万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

南シナ海での妥協は”杭州の宥和”となるー懸念される米中首脳会談

2016年08月31日 15時06分40秒 | 国際政治
中国主席と最後の膝詰め談判へ=「南シナ海」など協議―米大統領
 オバマ大統領は、9月4日に杭州で開催されるG20に先立って、中国の習近平主席との間で最後の直談判に臨むと報じられております。米中間には難問が山積していますが、特に注目されるのは南シナ海問題です。

 南シナ海問題については、先月12日に仲裁裁定が下されながら中国が無視を決め込んでいるため、今や、国際法秩序の崩壊危機として広く認識されています。仮に今般の米中首脳会談において、アメリカが中国に対してその行動を容認するような言質を僅かでも与えれば、おそらく中国は、アメリカの”お墨付き”を得たとして、電撃的な軍事行動を起こす可能性も否定はできません。この状況は、78年前のミュンヘンの宥和を思い起こさせます。ズデーデンの割譲を認めさせたとして、ヒトラーは、その後、野に放たれた虎の如くに周辺諸国への侵攻を開始します。

 今般の会議では、オバマ大統領が熱心に取り組んできた地球温暖化問題についても話し合われ、「京都議定書」後の新たな枠組みとして作成された「パリ協定」の批准問題も議題に上るそうです。「パリ協定」の内容は極めて中国に甘いのですが、それでも中国にとりましては批准合意は”大幅な譲歩”であり、大統領職を離れるオバマ大統領に対して”花を持たせる”のではないかとの憶測もあります。ここで懸念されるのは、「パリ協定」を優先するあまりに、アメリカが南シナ海問題で中国に譲歩することです。この米中間の”取引”は、中国にとっては極めて有利であり、両得でもあります。中国側は、「パリ協定」を受け入れさえすれば、特別優遇措置を手に入れるのみならず、南シナ海や東シナ海をも手にするチャンスを得るのですから(少なくとも中国側は、そのように主観的に解釈する…)。

 任期を数か月を残すばかりとなったオバマ大統領としては、大統領としての実績を残したいのでしょうが、仮に、米中首脳会談が、ミュンヘンならぬ”杭州の宥和”となったとしたら、この事件は、後世の歴史の教科書にどのように記述されるのでしょうか。「パリ協定」を纏めても、歴史の教訓に学ばなかった大統領として歴史に名を残したのでは、あまりにも不名誉なことではないかと思うのです。

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日韓通貨スワップ協定ー日本国は韓国に対して”債権”を保持するべき

2016年08月30日 14時42分14秒 | 国際経済
【日韓財務対話】通貨交換協定再開へ議論開始で合意 韓国側が提案 「日韓の経済協力は有益」と麻生氏
 先日、日韓財務相対話で協議開始が合意された日韓通貨スワップ協定については、日本国内では反対の声が強く、その仕組みにも疑問が投げかけられています。昨年終了した旧スワップ協定を刷新する内容とも伝わりますが、直近の情報によりますと、この協定、どうやら、円・ウォンの交換ではなく、外貨準備として保有されている米ドルの相互融通のようなのです。

 円・ウォンの交換では、協定発動の場合、日本側には円調達に際してのリスクがある一方で、韓国側にも、通貨危機時に最大700億ドル分のウォンを調達する必要があり、日本経済以上に韓国経済が打撃を受ける可能性があります。しかも、仮に韓国が、輪転機でウォンを刷って調達すれば、日本国側は、円を提供する一方で減価したウォンだけが手元に残ることになり、このケースは最悪です。

 それでは、円・ウォン交換ではなく、ドルの相互融通とすれば、それは、どのような仕組みなのでしょうか。仮に、日本側が”虎の子”の外貨を韓国に対して700億ドル?を上限として供与し、その代わりに、ドル換算で供与額相当のウォンを受け取るとしますと、これもまた、日本側にとりましては著しく不利な協定となります。円調達の必要はなくなるため、日本経済へのショックは回避できますが、日本国の外貨準備高は減少しますし、国際通貨ではないウォンを受け取りましても、国際決済には広く使えません(日本国政府が、政府調達等に韓国製品を使うとしたら、日本企業にはマイナス…)。また、たとえ相互性を確保するために、協定において、日本国側が通貨危機に瀕した際に、韓国の外貨準備のドルと円を交換できるとする逆の条件を定めたとしても、日本側が通貨危機に直面する事態は低く、日本側の一方的損失となりかねないのです。

 仮に、日韓通貨スワップ協定の仕組みが日本側の一方的損失を招くのならば、締結は見送った方が賢明ということになります。尤も、一方的損失を回避する手段があるとすれば、ウォンとの交換ではなく、日本国側の韓国に対する外貨貸与とするか、あるいは、ウォンとの交換であったとしても、韓国に対して、将来において当該ウォンと供与外貨との同額交換を義務付ける条件を付す…といった案は考えられます(700億ドルの供与であれば、700億ドルの返済を…)。日本国が、少なくとも韓国側に対して債権、あるいは、請求権を確保する内容でありませんと、日本国民の多くも納得しないのではないでしょうか。

