万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

AIIBで既に”拒否権”を発動していた中国

2015年03月31日 15時39分56秒 | 国際政治
中国、AIIB主導権堅持を強調 「拒否権放棄」報道を否定(フジサンケイビジネスアイ) - goo ニュース
 ”AIIBの決定手続きにおいて中国は拒否権を持つか、否か”という問題については情報が錯綜しており、今のところ判然としない状況にあります。欧州諸国の参加に際して、中国は拒否権を放棄したと報じられる一方で、中国自身はこの報道を否定しているからです。

 その一方で、中国は、既に”拒否権”を単独で発動していた模様です。報じられるところによりますと、今年2月に北朝鮮がAIIBに加盟を申請したところ、経済・金融制度が参加基準に達していないとして拒否したというのです。もちろん、北朝鮮は、国連の経済制裁を受けている国ですので、拒絶されて当然なのですが、中国に参加国に関する単独決定権があるとしますと、将来に問題を残すことになります。北朝鮮のみならず、核開発問題で揉めているイランが参加を希望した場合はどうなるのでしょうか。創設メンバーとはならなくとも、”参加レベルに到達した”として、追加メンバーとなる可能性もあります。また、仮に、協定において理事会が設置され、開催された理事で欧州諸国が反対したとしても、議決権の大半を握る中国、あるいは、親中諸国のサポートを受けて賛成票を投じれば、北朝鮮やイラン等の参加も実現します。設立協定は未作成の段階なそうですが、参加資格に”国連の制裁対象国ではない”といった条件を付けるなどしませんと、AIIBは、国際社会における制裁対象国に対する迂回融資ルートともなります。

 さすがの中国も、北朝鮮が参加するとなれば欧州諸国をはじめ多数の参加国を集めることは難しいと判断し、”北朝鮮外し”あるいは”北朝鮮隠し”を決断したのでしょうが、この危機は完全に去ったわけではありません。果たしてAIIBの参加国は、今後の設立協定の作成過程において、参加国に関する中国の拒否権発動、あるいは、中国を中心とした多数派形成を阻止できるのでしょうか。

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AIIBの現代版シルクロード構想は難問山積

2015年03月30日 15時54分13秒 | その他
参加視野に積極対応を=アジア投資銀で日本政府に―福田元首相(時事通信) - goo ニュース
 中国主導のAIIBの設立については、安全保障上の問題点も指摘されておりますが、この構想には、工事費や技術面における問題も山積しているようです。

 AIIBに参加を表明した諸国、特に欧州諸国は、現在の”陸のシルクロード”である欧州市場と中国市場を結ぶ鉄道(高速鉄道?)の建設に期待をしているものと推測されます。一方、中国が、中東の油田地帯や中央アジアの天然ガス等を直接に中国市場に供給するパイプラインの建設計画に融資先を決めるとしますと、AIIB設立協定の内容次第でもありますが、参加国として、何らかの方法で内部から阻止に動くかもしれません。このため、”陸のシルクロード”のためのプロジェクトが融資先となる可能性としては高いのですが、その実現性と経済効果には、疑問を抱かざるを得ません。高速鉄道ともなりますと、厳格な安全基準が設定されるものですが、砂漠地帯を通過するため、安全性を確保することは容易なことではありません。彷徨える湖ロプノールで知られるように、砂漠は常に風力によって移動しており、砂嵐が吹けば、一晩で砂に埋もれることも少なくありません。となりますと、日本国のリニアモーターカーのように、チューブの中に車体を走らせるか、あるいは、砂漠の地下を通すしかありませんが、総工費は天文学的な数字となります。しかも、先に前例のない大工事となりますので、予期せぬ事態も発生することでしょう。それでも、コストに見合った経済効果があればよいのでしょうが、中国人観光客を大量にヨーロッパの観光地に輸送するだけならば、飛行機の方が低コストで短時間で目的地に到達するでしょうし、停車駅の誘致に失敗した国や地域では、何らのメリットも享受できず、逆に人口流出による過疎化が進行するかもしれません。

 シルクロードの復活計画にロマンを感じる人も少なくないのでしょうが、プロジェクトの詳細を詰めて具体化する過程で、砂上の楼閣の如く、幻のシルクロードに終わる可能性も否定できないのではないかと思うのです。

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AIIBの融資先は中国単独で既に決定か-”全ての道は北京に通ず?”

