岸田文雄首相は、今般、日米同盟の枠を越えて日本国の首相として初めてNATOの首脳会議に出席いたしました。日本国は、いわばNATOの準加盟国となった感があり、多国間軍事同盟、即ち、陣営への参加は、ロ・中陣営との近い将来における第三次世界大戦を想定しているとしか考えようがありません(もっとも、三次元戦争としての第三次世界大戦は既に始まっているかもしれない…)。となりますと、今般の首相の決断?は、日本国民にとりましては極めて重大な意味を持つこととなりましょう。現状のままでは、日本国も参戦し、自国が戦場となる可能性が一気に高まるからです。
それでは、参戦を想定した岸田政権の軍事同盟政策に対して、日本国内において国民的なコンセンサスは成立しているのでしょうか。今般の首脳会議では、NATO加盟を予定している北欧2カ国に加え、「アジア・太平洋パートナー国」として、日本国のみならず、オーストラリア、ニュージーランド、並びに、韓国の首相も出席しています。今後は、NATO理事会への定期的出席も検討されており、’陣営固め’はさらに強化される方向にあります。
報道によりますと、NATOの拡大は、ウクライナ危機を背景としたロシアの脅威への対抗策であり、抑止力の強化を期待していると説明されていますが、抑止力を主たる目的として締結された軍事同盟が世界大戦を招いてしまう事態は、第一次世界大戦で既に経験しています。ビスマルク外交にあってドイツ帝国の安全保障網として締結された多重的な軍事同盟は、ヴィルヘルム2世の登場により、戦火拡大への導火線となってしましました。’サラエボの一発の銃声’は、導火線に火をつけた発火点でしかないのです。
今般のNATO拡大政策を見ましても、必ずしも抑止力で済まされないリスクを認めざるを得ません。プーチン大統領、あるいは、習近平国家主席の鶴の一声で、NATO陣営の一国が攻撃を受ける可能性を否定できないからです。NATO側が抑止力の側面を強調しても、相手陣営が意に介さずに攻撃の挙に出れば、それが防衛戦争であっても、戦わざるを得ない状況に追い込まれます。NATOは、今般の首脳会議でロシアを事実上の敵国と認定し、中国に対しても、軍事や経済面における脅威を明記しておりますので、陣営対立が激化すれば、日本国を狙って、ロシア並びに中国がミサイルを発射するかもしれないのです(中ロ陣営に与した北朝鮮からの攻撃もあり得る…)。こうしたケースでは、改憲を経ずとも、日本国は、戦争当事国となりましょう。
しかも、ウクライナ危機の背景に、自らの支配を確立するために第三次世界大戦を起こしたい超国家権力体が潜んでいるとすれば、このリスクは、格段に上昇します。プーチン大統領を含め、各国の首脳が同勢力のパペットであれば、人類は、計画、あるいは、シナリオ通りに第三次世界大戦への道を歩まされていることになります。ドイツのヒトラー政権誕生の前例があるように、経済的苦境や社会不安は、国民をして独裁体制の容認や戦争に誘導する要因ともなり得ます。今日、各国とも不足物価の急激な上昇に見舞われており(エネルギー不足や穀物不足の懸念も…)、戦前のドイツのハイパーインフレーションとまではいかないまでも、今後、同勢力によって、巧妙に金融危機や財政危機が仕掛けられるかもしれません。あるいは、第三次世界大戦にまで至らなくとも、オーウェルが警告した『1984年』の世界のように、人々に対して世界大戦の恐怖を煽りつつ、国民の自由や権利を奪うディストピアが出現するかもしれないのです。
第三次世界大戦のリスクが高まりつつも、現状を見ますと、日本国のみならず、どの国も、真剣に戦争回避に知恵を絞ろうとはしていません。あたかも、NATO陣営形勢が唯一の選択肢のようです。しかしながら、本ブログにおいて再三述べているように、世界大戦を招きかねない軍事同盟強化の形態ではなく、武力行使を警察的な活動や人道的治安維持に限定してゆく方向性もあり得ます。各国とも、あたかも既定路線を進んでいるようであり、なおさらに怪しさが増すのです。
仮に、こうしたシナリオが’幻想’に過ぎないのであれば、各国において、第三次世界体制を阻止するための活発な議論が行われて然るべきです。今夏の参議院選挙においても、各政党とも、日本国の同盟政策については、岸田政権の路線とは異なる代案を提示するべきですし、第三次世界大戦への参戦リスクについても主要な論点とすべきなのです。国民の命が失われ、国土が破壊されてからでは遅いのですから。