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北方領土問題も常設仲裁裁判所での解決を

2016年08月29日 14時57分33秒 | 国際政治
日ロが北方領土交渉=原田大使「前向きに議論」
 本日の日経新聞には、北方領土問題に関する世論調査の結果が掲載されておりました。おそらく、9月2日の首相訪ロを前に、日本国内の世論の動向を探る目的なのでしょうが、その結果は、「4島すべて返ってくるよう交渉すべきだ」が36%であり、「一部でも返ってくるよう交渉すべきだ」が54%となっています。

 回答率は47.0%であり、回答数は1055件に過ぎませんので、本調査結果が日本国民の世論を正確に反映しているとは言い難いものの、この調査結果には危機感を覚えざるを得ません。仮に、一部返還で妥結するとしますと、プーチン大統領の主張通り、第二次世界大戦の”戦利品”として、日本国がソ連邦に対して領土割譲を認めることになるからです。そもそも、ソ連邦は、日ソ中立条約を一方的に破棄して参戦し、連合国側の一員でありながら、連合国の掲げる領土不拡大の原則にも従わず、戦争の混乱に乗じて周辺諸国を侵略しました。北方領土がソ連邦に占領されたのは、同国の違法行為を原因としているのですから、これを追認したのでは、国際法秩序を蔑にしたも同然です。また、今般、領土問題で、ロシアの違法行為に目を瞑る形で領土割譲を認めますと、違法に占領された状態にある竹島問題でも、韓国側から同じような譲歩・妥結を迫られることでしょう。さらには尖閣諸島に関しても、武力併合を狙う中国に対して誤ったメッセージを送ることにもなりかねません。世論調査で回答を寄せた人々が、北方領土問題の経緯を理解しているのか疑わしいのですが、ロシア側が本調査を利用し、日本国の世論が容認しているとして、二島返還や面積折半といった日本側に不利な提案を持ち掛けないとも限らないのです。国際法秩序が揺らいでいる今の時期に、武力による領土併合を認めることは極めて危険であり、また、同様の問題を抱える国々もありますので、国際社会にも悪影響を与える無責任な行為となりましょう。

 この問題を、筋を通す形で解決するには、やはり、国際司法に委ねるしかないように思えます。北方領土問題は、ソ連邦による日ソ中立条約違反、ヤルタ協定の合法性、サンフランシスコ講和条約の解釈…といった法律問題を含んでいますので、両国政府の合意を要する国際司法裁判所への付託が難しいとしても(尤も、過去にロシア側が司法解決を提案したことがあるらしい…)、常設仲裁裁判所に訴えることはできます。日本国政府は、法の支配の原則を貫く上でも、北方領土問題を国際司法による解決に委ねるべきなのではないでしょうか。たとえロシアが裁定を無視したとしても、国際司法の”お墨付き”は、領有の証明書のようなものなのですから。

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日韓通貨スワップ発動で日本経済が傾く?

2016年08月28日 15時57分14秒 | 国際経済
通貨スワップ議論で合意=経済・金融で協力強化―日韓財務対話
 昨日、韓国のソウルで開催されていた「日韓財務対話」の席で、日韓通貨スワップ協定の再締結に向けての協議開始が合意されたそうです。韓国側からの要請を受ける形ではありますが、日本国内からは懸念の声が上がっています。

 この時期に韓国側が面子を捨ててスワップ協定の再開を申し出る背景には、凡そ二つの要因が推測されます。その一つは、中韓関係の急激な悪化です。両国間のスワップ協定は2017年まで延長されていますが、米軍のTHAAD配備を契機に、中国が、対韓報復として経済関係の縮小に動いているからです。第2の要因は、アメリカFRBの利上げ観測です。これまで伸び伸びとなってきた利上げが遂に実施されるとなりますと、中国のみならず、韓国からも資本が流出する怖れがあります。その他にもイギリスのEU離脱によるマイナス影響や対日貿易赤字の問題も考えられますが、これらの要因が重なった結果、韓国側としては、来るべき危機に備える必要に迫られたのでしょう。

 しかしながら、日韓の経済・金融の協力強化といった’美名’の下にはあるものの、この協定は、日本国側からの一方方向的な韓国に対する恩恵供与であって、日本側のメリットが殆ど無いのは既に各方面から指摘されているところです。対韓投資を行っている民間金融機関、取引関係にある商社、並びに、製造拠点を移転させた製造業者などにはメリット面はないわけではありませんが、韓国企業と競合する日本企業にとっては、自国の政府が”敵に塩を送る”ようなものです。況してや、国内向けの事業者や一般国民の大多数には全く関係が無いのです。

