万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

イランが夢見る帝国の幻影

2007年08月31日 18時19分07秒 | 中近東
 先日、イランのアフマディネジャド大統領が、もしイラク情勢が悪化し、中近東に力の空白が生じた場合には、イラクを支配する用意があることを表明した、との報道がありました(8月30日付け産経朝刊)。考えてみますと、この声明は、国際社会に向けて、明白に他国支配の意図を宣言したことになります(これは、国連憲章違反でもあります…)。

 現代という時代に存在しながら、イランという国は、未だ帝国の夢を追っているのかもしれません。かの地には、アケメネス朝ペルシャ、パルティア王国、ササン朝ペルシャ、アラブ帝国、イスラム帝国などなど、名だたる帝国が数多く興亡してきました。こうした過去の帝国への憧憬は、今なお、イランいう国に”国民国家”という枠に納まることを拒む、覇権志向を残しているかもしれないのです。

 国境を侵すことは”侵略行為”であるとする、国際社会の合意が崩れるとき、それは、再び、人類に戦禍が訪れる時となりましょう。イランの人々の意識が、現代と時代を受け入れるまで、この危機は、そう簡単には去らない恐れがあるのす。

 

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中国競争当局の独立性?

2007年08月30日 18時22分10秒 | アジア
独禁法成立、来夏施行へ 中国、企業間競争を促進(共同通信) - goo ニュース

 独禁法という法律は、独立性を保障された行政機関、あるいは、司法機関によって執行・適用されるという特色を持ちます。これは、市場の競争秩序を維持する機関は、全ての市場参加者に対して公平かつ中立的であらねばならない、という機能上の必要性に基づくものです。

 一方、中国の国家体制は、民主集中制という中央集権体制であって、改革開放路線を進めた小平でさえ、権力分立には強く反対したと言います。今回制定された法律の詳しい内容はまだ分かりませんが、もし、新たな独禁法が、公正取引委員会のような独立性を保障された機関に委ねられているとしますと、中国の統治制度は、漸く分権制を取り入れたことを意味することになります。

 果たして、中国の独禁法の運営は上手く行くのか、それとも、表面的な改革に過ぎないのか、中国市場の健全性は、独禁法とその制度運営にかかっていると言えましょう。 

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日米同盟は命綱

2007年08月29日 18時13分31秒 | 日本政治
テロ特措法延長、直接要請へ 9月の日米会談で米大統領(共同通信) - goo ニュース

 テロ対策特措法の延長問題については、民主党が正面から反対していることもあって、昨今、反対論が勢いづいているようです。しかしながら、この法律延長の結果を分析してみますと、延長決定から生じるメリットの方がデメリットよりも遙かに大きいように思えるのです。

 第一に、テロリストという無差別殺人行為を是とする集団との戦いは、人類共通の闘いであって、国益の衝突としての戦争とは区別されます。アフガニスタンでの軍事行動は、確かにアメリカ軍が主体となって行われていますが、純粋にアメリカが自らの国益のみを追求した結果ではありません。この視点から見ますと、テロとの闘いへの参加は、日本国が、国際秩序の安定に一定の責任を果たしていることを内外に示すことにもなりましょう。

 第二に、日米同盟を安定・強化させることは、中国の台頭により不透明性を増す東アジア情勢の中で、自国の安全を守ることに繋がります。かりに、同盟の信義を蔑にして、テロ特措法を延期しない、となりますと、東アジア情勢は、一挙に流動化する恐れもあるのです。

 対米追従からの脱却を唱えて日米同盟を弱体化した後に、果たして、どのような世界が私達を待っているのか、冷静に考えてみる必要があると思うのです。

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地球温暖化対策に制度間競争を

2007年08月28日 18時53分16秒 | 国際政治
 ポスト京都議定書の議論が賑わう中、より優れた方法を見出すためには、京都議定書の欠点を見極めることも大切です。この欠点の一つとして、ここでは、制度間競争の欠如、あるいは、選択肢の狭さを挙げておきたいと思います。