2015年03月29日 15時04分39秒 | 国際政治
アジアインフラ投資銀 参加表明41か国に(NHKニュース&スポーツ) - goo ニュース
 昨日、ボアオ・アジア・フォーラムの年次総会において、中国の習近平主席が中国中心の経済圏の構築を提唱するとともに、それを実現する手段としてAIIBの名を挙げと報じられております。中国が構想する経済圏とは、”一帯一路”と呼ばれるシルクロードの復活であり、さながら”全ての道は北京通ず”の如くです。

 この提唱で明らかになったことは、AIIBの優先的な融資先は、既に決まっている、ということです。AIIBにつきましては、協定も未作成の段階であることに加えて、理事会の設置さえ危ぶまれています。理事会なし、となりますと、加盟国が参加する形での決定機関が存在しないことになりますので、事実上、中国の決定、即ち、独裁的権力を固めたとされる習主席の決定が、AIIBとしての決定となる可能性は否定できません。AIIBでは、総裁は中国国際金融有限公司(CICC)前会長の金立群氏が予定されおり、主要言語も中国語なそうですので、AIIBのスタッフの大半も中国人となるのでしょう。組織全体が中国色に染まっている状況で、中国共産党のトップの意向を無視できるはずもなく、AIIBの融資対象は、”一帯一路構想”上のプロジェクトに集中するものと予測されるます。つまり、他の参加国は、中国の”一帯一路構想”に資金面から協力する構図となるのです。しかも、古代の”道”は道路や航路ですが、現在の”道”は、道路に限定されず、鉄道、石油・天然ガスのパイプライン、港湾など様々なラインも含まれています。石油・天然ガスのパイプラインが中国から中東に直結されれば、有事に際してのインド洋やマラッカ海峡等におけるアメリカによる封鎖が無力化されるとも指摘されていますし、シルクロードが砂漠に埋もれる原因となったインド航路の発見とは全く逆に、ユーラシア大陸における物流の流れが大きく変化するかもしれません(逆に、衰退する地域も出現するかもしれない…)。また、道路や鉄道の敷設は、人民解放軍の移動軍隊の大規模化、移動速度の上昇、活動範囲の拡大をも可能とします。もっとも、気象条件が過酷な砂漠地帯を通りますし、政治的にも不安定な地域ですので、長期に及ぶ難工事も予測され、経済的効果も未知数です。

 果たして、習政権は、これらのプロジェクトの内、どれを優先させるのでしょうか。融資先のプロジェクトを見れば、中国のAIIB設立の真の狙いがどこにあるのか、読み解くことができます。参加国の多くは、アジア太平洋経済社会委員会が策定したアジア・ハイウェー構想などを思い浮かべているのでしょうが、国際社会は、中国中心の一帯一路構想のリスク面にも備えるべきではないかと思うのです。

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”人身売買”-近づく”慰安婦”の実像

2015年03月28日 15時26分03秒 | 国際政治
慰安婦問題で「人身売買」言及=安倍首相、米紙インタビューに(時事通信) - goo ニュース
 朝日新聞社の虚偽報道以来、日本軍が20万人もの朝鮮女性を戦場に強制連行して”慰安婦”にした、とする説は、韓国の積極的な国際プロパガンダによって国際社会に流布されてしまいました。一端、このような説が広がりますと、それを打ち消すことは、流布の数倍の努力を要します。アメリカでは、公立学校の教科書にも記載されているのですから。