 そして、さらに日本国側に重大なリスクがあるとしますと、それは、当協定が実際に発動される時です。前回のスワップ協定では、円とウォンとの間に最大700億ドル相当の融通額が設定されていましたが、発動することなく終了しています。発動されない限り、実質的な損失は生じないのですが、仮に、上記の諸要因からスワップ協定が発動されたとしますと、日本銀行は、一度に巨額の円を韓国に提供する必要があります。果たして、最大7兆円となる円を、日本銀行、あるいは、財務省は、どのようにして調達するのでしょうか。

 想定される手法は、(1)財務省が政府短期証券を発行して市中から資金を調達する、(2)日銀が公開オペレーションで売りオペを実施する、(3)法貨発行権を行使する(輪転機で日本銀行券を刷る…)、(4)外貨準備のドルを売って円を調達する…などがありますが、最も一般的な手法である(1)の場合には、日本国側の財政赤字が悪化することは言うまでもないことですし(日本経済への不安から、株価下落、国債の暴落、国債利率の上昇もあり得る…)、(2)では、日本国内での通過量が急激に減少しますし(デフレが亢進するリスクがあり、また、民間金融機関が応じるかも不明…)、(3)の実態は、ヘリコプター・マネー論に等しくなりますので、慎重論が出ることでしょう。また、(4)では、実質的にはドル・ウォンの日韓通貨スワップ協定となりますし、米国債の大量売却を伴うとなりますと、アメリカへの影響もあり得ます。

 今般、経済対策費として政府は10兆円規模の財政支出を予定していますが、この財源の調達さえ不安視されています。国内の経済対策で手一杯な状態で、スワップ発動の事態に日本経済が耐えられるのか疑問なところです。日韓通貨スワップ協定については、発動された場合のリスクをも考慮すべきであり、日本経済が韓国経済の犠牲になる、あるいは、さらなる世界経済の悪化を招く事態だけは避けるべきと思うのです。

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日韓が”夫婦”?-第2の”バイデン発言ショック”

2016年08月27日 13時39分52秒 | 国際政治
日韓首脳の関係修復に一肌=「夫婦仲戻した」―米副大統領
 今月26日に米紙アトランティックの電子版に掲載されたインタヴュー記事によりますと、アメリカのバイデン副大統領は、両国の関係を取り持つカウンセラーの役割を果たしたそうです。”夫婦間の仲直り”に譬えて。

 アメリカの認識によれば、日本国が過去に韓国を併合していた時期もあり、両国とも地理的には極東に位置し、一衣帯水の隣国同士であることから、日韓関係は、”夫婦”に譬えられるほど緊密であるとする先入観があるのかもしれません。しかしながら、古来、歴史的には、朝鮮半島との関係が良好であった時期は殆どありません。

 日本国民からしますと、韓国に対する日本国の立場とは、既に離婚してから70年以上も経過しながら、何時までも離婚相手から請求書が届く元配偶者のようなものです。離婚後の混乱期には、竹島を不法に占拠されるなど、勝手に家屋を侵奪され、しかも、日韓請求権協定では、膨大なる”慰謝料”をも支払わされました。にも拘らず、隣近所には、日本国との”結婚”は強制であり、人道にも悖るDVを受けたと言いふらしているのです。韓国では、現在の配偶者との間の”子供達”に対しては、元配偶者の日本国は極悪人と教えていますので、韓国側も、”日韓夫婦説”には反発を抱くことでしょう。日本国民としては、日韓の”夫婦時代”に今なお苦しめられており、懲り懲りといったところなのですが、アメリカ側には、日韓の文化や国民性の違いのみならず、一般の日本国民の心情は全く理解されていないようなのです。年末の慰安婦問題に関する日韓合意も、強いて言えば、日本国側が”追加慰謝料”を払わされたようなものです。

 バイデン副大統領は、先日も、”日本国憲法はアメリカが書いた”と述べたことから、日本国内にショックが走りましたが、今般の発言も、第2の”バイデン発言ショック”となるかもしません。国際的な相互理解の重要性が叫ばれる時代になりつつも、諸外国からの日本理解はまだまだ表層的であり、過去の歴史のみならず、日本の一般的な国民感情にまでは至っていないようなのです。

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硫黄島記録修正ーアメリカの歴史実証主義に期待

2016年08月26日 15時21分07秒 | アメリカ
「硫黄島」記録、また修正=1度目の星条旗掲揚―米海兵隊
 1945年2月、日米両軍が攻防戦を繰り広げてきた硫黄島の摺鉢山の山頂に、遂に星条旗がはためくこととなりました。米兵による摺鉢山の星条旗掲揚こそ、激戦となった硫黄島の戦、そしての第二次世界大戦の趨勢を決定付ける歴史的シーンとなったのです。

 このため、アメリカでは、撮影された摺鉢山での星条旗掲揚の写真-「硫黄島の星条旗」-は、米軍勝利を象徴する感動的な一瞬を映す一枚として、全世界に知られるようになりました。写真に写っていた兵士達は全米各地で熱烈な歓迎を受け、英雄と見なされたのです。撮影したAP通信社のジョー・ローゼンタール氏も、写真部門でピュリッツアー賞を受賞しています。

