万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

社会的ダーウィニズムの誤りー勝者は進化しない

2016年12月31日 13時55分53秒 | 国際政治
 2016年は、イギリス国民のEU離脱選択に次いで、アメリカでもトランプ氏が当選いたしました。こうした現象が、マスメディアを中心に、”大衆迎合主義の台頭による政治の劣化”として声高に批判された一方で、”エリート”や既成政治に対する常識的国民の抵抗とする肯定的見解も生じ、その評価が大きく分かれた年ともなりました。

 一連の出来事のキーワードともなった反エリート主義とは、マスメディアでは、”エリート”に対する感情的な反発や不平等感がもたらすルサンチマンとして説明される傾向にあります。しかしながら、EU離脱やトランプ氏に投票した人々の理由を聞いてみますと、必ずしも、感情論では片づけられない一面があります。そして、それは、所謂’エリート’とされる人々の問題点をも浮かび上がらせているように思えるのです。

 19世紀において人類に対する認識を一変させたのは、チャールズ・ダーウィンが唱えた進化論です。この考え方に基づけは、下等生物からより複雑で高等な生物への進化は、最も環境に適したものが生き残ることで進んできたプロセスとして説明されます。適者生存こそ、進化の動因とされたのです。進化論は、人間が猿から進化したことを意味するため、当事の人々に衝撃を与えましたが、同時に、様々な分野において科学的理論として応用されるようにもなりました。その一つが、社会的ダーウィニズムと呼ばれる主張です。社会的ダーウィニズムとは、適者生存を社会における優勝劣敗に当て嵌め、少数の富裕層やエリートの支配的地位を擁護する役割をも果たしたのです。適者が社会において勝者になるのは、自然の法則に即していると…。

 しかしながら、この考え方、進化論の一面を切り取った静態的な見方なのかもしれません。何故ならば、進化とは、本来、プロセスであって、進化の最先端に位置する適者は、既に優位な変異遺伝子を獲得してしまっているため、現状以上には進化しないからです。否、進化とは、現状に置いて劣位している、即ち、外部環境が自らにとって不利な側において発生します。いわば、苦境の克服プロセスとして進化が生じており、この点に注目すれば、社会的ダーウィニズムにおける勝者は、いずれは、より優れた適性や耐性を備えた”種”の出現に直面することとなるのです。生物学における理論をより社会学に持ち込むならば、その論理的な結論は、必ずしも現状の固定化ではないはずなのです。また、現実における種の進化は、少数による適性の独占ではなく、大多数における適性の獲得を意味しています。

 自然科学の理論を社会科学に応用するには慎重であるべきですが(しかも、生物進化にはダーウィンの理論では説明できない現象もある…)、今日のエリートの主張には、19世紀の社会的ダーウィニズムと共通する一面性と自己正当化が見られます。不確実性が高まった今日、あるいは、人類は、少数による富や権力の独占を是認する”エリート”と称される人々が描く道とは、違った道を歩む可能性もないわけではないと思うのです。

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本年は、拙いブログながらも、ご訪問、並びに、ご一読くださりまして、ありがとうございました。皆様がたが、良いお年をお迎えなされますよう、心よりお祈り申し上げております。
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問題山積のドイツの偽ニュース規制案

2016年12月30日 15時10分14秒 | 国際政治
うそニュース監視、ドイツが新組織検討 禁錮刑科す案も
 報道によりますと、ドイツでは、SNSで拡散される”偽ニュース”を規制するために、監視組織の設立を検討しているそうです。設立の理由は、アメリカにおけるトランプ氏の大統領選での勝利の一因には、事実に反する”偽ニュース”の影響があると見ているからです。

 このニュース、慰安婦問題で”偽ニュース”を配信した朝日新聞社が嬉々として報じているところに唖然とさせられるのですが、メルケル首相も、訪日に際して慰安婦問題で日本国に対して苦言を呈するなど、”偽ニュース”を信じ込んだ”被害者”とも言えます。現実問題として、”偽ニュース”がもたらす負の影響は計り知れません。しかしながら、それでも、この規制案には、深刻な問題点があるように思えます。

 第一に問題となるのは、虚実の判定が難しいケースがあることです。例えば、特定の場所における特定の人物の発言の有無に関するニュースであれば、実際に、その発言の有無を確認することはそれ程難しくはありません。先日も、パキスタン国防相がイスラエル前国防相の”偽発言”を真に受けて核攻撃を示唆する事件がありましたが、この一件では、程なく”偽ニュース”であることが判明しています。こうしたケースでは、聴衆が証言者となったり、録音・録画が証拠となって、虚実を判定することは容易です。しかしながら、虚実の判定が極めて難しくなるケースも想定されます。特に”陰謀”に関する偽ニュースは、”陰謀”という性質上、秘密情報やリーク情報となりますので、その真偽の判定には、情報機関の協力を要する場合も想定されるのです。特に、今般の規制は、ロシアによる工作を想定して、ロシアをターゲットとされておりますが、ロシア政権の内部から情報を正確に収集しない限り、真偽が判定できないこととなります。