 本日のニュース記事によりますと、安倍首相は、米紙のインタヴューに応えて、はじめて「人身売買」という言葉を用いたと報じられております。個別の「人身売買」事件については、今後、調査する必要がありますが、少なくとも、”日本軍による拉致説”や”性奴隷説”よりは、はるかに”慰安婦”の実態に近づいているのではないかと思うのです。韓国人元慰安婦の証言を集めても、日本軍によって組織的に連行されたとするものはなく、せいぜい事業者の勧誘に憲兵が立ち会っていたといった証言があるのみです。日本政府や軍が慰安婦の強制動員を実施した事実もなく、吉田証言で語られた”慰安婦狩り”は作り話であることは、朝日新聞社も認めております。近年明らかとなった事実から推測しますと、朝鮮半島出身の”慰安婦”とは、その大半は自発的に事業者の募集に応募した職業慰安婦であり、その中には、少数ながら事業者に騙された犯罪被害者も存在した、ということです(朝鮮半島では、李朝時代から人身売買が頻発していた…)。そうであれば、慰安婦問題が持ち出された80年代から90年代にかけて(元慰安婦の年齢はおよそ60代…)、被害者として名乗り出た慰安婦の数がわずか243名であった理由も説明が付きます。しかも、これらの元慰安婦達の証言も信憑性が低く、河野談話の調査の時には厳選されたと言います。犯罪被害者ですので同情を寄せるべき人々なのですが、謝罪と賠償を得るために日本国を誣告するとなりますと憐憫の情も飛んでしまいます…。

 アメリカで設置されている慰安婦像には、日本兵が朝鮮女性を強制連行する様子を描いたレリーフなどもあるそうです。教科書の記述の訂正のためにも、日本国政府には、慰安婦の実像について、国際社会に対してより積極的な説明をお願いしたいと思うのです。

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韓国のAIIB参加-米中政経二重外交の行方

2015年03月27日 15時57分59秒 | 国際政治
 中国主導で鳴り物入りで設立されるアジアインフラ投資銀行。本日、韓国もまた、参加を表明した報じられております。決定機関である理事会さえ設置されない可能性があるにも拘わらず、かくも多くの諸国が参加表明することには驚かざるを得ません。加盟国に意見表明の場が保障されていなければ、内部からの改革は、夢のまた夢となるからです。

 ところで、戦後、韓国は、安全保障はアメリカに頼る一方で、経済面においては、日本国の支援を受けてきました(韓国側は、日本国の支援を決して認めようとも、感謝しようともしませんが…)。韓国は、政経両面において他国に依存してきたわけですが、中国の急速な台頭を受けて、この構図は大きく転換しつつあります。安全保障面においても、韓国は中国の人民解放軍との関係を強めていますが、最も顕著に表面化しているのは日韓関係の冷え込みです。韓国側からすれば、経済面において中国に依存できる以上(人口規模では中国は巨大市場…)、政治的に激しく対立している日本国をもはや”利用”する必要はないと算段しているのでしょう。そうでなければ、竹島問題にせよ、慰安婦問題にせよ、反日活動をここまで過激化させるはずもありません。しかしながら、韓国は、首尾よく、”政治はアメリカ、経済は中国”という”政経二重外交”とも言うべき状況を維持できるのでしょうか。

 ”中国の夢”がアジア(ゆくゆくは世界?)の覇者となって属国を従えることであるとしますと、中国が、政治面における韓国のアメリカ依存を許すとも思えません。AIIBへの参加は、米中間にあって韓国が中国を選択するか否かの試金石とも噂されてきましたが、韓国の”政経二重外交”は、中国への一元依存で終焉するシナリオもあり得ると思うのです。

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朝鮮総連議長家宅捜索-日朝間の経済ルートは一切断つべき

2015年03月26日 15時38分42秒 | アジア
「根拠なく政治弾圧」=日朝関係悪化する―不正輸入事件捜索で・総連議長(時事通信) - goo ニュース
 日本人拉致事件に加担したとされる朝鮮総連。本日、朝鮮総連の議長が、不正輸入事件の件で家宅捜査を受けたと報じられております。

 京都府では関連の逮捕者も出ておりますが、逮捕容疑は、対北経済制裁の一環として外為法で輸出入が禁じられているマツタケを、中国産と偽って不正に輸入したというものです。経済制裁の網の目を潜り抜ける違法行為が摘発されたのですが、その一方で、これまで、北朝鮮との間に貿易ルートが開かれていたこと自体が極めて異常であり、かつ、危険な状況であったのではないかと思うのです。そもそも、北朝鮮とは国交がないのですから、両国間には、政治的な外交関係のみならず、経済関係も存在していないはずです。ところが、制裁以前にあっては、北朝鮮産のマツタケは日本国の市場で堂々と売買されていたのであり、当然に、その代金は北朝鮮に支払われていたはずです。円建て決済であれば、北朝鮮が国際市場において核・ミサイル開発に必要な資材を調達するに際して、資金源となったことは想像に難くありません。在日朝鮮人の事業者を介した北朝鮮との経済関係は、にみすみす資金調達ルートを提供するようなものです。現在、アメリカ政府は解除しているとはいえ、北朝鮮は、事実上の”テロ支援国家”であり、常々、”東京を火の海にする”と恫喝して、日本国を敵視する”仮想敵国”なのですから。