 しかしながら、この写真は、実戦において最初に摺鉢山を奪取した際のものではなく、後日、ローマの遺跡のレリーフに残る軍旗を掲げる兵士たちの群像のポーズを参考に、報道用に撮影されたものであり、2014年にはテレビのドキュメンタリー番組での身元調査により、兵士も別人である疑惑が浮上します。この指摘を受けて、米海兵隊は本格的に調査を実施したところ、写真には6人が映っているものの、その内の二人は、擂鉢山攻略作戦には参加しておらず、後日行われた星条旗掲揚のシーンの演出にのみ参加していたことが判明したのです。今般、米海兵隊は、誤りを認めて正式に記録を修正しました。「われわれの歴史は重要であり、可能な限り正確を期すことが海兵隊員やその家族に対する務めだ」とするコメントと共に。

 「硫黄島の星条旗」も、国債の売れ行きに苦慮していた当時のアメリカ政府が、戦意高揚のためのプロパガンダとして利用したとする指摘もあり、戦時においてはどの国も、事実を歪曲したり、脚色したりする傾向があります。しかしながら、戦争が終結し、客観的な検証が可能となった時点においてプロパガンダ用の歪曲や脚色を取り除き、事実に基づいて歴史を明らかにすることは、”人類に対する務め”でもあります。兎角に歴史の検証は、”歴史修正主義”として批判を受けがちですが、米海兵隊の歴史に対する真摯な態度は、日中、並びに、日韓に横たわる”歴史問題”に対しても、一つの重要な方向性を示していると思うのです。

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慰安婦像米首都設置計画ー事実しか幕引きは出来ない

2016年08月25日 15時19分11秒 | 国際政治
米首都に少女像設置を計画=年内完成目指す―韓国系団体
 日本国政府は、先日、昨年末の日韓合意に基づいて、元慰安婦を支援する韓国の財団に対して10億円の拠出を決定しました。その一方で、ソウルの日本大使館前の慰安婦像は、未だに撤去されていません。

 慰安婦問題をめぐる日韓合意については、双方の国民に不満を残しています。日本国民の多くは、国際社会において”日本軍20万人慰安婦強制連行説”が放置されたまま、この問題が幕引きとなることに不満を抱いています。アメリカの教科書に”性奴隷”と記述されたように、虚偽の報道と中韓のプロパガンダによって傷つけられた日本国の名誉は、未だに回復されていないからです。一方、韓国では、日本国が慰安婦問題を国家犯罪として認め、謝罪した上で正式に賠償すべきと主張しています。背後には、日韓関係の改善を阻止したい中国や北朝鮮の分離工作もあるとされていますが、反日教育の影響もあり、世論は対日強硬論に傾いているようです。このため、国際プロパガンダも沈静化する兆しはありません。慰安婦像設置活動も活発化し、遂に、韓国系団体によって、アメリカの首都かその近郊に新たに慰安婦像を設置する計画が持ち上がっているそうです。年末の日韓合意は、公式の外交問題としては”最終決着”したはずなのですが、国民感情を含めれば、解決したとは言い難い状況にあるのです。

 それでは、この問題、どのようにすれば、最終的な幕引きとなるのでしょうか。唯一、幕引きができるとすれば、それは、事実を明らかにするしかありません。慰安婦問題の基本的な構図は、民間事業者による犯罪です。慰安所の設置には日本軍が関わったものの、慰安婦の募集や慰安所の経営は民間事業者が担っており、中には、朝鮮人事業者を含めて、悪質な業者も存在したのです。この事実が国際社会に周知されれば、日本国民は、汚名を雪ぐことができますし、韓国側も、事実に反するプロパガンダはできなくなります。国際社会において、韓国は、賠償目当てに嘘を吐く強欲な国家と認定されてしまうのですから。

 年末の日韓合意では、さすがに韓国側も、これ以上、国際プロパガンダを継続することはないであろう、とする楽観的な見通しが日本側にはありました。しかしながら、またもやこの期待は裏切られたのですから、日本国政府は、この問題に最終的な幕を下ろすべく、国際社会に向けて情報発信に努めるべきと思うのです。

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日中韓外相会談ー”敵の味方は敵”では?