 第二の問題は、”偽ニュース”が、事実である場合です。実のところ、真偽が不明のニュースの場合、事実調査に膨大な時間と労力を要するのみならず、真実である可能性も否定はできません。多くの人々が、”偽ニュース”を信じる背景には、確たる証拠はなくとも、経緯、状況、ならびに、当事者の内的心理を推測すれば、十分にあり得ると判断できる場合が多いのです。こうした場合、規制当局は、国民に対して誠実、かつ、正直に、事実であると公表してくれるのでしょうか。仮に、隠蔽したり、国民が納得するような証拠や根拠を示すことなく、”虚ニュース”であると決めつけるとしますと、情報統制として規制組織に対して国民が反発することとなります。

 第三に、規制の対象は、メディアではなく、SNSに限定されているようですが、アメリカの大統領選挙では、有権者に対して自社の支持候補のニュースのみに偏向したメディアの姿勢も問題視されています。仮に、監視組織に政治的な偏りが生じた場合には、この制度は、いとも簡単に、言論の自由に対する弾圧システムへと転換します。マスコミの報じるニュースだけが”事実”とされ、自らにとって都合の悪いSNS上のニュースは、全て、”偽ニュース”として葬り去ることができるからです。

 ”偽ニュース”規制組織は、それが、中立・公平な機関であり、国民からの信頼を得ることができれば、このシステムは、有権者を惑わす”偽ニュース”の排除という本来の目的に適うものとなりましょう。しかしながら、問題山積のまま見切り発車しますと、東独にかつて存在した人民監視機関に堕すこととなるのではないでしょうか。

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太政官指令関連地図は竹島日本領の証拠では

2016年12月29日 13時43分17秒 | 国際政治
「韓国」のニュース
 先日、弾劾事件へと発展した朴大統領のスキャンダルから国民の関心を逸らすためか、竹島に韓国海兵隊が訓練を理由に上陸したと報じられました。竹島問題は、反日感情の強い韓国では、政治家にとりまして、今や、格好の世論誘導の材料と化しているようです。

 ところで、近年、韓国側は、この問題について、1877年(明治10年)3月29日に日本国政府内で作成された太政官指令を持ち出し、日本国は、竹島に対する領有権を放棄したと主張しています。日本国の『明治十年三月 公文録 内務省之部 一』には、“伺い書のおもむき、竹島(鬱陵島)外一島の件は本邦と関係なしと心得るべし”と記されているからです。韓国側は、この”外一島”を竹島と見なしています(日本側は、鬱陵島の付属島である竹嶼と主張…)。

 太政官指令の一件は、内務省の地理寮による地籍編纂の調査から始まりますが、この時、照会を受けた島根県は、政府に地図を提出したとされています。この地図には、磯竹島(現鬱陵島)のみならず、松島(現竹島)も描かれているため、韓国側は、何としても”外一島”を竹島(韓国名独島)と見なしたいようなのです。しかしながら、この地図を見ますと、奇妙なことに気づかされます。何故ならば、近代測量術を用いたと思えるほど、磯竹島(現鬱陵島)も松島(現竹島)も、相当正確に描かれているからです。このことは、島根県が、当時、何らかの方法で地図を作成していたか、あるいは、イギリスかフランスから測量図を入手していたことになります(両国の間では位置測定に違いがあり、明治初期の混乱の原因ともなった…)。少なくとも、日本国側が作成した地図であり、それは、磯竹島(現鬱陵島)の脇に墨書きで”磯竹島より朝鮮国を遠望する…”と記した説明文が付してあることからも明白です。そして、この説明文こそ、当事、日本国側では、松島(現竹島)のみならず、磯竹島(現鬱陵島)をも日本領とする認識があったことを示しているのです。また、仮に、太政官指令で竹島をも放棄したとしたら、松島(現竹島)という名称が記されている以上、”外一島”といった曖昧な表現ではなく、竹島(現鬱陵島)並びに松島(現竹島)と連記したはずです(因みに当地図では、竹嶼には名称が記されていない…)。

 加えて、太政官指令はあくまでも国内文書に過ぎませんが、1883年に、明治政府は、李氏朝鮮からの要請を受けて鬱陵島一島のみを対象に日本人渡航を禁じておりますので、対外的には、日朝間の交渉を経た当措置が、日本国政府の領域に対する正式な立場となります。この時、日本国政府は、竹島には言及していませんし、李氏朝鮮側も、竹島に関しては、日本国側に渡航禁止措置を求めていないのです。このことは、当時、朝鮮国は、竹島を日本固有の領土と見なしていたことを示しております。

 最後に残る謎は、太政官指令作成の過程で提出されたとする地図が、一体、誰が、何時、どのようにして作成したのか、ということです。竹島日本国領を証明する地図であるだけに、日本国政府は、その作成の経緯を調査すべきではないかと思うのです。

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日米首脳の真珠湾訪問ー真の寛容とは

2016年12月28日 15時38分41秒 | 国際政治
オバマ大統領、日米は「友情と平和選択」=安倍首相訪問の真珠湾で演説
 本日、日本国の安倍首相は、アメリカのオバマ大統領と共に真珠湾を訪問しました。首相の真珠湾訪問は過去に4例あり、初めての事ではありませんが、日米首脳揃っての訪問はこれまでになく、日米和解の象徴的な意味が込められています。