 本事件を切っ掛けとして、在日朝鮮人のパチンコや消費者金融事業者等による本国送金も含めて(規制はあるが送金自体は可能…)、日朝間の経済ルートは、一切、断つべきです。先日も、北朝鮮が核弾頭の小型化技術を手に入れる恐れがあると指摘されておりましたが、日本国政府は、日本国、アジア、そして国際の平和のためにも、北朝鮮に対してはより厳しい態度で臨むべきなのではないでしょうか。

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中国の対日”侵略”連呼は自らの侵略を隠すため

2015年03月25日 15時53分44秒 | アジア
中国の国防費増額に首相「日本も負けない形で予算措置」(産経新聞) - goo ニュース
 1960年代に核開発に成功して以来、中国の核大国化は否定のしようもない事実です。NPT体制にあって、核保有国の一国として”核武装”しており、常識的に考えれば、中国を侵略しようとする国などないはずです。”核の抑止力”が働いているのですから。

 それでは、何故、中国は巨額の予算を軍事分野に投入しているのでしょうか。純粋に防衛目的であれば、軍事費に多額の予算を割く必要はないはずです。実のところ、他国から侵略を受ける脅威がほとんど存在しない中国には、軍拡を説明する正当な理由がないのです。理由があるとすれば、何れも、国際法違反であり、国際社会おいて到底認めることができない目的ばかりです。自ら侵略したチベットや東トルキスタンの独立運動を軍事力で抑え込むこと、周辺諸国との紛争を武力で解決すること、軍事力でアジア諸国を自らの属国となし、アジアの盟主となること、アメリカを軍事技術においても抜き去り、世界大に中国中心の華夷秩序を打ち立てること…。また、国内的な目的があるとすれば、人民解放軍を予算の面で優遇することで軍の完全掌握を図ること、あるいは、国民の不満が高まり、大規模な暴動が発生した場合に武力鎮圧すること…などが推測されます。中国の軍拡は、”平和的”どころか、全世界の安全を脅かしかねないのです。

 第二次世界大戦から70年目に当たる今年、中国は、戦勝記念の行事などにおいて、歴史認識の重要性を強調し、対日批判を強めています。しかしながら、過去の戦争を持ち出しての対日”侵略”連呼の目的は、自国の軍拡に正当な理由がないことの裏返しでもあります。日本国政府も国際社会も、中国の真の意図を見抜き、リアリズムに徹して対応を急ぐべきと思うのです。

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中国主導のAIIB問題-インフラ資金不足解消に別の方法はないのか?

2015年03月24日 15時52分47秒 | アジア
AIIB参加に「極めて慎重な立場」と麻生財務相(産経新聞) - goo ニュース
 中国主導のAIIBの設立が国際社会の関心を集めておりますが、本日も、中国メディアの情報によりますと、ルール造りについて不安と批判があることを意識してか、中国当局は”ルールは中国が造る”と息巻いているそうです。ところで、そもそも、中国主導のAIIBは必要なのでしょうか?

