私が小学生の頃だった。
祖谷の道は、まだ舗装などされてなく、土がむきだしのガタガタの狭い道だった。家の前を、一人の外国人が時々歩いていた。
偶然に、初めて会ってしまった時の事、今でも覚えている。
自分の中で『有り得ない』ことを、現実にした時、余り気持ちのいいものではなく、私は咄嗟に、家の中に逃げた。
なぜか、恐ろしかった。戦争云々とかそんな事は、しるよしもなく、ただ コワカッタ。
〔怖いこわいもの見たさ〕という気持ちは、あんな時なんだ。
私は、また家の外にでて、その外国人の背中が見えなくなるまで、ボーと立っていた。
「釣井に外人がおる」
聞いた事はあったけど、見るまでは、ピンとこなかった。
あれから、30数年、
その外国人が、かの有名なア〇ッ〇ス・カー氏!
築300年の茅葺き屋根、古民家ちいおりのオーナー!
年間、様々な国の方々が、遥か祖谷の地を訪れる。
祖谷地方、現代では外国人は、アタリマエの光景になった。
そのアタリマエの外国人が歩いていた。
その日、風のない二週間前の正午。快晴。
『暑かった』
真上に上がった太陽は、ストレートに路面に照り付ける。
日陰のない、アスファルトの二車線の道の端を、東祖谷の方向に、一人の外国人の男性が、超重たそうなリュックを背負って、頭に白いタオルを巻いて、黙々と歩いていた。
私はお昼休み!野暮用を兼ねて、西から東に向けて、とにかく急いでいた。軽トラックの中は、蒸し風呂のように、いや、それ以上に暑かった。
一直線!猛ダッシュ!歩く外国人!
通り過ぎた私!
左目で、チラッと見た。んー
『若い男前!』
とりあえず、通り過ぎたーー。
『あれはちいおり行き?』
『ここから歩いたら何時間かかる?』
『ヤバイだろう!』
『熱射病になるし~』
想像だけで、頭がぐちゃぐちゃになった。
気がついたら、車を引き返していた。
前略、私は、英語が話せません。全く、話せません。
横に止まった私に、彼は一瞬、戸惑った。
私は、とりあえず、イチカバチカ、話しかけた。スマイル全開で、話しかけた。
『ち・い・お・り?』
彼の表情は、一瞬で明るくなったー
『アッ、フー』
私にはそう聞こえた。私は、軽トラックの荷台を指さしながら、言った。
『ボランティア!ちいおり♪』
彼は、リュックを荷台に乗せた。顔がほころんでいた。
このパターンで、何回外国人を、乗せてきたんだ。わたし……
片道20分、
長かった。
運転しながら、時々、スマイルだけを贈りながら、無言でハンドルを握りしめた。
『どこから来たんだ?』愛想がわりに、聞いてみた。スマイル全開キープ!
『ア・メ・リ・カ?』
彼が微笑みながら、答える。
『フランス』
一瞬、私のスマイル停止!
『英語がわからんのに、フランス語がわかるか~』
『どーしよう?挨拶位はやっとかないと…』
頭の中は、男前アドレナリンで侵され、
単語もなんにもでてこない。メークの剥がれも気になる
くちをついた言葉が、スマイル超全開の
『ボンジュール!』
彼は、笑っていた。
どうでもよかった。早く、ちいおりに送り届けなければ、
この空気は、余りにもオカシイ?
大体、彼の目的地が、ちいおりでなかったかも、知れない。
一瞬、顔が明るくなっただけで、私が勝手に解釈しただけなんだ。『拉致監禁』にも近いこの流れ。
ちいおりに着いた。
先に降りて、ちいおりの管理人がいることを確かめた。
彼は、何か言いながら、私に手を振る。
私は、手を振り返しながら、猛ダッシュで、坂道をかけ上がった。振りかえらなかった。
以前、竹やぶの中に大量のお金を捨てて、走り去った者の、気持ちがよくわかった気がした
『あとはシラナーイ』
今日、
若い外国人の女の子が、バス停に立っていた。
私のアドレナリンは…、全く反応しなかった…。私は、全くの無表情で、通り過ぎた。
リュックを背負って、お金をかけずに、一人で旅をする外国人の事を
『バックパッカー』
と呼ぶ。
教えてくれたのは、
重いリュックを捨てて、一人で人生を旅する『テラオの兄』さんだった。
祖谷の道は、まだ舗装などされてなく、土がむきだしのガタガタの狭い道だった。家の前を、一人の外国人が時々歩いていた。
偶然に、初めて会ってしまった時の事、今でも覚えている。
自分の中で『有り得ない』ことを、現実にした時、余り気持ちのいいものではなく、私は咄嗟に、家の中に逃げた。
なぜか、恐ろしかった。戦争云々とかそんな事は、しるよしもなく、ただ コワカッタ。
〔怖いこわいもの見たさ〕という気持ちは、あんな時なんだ。
私は、また家の外にでて、その外国人の背中が見えなくなるまで、ボーと立っていた。
「釣井に外人がおる」
聞いた事はあったけど、見るまでは、ピンとこなかった。
あれから、30数年、
その外国人が、かの有名なア〇ッ〇ス・カー氏!