2016年08月24日 15時19分12秒 | 国際政治
北朝鮮ミサイル対処で連携=首脳対話実現へ協力―日中韓外相が会談
 本日、日本国の岸田文雄外相、中国の王毅外相、並びに、韓国の尹炳世外相の三者が、東京で開かれた日中韓外相会談で顔を合わせました。折も折、北朝鮮が日本国の日本海に向けてミサイルを発射したため、三カ国外相は、”敵の敵は味方”とばかりに対北協力での連携を強調しています。

 しかしながら、この三国、”敵の敵は味方”、即ち、敵である北朝鮮に対して三国揃って”味方”となったのでしょうか。現実には、三国の間には埋めがたい溝があります。南シナ海問題の仲裁裁定を無視した中国は、尖閣諸島に対しても領土的野心をもはや隠そうとはしていません。また、北朝鮮の相次ぐ核・ミサイル実験により、韓国政府が米軍のTHAAD配備を受け入れたため、中国は、韓国に対して怒りを顕わにしています。日中関係も中韓関係も悪化の一途を辿り、そして日韓関係も、竹島や慰安婦問題等をめぐり、両国国内には不満が鬱積しており、決して良好ではないのです。こうした状況にあって、唯一、参加国を結束させたのが北朝鮮のミサイル発射なのですが、この表面上の結束も要注意です。何故ならば、中国は、北朝鮮の”敵”を偽装している可能性が極めて高いからです。国連決議による制裁を受けても、北朝鮮が体制を維持し、今なお核やミサイル実験が実施できる背景には中国の背後からの支援があることは、最早、公然の秘密です。対北支援は国連の”制裁破り”なのですが、北朝鮮の崩壊が自らに飛び火するのを恐れるあまりに、中国は、内心においては苦々しく思いつつも、北朝鮮を”生かし”続けているのです。国連安保理の常任理事国でありながら、安保理決議の遵守よりも自国の利益を最優先として北朝鮮の延命を選択するのですから、中国の”敵ポーズ”ほど当にならないものはありません。つまり、中国は、北朝鮮の敵ではなく味方なのです(両国は一党独裁体制の絆で結ばれている一種の運命共同体…)。

 共通の敵の出現は、常々、疎遠な国同士の結束を強めるものですが、”敵の敵は味方”の論理で中国を味方に位置付けますと、その先には思わぬ落とし穴が待っていることでしょう。”敵の味方は敵”という現実を直視し、対北結束で中国に対する警戒感を解いてはならないと思うのです。

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移民が社会問題化する理由ー企業組織と社会秩序は違う

2016年08月23日 14時52分44秒 | 国際政治
 イギリスのEU離脱の主因となったように、移民問題は、今や世界共通の課題と化しています。本記事では、この問題を、企業組織と社会秩序との違いを切り口として説明してみようと思います。

 EUでは、1958年のEEC設立時に際して、既に人の自由移動を原則に掲げています。EUの前身であるEEC(EC)は、経済統合を主たる目的として設立された地域経済圏であり、将来的には、あたかも国内市場のような単一市場の構築を目指していました。この目的は、EU発足後の1993年に凡そ達成されますが、人の自由移動が経済目的であったことは、それに伴う社会問題については殆ど配慮されていなかったことを示しています。

 経済活動の主体は企業ですので、企業が想定する”移民(外国人労働者)”とは、あくまでも自らの組織の内部の社員や従業員です。企業が組織である以上、その管理は決して難しくはありません。配属場所で一定の時間の間、企業側が指定した仕事に従事してもらい、その報酬としてお給料を支払えばよいのです。しかしながら、移民の人々は、1日24時間職場で勤務しているわけではなく、契約によって定められた勤務時間以外の時間は、自由に過ごすことができます。つまり、一歩、職場から外に出れば、社会の一員として生活することになるのです。ところが、移民の人々は、ここで、言語、生活習慣、宗教、価値観等の違いから様々な問題や摩擦を経験すると同時に、居住国の人々も戸惑うこととなります。移民の人々を社会統合しようとすれば、その家族を含めて手厚いサポートが要され、各種の社会保障や福祉など、様々な社会政策を実施しなければならなくなるからです。また、移民側の暴力を伴う拒絶反応や一方的な権利要求によって、社会的反発を引き起こすことも少なくはありません。企業と移民との関係は、お互いにフィフティ・フィフティですが、既存社会と移民との関係は、既存社会側の負担の方が遥かに重くなるのです。

 こうした側面を考えますと、移民受入政策は企業と移民にとっては利益とはなっても、一般の国民には不利益となり、国内において利益背反が生じます。そして、圧倒的多数は負担とリスクを背負わされる一般国民の方ですので、政府の移民促進政策に”待った”をかけるのも、理由がないわけではないのです。政府や経済界が、国内における一般国民の不満を理解しているのか、疑問なところなのです。

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中国を国際法に従わせる方法とは?