 日米開戦は、日本国による宣戦布告なしの真珠湾攻撃に始まったため、アメリカでは、今でも日本国に対して謝罪を求める声は少なくありません。先日も、宣戦布告の通告は日本国側が意図的に遅らせたとする新説が発表され、これまでの定説を覆す説として関心を呼びました。日本国内では、宣戦布告なき攻撃は、外務省の不手際によると説明されてきたからです。

 その一方で、新説において”騙し討ち”を裏付ける証拠として提示されたのはアメリカの通信傍受記録でしたので、この説は、アメリカにとりましても、痛しかゆしとなります。何故ならば、通信傍受記録を詳細に調べてゆけば、”ルーズベルト大統領は真珠湾攻撃を知っていた”とする説をも検証することとなるからです。当事、ハル・ノートによって既に日米交渉の決裂はほぼ確定的であり、既に米軍が真珠湾から空母等の主要艦隊を避難させていたことを考えあわせても、ルーズベルト大統領が事前に察知していた可能性は否定はできません。そして、1941年8月14日に大西洋憲章が発表され、アメリカの参戦が織り込み済みであったとしますと、ナチスの攻勢の前に風前の灯であったイギリスが、反戦世論の強いアメリカを戦争に呼び込むべく、日本国による対米攻撃を画策したこともあり得ないわけではないのです。イギリスのチャーチル首相は、真珠湾攻撃の一報を受けて、勝利を確信したそうです。

 こうした推測は、これまで極右的な歴史観とされてきましたが、真珠湾訪問における日米両首脳の演説を聞きますと、両首脳が、どこかでお互いに”脛の傷”を認め合っているように思えます。アメリカ側が強く謝罪を求めず、日本国もまた謝罪を避けているのは、歴史の真実が教科書通りではないからなのかもしれません。日米の和解とは、事実を事実として認めた上で、共に犠牲者を悼み、その尊い犠牲に報いるよう善き未来を築くことを目指すところにこそあるのでしょう。今般の日米首脳の真珠湾訪問は、真の寛容について深く考える機会となったのではないかと思うのです。

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カジノ解禁問題ー利益は事業者・対策は国民負担はおかしい

2016年12月27日 15時25分00秒 | 社会
政府、依存症対策に着手=カジノ法施行受け閣僚会議
 衆参両院で「統合型リゾート(IR)整備推進法」、所謂カジノ法案が採択されたことから、政府は、ギャンブル依存症の対策検討に着手したと報じられております。しかしながら、このカジノ法については、国会で成立したとはいえ、疑問に満ちています。

 第1に、刑法において賭博が禁じられている以上、刑法の改正なくしてカジノ法案を成立させること自体、日本国の法秩序を崩しかねません。これでは、法治国家の名折れとなります。こうした場合、法制局が憲法や現行法との整合性をチェックすべきなのですが、残念ながら、カジノ法案に対してチェック機能が働いた形跡はないようです。

 第2に、カジノ法案については、何れの世論調査でも、60%以上の国民が反対しております。世論調査の信頼性は薄らいだとはいえ、カジノへの反対は、一般的な常識に照らしても当然の反応です。むしろ、実際の反対世論は、60%を遥かに越えるのではないかと疑うくらいです。民主主義の原則に照らせば、政治家は成立を断念すべきであり、世論の反対を押し切ってまでの強引な立法は、国民の政治家に対する信頼を著しく損ねます。

 そして第3として挙げるべき点は、ギャンブル依存症への対策です。横浜市がIR事業の誘致を目指していることを受けて、横浜市商工会議所の上野会頭は、カジノ実現に協力する方針を示しつつ、”負の側面については市に期待する”と語っています。しかしながら、この見解に従えば、カジノからの収益は事業者を潤すものの、事業から発生する負の問題については、横浜市、即ち、市民が負担することとなります。製造業であれば、事業から発生する負の問題は、製造者責任として事業者が負担を担い、サービス業であっても、顧客に何らかの被害を与える場合には、当該事業者が責任を負います。カジノも同様であり、数%の割合でギャンブル依存症という”病気”が発症することが予測されるのですから、その対策は、カジノ事業者が負担すべきなのです。それとも横浜市は、カジノ事業者に対して特別税を課し、対策費に充てるつもりなのでしょうか。

 何れにしましても、パチンコ問題でさえ解決していない現状にあって、国民の大多数が、なし崩し的なカジノ解禁を望んでいるとは思えません。国のレベルで法律が制定された以上、横浜市を含めて地方自治体レベルでIRの建設に反対するしかなく、カジノ誘致については住民投票を実施し、市民にその是非を直接に問うていただきたいと思うのです。

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在留1年永住権問題と中国国防動員法

2016年12月26日 13時54分53秒 | 国際政治
有能な在日外国人、在留1年で永住権 対象の3分の2は中国籍か 政府が規定緩和検討
 日本国政府は、外国人の高度人材を”呼び込む”ために、永住権の取得資格を短縮する方向で検討に入っているそうです。報道によれば、対象者の凡そ65%が中国籍の外国人なのですが、中国国防動員法を考えますと、この緩和措置には疑問があります。