 中国の政治的な野望と並んで、AIIBの存在意義に関する経済的な説明としては、しばしば”アジア市場にはインフラ資金が不足している”というものがあります。中国の資金がインフラ市場に流れれば、この資金不足は解消されることが期待されるからです。しかしながら、資金不足の解消方法は、アジア開発銀行と並んで、もう一つ、別の国際投資銀行を設ける方法が唯一の解決策ではありません。第一に、既存のアジア開発銀行や世銀等の融資能力を高める方法があります。これらの国際機関が、増資や起債額の拡大などに努めることも解決方法の一つです(もっとも、これまでの姿勢からしますと、アメリカ政府は反対するかもしれませんが…)。また、先日の記事でも指摘したように、融資先の選別を厳しくし、中国といった経済大国を融資対象から外せば、資金に余裕が生まれます。第二の方法は、民間金融機関の呼び込みです。インフラ整備計画を進めるに際して、各国政府が、民間の金融機関に国際シンジケートの結成を呼びかけたり、直接に融資参加を勧誘する方法です。政治的目的が入り混じる中国式の”公営投資銀行”よりも、経済性を重視する民間であれば、そのノウハウが生かせる可能性もあります。第三の方法としては、各国政府が、”建設国債”、あるいは、”インフラ債”を発行して、内外の民間法人や個人から直接に出資を募る方法もあります。アジアの成長力からすれば、債務不履行リスクはそれ程には高くはありませんので、インフラ市場における民間からの資金調達も、一つの考え方です。近年の先進国中央銀行による量的緩和策策や低金利の長期化は、資金調達には有利な状況です。また、民間からの資金調達に際して、アジア開発銀行が、発行債権等に政府保証ならぬ、”ADB保証”を付与すれば、さらに調達は容易となるかもしれません。

 アジアの経済的な繁栄は望ましいことですが、結果として、資金調達面での中国依存への傾斜が中国の覇権主義を助長するようでは、そのリスクは計り知れません。安全保障上の危機まで招くかもしれないのですから、インフラ資金の不足解消については、中国依存に陥らないよう、別の方法もまた、試みるだけの価値はあると思うのです。

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オバマ政権による共同事業提案-ADBはAIIBと競争を

2015年03月23日 15時02分29秒 | 国際経済
オバマ米政権が中国主導投資銀との共同事業を提案(産経新聞) - goo ニュース
 中国主導のアジアインフラ投資銀行への参加見送りを、積極的に各国に呼びかけてきたアメリカのオバマ政権。英独仏伊による相次ぐ参加表明に危機感を感じたのか、アジア開発銀行と同投資銀行との共同事業を提案したと報じられております。

 このニュースに対する解説としては、参加は見送るけれども共同事業を実施することで、アメリカは一定の影響力を保持する狙いがあるとする見方がある一方で、遂にアメリカも中国の前に膝を屈したとする見解も見受けます。共同事業の決定や運営に関する主導権がアジアインフラ投資銀行に握られるとしますと、事実上、アジア開発銀行は、出資のみを担うサブの出資パートナーの役割に位置付けられるからです。本日の日経新聞の記事によりますと、中国の楼継偉財政相は、「西側ルール、最善と限らず」として、アジア開発銀行の官僚主義的な煩雑な手続きを批判したそうです。裏を返しますと、時間がかかってもコンセンサスの形成を重視する民主的な欧米式ではなく、融資案件の決定は中国式の独裁で行くことを宣言したとも言えます。アジア全体を対象に、中国は、”開発独裁”を目指しているのかもしれません。効率性だけを追求すれば、確かに独裁にも利点はあるのですが、国際機関にあって一国が独裁的に決定権を行使するとなりますと、加盟国が不満を抱く原因となりますし、”開発独裁”による融資先国の乱開発が現実のものとなる恐れがあります。果たして、民主的な組織と非民主的な組織が、共同で事業を実施することができるのでしょうか。

 AIIBに接近することで、AIBが取り込まれたり、あるいは、中国の腐敗体質が伝染するならば、両者は、それぞれ独自の路線を歩み、競争関係を維持した方が良いのではないでしょうか。インフラ投資分野でも、民間の金融機関を含めて競争のメカニズムが働いた方が望ましいとする見方もあります。アジア開発銀行は、インフラ投資銀行としてのスキルと融資能力をさらに高め、低利融資、現地ニーズへのきめ細かな対応、雇用機会の提供、良好な労働条件、生活水準の向上、環境保全…を実現する事業への融資を前面に打ち出せば、融資を受ける側の国も、信頼性や透明性を基準にアジア開発銀行を選択すると思うのです。

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アジアインフラ投資銀行-ODAやアジア開発銀行を踏み台にする中国