2016年08月22日 15時09分37秒 | 国際政治
 中国が無法国家であることは、先月12日に下された南シナ海問題に関する仲裁裁定の拒絶により、誰もが認識するところとなりました。遵法意識が欠如しているのですから、たとえ様々な法を制定して縛ろうとしても、その努力は水の泡となるどころか、中国に有利に働くことさえ予想されます。

 中国に対する懸念は、核兵器禁止条約でも同じことが言えるのですが、それでは、中国を国際法に従わせる方法はあるのでしょうか。曲がりなりにも国際社会International communityを称するのであるならば、”無法国家”を放置したのでは、もはや”社会”とは言えなくなります。仮に、”国際ルール”と”中国ルール”が併存する状態に至れば、それは、国際社会そのものの分裂を意味するからです(同様に国際法を無視するISと然程変わらない…)。中国に対しては、既に、日本国をはじめ、国際社会は仲裁裁判所の裁定の受け入れを強く求めていますが、未だに南シナ海における状況が改善されたとする報告はありません。中国が、なおも”話し合いによる解決”を主張していることは、結局は、仲裁裁判所の判決に従わないということの裏返しであり、言葉による説得には無理がありそうなのです。となりますと、中国を国際法に従わせるためには、不服従の態度から生じる不利益を最大化させる必要があります。

 第一に、経済制裁としては、中国経済が不安定化している現状を考慮しますと、輸出入の禁止措置、資本の一斉引き上げ、中国共産党幹部の海外資産の公開と全面的凍結・接収などが効果的かもしれません。特に中国の兵器や軍事システムには、日本製を含む輸入品が使用されてもいますので、経済制裁は、戦争の続行を不可能とします。

 第二の方法は、中国に対して軍事的圧力をかけることです。現行の制度では、国際法の常設の執行機関は設置されておらず、特に安保理の常任理事国が無法国家である場合、国連は機能不全となります。これは、国連のシステム上の重大な欠陥ですが、この欠陥を補うには、国際社会が結束し、中国を上回る軍事力を以って国際法の遵守を迫る必要があります。この点、核戦力を見ますと、米中間では、今のところ相互確証破壊の段階に至っておりませんので、アメリカは中国に対して軍事的に優位にあります。核におけるアメリカの対中優位が、核兵器禁止条約の締結が時期尚早である理由でもあります(優位性の自発的放棄…)。

 中国がしばしば自慢する孫氏の兵法の極意は”戦わずして勝つ”というものですが、これを逆手に取れば、経済制裁や軍事的圧力を以って中国を負かす、乃ち、国際法に従わせることも不可能な事ではありません(この間、防衛技術開発による中国の核の無力化も進める…)。国際法の執行機関の欠如という現実がある以上、中国に対しては、国際社会が協力し、実行力のある制裁を課すべきではないかと思うのです。法の支配の確立こそ、恒久的平和への確かなる道なのですから。

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核兵器禁止条約には”核を上回る強制力”が必要

2016年08月21日 13時42分10秒 | 国際政治
 今月19日に、スイスのジュネーヴで国連核軍縮作業部会において、国連総会に対し、2017年に核兵器を法的に禁止するための交渉を招集するよう要請する勧告が採択されました。法的な禁止には、(1)核保有国間による核兵器削減条約の締結、並びに、(2)一般国際法としての核兵器禁止条約の制定の二つの方法がありそうです。

 (1)の方法は、米ソINF廃棄条約、米ロ戦略攻撃削減条約、及び、米ロ核軍縮条約といった二国間条約を多国間に広げた形態であり、全ての核保有国の合意を要します。昨日の記事では(1)を前提として問題点を指摘しましたが、削減ではなく禁止にまで踏み込んでいますので、核保有国が自発的に核放棄に合意するのか、疑問なところです。一方、(2)では、まずは、現行NPT条約を発展的に解消し、核保有国を含めた全ての諸国に対して法的拘束力を有する一般国際法を制定する方法が推測されます(NPT改正も含む…)。現行のNPTは、191カ国が加盟し、ほぼ全ての諸国を網羅しておりますので(北朝鮮の脱退は認められていない…)、今般、国連核軍縮作業部会で賛成多数で勧告が採択されたように、後者の方が、前者よりは条約成立の見込みは高いかもしれません。

 しかしながら、たとえ一般国際法としての核兵器禁止条約が制定されたとしても、ここでも、困難な問題にぶつかります。それは、条約違反の行為が”核保有”であるため、仮に、違反国に対して武力で核兵器を破棄させようとすれば、非核保有国が核なしでこの作業をしなければならない点です。核兵器禁止条約を誠実に順守する国は、核を保有していませんので、軍事力において核保有国と、条約違反の非保有国との間では、著しい差が生じます。この状態で、核保有国の核放棄を実現するのは至難の業なのです。軍事力を用いなくとも、経済制裁を行えばよい、とする意見もあるでしょうが、北朝鮮の事例を見ても分かるように、核保有のためならば経済を犠牲にする国も珍しくはありません。このことは、核兵器禁止条約を制定するに際しては、核抜きで”核を上回る強制力”を準備しなければならないことを意味しています。なお、(2)には、対人地雷禁止条約やクラスター弾に関する条約のように任意の諸国で条約を締結する方法もありますが(中途半端な一般国際法…)、核保有国が加わらないのでは、全く以って無意味です。

 核抜きで”核を上回る強制力”としては、核ミサイル迎撃技術の開発等(核の無力化…)も想定されますが、少なくとも、違反国に対する制裁手段の準備ができていない段階での核兵器禁止条約の成立は、軍縮=抑止力の低下を意味しますので、順法精神の欠如した諸国を増長させてしまうのではないかと懸念するのです。