 中国国防動員法については、制定当初から懸念の声が上がっておりました。何故ならば、動員の対象者は、”18歳から60歳の男性と18歳から55歳の女性”とされており、内外居住の区別がないからです。言い換えますと、日本在住の中国人も動員対象であり、有事ともなれば、中国政府の命令に従って行動することが義務付けられていることとなります。このため、仮に、将来、有事が日中間で発生するとなりますと、在日中国人は、日本国内で破壊活動を行う”便衣兵”ともなりかねないのです。

 こうしたリスクが潜む中国攻防動員法は、国際ルールに違反していると言わざるを得ません。国際ルールでは、領域主権が対人主権に優位するとされ、有事に伴い敵国人となった外国人は居住国の政府の指示に従います。敵国人とされた外国人が、国外退去や収容所での生活を余儀なくされるのも領域主権が優位するからです。ところが、中国は、このルールを無視して対人主権の優位、即ち、居住国政府の支持に反する敵対的な行動を自国民に義務付けているのです。戦時にあっては、極めて危険で巨大な”敵国人集団”が突如として出現するのですから、日本国内が混乱に見舞われ、国民の生命や身体も危険に晒されるのは火を見るよりも明らかです。

 将来的なリスクを考慮しますと、在留1年で永住権を付与する方針は、極めて危険な政策です。”有能な在日外国人”は、必ずしも友好的であるとは限らず、逆に、有能であるからこそリスクも高くなる可能性があります。いずれにいたしましても、人とは、経済では割り切れない存在ですので、外国人の居住に関する政策については、政治的、並びに、社会的なリスクをも考慮すべきです。戦後、日本国は、本国と結びついた北朝鮮等による工作活動に苦しんできましたし、昨今、諸外国でも、テロ等のリスクへの認識から移民政策の見直しが進んでおります。日本国は、こうした内外の失敗例にこそ学ぶべきではないでしょうか。

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理解に苦しむ内閣府の世論調査ー不思議な対韓感情の好転

2016年12月25日 15時52分29秒 | 国際政治
日露関係「良好」27・8%…内閣府世論調査
 昨日、内閣府が実施した周辺諸国との関係に関する世論調査の結果が公表されました。メディアではなく内閣府が実施したアンケート調査ですので信頼性は高いと推測されるのですが、それでも首を傾げる結果もないわけではありません。

 特に疑問に感じたのは、日韓関係に関する質問の結果です。報道によりますと、昨年の調査結果と比較すると、韓国に対して「親しみを感じない」「どちらかといえいうと感じない」との回答は59.1%で5.6%も低下しており、とりわけⅠ8歳から29歳までの若年層に限定すれば45.3%となり、半数を下回っているというのです。昨年末に日韓慰安婦合意があったとはいえ、日本国内での評価も分かれており、この件が日韓関係が好転する材料となったとは言い難い側面があります。また、若い世代ほど、ネット情報により、韓国の国を挙げてのディスカウント・ジャパン活動、徹底した反日教育、激しい対日憎悪、並びに、内情には詳しいはずですので、情報量と評価が一致しない点も不自然です。しかも、韓国の若者自身が、自国を”地獄(ヘル・コリア)”と呼んで絶望しているぐらいですので、日本の若者が親しみを感じるとも、到底思えないのです。それとも、日本の若者は、日本国もまた、韓国と同様に”地獄”であると感じているのでしょうか。もっとも、中国における韓流禁止を受けて、韓国側は、日本国内でのマーケティングに努めているそうですので、あるいは、その宣伝効果である可能性も否定はできません。ポイント上昇が韓国側による宣伝効果であるとしますと、日本国は、韓国のプロパガンダの影響を相当に受け、世論が誘導されていることとなります。

 当アンケート調査は、10月27日から11月6日までの間で実施されており、この時点では、朴大統領の弾劾は決定されておりません。朴大統領弾劾については、日本のマスコミ各社は、日本の放送局とは思えないほど連日のように報じており、韓国政治の過激さや混乱ぶりも日本国民の多くを驚かせたはずです。この一年を振り返りますと、日韓の違いを実感する出来事の方が多かったのではないでしょうか。何れにしまても、韓国に対する内閣府の世論調査の結果は、理解に苦しむと言わざるを得ないのです。

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”売国失敗シナリオ”を想定できない翁長沖縄県知事

2016年12月24日 15時05分08秒 | 国際政治
菅長官、翁長知事に不快感「返還式典出るべき」
 翁長沖縄県知事が沖縄県の米軍北部訓練場の一部返還に伴う式典に欠席した件は、知事としての”職務放棄”と言っても過言ではないかもしれません。翁長知事の無責任な行動は今に始まったわけではなく、ネット上などでは、”売国知事”なる過激な批判も珍しくはありません。

 翁長知事がかくも批判される理由は、その一貫した親中路線にあります。翁長知事と中国共産党員との姻戚関係はよく知られていますが、訪中時における中国側の歓待ぶりを示す写真も知事に対する疑念を深める根拠の一つです。共産主義国の常套手段の一つが、相手国の要人の取り込み、あるいは、工作員化ですので、中国共産党と翁長知事との関係は、疑われて然るべき状況にあります。そして、仮に、翁長知事が、中国側の要請を受けて行動してるとしますと、当然に、その見返りが約束されているはずです。真偽不明なものの、ネット上の一説によれば、沖縄県が独立に成功した場合、その論功行賞として、翁長知事には大統領といった要職が準備されているそうです。”沖縄共和国初代大統領”、さらには、習主席が目指しているような”終身大統領(”翁長王朝”?)”の座が約束されているならば、知事が、世論の批判をものともせず、沖縄独立や米軍撤退の道筋を付けるために躍起になるのも理解できます。