築300年の茅葺き屋根、古民家ちいおりのオーナー!
年間、様々な国の方々が、遥か祖谷の地を訪れる。
祖谷地方、現代では外国人は、アタリマエの光景になった。
そのアタリマエの外国人が歩いていた。
その日、風のない二週間前の正午。快晴。
『暑かった』
真上に上がった太陽は、ストレートに路面に照り付ける。
日陰のない、アスファルトの二車線の道の端を、東祖谷の方向に、一人の外国人の男性が、超重たそうなリュックを背負って、頭に白いタオルを巻いて、黙々と歩いていた。
私はお昼休み!野暮用を兼ねて、西から東に向けて、とにかく急いでいた。軽トラックの中は、蒸し風呂のように、いや、それ以上に暑かった。
一直線!猛ダッシュ!歩く外国人!
通り過ぎた私!
左目で、チラッと見た。んー
『若い男前!』
とりあえず、通り過ぎたーー。
『あれはちいおり行き?』
『ここから歩いたら何時間かかる?』
『ヤバイだろう!』
『熱射病になるし~』
想像だけで、頭がぐちゃぐちゃになった。
気がついたら、車を引き返していた。
前略、私は、英語が話せません。全く、話せません。
横に止まった私に、彼は一瞬、戸惑った。
私は、とりあえず、イチカバチカ、話しかけた。スマイル全開で、話しかけた。
『ち・い・お・り?』
彼の表情は、一瞬で明るくなったー
『アッ、フー』
私にはそう聞こえた。私は、軽トラックの荷台を指さしながら、言った。
『ボランティア!ちいおり♪』
彼は、リュックを荷台に乗せた。顔がほころんでいた。
このパターンで、何回外国人を、乗せてきたんだ。わたし……
片道20分、
長かった。
運転しながら、時々、スマイルだけを贈りながら、無言でハンドルを握りしめた。
『どこから来たんだ?』愛想がわりに、聞いてみた。スマイル全開キープ!
『ア・メ・リ・カ?』
彼が微笑みながら、答える。
『フランス』
一瞬、私のスマイル停止!
『英語がわからんのに、フランス語がわかるか~』
『どーしよう?挨拶位はやっとかないと…』
頭の中は、男前アドレナリンで侵され、
単語もなんにもでてこない。メークの剥がれも気になる
くちをついた言葉が、スマイル超全開の
『ボンジュール!』
彼は、笑っていた。
どうでもよかった。早く、ちいおりに送り届けなければ、
この空気は、余りにもオカシイ?
大体、彼の目的地が、ちいおりでなかったかも、知れない。
一瞬、顔が明るくなっただけで、私が勝手に解釈しただけなんだ。『拉致監禁』にも近いこの流れ。
ちいおりに着いた。
先に降りて、ちいおりの管理人がいることを確かめた。
彼は、何か言いながら、私に手を振る。
私は、手を振り返しながら、猛ダッシュで、坂道をかけ上がった。振りかえらなかった。
以前、竹やぶの中に大量のお金を捨てて、走り去った者の、気持ちがよくわかった気がした
『あとはシラナーイ』
今日、
若い外国人の女の子が、バス停に立っていた。
私のアドレナリンは…、全く反応しなかった…。私は、全くの無表情で、通り過ぎた。
リュックを背負って、お金をかけずに、一人で旅をする外国人の事を
『バックパッカー』
と呼ぶ。
教えてくれたのは、
重いリュックを捨てて、一人で人生を旅する『テラオの兄』さんだった。