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核兵器禁止交渉が困難な理由ー悪意の核保有国問題

2016年08月20日 13時33分13秒 | 国際政治
核兵器禁止交渉へ勧告採択=全会一致は実現せず―国連作業部会
 昨日、国連の核軍縮作業部会では、核兵器禁止に向けた交渉を2017年に招集するよう国連総会に勧告する報告書を採択したそうです。採択に際して、日本国政府は棄権を選択しておりますが、果たして核兵器の禁止は実現するのでしょうか。

 実際に、核兵器を全面的に禁止するとなりますと、その主たる手段は、核保有国による核放棄となります。既存のNPTには、主権平等の原則に照らして不平等条約との批判がありますし、多くの諸国が核の恐怖から逃れることができるのですから、おそらく、国連総会での多数決での採択となれば、交渉の召集も夢ではありません。しかしながら、その一方で、当交渉には、全く問題がないわけではありません。

 第一に、交渉参加国はどの国か、という問題です。NPTでは、1967年1月1日以前に核を保有した国については、特別に核保有国の地位を認めていますが(国連常任理事国5か国)、その後、インド、パキスタン、イスラエルが核を開発し、今日では、北朝鮮もNPTに反して核保有国を自称しています。全面禁止を目指すならば、これらの諸国も交渉に招集しなければならないのですが、交渉参加は、隠し持っていた核の存在を認めることになるため、参加を拒否する国も現れることが予想されます。逆に、北朝鮮は、核放棄の意思はなくとも、積極的に交渉に参加することで、核保有国の地位の既成事実化に努めるかもしれません。

 第二に、”誰が、核保有国の核を放棄させるのか”という問題があります。現行のNPT体制にあっても、IAEAの査察を拒んだり、核物質などの隠蔽工作を行う国もあります。核兵器禁止となりますと、軍事大国である核保有国を相手に核廃棄確認のための査察の実施を要しますが、この査察、100%確実に実行することは出来るのでしょうか。ロシアや中国といった諸国が、”虎の子”の核兵器を放棄し、査察に積極的に協力するとは思えず、たとえ交渉が全面放棄で妥結したとしても、密かに隠し持つ可能性は決して小さくはありません。

 第三に、核兵器の廃棄については、全ての核保有国が同時に実施する必要があることです。放棄時期においてタイムラグが許されますと、核の均衡が一気に崩れたり、核の傘が消滅することにもなりかねません。最悪の場合には、その間隙を衝く形で、一方的先制攻撃による核戦争が引き起こされかねないのです。

 以上に幾つかの問題点を挙げてみましたが、核兵器禁止へのプロセスを見ますと、善意から核兵器を放棄しようとする国、あるいは、平和の為に核廃絶を望む国ほど、安全保障上のリスクに晒されます。核兵器禁止交渉を行うならば、悪意の核保有国対策を、まず先に、十分に施す必要があるのではないでしょうか。

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慰安婦資料「世界の記憶」申請を日本国の名誉回復のチャンスに

2016年08月19日 15時14分18秒 | 国際政治
 本日、産経新聞の一面に、慰安婦資料のユネスコ「世界の記憶」登録問題に関する記事が掲載されておりました。今回の申請は、韓国、中国、日本、オランダ、フィリピン、並びに、台湾の民間団体による国際共同申請であり、今年5月に共同申請書が提出されたそうです。

 「世界の記憶」については、昨年登録された「南京大虐殺文書」や「明治日本の産業 革命遺産」の登録プロセスにおいて、日本政府の対応が不十分、且つ、譲歩的であったことから、慰安婦資料についても日本国内には強い警戒感があります(前回の中国単独申請では却下されている…)。登録手続きについては制度改革が実現したものの、日本国政府が対応を誤りますと、前回の登録時の二の舞になる怖れがあるからです。慰安婦問題については、昨年末の日韓合意で「国連などの国際社会においてお互いに避難・批判することは控える」とされたものの、ソウル市が登録のための活動を行っている民間団体に資金援助を実施しており、この合意は、誠実に順守されているとは言い難い状況にあります。一方、日本国政府も、事実に関する情報発信は合意に含まれないとする立場にありますので、民間団体による「世界の記憶」の申請手続きは、日本国側にとりましても、絶好のチャンスともなります。

 当記事によりますと、慰安婦資料の殆どが元韓国人慰安婦の証言であり、数少ない公文書形式の資料も、オランダ、アメリカ、イギリスのもののようです。オランダの資料は、「スマラン事件」の裁判記録なのでしょうが、この事件は、占領地で起きた軍規違反の犯罪であり、朝鮮半島における国家的動員としての組織的強制連行の証拠とはなり得ません。日本国政府が、韓国や中国には証拠となる資料がなく、慰安婦の証言頼りである現状を説明し、かつ、事業者に雇用されていた’職業婦人’であったことを証明する内外の資料を提示すれば、説得力も増します。また、アメリカでは、韓国側の主張に反して、”職業婦人”であったと記す公文書も公開されていますので、これを活用することもできるでしょう。

 昨年末の慰安婦合意では、日本国側が戦時の韓国人犯罪被害者に対して10億円の人道的支援を約すことで、一先ずは決着を見ましたが、日本国の名誉回復の問題は積み残されております。慰安婦資料の「世界の記憶」への登録申請は、日本国が国際社会において歴史的事実を発信し、名誉を回復する数少ないチャンスの一つなのですから、日本国政府は、この機会を逃してはならないと思うのです。

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ムスリム男性豚肉提供問題-責任は食した本人にあるのでは?

