秘境という名の山村から(東祖谷)

にちにちこれこうにち 秘境奥祖谷(東祖谷山)

あいつは飛ぶな

2009年09月04日 | Weblog
今年の初夏は『雨』の日が多かった。
悲劇は、そんな雨の夜に起きた。

お風呂に入って、まさに出ようとした瞬間、『停電』した。
真っ暗に、なった。何の明かりもない。街で暮らしている方々には、ピンとコナイでしょう。街なら、家の中が真っ暗になっても、外灯とか、ネオンがあって、少しはボンヤリと見える筈でしょう…が、場所は祖谷の、とある集落。
真っ暗!真っ暗!
ひたすら真っ暗!


バスタオルの場所は、わかっても、下着の前後が、全くわからない。
女子が付ける、〇〇ジャーの、形がツカメナイ…。ヒモの固まりに手が絡まる。
取り敢えず、タオルをマイテ、台所のブレーカーまで、行く。
二回、壁に当たった。イチイチ、ドアを閉める、几帳面なA型性格が、こんな時は、疎ましい。ブレーカーのスイッチを上げる。取り敢えず、セーフ!
一人暮らしは、大変だ。何が起こるか、わからない。

翌日、日曜日。
午後になってまた停電した。すかさず、ブレーカーを見た。
『ブレーカーは、落ちてないなあー』
『これは、停電だあー』


私は、気が長い。
自分の現状とお年寄りと病人と、男前には特に、気が長い。
四〇電〇に文句を言っても、必死で復旧作業しているんだもの!家事をしながら、待つ!





夕方を迎えた。


老犬と、散歩タイム。近所の電気屋さんに会ったので、聞いてみた。
『なあ~、今日の停電、長いなあ~』
電気屋さんは、キョトンとして、私を見た。『今日、停電やしてないよー、菜菜子さんとこだけじゃないん?』
『ヘッ?』

『ブレーカー、見たで?』

『ヘッ、多分』

老犬を引きずるように家に帰り、ブレーカーを見た。
ブレーカーは、落ちていた。
単なる私の、見間違えだったんだ。我が家だけが、停電だった……。
半日、続いた停電は、ブレーカーをオンにして、解決した。
電気屋さんが、
来てくれた。

『イケタデ?また、調べとかな、いかんなあ~今の時期の停電は、冷蔵庫の中の物、腐るけんなあ~、ヨワッタだろう!腐っただろう?』

『ヘッ、まあ、ま・あ・……』



すぐには言えなかった。
まさか、女子の冷蔵庫に
マーガリンと、
マヨネーズと
アイスコーヒーと
ナスビ
しか入っていない事を。
結局、漏電が原因だった。犯人は、分解、組み立て、改造大好きだった、夫だった。文句を言うには、距離が遠い?




本日、時刻は23時。
祖谷川の流れる音。
無音の部屋。

壁に、張り付いている黒い固まりを発見!
巨大ゴキブリが、深呼吸している。思わず言った小さな独り言が、夜の静寂に、虚しく溶けていった。

『…あいつは…飛ぶな…』