2015年03月22日 15時29分26秒 | 国際経済
中国主導の投資銀、首相「慎重な検討必要」 融資審査・組織運営に懸念(産経新聞) - goo ニュース
 ここ数日、中国主導のアジアインフラ投資銀行の問題点を書いてきましたが、本日も引き続き、この問題を扱いたいと思います。本日のテーマは、中国のダブル・スタンダードです。

 経済発展の速度が急激であったため、中国国内のインフラが十分に整備されているとは言えず、凡そ14億人とされる国民の平均的な生活水準は、先進国レベルには追い付いていません(汚染による劣悪な環境も…)。このため、膨大な資金力を貯め込んでいるとされながら、日本国のODA対象国となると共に(最大の支援対象国であった…)、国際機関からも融資を受けてきました。日本国からのODAは、打ち切り論がありながらも、今日なおも、様々な名目で継続されているそうです(年間300億円以上?)。アジア開発銀行についても、つい最近までは、”経済大国であり、かつ、非民主的な体制を敷いている中国が融資先になるのは適切ではなく、資金調達に苦しむ途上国を優先すべき”とする批判を受けつつ、中国は、今日に至るまで巨額の資金を借り受けています。自らもインフラ資金を要する国であり、実際に、諸外国や国際機関から資金援助を受けていながら、アジア開発銀行に挑戦するかのように、アジアの盟主を気取ってアジアインフラ投資銀行を設立する中国の姿勢は、狡猾なダブル・スタンダードとしか言いようがありません。常識があれば、他国からのODAは遠慮し(ODA予算は他の途上国へ…)、アジア開発銀行からの融資も、自国より資金力の乏しい他の諸国に譲るはずです。

 他国や国際機関からの融資なくして本気で自国の隅々までインフラを整備しようとするならば、中国には、アジアインフラ投資銀行に資金を投入する余裕はないはずです。中国が付けた優先順位は、間違っているのではないでしょうか。

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アジアインフラ投資銀行の白紙協定の行くへ

2015年03月21日 15時01分35秒 | 国際経済
日米の参加待つ=中国(時事通信) - goo ニュース
 加盟申請締め切りの3月末が迫り、中国主導のアジアインフラ投資銀行に関する情報が飛び交っております。報道量が増える中で、驚かされるのは、実のところ、”アジアインフラ投資銀行協定”が未だに作成されていないというのです。

 イギリスが参加を表明したことで、アジアインフラ投資銀行の参加国数は急激に増加しましたが、不思議に感じるのは、協定が白紙の状態で加盟を決定していることです。一つ間違えますと、甘い言葉に騙されて白紙の契約書にサインをしてしまった結果、後から書き込まれた契約内容に縛られる事態に陥ります。本日の日経新聞の記事によりますと、当銀行への中国の出資比率は40%まで下がったそうですが、中国が大株主となる中国主導体制には変わりはないようです。白紙の協定には、中国憲法に記載されている”共産党の指導”のように、”中国の指導”が書き込まれるかもしれません。あるいは、法の支配ならぬ人治の国ですから、空文化している憲法と同様に、協定など意味のない単なる紙切れと見なしている可能性もあります。それとも、参加を表明した諸国は、協定が白紙段階であることにチャンスを見出したのでしょうか。設立準備に際して、中国当局の担当者が日本国にノウハウを訊いてきたとも報じられておりますので、国際機構の運営に実績のある欧州諸国が、参加国の権利として制度設計を含む協定の草案を造ろうとしているとも考えられます。そもそも、協定草案の作成権限や手続きさえ存在していないようなのです(中国による単独決定?加盟国による多数決による採択?)。はたまた、蓋を開けてみると、アジア開発銀行設立協定のコピーに過ぎないかもしれません。

 法の支配を無視してきた中国ですが、アジアインフラ投資銀行の設立を決定したことで、国際機関におけるルール作りという最も不得意とする難題を自ら抱え込むことになりました。中国のみに特権を与え、腐敗を助長する不透明な協定を造ろうものなら、参加国から一斉にブーイングを浴びせられることになるのではないかと思うのです。

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中国主導のAIIBはアジアインフラ市場の囲い込みか?