 京都議定書のメカニズムは、確かに、幾つかの手法の組み合わせから成り立っており、この点に関しては、必ずしも硬直的ではありません。しかしながら、締約国が相互に、効果的、かつ、効率的な手法の考案や環境技術の開発を競うという体制にはなっていないのです。むしろ、排出権取引といった既定路線を締約国に押し付けるようなシステムとなっていると言えましょう。

 現状を到達点とは見なさず、締約国間に制度間競争を取り入れるようになれば、温暖化対策もレベル・アップを期待できるのではないでしょうか。
コメント (1)
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政教分離は国内平和の要

2007年08月27日 19時48分54秒 | 中近東
 イラク戦争後におけるイラク国内の混乱は、その多くをシーア派とスンニ派との激しい対立関係に負っている言われています。西欧諸国では、宗教戦争は既に過去のものとなりましたが、イスラム諸国では、現在なお、国内平和を破壊する最も大きな分裂要因となっているのです。
 
 これは、イスラム教という宗教が、政治と密接に結びついていることに求めることができますが、歴史を通して政教一致体制―カリフ制やスルタン制…―を築いてきたイスラム諸国にとって、政教分離は一筋縄でゆく問題ではありません。しかしながら、政治的争点を、宗教から世俗の問題へと移してゆくこと、あるいはより大胆な方法としては、宗教・宗派政党を認めないといった方法を採用できれば、イスラム世界においても政教分離に近づくことができるかもしれません。

 もし、それでも国内融和が難しいのであれば、後は、分離策しか方法がなくなってしまうのです。

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中国の得意技は”鸚鵡返し”?

2007年08月26日 18時03分31秒 | アジア
日系も「汚染企業」 中国各紙、外資100社を批判(産経新聞) - goo ニュース

 中国の伝統的な行動パターンには、他者からの非難された事柄を、そのままそっくり非難し返す、という”鸚鵡返し”があります。汚染企業に関するリストの公表も、恐らく、昨今、にわかに激しさを増してきている中国の環境汚染や中国製品の安全性に対する批判を、この得意技を用いて跳ね返そうといているのかもしれません。

 それでは、どのようにしたら中国における現状を正確に把握することができるのでしょうか。これには、まずは、中国政府が自らの環境基準を公表した上で、中立、かつ、独立的な第三者機関によって、全ての企業に対する実態調査が行われなる必要があります。客観的なデータがないことには、それが嘘か真かわからないのです。

 対策を練るに先立って、やはり、真実を知ることが大事なのではないでしょうか。 

 

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政治の主役はマスコミ?

2007年08月25日 20時43分21秒 | 日本政治
 選挙に際して、各政党は、なるべく多くの国民の支持集めるために、キャンペーンや広報活動を行わなければならない立場にあります。もちろん、選挙公報の範囲で行われることもありますが、どの政党は、できることなら世論形成に力を持つマスコミを自分達の味方につけようと、躍起になるのです。

 この結果、民主的な選挙制度にありながら、奇妙な主客逆転が生じることがあります。それは、政党や政治勢力の目的が、マスコミを味方につけることに転じてしまい、マスコミの望む方向に政策立案するようになることです。これでは、国民のための政治とはほど遠い状況になりますし、最も政治に力を持つ勢力はマスコミということになってしまいます。しかも、マスコミは、結果に対しては、一切責任をとりません。

 民主主義の本質的な価値を生かすためには、ここでもう一度、政治とマスコミとの関係を見直す必要があると思うのです。

 

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政府検閲が「必要」なのは中国政府

2007年08月24日 18時31分49秒 | アジア
5割が政府検閲「不必要」 中国のネット利用者調査で(共同通信) - goo ニュース

 中国におけるインターネットの普及率は高く、比較的多くの国民が利用できると言われています。共産主義国家の成立以来、中国において言論が弾圧されていることは衆目の一致するところであり(信じられないことに、中華人民共和国憲法の第4条には言論の自由が明記してある!)、検閲を不要とする声は、政府当局への不満として理解することができましょう。