 しかしながら、翁長知事は、政治家として一つ、重大なことを忘れているようです。それは、あらゆる計画は必ずしも成功しない、ということです。特に背任行為を意味する密約や裏取引は、それが白日の下に晒された場合には、未来永劫にわたって歴史に汚名を残すことでしょう。沖縄県民のみならず、日本国民もが翁長知事と中国との”密約”を疑っている現状にあっては、後者のシナリオとなる可能性の方が高いのではないでしょうか。

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複雑な心境になる東京裁判

2016年12月23日 15時25分56秒 | 国際政治
 本日12月23日は、天皇誕生日です。そして、今ではすっかり忘れられがちですが、この日こそ、東京裁判で死刑判決を受けたA級戦犯の刑が執行された日でもありました。

 A級戦犯の死刑執行には、当事の皇太子誕生日に当たるこの日が敢えて選ばれたとされており、日本国において一つの歴史が幕を降ろした日でもありました。その一方で、東京裁判が未だに中国や韓国等から”戦犯国家”として糾弾される根拠とされている現実を鑑みますと、実に、複雑な心境に襲われます。最近、児島襄氏が著した『東京裁判』(中央新書、1971年)を読んだのですが、この書において強く印象に残ったのは、A級戦犯の方々を含めた当事の日本国民の、何としても昭和天皇の戦争責任を回避し、皇室を守ろうとする意志の強さです。

 東京裁判は、しばしば勝者が敗者を裁いた政治裁判であり、近代司法の原則や公平性から見れば、欠陥裁判であると批判されてきました。こうした批判派、どちらかと申しますと、連合国批判として語られがちですが、本書を読みますと、連合国ばかりに責があるわけではないことが分かります。弁護側も検察側も、共に昭和天皇に責任が及ばないよう、最善の努力を傾けているのです。被告弁護側は、東京裁判によって日本国の大義を明らかにすることを以って天皇の責任回避を試み、一方、検察側の証人となった陸軍少将田中隆吉は、A級戦犯に全責任を負わせることで天皇を守ろうとしています。弁護側は、日本人でありながら検察側に協力し、証拠もなく被告に不利な発言を繰り返す田中少将を厳しく批判しますが、戦略が違うだけであって、両サイド共に天皇を戦犯にしない、という目的においては共通しているのです。即ち、東京裁判は、厳密に事実とそれを裏付ける証拠に基づいて判決が下されたのではなく、日本側にも裁判を”曲げる”動機があったと考えざるを得ないのです。そして、アメリカもまた、連合国において天皇戦犯回避の方針が決定されると、この筋書きに従って裁判を進行させようとします。

 東条英機元首相に至っては、自ら早期の死刑執行を望むほど巣鴨にあって筆舌に尽くしがたい屈辱を受けながら、昭和天皇と皇室に咎が及ばずに済んだことに安堵して絞首台の前に立っています。我が身を犠牲にしてまで天皇を守ろうとしたA級戦犯の方々の心情からしますと、昭和天皇には、絶対的な信頼性とカリスマとでも言うべき人格が備わっていたのでしょう。おそらく、当時の日本人の多くもまた、昭和天皇に対しては、同様の心情を抱いていたのではないでしょうか。

 今日、靖国神社は天皇の参拝を受けることもなく、東京裁判も、皇室にあっては忘却の彼方に置かれています。先の大戦では、日本国民の多大なる犠牲が払われたことを考慮しますと、現在の皇室が、生前退位、あるいは、譲位のみならず、様々な問題で波風を立てている現状を、A級戦犯の、そして、大戦で命を散らした人々の御霊はどのように思うのか、つい考えてしまうのです。

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ベルリンテロ事件ー”まぬけ過ぎるテロリスト”の不思議

2016年12月22日 15時49分17秒 | 国際政治
独テロ容疑者を公開捜査=チュニジア出身の男、武装の恐れ
 ドイツの首都ベルリンで発生したテロ事件は、ISが犯行声明を公表したことから、イスラム過激派による犯行との見方が有力です。しかしながら、捜査の経緯をみておりますと、どこか不可解な点があります。

 事件発生当初、ベルリン警察はパキスタン籍の男性を拘束したものの、証拠不十分として釈放しております。その後、ドイツ連邦警察庁は、チュニジア出身とされるアニス・アムリ容疑者に対して公開捜査を開始しました。決め手となったのは、地元メディアによれば、運転席付近で発見された身分証明書とされています。