2015年03月20日 15時30分42秒 | アジア
条件整えば、アジア投資銀「協議の可能性」(読売新聞) - goo ニュース
 中国からの提唱で設立が決まり、最大の出資国である中国が牛耳るとされるアジアインフラ投資銀行(AIIB)。イギリスが突然に参加を表明したことから、独仏伊などの欧州諸国も雪崩を打つように加盟を決めています。

 中国主導であるのは、当投資銀行の出資比率における中国の割合が50%を超えるところにあります(75%とも…)。50%を超えるというこは、中国が認めた案件しか融資を受けることは出来ないことを意味しています。アジア開発銀行の出資比率は、最大の出資国である日米が共に15.7%ですから、アジアインフラ投資銀行における中国の出資比率は突出しています。このため、インフラの開発プロジェクトや計画の申請の段階で既に中国の事前許可を必要とするかもしれません。また、”全ての道はローマに通ず”さながらに、中国へのアクセスを円滑化したり、中国の産業に有益となる事業計画に優先的に有されることも予測されます。そしてこの間に、おそらく、中国側と融資を受ける側の国の間で巨額の賄賂が動くことでしょう。全く以って、”中国の中国による中国のための投資銀行”なのですが、それでは、何故、他の諸国は、急速に加盟に傾いたのでしょうか。アジアの途上国については、融資を受けるチャンスが生まれますので、インフラ整備資金の調達が主たる参加目的なのでしょうが(もっとも、高利貸し、債務不履行による差し押さえ、内政干渉のリスクも…)、先進国である欧州諸国にとりましては、決定にほとんど関与できないのですから、何らかの参加見返りとしてのメリットがあるはずです。報道によりますと、イギリスは、中国市場への自国企業の参入機会の拡大を理由として挙げたそうですが(シティでの起債にもメリット?あるいは融資を受ける側に?)、非参加国が懸念すべきは、非参加国の企業をアジアインフラ投資銀行の融資案件から締め出すことです(融資が人民元建てでなければ、それ程の脅威ではない…)。この行為は、全面的とは言わないまでも、アジアインフラ市場の囲い込みに他なりません。

 しかしながら、果たして、国際的な投資銀行が、融資先の国の政府決定や入札に際して、囲い込みを意味する受注条件や排他的条件を付けることは出来るのでしょうか(国家レベルのODAでは相互の合意による条件付きはあり得る…)。これまで、国際機関というものは、全ての諸国に対して中立・公平であることを前提にしておりますので、アジアインフラ投資銀行のような一国支配型の国際機関の出現は想定外の出来事です。仮に、アジアインフラ投資銀行が、非加盟国の入札締め出しを行う場合には、日米をはじめとした非加盟国は、何らかの対策を講じるべきではないかと思うのです。

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中国政府発行尖閣日本領地図-無主地先占の証拠

2015年03月19日 17時16分28秒 | アジア
 日本国の外務省が、ホームページにおいて1969年に中国政府が発行した地図に尖閣諸島が日本領として記載されている地図を掲載した件について、中国側は反発を強めているようです。”一枚や二枚の地図で事実は覆せない”として…。

 中国政府は、日本国側による地図公開が重大な意味を持つとは認識していないようです。しかしながら、日本国が、1895年1月にに国際法における無主地先占の法理を以って尖閣諸島を領有したこと考慮しますと、この地図の公開は、日本国政府の法的根拠を裏付ける証拠となります。先占の要件とは、(1)主体が国家、(2)客体は無主地、(3)国家の領有の意思表示、(4)実効的支配であり、先占が成立するためにはこれらの要件を全て充たす必要があります。この要件に照らしますと、公表された地図は、1969年まで中国政府が、尖閣諸島を日本領と認めており、実効的支配も及ぼしていないことを明確に示しています。つまり、尖閣小島に関して、日本国が先占要件を充たしていた証拠となるのです。しかも、中国政府は、自らが当該地図を作製したこと事態は否定しておらず、まぎれもない本物であるが故に証拠力が極めて高いのです。

 中国は、”一枚や二枚の地図で事実は覆せない”と強弁しておりますが、中国政府発行の一枚の地図こそ、国際法において中国の従来の主張を覆す威力を持ちます。仮に中国が何としても日本国に反論したいならば、一方的な言葉だけの対日批判ではなく、証拠があれば証拠を揃え、ICJへの提訴を試みるべきではないかと思うのです。