 ネット利用者が検閲を不必要とする一方で、本当に検閲を必要としているのは、当然に、”政府”ということになります。現在、急激な経済成長から発生した都市部と農村部との経済格差に加えて、汚職や賄賂の授受といった政府組織の腐敗は目に余るものがあります。もし、検閲制度が廃止されて言論が自由化されますと、国民の現状に対する不満は、ネットを通して全国規模で噴出し、共産主義体制を揺るがすことになりましょう。

 国民の言論の自由を抑圧することによってしか存続できない政府、つまり、国民の声を聞こうとはしない政府は、やがては、崩壊への道を歩むのではないか、と思うのですが、いかがでしょうか。

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国家と市場のたてよこ関係

2007年08月23日 19時42分53秒 | 国際経済
市場の透明性向上に、国家関与の強化必要=仏経済財務雇用相(ロイター) - goo ニュース

 政府と市場との関係を考える時、そこには、方向性の違うふた通りの関与パターンがあるように思えます。

 ひとつは、たて型の関与であり、政府と市場が上下に配置します。この場合、政府は市場に対して、政治的、あるいは、政策的な目的を達成するための命令的な規制や指導を行うことになります。もう一方のパターンは、よこ型の関与です。このパターンですと、政府は、レフェリーの役割を果たしますので、プレーヤー達と同じレベルの市場というフィールドに立っていることになります。

 市場経済における政府の関与のあり方は、後者の方にシフトしてきていますが、”市場の透明性向上”においても、おそらく、よこ型の関与の方が適していましょう。プレーヤー達が、お互いの姿を見ることができ、そうして、周囲の観客にもゲームが良く見えることによって、市場では、フェアな競争が実現するのですから。

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国際地名は変更を言い出したら切りがない

2007年08月22日 21時06分37秒 | 国際政治
日本海呼称の変更要請=国連地名会議で南北朝鮮 (時事通信) - goo ニュース

 日本海という名称は、1910年の日韓併合以前においても使用されており、植民地時代の名称とする北朝鮮や韓国の主張には無理があるようです。おそらく、本当のところは、”日本”という名称が気に障るのでしょう。

 ところで、複数の国に接する場所の名称は、日本海のみならず、特定の国の名が付いている例は少なくありません。ノルウェー海、インド洋、イギリス海峡、モザンビーク海峡、メキシコ湾などなど。また、国名ではなくとも、特定の国の言語で表記されていることもあります。

 以上のような場合に、領域が接する全ての諸国が、名称の変更を言い出したら切りがありません。それに、言語が異なる諸国で新たに地名を作ることも、そう簡単ではないはずです。名称が国際社会で慣習として成立している場合には、それを尊重することも、無用な紛争を避ける態度と言えるのではないでしょうか。

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カメレオン中国への不信

2007年08月21日 18時42分49秒 | アジア
 改革開放路線の結果、急速に経済成長を遂げた中国は、その経済力を軍事予算につぎ込むと共に、有人宇宙船の開発を進めるなど、覇権主義的な大国への道を着実に歩み始めています。しかも、共産主義体制を温存させたままにこの路線を推し進めているため、”強国”中国の不透明感は増幅し、周辺諸国の警戒感を高める結果をも招いているのです。

 その一方で中国は、経済分野や環境分野などにおいては、自らを”弱者”と見なし、先進国と同等の負担を負おうとはしません。本日の新聞(日経朝刊)では、京都議定書の「クリーン開発メカニズム」を利用して、日本国が中国から排出権を買い取る計画があるという記事がありましたが、軍事費に莫大な予算を費やしている国に対して、こうした優遇を行うことに疑問を感じざるを得ないのです(環境技術の開発や改善事業にこそ予算をさくべき!)。

 自らの都合に合わせて自己の姿を変えるカメレオン中国は、国際社会からの真の信頼を勝ち得ることはできなのではないでしょうか。

 

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国民国家体系と市場経済は両立する

2007年08月20日 21時24分21秒 | 国際政治
 市場のグローバル化が進展すると、やがて国家を隔てている国境が低くなり、国民国家は過去の遺物となる、といった予測を、新聞やメディアでしばしば目にすることがあります。経済現象のみに注目しますと、こうした極端な結論に達してしまうのかもしれませんが、これでは、経済決定論となり、共産主義と同じ誤りを犯してしまうことになるかもしれません。