 しかしながら、真犯人は、アニス・アムリ容疑者なのでしょうか。犯人アムリ説を訝しく思える理由は、仮に、犯人が、身分証明書を運転席に落としたとしましたら、それは、あまりに”まぬけ過ぎる”からです。テロリストともなれば、細心の注意を払いながら慎重に行動するはずであり、そのための特別な訓練も受けているはずです。ISなどでは、占領地帯においてテロリスト養成所を設けているとされています。アムリ容疑者も、ISとの繋がりから既に公安当局にマークされており、いわば、プロのテロリストといっても過言ではありません。にも拘らず、自らの身元を明かすような身分証明書を、かくも”都合よく”運転席の近くに落とすとは思えないのです。

 となりますと、運転席付近で発見された身分証明書は、必ずしもアムリ容疑者の犯行の証拠とならないのではないでしょうか。考えられるのは、何者かが、捜査当局に発見されるよう、同容疑者の身分証明書を密かに置いておいたというものです。報道に拠りますと、アムリ容疑者が今年6月に難民認定を受けられなかった理由は、身分証明書がなく、チュニジア出身であることを証明できなかったからとされています。この報道が正しければ、この時、既にアムリ容疑者は身分証明書を紛失していた、あるいは、盗まれていた可能性も否定できないのです。最初に拘束されたパキスタン籍の人物は、身分証明書を運転手席付近に置くために近づいたのかもしれません。

 何れにしましても、”まぬけ過ぎるテロリスト”の存在は、この事件の闇が相当に深く、背後においてテロ・ネットワークが組織されている可能性を示唆しております。事件の真相を解明するには、アムリ容疑者の供述を待つ必要がありますが、今般のベルリンテロ事件は、容疑者逮捕で幕引きとなるとは思えないのです。

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北方領土問題ー意味深長なキッシンジャー元国務長官の発言

2016年12月21日 13時51分17秒 | 国際政治
首相、来年早期に訪露意向…プーチン氏と会談へ
 先日、日ロ間で設けられた首脳会談は、日本国側からの8項目の経済協力が挙げられたものの、政治面に関しては具体性に乏しい玉虫色の合意となりました。領土問題については、日本国は、国際法、並びに、歴史に照らして従来の立場を変更する必要はないのですが、それでも、危うさが漂うのは、別方向からのベクトルを感じ取るからです。

 実のところ、新聞紙面上に掲載された米元国務長官であるヘンリー・キッシンジャー氏へのインタヴュー記事を読んだ時から、良からぬ予感が脳裏を過ることとなりました。何故ならば、キッシンジャー氏は、今後の国際社会の展望に関して、実に難解な見解を示しているからです。氏は、ヨーロッパ外交史を専門としており、その膨大な知識に基づいて、ウェストファリア条約等を引きながら国際法の重要性について語っています。その一方で、”絶対視されてきた国境線も、国家間の合意によっては変更し得る”といった意味の言葉でインタヴューを終えているのです。

 国境線とは、確かに国家間の合意によって引かれてきた歴史があり、通常、その合意は条約化されています。国際法が整備された今日では、条約締結以後、国境で囲まれた空間は、国家の領域に関する権利として国際法の保護の下に置かれるのです。国際法秩序が重要視されるのも、それが、国境線の一方的な侵害を防ぐ平和の礎であるからです。この流れからしますと、双方の国家が自発的な意思の一致があれば、一度確定した国境線であっても引き直すことはあり得ない事ではありません。実際に、つい最近、キッシンジャー氏の見解に沿うかのように、ベルギーとオランダとの間で領土交換の合意が成立しています。この事例は、あくまでも、双方の自発性が確保されている場合です。

 しかしながら、この”合意重視”を領土未確定地域に適用しようとすれば、どのような事態が発生するでしょうか。例えば、北方領土問題にまでこの方針を持ち込みますと、ロシアによる不当な領土拡張要求、即ち、”対日侵略”の事後承認を迫られないとも限らないのです。この侵略の事後承認は、明らかに国際法に反しており、たとえ日ロ政府間で合意したとしても、”日ロ平和条約”は、一般国際法の強行規範に抵触する条約の無効を定める条約法条約第13条に違反することとなりましょう。二国間の合意であっても、国際法が定めた規範の範囲を超えることはできないのですから。
 さらに、その合意の前提となる’国家意思’の決定は、誰が行うのか、といった問題も浮上してくることになります。トップ会談での決定と称して、国民主権を無視した決定が行われる可能性も生じてまいります。

 キッシンジャー氏の発言は、北方領土問題を意識したものではなかったかもしれませんが、プーチン大統領の訪日の直前であったがために、意味深長です。また、キッシンジャー氏の発言は、国際常設仲裁裁判所の判決を無視し、南シナ海問題でフィリピンとの二国間合意を狙う中国に有利な発言でもあります。そしてそれは、国家間の政治的合意優先よりも、経済優先の方向性を示すベクトルに由来しているようにも思えるのです。

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IMF専務理事有罪判決問題ー人民元優遇とビットコイン放任の責任は?

