めんこい姿の裏に怖さ=絵と文・あべ弘士
なめとこ山の熊 (ミキハウスの絵本) 価格:¥ 1,575(税込) 発売日:2007-10 |
このところ、“クマ”づいている。たて続けにクマの絵本を3冊出したの で、1年間ずうっと、クマ、くま、熊の日々だった。昨年秋に宮沢賢治 の「なめとこ山の熊」を描いた。これは東北・岩手が舞台なので、ニホ ンツキノワグマが主人公だ。 2冊目は今江祥智さん作の「熊ちゃん」。まっ白いクマのぬいぐるみと 少女の話。そのぬいぐるみが大きな本物のシロクマに変身し森へ消 えていく最後の場面が涙を誘う、と描いた本人(私)がいっている。 3冊目はできたばかりで、旭川の工藤有為子さんが、トルストイの有 名な童話をアイヌ語をからめて再構築した「3びきのクマ」。ロシアなの で、出てくるのはヒグマ。この童話はいろいろな人が作品化しているが、 工藤さんは大胆かつ斬新な解釈と脚色をした。「月の精」の女の子が 野生のヒグマをからかい遊ぶのだ。私も絵を描いていくにつれ、わくわ くどきどき、とても楽しい時間だった。多くの絵本に登場するクマは、ぬ いぐるみのようなめんこい動物になっている。でも身近にヒグマと接して いる北海道の人間としては、ヒグマへの畏怖や恐ろしさを描かずには いられない。ヒグのマは怖い。だまされちゃいけない。つぶらな瞳ところ っとした体形の裏には、どうもうな野生が隠れている。旭川郊外の山に 動物園獣医のコスゲとタケノコ採りに行ったときだ。ササやぶに入り夢 中になって採っていると、すぐ近くでガサガサと音がした。「お-い、コス ゲ」と呼ぶと、はるか遠くで「なんだあ」と声がするではないか。じゃあ、 すぐそこのガサガサはだれだ!? つんと来るにおいに、ざわっとした。山 や森ではいまごろ、母さんグマが子育てのまっ最中だろう。そっと遠くで 見守りながら共存したい。(絵本作家)
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