 諸国家間の言語や慣習などの多様性を考えますと、国家の消滅予測は早計に過ぎましょうし、現実に国家が果たしている役割を考慮しますと、国家の霧散は混乱の要因ともなりましょう。そこで、国家が今後とも存続するとしますと、今日取り組まねばならない課題とは、如何にして国民国家体系と市場経済とを調和させて行くのか、という問題に向き合ってゆくことである、とも言えます。

 それでは、どのようにしてこの問題に対処すれば良いのでしょうか。国民国家体系における政治のメカニズムと市場経済のメカニズムは、もとより同じではありません。統治システムを考案してゆくに当たっては、まずは、両者の違いを設計に組み込む必要がありましょう。そうして、両者を調和させるには、政策分野ごとに政策決定過程や諸機関の権限配分を変えるといった工夫が必要なのではないか、と考えるのです。

 これは試案に過ぎませんが、いかがでしょうか?

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国家の統治力は国民の命運を決定する

2007年08月19日 20時07分12秒 | 国際政治
 今日、国家という言葉にアレルギーを持ち、その存在を疎ましく思う国民も少なくはありません。しかしながら、国家ほど、そこに住まう人々の運命に影響を与える存在もないのです。

 国家の統治力が劣ってしまいますと、第一に、国民の基本的な自由や権利が保障されなくなります。腐敗した統治機構を持つ国では、国民は、政府および隣人からの侵害に戦々恐々とせねばらなず、安心して生活を営むことさえができなくなります。第二に、外部の他者(大国や国際機関…)から管理されてしまう可能性が高くなります。国民に自己統治能力がないと判断されますと、これを理由に介入されたり、管理下に置かれてしまうこともあるのです。

 もし、自らの生活をより安全にしたいと思うならば、当たり前のことのようですが、自国の統治にこそ関心を寄せなければなりません。民主的な政治制度とは、国民にその機会を与えることができる、唯一の制度なのですから。

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実効支配を優先すると国際秩序が崩壊する

2007年08月18日 21時12分09秒 | 国際政治
竹島海域の環境放射能調査、昨年に続き日韓で共同実施へ(読売新聞) - goo ニュース

 竹島の領有権につきましては、1905年の島根県隠岐島への編入に加えて(先占の成立)、江戸時代以来の数々の資料により、国際司法裁判所に提訴された場合には、日本国の主張に分があると言われています。

 ところで、この問題は、日韓の二国間問題に限定されず、国際秩序の行くへにも大きな影響を与えることになります。それは、仮に、国際司法裁判所が、実効支配(実効的占領)の方を重く採り、韓国側の主張を認めるとしますと、曲がりなりにも保たれている国際社会の法秩序が壊れてしまう、という懸念です。こうした判例は、軍事力に優る国に、周辺諸国領域の武力による”占領”という誘因を与えるかもしれません。また、日本国が、韓国に対して政治的な妥協を行っても同様の結果を招く恐れがあります。

 一国の安易な妥協や解決は、その悪影響が国際社会全体に及びますので、こうした問題には、慎重な対応が必要であると思うのです。

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ベネズエラに見る失敗の繰り返し

2007年08月17日 18時45分22秒 | アメリカ
 人類は、どの時代から独裁者と闘い始めたのか、という問いに対して、歴史の記録を辿りますと、古代ギリシャ・ローマ時代にまで行き着くことができます。古代というシンプルであるはずの時代でありながら、驚くことに、実に多くの独裁予防制度が既に考案されていたのです。

 例えば、執政官を複数設けるという複任制度や複数の諸機関による分立制、拒否権制度、さらには、アテネの”陶片追放”の制度も有名です。統治制度の発展史には、独裁対策という側面を見て取ることができるのです。

 それでは、人類は、この独裁との闘いに完全に勝利を収めたのでしょうか?どうも、そうではなさそうです。今日の新聞にも、ベネズエラのチャペス大統領が、独裁体制をさらに強化している、とする記事もありました。そうして、独裁者が権力を手中に収める手法もまた、昔も今もかわらないのです。

 人類は、歴史に学び、賢くあるべきではないのでしょうか。

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