2016年12月20日 14時01分54秒 | 国際政治
ラガルド氏、IMF専務理事を続投へ 有罪判決に上訴せず
 フランス経済財政相時代における職務怠慢で有罪判決を受けたラガルドIMF専務理事。同氏に対する有罪判決は、国際機関が抱える組織的腐敗の問題をも浮き彫りにしてるようです。

 ラガルド専務理事に対して有罪判決が下されたとするニュースが報じられた際、誰もが、同氏はIMFの専務理事を辞職するであろうと予測したはずです。ところが、判決後の理事会では、自ら辞任を表明することも、他の理事達から辞職を要求されることもなく、あっさりと続投が認められたというのです。刑罰が科されなかったとはいえ、有罪は有罪ですので、一般の国家レベルでは考えられないことです。

 それでは、何故、かくも甘い対応となったのでしょうか。その理由は、国際機関という組織にそのものにありそうです。何故ならば、国際機関では、国家のように警察や検察といった司法行政機関から常にチェックされることもなく、余程の事がない限り、法的責任を問われることがないからです。仮に、国際機関に司直の手を伸ばそうとしますと、特定の国家が、何らかの自国や自国民が関わる事件との関連で捜査するしかありません。また、国際機関は民主的制度も備えていませんので、一般の人々に対して責任を負うこともありません。国際機関とは、極めて腐敗に対して脆弱な組織であると共に、無責任が蔓延る体質を内包しているのです。

 ラガルド専務理事についても、人民元をSDRに組み込むに際して積極的な役割を果たしており、その背後には、中国による同氏取り込み戦略があったと指摘されています。また、今日、ビットコインが国際決済にまで使用されるようになった背景にも、国際通貨制度に対して責任を担うIMFが、同通貨に対して何らの対応をとらなかったところにあります。仮に、人民元とビットコインが、今後、国際経済の波乱要因となった場合、誰が、どのように責任を取るのでしょうか。

 国連の腐敗がしばしば指摘されているように、国際機関とは、一般に信じられているよりも、遥かに信頼性の低い組織です。ラガルド専務理事の一件は、国際機関の組織改革の必要性をも問うているように思えるのです。

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北方領土問題の正しい解決方法はICJへの付託では

2016年12月19日 14時23分25秒 | 国際政治
【プーチン大統領来日】領土交渉の「壁」は日米安保条約 露、オホーツク海の要衝軍事化を警戒
 南シナ海問題に対しては、日本国政府は、法の支配の原則を掲げ、国際法に照らした解決を主張し続けていおります。その一方で、新聞報道によりますと、安倍首相は、”法的立場を延々とお互いに主張しあっても埒がが明かない”といった内容の、危うい言葉を漏らしたそうです。

 ところで、北方領土問題については、サンフランシスコ講和条約締結時には日本国は放棄していたものの、1956年の日ソ共同宣言に際してアメリカから”横槍”が入り、四島返還要求に変更したとする説があります。しかしながら、若干詳しく調べてみますと、この時、突然に方針を変えたのではなく、講和交渉に際して、日本国政府は、択捉島と国後島についても自国領として主張していたようなのです。サンフランシスコ講和条約は1951年9月8日に署名されますが、翌9日に、吉田茂首相は、”南千島”が自国領である旨を演説で述べたと言います。

 この基本認識はアメリカとも共有しており、署名に先立つ同年2月には、ダレス米国務長官は、”南千島”は日本領と発言しています。翌年の3月29日には、アメリカ上院も「南樺太及びこれに近接する島々、千島列島、色丹島、歯舞群島その他の領土、権利、権益をソビエト連邦の利益のためにサンフランシスコ講和条約を曲解し、こらの権利、権限、及び、権益をソビエト連邦に引き渡すことをこの条約は含んでいない」と決議し、この基本方針は、同条約第25条にも明記されているのです。日ソ共同宣言に際してアメリカが”ソ連への割譲を許すならば沖縄も返還しない”と脅したのも、同条と続く第26条に基づく当然の対応として理解できます。

 ところが、不可解な事に、1951年10月に至り、国会での答弁において、日本国の西村熊雄外務省条約局長が千島列島には南千島を含まれるとする発言しております。この立場は1956年2月に取り消されますが、北方領土ロシア領支持説の人々は、常々、この答弁を日本国による放棄の根拠に挙げています。もっとも、ロシア側も、エリツィン大統領の時代には、ソ連邦時代や今日のプーチン大統領とは異なり、択捉島と国後島には領土問題があることを認めていましたので、日本国政府による見解の変更については、それ程重要視する必要はないように思われます。

 以上の経緯から浮かび上がるのは、サンフランシスコ講和条約では、北方領土の帰属については、アメリカは日本領と見なしたものの、何らかの事情、おそらく、連合国内の見解の不一致によりペンディングされたのではないか、ということです。そして、条約の解釈から生じる問題の解決をICJに託した第22条こそ、北方領土等の問題解決を想定した条項であったとする説にも頷けるのです。となりますと、北方領土問題の最も正しい解決方法とは、ICJへの付託ということになりましょう。 

 ダレス国務長官は国際法の専門家でもあり、第二次世界大戦の処理に際しても、国際法に照らして一点の曇りもなき解決を目指したのかもしれません。連合国が大西洋憲章で掲げた領土不拡大の原則は、連合国諸国の間の合意に留まらず、当時の国際法、並びに、法の一般原則とも合致した最も基本的な法的原則です。国際社会を無法地帯と化さないためにも、日本国政府は、堂々と司法解決への道を歩むべきと思うのです。