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中国の70年談話干渉により浮かび上がる価値の共有なき連合国

2015年03月18日 15時05分51秒 | 国際政治
ロシアのパレードに中国軍参加=戦勝70年、G7は欠席の動き(時事通信) - goo ニュース
 第二次世界大戦から70年が経過したにもかかわらず、中国の強圧的な態度を見ますと、この大戦が未だに尾を引いていることを実感せざるを得ません。今夏に予定されている70年談話の内容を、何としても中国の歴史観に合わさせようと、陰に陽に日本国に圧力をかけているからです。

 中国としては、第二次世界大戦を日本国を含むファシスト諸国に対する連合国の戦争として位置付け、自らは、戦勝国の一員として70周年を祝いたいのでしょう。戦勝国を強調するロシアの態度も中国と然して変わりはありません。しかしながら、中ロ以外の旧連合国諸国は、実のところ、両国の態度に困惑しているのではないでしょうか。何故ならば、第二次世界大戦当時にあって、ソ連邦(ロシア)と手を結んだのは、共通の敵を前にした一時的な打算の結果に過ぎないからです。第二次世界大戦において連合国が掲げた大義は、ナチス・ドイツと共にポーランドを侵略したソ連を連合国に引き入れた時点で色褪せてしまい、戦後も、1949年に共産党一党独裁の中華人民共和国が成立し、中華民国の後継を自称することで、この矛盾はさらに深まりました。価値の共有なき連合国は、早晩、元の対立状態に戻り、終戦を待つまでもなく冷戦を以って東西両陣営が鋭く対峙したのです。戦後、西側諸国は、旧枢軸諸国とは価値観を共有してはいても、東側諸国とは価値観を共有していません。冷戦崩壊後の今なおも、価値観、あるいは、イデオロギーをめぐる対立は続いているのです。

 共産党一党独裁国家である中国の歴史認識の強要と戦勝国アピールに違和感を感じるのは、歴史的には連合国の一員とは言い難く、かつ、それを称するには異質であることによります。そして、自由主義を標榜した連合国最大の過ちが、全体主義国家との軍事同盟であったとする事実もまた浮かびあがてくるのです。

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ケネディ大使暗殺脅迫が示唆する東アジア・テロ・ネットワーク

2015年03月17日 15時31分08秒 | 国際政治
「ケネディ大使殺す」と脅迫=2月に英語で、複数回電話―沖縄総領事にも・警視庁(時事通信) - goo ニュース
 今年の2月に、ケネディ米国大使が、何者かから暗殺の脅迫電話を受けていたと報じられております。この事件、韓国において発生した在韓米国大使襲撃事件と無関係とは思えません。

 ケネディ米国大使に対する脅迫電話は2月のことですので、時期的にはリッパート大使に対する襲撃事件よりも僅かに前の出来事となります。一つ間違えますと、日韓で連続する形で米国大使の暗殺が企てられる惨事となったのですが、背後には、国境を超えた反米テロ組織の存在が伺えます。日米関係も良好であり、一般の日本国民には米国大使暗殺の動機がありませんので、推測されるのは、在日韓国・朝鮮系のネットワークの暗躍です。リッパート大使襲撃事件の犯人は、韓国与党との繋がりが指摘されておりましたが、このネットワークは、表面上の対立関係とは別に、日本(在日韓国・朝鮮団体)、韓国、北朝鮮、そして、おそらく中国やロシアとも繋がっている可能性もあります。しかも、政治的主張を実現するためには、テロをも厭わない極めて危険な集団でもあるのです。ISとの関連も疑われますが、仮に、人質殺害事件に対する日本国への報復であるならば、ケネディ大使ではなく日本国の要人を狙うはずですし、自己顕示欲の強いISのことですから、ネット上に犯行予告をアピールするはずです。

 東アジア一帯に国際テロ・ネットワークが存在しているとしますと、比較的治安が良いとされている日本国もまた安全ではありません。日本国は、テロを封じ込めると共に、ケネディ大使脅迫事件の背景を徹底的に調査し、東アジア・テロ・ネットワークが確認された場合には、速やかにこの危険な組織を解体に追い込むべきと思うのです。

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