最後の日々を過ごす場所として瀬戸内の島にあるホスピスを選び、本当にしたかったことを考え実行する様子が描かれています。
生まれていた以上、「死」は誰にも訪れること。
そのことを私たちは知っているけれど、日々の暮らしの中で意識し続けることはありません。
大切な人がなくなったり、病気になったり、身近に死を意識せざるを得なくなった時に真剣に向き合うようになるものなのかもしれません。
この小説は「人生の最後をどう生きるか」をテーマに、ホスピスで毎日出される「おやつ」を通して話が進んでいきます。
どのおやつもとてもおいしそうで、読むだけで暖かな気持ちになります。それぞれのおやつには入所している1人1人の人生のエピソードがあり、どの人生も尊いのだと改めて気付かせてくれます。
主人公が自分に起きたことを受け入れていく過程も、受け入れた後に最期の日を迎えるまでの日々も、とにかく丁寧に表現されていると感じました。実際に主人公のような経験がない私にも、疑似体験をしているような生々しさも感じました。
誰にもいつか訪れる「死」をいきなり突きつけられるような鋭さは全くなく、読み進めるに連れて「死」にじんわりと親しんでいけるような感覚。
今生きている人は皆「死」を体験していないし、体験した人は「死」を語ることはできません。それでもこの小説を読むと、言葉にはし難い大切な何かに気付かされるような気がしました。
ドラマを先に見て原作を読んだ感想としては、小説の雰囲気をしっかりと味わえるキャスティングだったのではないかと思いました。
生きるということ、そのことがシンプルに淡々と描かれているように感じられるので、個人的には原作の方がより好きです。
小説の舞台となった瀬戸内の島は、愛媛県大三島なのだそうです。
松山市に住んでいた私は小学校の行事と、10年ほど前に帰省した際に来島海峡大橋を渡るついでに少し立ち寄ったのと、2回行ったことがありますが、落ち着いて大三島を観光したことはありません。
松山市は海へアクセスしやすいので瀬戸内海には親しんで育ちましたが、島から眺める瀬戸内海はより一層穏やかな感じがします。
この小説を読んでいる間、その穏やかさが常に感じられました。
冒頭の写真は数年前に帰省した時に、着陸前の機内から撮影したもの。
いつか、ゆっくり大三島を訪れてみたいです。
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