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頑張れフィリピンー諦めたらお終い

2016年12月18日 13時55分40秒 | 国際政治
比外相「中国に抗議しない」=南沙の防空施設問題
 中国がスプラトリー諸島において防空施設を整備している件について、フィリピンのヤサイ外相は、滞在先のシンガポールで「われわれは中国を止められない。できることは今何もない」と述べたと報じられております。諦めたとも解される発言ですが、フィリピンには、本当にできることは何もないのでしょうか。

 フィリピンが、真に自国の領土を守りたいと望むならば、あらゆる手段を尽くすのが政治家の仕事です。アメリカとの関係はぎくしゃくしてはいるものの、まずは、米比相互防衛条約に鑑みて、米国との協議の場を設ければ、中国に対する牽制となります。報道だけでは、スカボロー礁にも防空施設が設置されたのか否かは分かりませんが、2012年頃までは、同礁はフィリピンの管轄下にありましたので、奪回対象として同盟の発動要件を充たしていないわけではありません(仲裁判決での地位は領海を設定できる岩礁)。

 また、近年、機能低下が顕著とはいえ、国連安保理の枠組みを利用することは、仲裁判決不履行の問題に対する最も正当な手続きであり、手段です。現行の国際司法制度には、判決履行を強制する手段がない欠陥がありますが、国連には、平和的紛争の解決を実現する役割が託されていますので、フィリピンには、安保理に訴える権利があります。とりわけ、国連憲章第6章の問題として提起すれば、中国の事実上の拒否権を封じることもできます。

 さらには、ベトナムなど、中国によって同様の不当な権利の侵害を受けている諸国との間で協議の場を設け、共同戦線を張るのも一案です。ASEANには、親中派の諸国もあり、一致団結した行動には妨害が予測されますが、直接に被害を受けている諸国による共同抗議であれば、中国には痛手となるはずです。広く国際世論に対して中国の不当性を訴えるだけでも、風向きが変わってくる可能性があります。


 今年7月12日に判決が示された仲裁裁判において、フィリピンは、殆ど満点に近い形で勝訴しました。国際司法制度における判決という最強のカードを手にしながら、”何もできない”として南シナ海における中国の海洋侵出と軍事拠点化を放任するようでは、権利の放棄にも等しく、国際社会に対する悪影響も懸念されます。フィリピンは、国際司法制度を破壊させる、中国の共犯者として不名誉な評価を国際社会から受けることにもなりかねません。諦めたらお終りですので、フィリピンには、中国の属国に転落せぬよう、最善を尽くしていただきたいと思うのです。

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対中包囲政策としての日本国の対ロ協力のリスクーロシア懐柔は米ロ関係に期待

2016年12月17日 14時52分07秒 | 国際政治
【プーチン大統領来日】「特別な制度」設計は難航必至 北方四島ぶつかり合う主張 
 ロシアのプーチン大統領の来日は、日本国側の対ロ経済協力ばかりが目立ち、日本国には然したる成果はなかったとする評があります。その一方で、対ロ協力は、中国の軍事的な脅威が高まる中、対中包囲網としての意義があるとして支持する見解も見られます。

 南シナ海における中国の一方的な軍事拠点化や尖閣諸島周辺での威嚇行為は、今や、一触即発の状況と言っても過言ではなく、中国とロシアとの間に楔を打つことは、日本国を含め、中国の脅威に晒されている全ての諸国にとって、戦略上、必要な政策です。仮に、今般の対ロ経済協力が、中国との関係を深めているロシアの懐柔を目的として実施されるのであれば、それなりの評価を得て然るべきです。

 その一方で、ネット上で批判されているように、今般のロシアへの譲歩が日本国による北方領土に対する主権の放棄を含意するならば、これ程の外交上の失敗はないかもしれません。もっとも、新聞紙上の関連記事では、危うい言い回しはあるものの、日本側が領土を放棄したと明白に読み取れる文面はなく、この批判は、言い過ぎではあるようです。もっとも、ロシア側が、北方領土をあくまでも手放さない理由が、日米安保の適用による北方領土への米軍基地設置であるならば、最初から、領土問題において進展が望めないことは分かっていたはずです。言い換えますと、ロシアが、日米同盟の破棄と北方領土返還をバーターにしようと目論んでいるとしますと、対中包囲政策として対ロ交渉を推進することには、最早、不可能となります。何故ならば、対中包囲網において主力となる日米同盟が消滅すれば、中国の脅威は、同盟解消以前の状態と比較して格段に高まるからです。しかも、先の大戦において、日本国には、ソ連邦と中立条約を締結しながら一方的に破棄されたという苦い経験があります。今般も、日米同盟が解消された後になって、中ロが手を結ぶ展開もないとは限らないのです。

 このように考えますと、仮に、対ロ協力が対中包囲政策とリンケージしていた場合には、経済協力を最低限に抑える一方で、領土問題については交渉を凍結し、将来の司法解決に向けての準備を進める方が賢明なように思われます。となりますと、中ロ間の離反をどのように実現するのか、という問題が残ることになりますが、この点に関しては、親ロ的なスタンスにあるトランプ次期政権にロシアの抑え役を期待できるかもしれません。少なくとも、日米同盟なくして中国の脅威に対抗することはできす、この基本軸を維持した上で、ロシアへの働きかけを試みるべきではないかと思うのです。

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