万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

東京都知事選における蓮舫氏起用を考える

2024年06月04日 11時43分46秒 | 日本政治
 戦後、日本国では、長らく「55年体制」と称された自民党一党優位体制が続いてきました。党利党略から社会党の村山富市氏に首相の椅子を譲ることはあっても、一貫して与党の座を自民党が独占してきたのです。しかしながら、自民党は、2009年8月において実施された総選挙にて大敗北を喫し、下野することとなります。翌9月に、70%を越えるとされた圧倒的な支持率を獲得した民主党政権が誕生し、悲願であった政権交代を実現させたのでした。

 国民の期待を一身に集め、華々しく登場した民主党政権ではあったのですが、政権発足後、ほどなくして同政権に対する失望感が国民の間で広がってゆきます。国民の多くは民主党政権に、旧態依然とした‘自民党政治’を刷新し、よりスマートで‘民主的’な政治の実現を思い描いていたのでしょう。しかしながら、現実には、時にして国民を犠牲に供する左派特有の独善的な理想主義や革新という名の破壊主義ばかりが目に付くようになり、期待感は一気に萎んでいったのです。かくして、政権交代とは、‘自民党にお灸を据えようとしたら火事になった’と揶揄されたように、国民にとりましては痛い教訓となったのです。

 もっとも、2009年に日本国内で起きた同政権交代が、世界権力が誘導した二頭作戦であった可能性を考慮しますと、最初からこの‘改悪シナリオ’は仕組まれていたのかも知れません。二項対立の構図の演出は、有権者の投票を、‘自らの自由意志に基づく自発的な選択’に見せかける常套手段です。如何なる悪しき政策が実行されても、‘選んだのは有権者であり、’全責任は、国民にある‘あるいは‘悪いのは選んだ国民’とする逃げ口上まで用意されているのですから、選挙全体を上部からコントロールし得る立場にある勢力にとりましては、民主主義の看板の下で外部から隠れた独裁的支配を実現できる、巧妙な手口であるとも言えましょう。

 さて、二頭作戦の視点から今般の都知事選挙を見ますと、マスメディアがアピールする小池百合子現知事vs.村田蓮舫氏の対立構図は、如何にも演出感が強く、今回も同作戦が実行されている様子が窺えます。しかしながら、過去の経験が現在の行動に影響を与えるとしますと、蓮舫氏の擁立は、二頭作戦の戦略的視点からしますと、必ずしも適切な判断ではなかったかもしれません。何故ならば、都民にあって過去の政権交代における失敗体験の記憶を呼び覚ましてしまうからです。

 蓮舫氏と言えば、民主党政権時代にあって、行政の無駄遣いをなくするとして鳴り物入りで始まった「事業仕分け」において、「二位じゃダメなんですか」の発言で知られています。結局、予算を削減されたにも拘わらず、仕分けの対象とされたスーパーコンミュータ-の「富岳」並びに小惑星探査機の「はやぶさ」が成果を挙げたことから、日本国の発展に尽くそうとする政治家としての姿勢や長期的な視点から評価する能力に疑問符が付くことになりました。また、2016年に二重国籍問題が発覚した際にも、国籍に関する自らの情報については積極的に開示しようとはしていませんでした。むしろ、蓮舫氏は、民主党への政権交代の負の部分を象徴する存在であったとも言えましょう。

 それでは、何故、マイナス要素を抱えていた蓮舫氏に白羽の矢が立ったのでしょうか。この点、ロンドンが参考となります。世界権力の拠点の一つであるイギリスの首都ロンドンでも、2016年からパキスタン系移民の子であるサディク・カーン氏が市長を務めているからです。先日の5月2日に実施された市長選においても当選を果たし、同氏の市長職は三期目に入りました。ロンドンの人口は、既に50%を越えて移民系に占められていますので、同氏の当選もあり得ないことではないのですが、グローバルな観点から各地の拠点を押さえるネットワーク型の支配を目指す世界権力としましては、国家や首都のトップには、移民系の人物を配置したいのでしょう(イギリスでは、インド系のスナク首相も誕生・・・)。

移民系の政治家をトップに就ける手段として、有権者を二者択一に追い込む二頭作戦は極めて効果的です。しかしながら、日本国の場合には、民主党への政権交代が悪夢であったために、蓮舫氏の起用は裏目に出るかも知れないと思うのです(つづく)。

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