2016年08月18日 15時07分44秒 | 社会
ムスリムの男性に誤って豚肉提供 横浜の入管、昨年夏も
 横浜の入管にて退去強制手続きで収容されていたイスラム教徒のパキスタン人男性が、豚肉の入った食事を提供されたとして抗議のハンガーストライキを行っているそうです。支援団体も出現しているそうですが、この問題の責任は、豚肉を食した本人にあるのではないでしょうか。

 マスコミの報道は、イスラム教徒に豚肉入りの食事を提供した入管側に責任があるかのようです。批判の矢面に立たされたためか、入管側も、担当者が「食事を提供する前の確認を徹底し、再発防止に努めていく」と述べ、既に謝罪モードで対応しています。しかしながら、日本国側に、収容者の事情に合わせた食事を提供する義務はあるのでしょうか。仮にあるとしますと、全ての収容者に対して同等の配慮をしなければならなくなります。ヒンドゥー教徒には牛肉を省き、厳格な仏教徒や菜食主義者には野菜のみのメニューとし、ユダヤ教徒には”コーシェル”を提供し、食物アレルギー等も徹底して事前に調査する必要があります。果ては、個人的な好き嫌いを理由に苦情が寄せられたのでは、入管の調理担当部門は対応しきれなくなります。入国管理に必要とされる経費の増大にも繋がることになるでしょう。また、こうした配慮が、仮に、一般の公立学校等にも求められるようになるとしますと、給食のメニューから様々な食材が排除され、栄養バランスにも偏りが生じることにもなりかねません(最小公倍数をとると一部の穀物や野菜しか残らない…)。

 以上の点を踏まえますと、自らの信仰や信条に忠実であろうとするならば、まずもって、自らが食せない食材が一般的に食されている日本国への入国自体を諦めるべきですし、それでも、入国を試みた以上、収容者側が、入管から提供された食事の中から禁止されたものを、自らの手で取り除くしかありません。入管の対策としては、”食事には宗教的に禁止されている食物を含む場合がありますので、その場合には、残してください”とする注意書きを添えるのが現実的ではないかと思うのです。

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対日”暴言”では負けないバイデン副大統領

2016年08月17日 15時24分18秒 | 国際政治
「私たちが日本の憲法書いた」=トランプ氏の核武装論を批判―米副大統領
 ”暴言王”と言えば、共和党のトランプ候補の異名でもありますが、民主党のバイデン副大統領も対日”暴言”にかけては負けてはいないようです。”私たちが日本の憲法を書いた”と”真実”を語ってしまったのですから。

 バイデン副大統領の発言は、トランプ候補の日本核武装容認論に対する批判として飛び出してきたものです。トランプ候補の核武装論も日本国に衝撃を与えましたが、バイデン副大統領の米国製憲法論も、幾つかの点で日本国を唖然とさせました。第一に、従来、日本国憲法の草案がGHQによって作成されたことは周知の事実であったにも拘わらず、建前としては、アメリカ側も、”日本国憲法は日本国が制定したもの”とのスタンスを保ってきました。しかしながら、バイデン副大統領は、にべのもなく”アメリカが作った”と言ってしまったことで、この建前が崩れてしまいました。日本国としましては、独立主権国家としての揺らぎを覚えざるを得ませんので、今後の憲法改正議論に影響を与える可能性があります。第二に、日本国憲法が”米国製”であると明言されたことは、憲法第9条の評価にも影響を与えます。しばしば、日本国憲法の制定は日本が世界に誇る偉業であり、ノーベル平和賞に値するとの意見が見受けられますが、当憲法が”米国製”であるならば、受賞者はアメリカということになります。もっとも、この点に関しては、バイデン副大統領は、第9条を念頭に”日本国が核保有国になり得ないため”と理由を付しています。ここでも建前の崩壊が起きており、憲法第9条の真の意図が、核不保持を含む日本国の軍縮にあったことを図らずも漏らしているのです。この目的の暴露が第三の点です。

 アメリカの大統領選挙における”暴言”とは、根も葉もない誹謗中傷ではなく、これまで隠されていたり、タブーとされてきた事実や真実の公言という性格が見受けられます。暴言が暴言を呼び、結果的に、情報公開の場となっているアメリカ大統領選挙は、日本国もまた、無関心ではいられないのです。

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