山音文学同人・上士幌=荒井 登喜子
「子供には、テレビゲ-ムを買い与えません」などと、ツンと上を向き、 自慢げに話す親にはなりたくない。大人の傲慢のような気がするか ら。とは言っても、子供とテレビゲ-ムの関係は、とても難しいとも 感じる。息子が居間でやっているテレビゲ-ムの画面を横目で見て いると、操っている主人公が車に乗り、いとも簡単に歩行者をなぎ倒 してゆく。ひかれた歩行者は「ギャッ」とも叫ばず、「痛い」とも泣かず、 血も出ない。「これは、まずいな」と私は息子の横に座った。歩行者 が跳ね上がった。「イタタタタ・・・」。「血がドバドバ!」。ゲ-ムの中 で倒れるキャラクタ-に合わせ、私がせりふをつけてたった。 「もう・・・。母さん」 息子がコントロ-ラを離さず言う。 「だって車に当たったら痛いし、血もでるでしょ」 いつもお笑い番組を一緒に見ていても、横やりを入れる母である。 息子はあきらめ顔で、そのままゲ-ムを続けた。 後日、同じゲ-ムなのかどうかは分からぬが、息子は、がけから落下 して体を打ちつけたキャラクタ-とともに「いてっ」とつぶやいた。 子供も大人も他者の心の中を想像できるようになって、幸せに平和に 生きてゆけるといいな。つくづく願ってしまう。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます