万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

目覚めるべきはイスラエル国民

2023年10月31日 12時52分56秒 | 国際政治
 シオニストにして大ユダヤ主義者でもあるイスラエルの首相、ベンヤミン・ネタニヤフ首相は、ハマスを壊滅させるまで矛を収めるつもりはないようです。国際社会に広がる停戦を求める声に耳を貸そうとはせず、戦争は「第二段階」に入ったと語気を強めています。同首相が強硬姿勢を貫けば、懸念されている地上侵攻の日も遠くはない、ということになるのですが、戦争とは、一方の単独意思だけで始めることができる性質のものですので、ネタニヤフ首相を翻意させることこそ、事態を早期に終息させるために不可欠となりましょう。

 今般のイスラエル・ハマス戦争は、支持率が低下傾向にあったネタニヤフ首相にとりましては、自らの求心力を高め、国民からの支持を回復させる絶好のチャンスともなるとする指摘があります。外敵の脅威を煽るのは、不人気な為政者が頼りがちな安易な手段なのですが、ネタニヤフ首相にも、戦争を自らの利益のために利用しようとする政治家の計算高さが窺えます。ハマスを壊滅させれば、イスラエル国民をテロの恐怖から解放した国家的な英雄として、イスラエルの歴史にその名を刻むこともできるのですから。その一方で、今般の戦争が人類を第三次世界大戦へ誘導するための導火線であるならば、同首相は、イスラエル国民というよりも、ユダヤ系世界権力のためにハマスと共に働いたこととなりましょう。

 ウクライナ、パレスチナと続く危機の連鎖現象の背景につきましては、今度の真相究明を待つ必要がありますが、ネタニヤフ首相の暴走を止めるには、国際世論の外部的な圧力のみならず、イスラエル国内の世論も今般の戦争の行方を変える重要な要素となります。イスラエルは、曲がりなりにも民主主義国家ですので、ネタニヤフ政権も、国民の支持を失えば方針を転換する、あるいは、政権そのものが瓦解せざるを得なくなるからです。

 メディアが報じるところに依れば、イスラエル世論も同首相の強攻策に対して支持一辺倒ではなく、ハマス側との交渉による人質解放を求める声も少なくないそうです。世論が割れ、ネタニヤフ政権に対する批判も聞かれる理由には、イスラエルによるガザ地区に対する攻撃を国際法違反行為、並びに、非人道的行為とする海外からの批判、あるいは、良心に照らした自己批判もあるのでしょう。パレスチナ自治区ガザの保健当局は、10月30日の時点でのパレスチナ側の被害者数は8306人にも上ると発表していますが、ハマスによる奇襲攻撃で命を失ったとされるイスラエル側の被害者数凡そ1600人です。同害報復を超えた過剰報復、もしくは、過剰防衛と言わざるを得ない現状は、イスラエル国民に冷静さを取り戻させているのかもしれません。何れにしましても、ネタニヤフ政権に対する国民の支持が盤石ではないことだけは確かなようです。

 そこで、ネタニヤフ首相の強硬路線を変更させるために、‘もう一押し’をするとしますと、それは、イスラエル国民が、本格的な地上侵攻作戦が実施された場合の自らの被害に思い至ることかもしれません。地上戦ともなれば、イスラエル側の兵士も無傷ではいられなくなるからです。ロケット弾等による空爆という飛び道具が主たる攻撃手段となる段階では、イスラエル側に人的被害は然程には多くはありません。しかしながら、地上戦ともなりますと、ハマス兵と直接的に接触・対峙することになりますので、イスラエル側の犠牲者数も増えるはずです。第二段階から第三段階、即ち、ハマス壊滅を目的とした北部ガザ地区への地上軍の投入が増えるにつれ、イスラエル側も相当の犠牲を覚悟しなければならなくなるのです。白兵戦とは双方の間の‘命の取り合い’となりますし、ガザ地区の地下には地下トンネルが蜘蛛の巣状に張り巡らされており、イスラエル軍兵士を返り討ちにすべく待ち構えているとも報じられています。

 広範囲、かつ、迷路状の地下トンネルに立てこもっている、あるいは、潜伏しているハマス兵を排除し、同地下施設を破壊しないことには、ハマス壊滅の目的を達成することはできないことでしょう。姿が一人も見られない程に‘地上’を制圧したとしても、‘地下’を根こそぎにしなければ、ハマスはいつでも芽を出してしまうのですから。人的被害を最小限に抑えるために無人機であるドローンを活用しようとしても、地下施設は防空壕に等しく、壊滅的な打撃を与えることは困難です。ハマスの奇襲を受けて、ネタニヤフ首相は、過去最大となる30万人の予備兵を招集しておりますが、30万人という数字は、ハマス制圧に際して生じる甚大なる人的犠牲をも示唆していると言えましょう(つづく)。

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意味深長なハラリ氏の‘大西洋憲章論’-疑われる第三次世界大戦のシナリオ

2023年10月30日 12時34分09秒 | 国際政治
 本日の報道に依りますと、世界各地からイスラエルによる非人道的行為に対する批判の声が上がり、国連総会でも休戦を求める決議が成立しながら、ネタニヤフ首相は、地上侵攻の計画をあくまでも諦めるつもりはないようです。アメリカのバイデン大統領の進言を受け入れて、計画実行の時期は遅らせてはいるものの、既に戦闘は‘第二段階’に入ったと述べ、本格的な地上戦に向けての準備を整えています。

 ハマスからの攻撃が奇襲であったにも拘わらず、イスラエルが地上侵攻の段取りを付つけているとしますと、おそらく、奇襲を受ける前から、イスラエル政府あるいは軍部にあって、水面下にてガザ地区等に対する‘地上侵攻計画’が策定されていたのでしょう。奇襲が真に青天の霹靂であれば、即時的対応として地上侵攻を首尾よく実行できるはずもありません。地上侵攻作戦をスムースに展開しようとすれば、計画の立案から軍事訓練に至るまで、一定の時間を要するからです。この点に鑑みますと、ハマスによる奇襲は切掛に過ぎず、むしろイスラエルは、虎視眈々と開戦のチャンスを狙っていたのかもしれません。

 イスラエルの言動から垣間見える計画性はハマス偽旗説を補強するのですが、イスラエル国民にして世界的なベストセラーとなった『セピエンス全史』の著者であるユヴァル・ノア・ハラリ氏も、イスラエル・ハマス戦争について意味深長な文を公表しています。イスラエル紙「ハアレツ」への寄稿文なのですが、同文は、地上戦を前にしたイスラエル政府に宛てた要望とも受け止められています。

 同寄稿文において、ハラリ氏は、第二次世界大戦にあって英米両首脳の合意事項として1941年8月14日に公表された大西洋憲章を持ち出しています。同憲章には、世界大戦を前にした連合国側の基本原則が述べられており、ハラリ氏も指摘しているように、不拡大方針、国家体制の選択に関する国民の決定権、当事国双方の国民の自由な希望表明に基づく領土の変更、武力の使用の放棄(ただし、国際的な安全保障制度が確立されるまでは、暴力主義国家の武装解除のための武力行使は許す?)などが列挙されています。また、軍事や政治の分野のみならず、戦後の国際経済・通商体制に関する条文も含まれています。第二次世界大戦後の世界大での自由貿易体制の構築は、既に1941年の時点で構想されていたこととなります。

 大西洋憲章の公表が、日本軍による真珠湾攻撃に先立つこと凡そ4ヶ月、即ち、アメリカの参戦に先立っていたことは、同世界大戦の計画性が強く疑われる一因でもあります。アメリカの参戦は織り込み済みであって、機会が到来さえすれば計画をすんなりと前に進めることができたのです。真珠湾攻撃の一報を受け取ったチャーチル首相は、これで戦争に勝利したとばかりに小躍りしたとも伝わります(その一方で、山本五十六スパイ説やフリーメイソン説も根強く囁かれることに・・・)。今般のハマスによる奇襲も、大局的に見ますと、世界大戦への拡大を意図した計画的な行動にも思えてくるのです。

 奇襲の真相については今後の検証を要するとしても、ハラリ氏は、イスラエル・ハマス戦争に際しても、第二次世界大戦に際しての連合国側の大義を掲げた大西洋憲章に匹敵するようなイスラエル憲章を作成すべきと提言しています。大西洋憲章が、戦争の目的を‘ナチスの暴政の最終的破壊’にとどまらず、勝利後における自由で民主的な国際体制の再構築に定めたように、イスラエル・ハマス戦争にあっても、多大なる犠牲を払う以上、イスラエル国民は、ハマスの壊滅という目的を超えた‘もっと奥行きがあり、もっと建設的な何か’を必要としていると訴えているのです。

 戦後の国民の生活を慮っているとも解釈されますが、そもそもハラリ氏がイスラエル・ハマス戦争に際してもイスラエル憲章を、第二次世界大戦時の大西洋憲章に擬えた時点で、そこには、世界大戦のイメージが浮かんでいたはずです。一般的な国家間戦争、あるいは、‘テロとの戦い’とは異なる、国際秩序の再構築に繋がるような戦争への発展を想定しているからこそ、大西洋憲章が歴史的な前例として頭に浮かんだのではないかとも推測されるのです。

 ハラリ氏は、AI等のテクノロジーが高度に発達した近未来において不死の神の域にアップ・グレードした人間、即ち、「ホモ・デウス」の出現をも予言していますので、‘イスラエル憲章’の内容は、大西洋憲章のものとは全く違ったものとなるのでしょう。ハマスによる奇襲は‘始まり’に過ぎず、その先には、イスラエル憲章と表現するよりは、ユダヤ憲章、あるいは、世界憲章といった名称が相応しい‘新世界秩序’が予定されているのかもしれません。

 因みに、戦後のイスラエルの建国は、パレスチナ人の‘自由に表明した希望’に基づくものでもなく、大西洋憲章の方針にも反しています。人類の未来を見通すとされるハラリ氏の言動から、第三次世界大戦のみならず同戦争後の‘新しい世界’の出現のシナリオを読み取るのは、世界大にネットワークを張り巡らしているユダヤ・パワーに対する警戒心ゆえの、考え過ぎというものなのでしょうか。

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ドイツは人類普遍の罪を憎むべきでは?-イスラエル絶対支持の危うさ

2023年10月27日 12時26分10秒 | 国際政治
 イスラエル・ハマス戦争は、目下、イスラエルによるガザ地区空爆の非人道性に批判の声が上がる展開となっております。イスラエル支持一辺倒であったアメリカのバイデン大統領も、パレスチナ住民の保護並びに国際法の遵守を求め、若干の軌道修正を見せるようになりました。その一方で、ナチスによるユダヤ人迫害という負の歴史を背負ってきたドイツでは、今もなおユダヤ人批判はタブーであり、ジェノサイドとも称される人道上の危機を目の当たりにしても、なおもイスラエル支持の立場を頑なに維持しているそうです。ドイツの過去に対する贖罪意識に基づくイスラエルに対する無批判な態度は、果たして正しいのでしょうか。

 ドイツがイスラエルを無条件に支持する理由は、過去において自国の政府が行なったユダヤ人迫害に対して深い反省を示す必要があったからです。ニュルンベルグ国際軍事裁判におけるナチス幹部に対する法の裁きに留まらず、戦後一貫してサイモン・ウィーゼンタール・センター等のユダヤ人団体による責任追及並びに言論監視を受けてきました。国内法にあっても、ホロコーストの否定は刑法上の罪とされており(ドイツ刑法第130条)、反ユダヤ主義的な言動は取締の対象とされています。一つ間違えますと刑罰を科せられるのですから、こうした状況下にあっては、ドイツにあっては、ユダヤ人国家であるイスラエルを批判することが困難であることは容易に理解されるのです。

 2008年には、アンゲラ・メルケル首相も、イスラエルの国会にて「ドイツの歴史的責任は、私たちの国の国家理性です。つまり、イスラエルの安全は、ドイツ首相である私には必須のものであり、そこに議論の余地はありません」と述べ、イスラエル防衛に対するドイツの責任について言及しています。いわば、イスラエルの安全こそドイツの国家的使命と言わんばかりであり、同首相にとりましては、‘議論の余地’のない至上命題であったのでしょう。メルケル元首相の認識が現代のドイツを代表しているとすれば、今般の戦争にあっても、ハマスの攻撃からイスラエルを守ることが、国家理性が命じるドイツの義務ともなるのです。

 メルケル元首相の謝罪の言葉には、かのワイツゼッカー大統領の「荒れ野の40年」演説が思い起こされる格調の高さが窺えるのですが、その一方で、ユダヤ人、あるいは、イスラエルに対する責任の気負いは危うくもあります。何故ならば、‘罪を憎んで人を憎まず(Condemn the crime, not the person.)’という諺がありますが、ドイツの場合には、逆に‘人を憎んで罪を憎まず’となりかねないからです。つまり、ユダヤ人を迫害したナチス、並びに、自らの過去は憎むけれども、罪となる行為そのものは憎まない、あるいは、軽視するという倒錯です。

 ナチス・ドイツを憎む余りに、行なわれた行為の罪悪に関する考察を怠りますと、簡単にこうした倒錯が起きてしまいます。過去に罪を犯した者、そして、それを支持する者達に対する糾弾で満足し、普遍的な行為としての罪そのものについては、目を瞑ってしまうのです。ワイツゼッカー大統領は、「荒れ野の40年」演説にあって「過去に目を閉ざす者は結局のところ現在にも盲目となります。非人間的な行為を心に刻もうとしない者は、またそうした危険に陥りやすいのです。」と述べています。‘過去’を‘過去に行なわれた非人間的行為’と解しますと、この言葉は今や盲目的にイスラエルを支持する現在のドイツにこそ当てはまるのかもしれません。

 皮肉なことに、ナチスによる‘ホロコースト’がなければ、戦後おけるユダヤ人国家イスラエルは誕生しませんでした。国際社会は、‘ホロコースト’の悲劇が二度と起きないように、被害者となったユダヤ人が国家を建設することを認めたのですから。この因果関係は、しばしばヒトラー・ユダヤ人説や偽旗説との関連から指摘されるのですが、ホロコーストの存在がイスラエルの建国に関わる死活問題であるからこそ、憎むべきは‘人(反ユダヤ主義者)’でなければならなかったのでしょう。

 なお、ワイツゼッカー大統領は、演説の大半をホロコーストの悲劇に割きながらも、「中東情勢についての判断を下すさいには、ドイツ人がユダヤ人同胞にもたらした運命がイスラエルの建国のひき金となったこと、その際の諸条件が今日なおこの地域の人びとの重荷となり、人びとを危険に曝しているのだ、ということを考えていただきたい。」と述べることを忘れませんでした。パレスチナ人の犠牲に言及した点において、同大統領は、メルケル元大統領よりも公平かつ客観的な視点の持ち主であったようです。現在のイスラエルが過去のドイツと同様に人類普遍の非人道的な行為に及んでいる今日、ドイツは、その罪に目を瞑ってはならないのではないかと思うのです。


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確認すべきは一般のパレスチナ住民には罪がなかったこと

2023年10月26日 12時55分52秒 | 国際政治

 イスラエル並びにハマス双方による残虐行為の応酬を前にして、ユダヤ系の人々が絶大なる影響力を保持しているアメリカやヨーロッパ諸国、特に政府並びに主要メディアの論調は、イスラエル支持が圧倒しているようです。ユダヤ人であればイスラエルを支持するのは当然のこととしても、ユダヤ人にして『サピエンス全史』の著者ある歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリ氏でさえ、イギリスの『ガーディアン』紙からのインタヴューに応じて「ハマスへの非難をしないばかりか、すべての責任をイスラエルに押し付けるような反応を聞いて、ショックを受けた・・・」と述べています。‘超天才’とも評された同氏をもってしても、ユダヤ人としての自らのアイデンティティーから離れられず、超越した視点から全体を客観的に捕らえることはできないようなのです。

その一方で、パレスチナをサポートしてきたアラブ諸国において反イスラエル感情の昂ぶりが見られつつも、ハラリ氏が‘嘆いた’ように、今般の戦争に関しては、日本国内をはじめとして、双方から距離を置いた客観的な立場からの見解も少なくありません。ハマスによるテロ攻撃が非人道的な行為であることは確かなのですが、その原因まで遡りますと、必ずしもイスラエルが被害者であるとは言えないからです。イスラエルは、パレスチナ人から一方的に土地を奪う形で建国されたのですから。

こうしたケースは、‘目的が正しく、手段が間違っている場合には、どのように考えるべきか’という問題設定となります。安部元首相暗殺事件や岸田首相狙撃事件等に際し、テロリストに対して同情論が湧き出たのも、論理の飛躍はあったとしても、宗教被害や世直しを訴える容疑者の動機に同感した人が少なくなかったからです。刑罰の制度が端的に示すように、悪事を働いた人に対する制裁や被害の回復は正当な行為とされています。また、迫害に対する抵抗や悪政に対する反乱や一揆が肯定的に評価されるのも、目的が‘正しい’からに他なりません。

目的が正しい場合には、悪に対する制裁や正義の回復のための行動も正しいこととなり、問題は、手段の選択に移ります。上述した抵抗、反乱、一揆などが頻繁に起きた時代とは、平和的に解決する手段に乏しく、力を手段として実力で訴えるしかなかった時代でもありました。この点に注目しますと、国民の政治に対する不平や不満、あるいは、公共の利益を政治の場に届けることができる民主的な制度は、人類の偉大なる発明の一つであるとも言えましょう。しかしながら、国際社会において平和的な解決手段が十分に整えられているのか、と申しますと、今日における戦争や紛争の頻発が、この問いに対して否定的な回答を示しています。

パレスチナ紛争も然りです。たとえ金融・経済面において絶大なるパワーを有し、かつ、‘ホロコースト’の被害者であったとしても、ユダヤ人の要求を実現することが、他の集団や個人の権利を一方的に侵害する場合、果たして第二次世界大戦後の解決方法が適切であったのかさえ、疑わしくなります。少なくとも、パレスチナの地に住んでいた人々は、同決定に際して全く無視されたに等しく、合意を与えたわけでもありませんでした。一体、パレスチナの人々がユダヤ人に何をしたというのでしょうか。これらの人々は、パレスチナの地で平穏に暮らしていた人々であって、ユダヤ人との間にとりたてて敵対関係にあったわけでもないのです。ユダヤ人差別は、むしろヨーロッパ諸国の方が激しく、中近東の地域では平和裏に共存しているケースの方が多いのです。

何らの罪のないパレスチナ人が一方的に邪魔者扱いされて土地を奪われる一方で、イスラエルは、同地の分割線を定めた国連総会決議を遵守せず、4度に亘る中東戦争、並びに、テロによる混乱に乗じるかのように力によって自らの占領地を拡大しています。この行為は、国際法が禁じる武力による現状の変更ともなるのですが、力を手段とした点においては、テロリストと変わりはありません。テロリストは民間人を標的にするから‘悪’とする見解もありますが、パレスチナ人の居住地を占領する行為において民間人の被害者はただの一人もいなかったのでしょうか。

 多くの人々が、今般の戦争に際してイスラエルを支持しない理由も、同地に住んでいた一般のパレスチナ人、すなわち、パレスチナ人には何らの罪も責任もないことに依りましょう。ハラリ氏は、今後の暴力行為に対してイスラエルにのみが全責任を負うべきとしたハーバード大学学生グループの声明文に対して失望の言葉を述べていますが(ただし、同学生グループは、後に親イスラエル派の人々によって圧力を受けることに・・・)、少なくとも、一般のパレスチナ住民に罪も責任にもないことだけは確かなのです。被害面ばかりを強調するイスラエルの人々も、自らを一般のパレスチナ人の立場に置き換えて考えてみるべきと言えましょう。

この点を考慮しますと、イスラエル・ハマス戦争を含むパレスチナ紛争の解決には、時間を要することは言うまでもありません。イスラエルやハマスのみならず、同地を国際連盟の名の下で委任統治領としたイギリス、全世界のシオニストを含むユダヤ人、紛争に介入したアラブ諸国やイラン、そして、平和的な解決方法を提示できていない国際社会(平和的解決方法の欠如は、テロを正当化してしまう・・・)、並びに、これら全てを背後から操ろうとする世界権力にも責任があるからです。少なくとも、現状にあってはイスラエルによる地上侵攻計画を止めることが先決であり、その後、改めて平和的解決に向けた仕切り直しを行なうべきではないかと思うのです。

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イスラエルはトリレンマを解きたかった?-ガザ地区制圧の目的

2023年10月25日 10時09分35秒 | 国際政治
 本日、ウェブ・ニュースにおいて今般のイスラエル・ハマス戦争に関連する二つの興味深い記事を発見いたしました。その一つは、「ユダヤ人団体が全米で抗議デモ、即時停戦とパレスチナ人の公正訴え」であり(CNN)、もう一つは、「イスラエルという国家が抱える「最大の矛盾」が悲劇を招いた ユダヤ人国家と民主主義国家は両立できるのか」といういささか長いタイトルの付いた記事です(東洋経済オンライン)。この二つの記事を照らし合わせますと、ネタニヤフ首相率いるイスラエル政府の目的が見えてくるように思えます。

 前者の記事において注目すべきは、ユダヤ人でありながらイスラエル政府を批判し、即時停戦を求めている団体のメンバーの言葉です。同団体の一つである「イフナットナウ」の政治局長エバ・ボルグワルト氏は、「ネタニヤフ首相やガラント国防相が『闇の子どもたち』『人間のような動物』といった言葉でパレスチナ人を形容するのを聞くと、骨身に染みるように感じる」とした上で、「その言葉が行き着く先を私たちはよく知っている。彼らが明らかに意図しているジェノサイド(集団殺害)を阻止するために、私たちはここにいる」と述べています。つまり、同氏は、‘パレスチナ人を集団殺害する’というネタニヤフ政権の意図を明らかにしているのです。

 おそらく、今般のイスラエル・ハマス戦争の意味するところがパレスチナ人に対するジェノサイドであることは、イスラエル内外のユダヤ人の多くが共有している認識なのでしょう。それでは、何故、ネタニヤフ政権は、ジェノサイドという、かくも非人道的な手段に訴えようとしているのでしょうか。その回答は、後者の記事の中において示唆されています。

 後者の記事の内容には、ダニエル・ソカッチ著の『イスラエル』(NHK出版)において紹介された初代イスラエル首相ダヴィド・ベン=グリオン氏が指摘したトリレンマに関する記述が含まれています。イスラエルが抱えるトリレンマとは、簡潔に表現すれば(1)ユダヤ人民族国家、(2)民主主義国家、(3)大ユダヤ主義(ヨルダン川西岸地区並びにガザ地区等を含むカナンの地全域の併合・・・)の三者の間の解きがたいトリレンマです。これら全てを実現することはできず、どれかは諦めなければならないのです。

 同記事によれば、ネタニヤフ首相に象徴される極右勢力が(3)の大ユダヤ主を実現するためにヨルダン川西岸地区やガザ地区を併合しようとすれば、人口構成が大きく変化し、(1)のユダヤ人単一民族国家ではなくなります。さらに、パレスチナ系イスラエル国民が人口のおよそ3分の1を占める状態にあって民主主義国家であろうとすれば、パレスチナ系国民の政治参加を認めざるを得なくなります。この結果、将来的にはイスラエルのパレスチナ化、あるいは、アラブ・イスラム化も予測されましょう(人口増加率はパレスチナの方が高いのでは・・・)。イスラエルがユダヤ国家であろうとすれば、(2)の民主主義を放棄し、南アフリカのアパルトヘイト的な政策を採らざるを得なくなるのです(パレスチナ系イスラエル国民には参政権を付与しない、あるいは、大幅に制限する・・・)。

 イスラエルの初代首相が指摘したぐらいですから、ネタニヤフ首相も当然にこのトリレンマについては熟知しているはずです。そして、ここで、トリレンマの解決策として、パレスチナ人に対する‘民族浄化’という悪魔の囁きが聞こえたのかもしれません。大ユダヤ主義者が思い描く大イスラエル国家の領域内からパレスチナ人がいなくなれば、同トリレンマを解くことができるからです。

 空爆という手段はそもそも無差別的な殺戮を意味しますし(指導者のみをピンポイントにターゲットとしているわけではない・・・)、イスラエル・ハマス戦争の宣戦布告とおよそ同時期にイスラエルが北部ガザ住民に南部への避難を呼びかけたのも、パレスチナ人パージ作戦の一環であったのかもしれません。最終的には南部に移動したパレスチナ避難民を隣国のエジプトに追い出す計画であったのかもしれませんが、イスラエル軍は避難地であるはずの南部をも空爆していますので、パレスチナ人を敢えて南部に集めて集団殺害しようとした疑いも拭えないのです。

 『旧約聖書』には、神から授けられた十戒を破り、残忍な手段や謀略をもって自らの国家を建設したため、結局は、神の怒りを買って国家滅亡の憂き目にあったユダヤ人の歴史が記述されています。パレスチナに留まらず、‘世界大での大ユダヤ主義’を追求しようとする時(全世界はユダヤ人の支配地であり、‘邪魔者’はもっともらしい口実を設けて全てパージする・・・)、同書はユダヤ人に対する重大な警告としての意味を帯びてくるようにも思えます。たとえ神ではなくとも、大多数の人類の怒りを買うのですから。

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崩れゆくグローバリストのイメージ-イスラエル・ハマス戦争の余波

2023年10月24日 10時57分31秒 | 国際政治
 イスラエルによるパレスチナガザ地区に対する容赦ない空爆は、その根拠が10月7日に起きたハマスによる奇襲攻撃に対する‘正当防衛’であれ、‘テロとの戦い’であれ、国際法上の重大犯罪であるジェノサイドの域に達しているように思えます。ハマスによる先制攻撃は、イスラエルによる違法行為を正当化しませんので、国際社会は、何としてしても激化の一途を辿っているイスラエルによる違法行為を止めさせる必要がありましょう。戦争の連鎖的な拡大を防ぐためにも。

 そして、今般のイスラエル・ハマス戦争で改めて驚かされたのは、イスラエルのパレスチナ人に対する余りにも無慈悲かつ冷酷な態度です。そもそものパレスチナ紛争の始まりは、ユダヤ人がパレスチナ人から何らかの損害を受けたり、あるいは、ユダヤ人に属するものを奪われたからではありません。もちろん、ナチスの‘ホロコースト’に加担したわけでもありません。事実は全くの逆であり、それがイギリスによる悪名高き‘二枚(三枚)舌外交’、あるいは、シオニスト達の運動の結果であれ、損害を受けたのは明らかにパレスチナ人の側です。同経緯を思い起こせば、最低限、イスラエルは建国に先だって1947年11月29日に国連総会で成立した国連分割決議が引いた国境線を遵守すべきでしたし(同国境線は国際社会におけるイスラエルの国家承認の条件であったはず・・・)、パレスチナ人に償いこそすれ、迫害するなどはもっての他であると言えましょう。

 イスラエルは、ガザ地区を実効支配するハマス排除を目標に掲げていますが、ガザ地区の全住民がハマスを支持しているわけでもありません。ハマス支持者は全人口の3割ほどとの指摘もあります(加えて、ハマスには、‘鉄砲玉’の役割を担う偽旗組織の疑いがある・・・)。ハマスは武装組織ですので、同地区では、有無を言わせない‘力による支配’が成立しているのでしょう。仮に全住民がハマスと‘一心同体’であるならば、イスラエルによる南部地域への退避勧告に従うことなく、北部地域に留まってハマスと共に一致団結してイスラエルと闘うはずです。

 目下、イスラエルは、ハマスとガザ住民を一方的に同一のものと見なし、見境なく攻撃を加えているのが現状なのですが、クリントン元国務長官が述べたように‘ハマスの指導者を抹殺’しようとすれば、指導者のみならず全パレスチナ人虐殺ともなりかねません。一般住民として暮らすハマスメンバーもおりますし、テロリストと民間人を外観で見分けることは殆ど不可能なのですから。

 ‘天井のない監獄’、あるいは、‘青空監獄’とも称されてきたように、イスラエル・ハマス戦争が始まる以前から、イスラエルは、65キロメートルにも及ぶ壁を建設するなどパレスチナガザ地区を封鎖し、その住民の人々に過酷な生活を強いてきました。今般の戦争は、皮肉にも、これまでのイスラエルの非人道的な行為にもスポットライトが当てられることとなり、ユダヤ人に対する甚だしいイメージダウンを齎したことは否めません。そしてこのイメージダウンは、グローバリストと呼ばれるユダヤ系を中心とした特定の金融・経済勢力にも及ぶこととなりましょう。

 何故ならば、イスラエルの行動がユダヤ人指導者や有力者の一般的な傾向を表しているとすれば、グローバリストも、これまで振りまいてきたイメージとは逆である可能性が極めて高いからです。世界経済フォーラムに象徴されるグローバリスト、即ち、世界権力は、国境のない世界を理想とし、多様性の尊重、異質なものに対する寛容、人種、民族、宗教に基づく差別の撲滅などを目指してきました。しかしながら、イスラエルは、ガザ地区との境に国境よりも遥かに高く堅固な壁を築き、パレスチナ人を隔離状態にしています。また、外部との交通路を遮断することで、水や食料、医薬品といった住民の生命に関わる物資についても供給を妨害し、パレスチナ人を劣悪な生活環境に置いてきました。多様性を尊重するどころか、パレスチナ人をターゲットとして露骨なまでに差別し、迫害しているのです。

 しかも、イスラエルが徹底してガザ地区の住民を追い詰めている理由は、上述したようにパレスチナ人に加害行為があったのではなく、単にユダヤ人にとって‘邪魔’であるからです。自らが欲する土地に住んでいたという理由だけで迫害を受け、虐殺されるのですから、イスラエルの仕打ちはパレスチナ人にとりましては理不尽この上ありません。この側面は、自らが一方的に定めた未来ヴィジョンとは異なる意見や批判は徹底的に‘封殺’しようとするグローバリストとも共通しています。自らの計画にとりまして障害となる存在に対しては、徹底した排除の姿勢で臨むのであり、目的達成のためには手段を選ばないのです。

 今般のイスラエル・ハマス戦争は、それがユダヤ人国家であるイスラエルを当事国とする戦争であっただけに、ユダヤ系グローバリストの本質をも暴いているように思えます。かのサイモン・ウィーゼンタール・センターも、1993年に寛容博物館(Museum of Tolerance)という名称のホロコーストを軸に人種差別や偏見がもたらす非人道性について学ぶ施設を開設しています。同博物館についても、パレスチナ紛争をめぐって偏向があるとする批判が寄せられているそうですが、非ユダヤ人、あるいは、世界権力が決めた未来を望まない人々に対する非寛容性は、ダブルスタンダードであり、人類にとりまして命に関わる重大な危機なのではないかと思うのです。

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崩れゆくユダヤ人の被害者イメージ

2023年10月23日 12時15分13秒 | 国際政治
 第一次世界大戦後の混乱期にあってドイツにて成立したナチス政権は、国策としてユダヤ人を公然と迫害しました。ポーランドのアウシュビッツに設けられたユダヤ人収容所では、過酷な強制労働により衰弱したユダヤ人からガス室に送られたともされ、その手法の冷酷さも際立っています。キリスト教世界であったヨーロッパでは、異教徒となるユダヤ教徒に対する宗教差別も根強く、現代にあっても‘ホロコースト(大量虐殺)’とも称される残酷な迫害を受けたユダヤ人は、人類の歴史において‘被害者’と見なされてきました。

 ナチス政権による弾圧と迫害があまりにも非人道的であったため、今日では、ユダヤ人批判はむしろタブーとされています。これは、独裁者ヒトラーを生み出したドイツのみならず、政界、財界、マスコミ等のあらゆる分野でユダヤ系コミュニティーが影響力を及ぼしているアメリカや他のヨーロッパ諸国においても同様です。地理的に遠方にある日本国でさえ、ユダヤ人団体の抗議を受け、‘ホロコーストはなかった’とする記事を掲載した文藝春秋社の雑誌『マルコ・ポーロ』が廃刊に追い込まれたほどです。

 ところで、マルコ・ポーロ事件を起こしたユダヤ人団体は、アメリカ西海岸のロサンジェルスに本部のあるサイモン・ウィーゼンタール・センターという名のユダヤ人人権団体です(イスラエルの首都エルサレム、ニューヨーク、トロント、マイアミ、シカゴ、パリ、ブエノスアイレスなどにも支部がある)。同団体を1977年に創設したは、ユダヤ教の聖職者ラビであったマーヴィン・ハイヤー師です。同師はユダヤ人の両親の元で1939年に生まれていますが、出生地はアメリカのニューヨークですので、本人が‘ホロコースト’を直接に経験したわけではありません。両親のアメリカへの移住の年も1917年であり、第二次世界大戦ではなく、第一次世界大戦の最中と言うことになります。

 今日に至るまで、ハイヤー師は、ホロコーストに関するドキュメンタリー映画の制作やスティーブン・スティルバーグ監督による『シンドラーズ・リスト』への協力など、マスメディアや映像の世界においてユダヤ人の人権を擁護する活動に従事してきました。同活動が高く評価され、フランスのミッテラン大統領から国家功労勲章を1993年に授与されています。1997年には、第二次世界大戦後のアメリカへのユダヤ人移民並びにそのイスラエル建国への貢献を描いた映画『The Long Way Home』の共同プロデューサーとして、二つのアカデミー賞も受賞しました。

 ニューズウィーク誌は、ハイヤー師を‘全世界の指導者、ジャーナリスト、映画撮影所のトップと電話一本で通じる人物’と紹介しており、その世界的影響力は絶大であったようです。ブッシュ大統領も、2008年5月14日のイスラエル建国60周年の記念日に同国を訪問するに際して、ハイヤー師を随行員に指名した程ですから、‘アメリカで最も影響力のあるラビ’とするニューズウィーク誌の評価も強ち間違ってはいないのでしょう。

 一方、サイモン・ウィーゼンタール・センターという団体の名称は、‘サイモン・ヴィーゼンタール’と言う人物の名に因んで命名されています。サイモン・ヴィーゼンタールは、1908年に現在はウクライナ領であるブチャチで生まれ(当事はオーストリア・ハンガリー帝国領、ただし、父親はポグロムを逃れてロシア帝国から移住・・・)、第二次世界大戦期にあって、‘ホロコースト’で家族や親族の多くを失うこととなりました。

 戦後、ナチスへの復讐に燃えた同氏は、ユダヤ人迫害を実行したドイツ人戦犯の追跡者、即ち、ナチ・ハンターとして活動します。例えば、アルゼンチンにおけるアドルフ・アイヒマンの逮捕は、同氏のイスラエルに対する情報提供によるものでした。1985年には、ノーベル平和賞の候補者にノミネートされながらも受賞は逸したものの、1992年にはオランダの『エラスムス賞』を受賞しています(エラスムスの‘二重犠牲が嬉しい悪魔’を思い起こすと考えさせられる・・・)。また、興味深いことに、2004年には、イギリスから大英帝国顕彰を授与されたのです。

 以上に述べてきたように、マルコ・ポーロ事件に関わったサイモン・ウィーゼンタール・センター一つをとりましても、世界大に広がるユダヤ人の人脈、並びに、その政治・社会的な影響力の強さが窺えます。今年の7月5日にも、エイブラハム・クーパー・サイモン・ウィーゼンタール・センター副館長が、日本国の山田賢司外務副大臣を表敬訪問しています。非政府組織でありながら、同団体は、半ばユダヤ人ネットワークのメッセンジャーとしての役割をも担っているのです。

 そして、このここで問題となるのは、サイモン・ウィーゼンタール・センターが、強力な情報統制、あるいは、一種の官民に対する検閲機関として機能してきた点です。同団体の活動を見ますと、ナチスによる‘ホロコースト’の被害者としてユダヤ人を歴史に刻みつけることが、同センターの役割でありように思えます。政界や言論界等に対して常に目を光らせ、ユダヤ人被害者史観に反する言論や表現は一切許さないとする姿勢を貫いているのです。

 しかしながら、長期的な視点から人類史を眺めますと、ユダヤ人が純粋に被害者であったとは言えないはずです(『ヴェニスの商人』にも描かれているように、ユダヤ人の高利貸しによって財A産を失った人も少なくなかったはず・・・)。とりわけ、第二次世界大戦後におけるイスラエル建国は、土地を追われたパレスチナ人の犠牲の下で成立しています。サイモン・ヴィーセンタール氏はシオニストでもあったとされますが(同氏の経歴に関しては疑わし点があるらしい・・・)、同団体の活動は、過去の一時期における被害者としての側面を強調することで、長期的、並びに、現在の加害性に煙幕を張ることにあったのではないかとも推測されるのです。そして、今般のイスラエル・ハマス戦争は、全世界を覆ってきたユダヤ人に対する被害者としてのイメージを根底から覆し、世界権力による世界大戦への誘導を含め、加害者としての側面が表に現れつつあると思うのです(つづく)。

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戦争による二重の犠牲-悪魔を嬉しがらせてはならない

2023年10月20日 10時27分06秒 | 国際政治
 戦争が絶えなかった16世紀の時代状況を背景として、デイデリウス・エラスムスは、『平和の訴え』という著書において、身勝手で強欲な君主達を批判しつつ、人々に問いかけています。「悪魔どもは殺すものと殺されるものが同時に二重の犠牲となることをひどく嬉しがるものですが、キリスト教徒が捧げているのはまさにこの二重の犠牲なのではないでしょうか」と・・・。‘君主達’を各国政府、あるいは、その背後で操る世界権力に置き換え、‘キリスト教徒’を、「人命を尊重し、暴力を厭う精神性を備えた現代人」に置き変えて読みますと、この問いは、現代という時代にも十分に通じるように思えます。

 ウクライナ紛争に対するロシアの軍事介入に始まる一連の流れを追ってゆきますと、そこには、世界大に戦争を起こそうとする一つの意思が読み取れるように思えます。既に多くの人々が陰謀の実在性を目の当たりにしり、むしろ、その存在の否定の上で現実を説明する方が難しい状況下にあります。仮に、何者かによって第三次世界大戦が計画されているとするならば、ウクライナ、パレスチナ、そして台湾における紛争が、戦争拡大のための発火点として役割を担わされているのでしょう。これらの地域においてほぼ同時に炎が燃え上がれば、全世界は、ほどなく戦火に包まれることとなりましょう。

 そして、この仮説が正しいとすれば、先日発生したパレスチナガザ地区の病院に対する空爆の意図も、自ずと理解されてくるように思えます。不可解なことに、同事件が誰の犯行であるのか分かっていません。イスラエルとアメリカは、イスラエル軍による空爆を否定する一方で、アラブ諸国と親パレスチナ武装勢力、並びに、イランとヒズボラ等のイラン系武装組織は、イスラエルによる犯行を疑っています。今日の高度な映像や音声技術からしますと、証拠の捏造も不可能ではありませんので、真相究明には時間も労力も要します。そして、この曖昧模糊とした混沌状態こそが、双方の憎悪が増してゆく‘時代の空気’ともなりかねないのです。つまり、病院空爆は、双方の敵愾心を煽るために行なわれたとも推測され、いわば、戦争激化のための‘燃料投下’であったのかもしれません。

 第三次世界大戦を引き起こすには、先ずもって二大陣営を形成する必要があります。本来であれば、各国には、近隣諸国との間にそれ固有の紛争原因を抱えているものですので、きれいに二大陣営に分けるのは至難の業です。二大陣営に分けようとしても、敵の敵は味方となるならまだしも、場合によっては、敵の敵も敵となるケースも稀ではなく、極めて複雑に敵と味方の関係が絡み合います。あるいは、地理的位置関係を考えれば、何れとも無関係な国が大半なのですが、近代以降、二度の世界大戦を経た今日、超大国を中心とした軍事同盟の存在が世界大戦に発展しやすい導火線を敷いているという見方もできましょう。

 自らは安全な場に身を置きつつ、自らの手は汚さずに人類を滅亡の淵にまで追い込むには、二つの陣営に分けて相互に殺戮をさせるのが好都合であり、そのためには、双方の国民やメンバーの憎悪を煽る必要があったと言えましょう。このように考えますと、病院空爆事件については、双方ともに感情の高ぶりを抑え、冷静な対応を心がけるよう努めるべきは、言うまでもありません。

 幸いにして、ユダヤ人の中にもイスラエルによるパレスチナ攻撃に対して批判的な人々も見られるそうです。双方が憎しみ合う敵対関係に誘導されている当事者の国民のみならず、日本国をはじめ他の諸国の国民も、早期の停戦を求めると共に、世界大戦への誘導作戦には十分に気をつける必要がありましょう。戦争の連鎖的拡大が予定されているのであれば、全人類はほどなく戦争に巻き込まれ、双方共に無辜の国民の多くが犠牲に供されてしまいます。悪魔は二重の犠牲を嬉しがるのですから。

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アメリカも戦争を望んでいる?

2023年10月19日 10時39分56秒 | 国際政治
 17世紀の哲学者、スピノザは、その著書『国家論』において、自然状態(無法状態)にある国際社会にあって、戦争とは、一国の意思のみで起こすことができる、といった意味の言葉を残しています(第3章第13節)。今般のイスラエル・ハマス戦争につきましても、何者かによる‘戦争への強い意志’が窺えます。その意思の所在については、メディア一般が報じるように、多くの人々は、イスラエルを奇襲したハマスの意思ではないかと考えるかもしれません。

しかしながら、奇襲の一瞬ではなく、歴史的な経緯や戦争利権などを含めて考察しますと、真に戦争を望んだのは、直接的な開戦事由を造ったハマスとは限らないように思えます。偶然にしては、‘余りにも出来過ている出来事’の連続であるからです。そこで、戦争意思の源泉を突き止めようとしますと、イスラエルも表層に過ぎず、そのさらに奥の暗闇を探す必要があるように思えてきます。視界不良ながら、イスラエルの次に視界に入ってくるのは、アメリカの姿であるかもしれません。アメリカが戦争を望んでいる疑われる理由は、以下のような不可解な行動が見られるからです。

 第一に、パレスチナガザ地区で起きた病院空爆事件を理由として、アメリカのバイデン大統領は、ヨルダンの首都アンマンで予定されていたヨルダンのアブドラ国王、エジプトのシシ大統領、並びにパレスチナ政府のアッバース議長との会談を、急遽取りやめています。戦争拡大を防ぐための絶好のチャンスであっただけに、同首脳会談のキャンセルは、和平に向けた機械を失ったこととなりましょう。とりわけ、パレスチナのアッバース議長との会談中止は、ガザ地区がパレスチナ国の領域であるにも拘わらず、アメリカが、パレスチナ国のガザ地区に対する領域主権並びに同地域の住民に対する対人主権を無視しかねない状況を生み出しています。なお、会談キャンセルの理由は、アッバース議長が喪に服しているためとも説明されていますが、戦争の最中にあって国家のトップが喪に服し、これを理由に公務を控えることは、常識的にはあり得ないことです。過去にあって、アッバース議長も親イスラエル政策が批判されたこともありましたが、ファタハにつきましても、その立ち位置が疑わしいのです。

 第二に、バイデン大統領は、ガザ地区の病院空爆については、イスラエルに責任はないと発言しています。その根拠として、傍受した通信内容や衛星画像などを挙げ、イスラエルと同様に、基本的には、イスラム聖戦による誤爆説を支持しているようです。しかしながら、人為的ミス、即ち、誤爆にしては、あまりにも出来過ぎています。安全が保障されるべき病院という、攻撃が行なわれれば被害を受けた側のみならず国際世論も沸騰するような建物に、都合良くロケット弾が着弾したことになるのですから。ガザ地区内からの発射であったとしても、イスラム聖戦等の過激派武装組織によるものとは限りませんし、ChatGPTをめぐって指摘されているように、今日の画像や音声模倣技術からしますと、証拠の捏造の可能性も否定はできなくなります。より慎重かつ科学的な調査や分析を要するにも拘わらず、イスラエルに責任なしと断言するバイデン大統領の姿は、どこか怪しげに映るのです。

 そして第三に疑いを深める不審な点は、今月18日に国連で開かれた安全保障理事会において、アメリカが一時停戦を求める決議案を葬り去ったことです。同安保理理事会では、ロシアが修正した二本の決議案は多数の賛成票を得られずに否決されたものの、ブラジルが提案した停戦案については、日本国を含めて12カ国が賛成票を投じました。賛成多数で可決となるところであったのですが、アメリカは、常任理事国として事実上の拒否権を行使し、同案は不成立となったのです。

 拒否権を行使した理由として、トーマスグリーンフィールド米国連大使は、同案にはイスラエルの自衛権が明記されていなかった点を挙げています。しかしながら、双方の戦闘員のみならず、民間犠牲者の数も増加の一途を辿っており、人道的見地から停戦を求めるのは当然のことです。また、そもそも国際法は、あらゆる紛争の平和的解決を求めていますし、同決議案は、ハマス側にのみ自衛権を認めたわけでもないはずです。国連安保理において拒否権を行使する根拠としては薄く、アメリカが、地上侵攻計画を実行に移すべく、イスラエルと共に戦争の継続を望んでいるとしか思えないのです。

 以上の諸点からしますと、アメリカは、イスラエルと一心同体、あるいは、イスラエルの後ろ盾として、戦争意思を有しているとする見方は強ち間違ってはいないように思えます。リップサービスとしては、ガザ地区の民間人の保護に言及しながらも、その本心においては、戦争の激化を望んでいるのでしょう。アメリカ民主党は、かつては平和を求める‘ハト派’とされてきましたが、今や、平和のシンボルであった鳩は、獰猛で好戦的な鷹に姿を変えてしまったかのようです。そして、‘ハト’と‘タカ’の区別が曖昧となった現状からしますと、真の戦争意思の所在は、さらにその後ろの暗闇を探す必要があるように思えてくるのです(つづく)。

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パレスチナはハマスの切り離しを

2023年10月18日 11時34分24秒 | 国際政治
 本日の報道に依りますと、イスラエルは、パレスチナのガザ地区にある病院を空爆し、五百人以上ともされる人々が犠牲となったそうです。病院空爆は非人道的な違法行為なのですが(ジュネーブ条約違反・・・)、地上侵攻をはじめ予測される国際的な批判をものともせずに攻撃をエスカレートさせようとする様子からしますと、イスラエルは、やはり戦争を欲しているのでしょう。

 イスラエルの常軌を逸した強硬な攻撃姿勢は、今般のイスラエル・ハマス戦争の実像が、イスラエル及びそれをサポートする世界権力によるガザ地区の占領・併合、並びに、世界大戦への拡大を狙ったシナリオである疑いをより一層強めます。常識的かつ合理的に考えれば、ガザ地区に対する徹底した攻撃が、イスラエルに対する国際的な支持を失わせる結果を招くことは、容易に予測できるはずです。イスラエルは、如何なる非人道的な手段を用いてでも、自らの野望を実現しようとする確信犯のように見えるのです。なお、イスラエル空軍は同空爆を否定し、ロケット弾はガザ地区から発射されたとも述べており、これが事実であれば、イスラエルとハマスとの水面下での協力、あるいは、ガザ地区内のパレスチナ人を装った工作員の存在を疑わせます(もっとも、イスラエル側は、ハマスと共闘している過激派武装組織「イスラム聖戦」の仕業と主張しているものの、双方を扇動して戦争を激化・拡大させたい世界権力党の勢力による工作かもしれない・・・)。

 それでは、イスラエル・ハマス戦争の巻き添えになりかねない人類は、同事態にどのように対応したらよいのでしょうか。仮に、イスラエルがあくまでも自らの戦争計画を貫こうとするならば、同シナリオの進行を止めるには、両者を同時に孤立化させる必要がありましょう。そのためには、イスラエルによるガザ地区並びにその住民に対する攻撃の根拠を失わせること、並びに、戦争の連鎖経路を断つ方法を見つけ出さなければならないのです。

 昨日の記事で述べましたように、イスラエルが宣戦布告を行なったのは、ガザ地区を実効支配しているとはいえ、一武装政党に過ぎないハマスであったことから、先ずもってハマスの法的な存立基盤を失わせ、解散させてしまうという方法があります。このためには、パレスチナ国家の政府が対応を急ぐ必要がありましょう。例えば、ハマスに対して合法的な政党あるいは政治団体としての認定を取り消し、同党を非合法化するといった方法があります。もっとも、パレスチナ政府にあってはファタハがかろうじて政権を維持しているものの、議会の多数党はハマスですので、現状では、ハマスを非合法化する法案が成立する可能性は低いと言わざるを得ません。

 このハードルを乗り越えるために議会を解散して総選挙を実施するという道もあるのですが、攻め急ぐイスラエルの姿勢からしますと、選挙を実施するだけの時間的な猶予に乏しく、ここはパレスチナ政府が対応すべきかもしれません。人質の奪取を含めたハマスによるテロ行為、あるいは、独断によるイスラエル攻撃という行為は、パレスチナ国家の国権侵害でもありますので、パレスチナ国家の政府として同党の解散命令等を発することはできるはずです。また、パレスチナ警察が、国内の警察法に基づいてハマスを犯罪組織として取り締まるという方法もありましょう。何れにしましても、ハマスという存在がなくなれば、イスラエルは、振り上げた拳を下ろす相手を失うのです。

 その一方で、パレスチナ国民も、でき得る限りハマスと距離を置き、同党から離れるべきと言えましょう。今般の惨事を招いたのは、ハマスによるイスラエルに対する奇襲にありますし、しかもハマスには、イスラエルと内通している偽旗団体の疑いがあります。偽旗団体ではないとしても、イスラエルの挑発の罠にかかるのは、パレスチナ国民を命の危機に晒す軍事的・政治的な重大なる判断ミスです。一般国民からのハマス批判の声が高まれば、ハマスは、パレスチナ国内にあって急速に支持基盤を失い、弱体化してゆくことでしょう。このことは、ハマスの戦闘能力の喪失を意味します。

 ハマスが法的な基盤、並びに、政治団体としての組織力を失えば、同戦争は、自ずと終息に向かうことでしょう。ただし、国際社会を見ますと、イスラエルの後ろ盾でもあり、世界大にユダヤ系ネットワークを張り巡らしている世界権力は、アメリカをはじめ世界各国の政府に対して、絶大なる支配的な影響力を及ぼしています。この点を考慮しますと、連鎖的な戦争拡大経路の遮断を同時に進める必要がありましょう(つづく)。

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ハマス瓦解による平和的解決という方法

2023年10月17日 11時53分45秒 | 国際政治
 イスラエルは、パレスチナのガザ地区において実効支配を敷いてきたハマスに対し、奇襲攻撃への報復を理由として戦争を宣言しています。ところがこの戦争、冷静になって考えてみますと、論理一貫性に欠ける側面があります。このちぐはぐな側面を上手に利用すれば、イスラエル・ハマス戦争を平和裏に終息させる糸口が見えてくるかもしれません。

 一貫性に欠ける側面とは、ハマスの国際法上の不安定な地位に起因します。今日の国際社会にあって、‘ハマス’をガザ地区を領域とし、住民を国民とする独立主権国家として承認する国はありません。ハマスは、パレスチナの国内法では合法的な政党の一つではあっても、国際法にあっては独立国家としての国際法主体性を有していないのです(‘ハマス’という国家は存在しない・・・)。ハマスとは、統治権力を掌握した‘武装政党’といっても過言ではありません。それにも拘わらず、イスラエルがハマスに対して‘戦争’という表現を用いたのは(英語表記ではIsrael–Hamas war)、(1)同地域を武力で実効支配し、事実上のハマス一党独裁体制とも言える政府を樹立していること、並びに、(2)イスラエルに対してテロ攻撃を加えていること・・・の凡そ2点にありましょう。このことは、今般のイスラエルの戦争は、従来からの交戦状態に基づく交戦団体承認に加え、宣戦布告という黙示的な方法によるハマス政権の政府承認に基くに過ぎないことを意味します。言い換えますと、今般の戦争は、国家対国家の二国間戦争ではなく、国家対武装政党であって、この点が、戦争形態としては極めて例外的なのです(国家対武装政党の対立構図は、通常は、内戦として現れる・・・)。

 もっとも、テロとの闘いについては、2001年の9.11事件を切っ掛けとして対テロ戦争という言葉が一般的に使われるようになりました。しかしながら、同事件を契機として始まった対テロ戦争は、‘アメリカ・アルカイーダ戦争’と表現されることはなく、対テロ戦争の象徴的事件であったアフガニスタン戦争も、アフガニスタンがアルカイーダの幹部を匿ったという理由に基づく国家対国家の形態をとりました。対テロ戦争は、公式の英語表記ではGlobal War on Terrorism(対テログローバル戦争) であり、国境や国家の概念が消えているのです。対立構図も、一方がアメリカやNATO諸国と言った国家の連合体であり、もう一方のテロ側の交戦団体も、アルカイーダ、イラクのバース党、タリバン、イスラミック・ステートなどの全世界に散らばっているテログループや武装政党等の集合体なのです。

 武装政党とは、あくまでも国民の一部が結成した私的団体であるとしますと、非党員の国民は、法的には無関係となります。この点に照らしますと、イスラエルによる対ハマス戦争は、あくまでも武装政党であるハマスに限定されなければならないのです。言い換えますと、イスラエルによるガザ地区の一般パレスチナ国民に対する攻撃は、法的根拠も正当防衛論も通用しない、隣国による無差別の殺戮となりましょう。

 このように考えますと、イスラエル・ハマス戦争を平和裏に終息させようとするならば、武力を用いずにハマスを解散させてしまうのも一案です。しかも、過去の経緯からしますと、ハマスには、敢えてイスラエルを利している節があり、‘偽旗作戦’の疑いが濃厚です(イスラエルの背後には世界権力も控えている・・・)。ガザ地区を含むパレスチナにとりましては、むしろ、獅子身中の虫である可能性も否定はできないのです(それとも、‘真に恐れるべきは有能な敵ではなく 無能な味方である’?)。

 それでは、どのようにすれば、ハマスのみを上手に瓦解させることができるのでしょうか。イスラエルは、地上侵攻による‘ハマス殲滅’を公言していますが、これは、ガザ地区占領作戦を実行に移す口実であるかもしれません。双方の戦争犠牲者の増加、並びに、戦争拡大を未然に防ぎ、平和裏に戦争を終結させることこそ最重要課題ですので、ハマスを瓦解させる方法も、武力ではなく知力を用いるべきと言えましょう。ハマスが基本的にはパレスチナの国内問題である以上、ここで鍵を握るのは、ヨルダン川西岸地区にあってファタハが政権を維持しているパレスチナ国の政府であり、ガザ地区住民の住民となるかもしれません。これらがハマスの存在を否定した場合、先ずもって、イスラエルは、少なくとも戦争としてガザ地区全域並びにその住民を攻撃する根拠を失うこととなるからです(つづく)。

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イスラエルによる国際法上の重大犯罪という問題

2023年10月16日 12時38分03秒 | 国際政治
 パレスチナのガザ地区を実効支配してきたハマスがイスラエルに対して行なわれた奇襲攻撃は、イスラエルに対ハマス戦争の口実を与えることとなりました。イスラエルは、ハマスに対する報復としてガザ地区全域に対して地上戦、即ち、軍事占領作戦を遂行する準備を整えつつあるそうです。仮にこの作戦が実行に移された場合、ガザ地区にあって、ハマス兵であれ民間人であれ、無差別にパレスチナ人が殺戮される事態は目に見えています。

 報道に依りますと、国連人権委員会にあってパレスチナの人権問題を専門とするフランチェスカ・アルバネーゼ氏は、「自衛の名のもとに、民族浄化に相当する行為を正当化しようとしている」と述べたそうです。民族浄化に該当するとすれば、イスラエルは、国際法上の重大な罪を犯したことになります。また、WHOも、パレスチナにて民間負傷者の治療に当たってきた病院に対してイスラエルが退避命令を繰り返している点を指摘し、人道的な見地からこの行為を非難しています。

 こうした人道上の批判を受けて、イスラエルはガザ地区からエジプトへの避難路を確保するなど‘人道回廊’を設けようとしています。しかしながら、この‘人道回廊’の設置も、パレスチナ人に対して‘出て行くか、殺されるか’の二者択一を迫っているに等しく、何れにしても‘パレスチナ人の消滅’が狙いであることは疑いようもありません。

 人の道を踏み外すようなイスラエルの過激な攻撃姿勢に怯んだのか、アメリカのバイデン大統領もパレスチナ人の保護に言及するに至ったのですが、ここで先ずもって問われるべきは、先制攻撃は、相手国国民の虐殺を正当化するのか、という問題です。この問題に対して国際法に照らして回答すれば、当然に、‘正当化されない’ということになりましょう。国際法とは、全ての諸国に対して等しく公平に適用されますので、開戦の事由を問わず、全ての当事国あるいは当事団体に遵守する義務があるからです(イルラエルは、ジェノサイド条約の締約国でもあり・・・)。

 もっとも、戦争法の一般的な適用性については、第二次世界大戦時の苦い経験があります。何故ならば、日本国を含め、敗戦国となった枢軸国側諸国の戦争犯罪については厳しく追求され、国際軍事裁判において厳しい判決を受けたものの、戦勝国となる連合国側諸国の戦争犯罪については、一切、罪を問われなかったからです。前者であり、かつ、真珠湾攻撃を奇襲と見なされた日本国の場合、大戦末期には首都東京を始め全国の都市が焼夷弾による空爆を受けたのみならず、最終局面に至っては、二発の原子爆弾が広島並びに長崎に投下されました。人道に反する民間人に対する大量殺戮でありながら、国際法が公平に適用されることはなく、戦勝国の罪は不問に付されたのです。

 かくして78年前の国際社会では、戦勝国に対する一種の‘適用除外’がまかり通ったのですが、今般のイスラエルの国際法上の犯罪につきましては、第二次世界大戦時の‘勝者不適用’の主張が通用するとは思えません。実際に、イスラエル批判は世界各地から湧き上がっており、仮に、イスラエルが地上戦を敢行した場合、ネタニヤフ首相が、国際刑事裁判所に提訴され、逮捕・訴追される可能性も生じてきましょう。ウクライナ紛争に際してロシア軍の行為が国際法上の侵略犯罪や人道に対する犯罪として批判され、プーチン大統領に対して逮捕状が出されたように・・・。今日という時代にあって、過去の世界大戦の如くにダブルスタンダードが許されるとも思えないのです。

 ダブルスタンダードが許されないとしますと、国際社会では、イスラエルの国際法上の犯罪行為を理由として同国に対して制裁を科すべきとする主張も現れることでしょう。因みに、国際刑事裁判所に関するローマ規定では、集団殺害犯罪(ジェノサイド)、人道に対する犯罪、戦争犯罪、侵略犯罪を重大な犯罪と定めていますが、イスラエルのパレスチナに対する行為は、これら全てに該当する可能性があります。軍事占領のみならず、ガザ地区全域を武力併合するともなれば、誰の目にも明らかな侵略犯罪ともなりましょう。

 ただし、ここで十分に注意すべき点があります。それは、国際法秩序の維持を根拠としたイスラエルに対する制裁が、新たな戦争拡大の要因ともなりかねない点です。アメリカや他の自由主義諸国は、国際犯罪や国際法違反を根拠としたイスラエルに対する制裁に対して消極的な姿勢を示すのでしょうが、他の諸国は、武力制裁の正当な根拠を得たことになります。

 ここで反イスラエルの諸国が対イスラエル戦争に訴えるというシナリオも見えてくるのですが、先に注意を要すると申しましたのは、これこそ、イスラエルの謀略である可能性があるからです。イスラエルが真に戦争を欲しているならば、敢えて自らが犯罪行為を行い、制裁戦争を引き起こそうとするかもしれないからです。世界大戦を起こすという目的を達成しさえすれは、自らが犯罪国家になろうが、悪役になろうが、イスラエル並びに背後に潜む世界権力は、全く構わないのでしょうから(つづく)。

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戦争を欲しているのはイスラエルでは?-‘シリアからの攻撃’問題

2023年10月13日 10時31分34秒 | 国際政治
 今朝方、驚くべきニュースが速報として飛び込んできました。イスラエルがシリアのダマスカスとアレッポの空港を攻撃したというのです。同攻撃の根拠として、イスラエルは、シリアからの攻撃があったと説明しているそうです。シリアからの一方的な攻撃に対する正当防衛という主張なのでしょうが、国境を越えた相手国領域内の重要公共施設に対する報復行為ですので、事は重大です。戦火はシリアにまで飛び火し、中東全域に拡大しかねないからです。メディアは、シリアへの報復攻撃として報じていますが、そもそもこのイスラエルが口実とする‘シリアからの攻撃’とは、一体、どのようなものであったのでしょうか。

 実のところ、イスラエルは、これまでのシリア領域内で活動している親イラン武装組織に対して砲撃を繰り返してきたそうです。第一の推測は、今般の‘シリアからの攻撃も’、シリア国内の親イラン勢力によるものであったというものです。しかしながら、民兵組織による攻撃が実際にあったにせよ、仮にこの説が正しければ、イスラエルは、国家対国家の戦争を招こうとしたことになります。シリア国内の公共施設に対する一方的な破壊は(空港は国営では・・・)、シリアという国家に対するイスラエルからの先制攻撃とも解されるからです。また、同武装集団がイラン政府もしくは軍部の命を受けて行動する下部組織であるならば、イランを糾弾こそすれ、シリアを攻撃する根拠とはならないはずです。

 第二の推測は、独裁者ともされるシリアのアサド大統領が、ハマス掃討作戦、即ち、ガザ地区殲滅作戦を牽制するためにイスラエルを攻撃したというものです。メディアをはじめ、同ニュースに接した人は、おそらくシリアによるイスラエル・ハマス戦争への軍事介入があったと考えたことでしょう。しかしながら、激しい内戦状態にあるシリアにあって、たとえイランからの支援を受けていたとしても、アサド大統領が敢えてイスラエルとの間に開戦の口火を切る、あるいは、火中の栗を拾うような決断を下すとも思えません(内戦と戦争を同時に戦うようなもの・・・)。国家対国家の戦争ともなれば、アサド政権の瓦解のみならず、イスラエル側が保有する最新鋭のハイテク兵器によって、シリア側には甚大な被害を被ることが予測されるからです。イスラエルは、核保有国でもあります。

 そこで、第三の推測として指摘できるのは、イスラエルによる自作自演、あるいは、‘シリアからの攻撃’という情報そのものがフェークである可能性です。イスラエルによる自作自演については、シリア国内に秘密裏に工作部隊を送り込んで自国領域内に砲撃させ、シリアからの攻撃と見せかける、という方法もありましょうし、シリアの正規軍あるいは親イラン組織等の武装勢力の内部に工作員を忍び込ませて作戦を実行させるという方法もありましょう。何れにしましても、これらの推測では、イスラエル側が戦火の拡大を意図したこととなります。イスラエルは、シリアのみならず、レバノンをも攻撃したとする情報も伝わっています(レバノン国内では、ヒズボラなどのシーア派民兵組織が活動しており、口実に事欠かない・・・)。

 その一方で、イスラエルではなく、他の国家や勢力が、‘シリアによる攻撃’を演出した可能性も排除はできません。盧溝橋事件のように、第一次世界大戦にせよ、第二次世界大戦にせよ、その背後関係を含めれば、その発端が深い霧で覆われている事件は少なくありません。‘シリアの犯行’に見せかけたい国家や勢力はイスラエルに限定される訳ではなく、とりわけ、第三次世界大戦を誘導したい世界権力による誘導工作である可能性も否定はできないのです。イスラエルは、世界権力の中枢を構成するユダヤ民族の国ですので、上述したイスラエルによる自作自演説も、同国が世界権力のシナリオに従って行動したに過ぎないかもしれないのです(シリアやイランなどの他の諸国もシナリオ通り行動しているのかもしれない・・・)。

 以上に、‘シリアからの攻撃’について主要な推測を述べてきましたが、戦争拡大のリスクを伴う以上、事実や背後関係について十分に調査を行なうべきことは言うまでもありません。国際社会にあっても、イスラエル並びシリアの両国に対して真相が解明されるまで軍事的行動を慎むように要求すべきですし、各国とも、戦争の連鎖的拡大を防ぐために沈静化に努めるべきです。それにも拘わらず、イスラエルが聞く耳を持たず、戦争拡大に向けた行動をとるならば、戦争を欲しているのはイスラエルであり、ハマスを含めた外部勢力からの攻撃はそのお膳立てに過ぎないという疑いがさらに強まります。そして、有無も言わさずに全面戦争へと歩を進めるならば、今般の一連の事件の実相は、ハマスによるイスラエルに対する奇襲攻撃ではなく、世界権力による人類に対する奇襲攻撃とする見方も外れてはいないように思うのです。

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イスラエル・ハマス戦争が中東戦争の再燃とならない理由

2023年10月12日 12時29分38秒 | 国際政治
 ガザ地区を実効支配するハマスによるイスラエル奇襲は、イスラエルがハマスに対して宣戦布告する事態に至っています。宗教を軸として見ますと、ユダヤ教国家であるイスラエルとイスラム教国家であるハマスとの対立となるため、第5次中東戦争、あるいは、中東戦争の再燃を予測する向きもあります(1982年におけるイスラエルによるレバノン侵攻を‘第5次中東戦争’と呼ぶこともある・・・)。しかしながら、仮に中東全域に戦火を広がるとすれば、それは、中東紛争とは異なる構図が想定されているように思えます。

 中東戦争の始まりは、イスラム教徒にしてアラブ系住民の住う地であったパレスチナに、国連並びに欧米諸国の後押しをもって、ディアスポラ以来‘流浪の民’となっていたユダヤ人の国家、即ち、イスラエルが建国されたことにあります(同地を委任統治していたイギリスの二枚舌外交、否、三枚舌外交の結果でもある・・・)。『旧約聖書』における記述、及び、古代ユダヤ諸王国の存在を歴史的根拠としつつも、現代においては国際法における確固とした法的根拠もあるわけではありませんので、アラブ・イスラム系諸国の強い反発と抵抗を招くこととなったのです。このため、四度に亘る中東戦争の対立構図も、イスラエル一国に対して他のアラブ諸国がパレスチナのために結集する形をとりました。因みに、第一次中東戦においてパレスチナに進軍したのは、エジプト、サウジアラビア、イラク、トランスヨルダン、シリア、レバノンの諸国です。

 ところが、1978年9月のキャンプ/デービッドの合意を機に、翌1979年3月26日にはエジプト・イスラエル平和条約が締結され、ヨルダンとも1994年10月26日にヨルダン・イスラエル平和条約が結ばれるなど、今日の中東情勢は、中東戦争当時とは大きく変化してきています。この間、1991年には、イスラエルとPLOとの間で暫定自治協定が成立し、イスラエルもパレスチナの独立を事実上承認しました。これらの条約並びに協定により同地域におけるイスラエルの法的地位は強化され(相互的な国家承認・・・)、テロ攻撃に曝されつつも、国家間関係に限って見れば、イスラエルを取り巻く状況は好転しているのです。なお、今般のハマスによる奇襲攻撃については、合意間近とされたイスラエルとサウジアラビアとの間で国交正常化交渉を牽制するためとする説明もあります。

 加えて、イスラエルを背後から支えてきたアメリカとアラブ諸国の関係についても、関係改善が進んでいる様子が窺えます。80年代のレーガン政権以降、エジプト、ヨルダン、バーレーン、クウェート、チュニジア、モロッコの諸国がMNNAの地位を得ており、2015年のオバマ政権時代には、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、並びに、オマーンもMENA候補国として挙げられました。中東和平の進展は、アメリカとアラブ諸国との関係改善と歩調を合わせているのです。

 こうした現状にあって、今般のイスラエル・ハマス戦争が、イスラエル対アラブ諸国という中東戦争の対立構図が再現される切っ掛けとなるとは思えません。イスラエルが宣戦布告した相手はパレスチナ自治政府ではなくハマスでもありますので、アラブ諸国は、パレスチナに対するイスラエルの過剰な報復を批判こそすれ、中東戦争の再来には二の足を踏むこととなりましょう(なお、イスラエルがガザ地区に対して‘殲滅作戦’を実施すれば、自由主義諸国もイスラエルに対する支持を撤回し、アメリカ・イスラエル陣営も崩壊に・・・)。となりますと、仮に中東地域一帯に戦場を拡大させようとしますと、イランの存在が鍵となるはずです。

 この点、ハマスによるイスラエル奇襲作戦が報じられた直後から、イランの関与が流布された理由も自ずと理解されてきます。ロシアとも近しいイランを関与させないことには、中東地域を第三次世界大戦に巻き込むことができないからです。イランは、イスラム教国という点ではアラブ諸国と共通しながら、宗派においてはシーア派の盟主国を自認しており、民族的にはアーリア系とされます。両者の違いに注目しますと、イランが登場すれば、中東の地においてシーア派対スンニ派、並びに、アーリア系対アラブ系の対立構図を造り出すことができるのです(シリアのアサド政権は、親シーア派かつ親イラン・・・)。同国がハマスの後ろ盾であるならば、中東戦争とは別の対立軸での戦争への導火線は、既に敷かれていたのかもしれません。

 もっとも、このシナリオにも綻びが生じる気配があります。目下、イランは関与疑惑を否定し、イランサポート説の火消しにまわっていますし、イランがハマスを支援する構図は、余りにも不自然であるからです。何故ならば、ハマスはスンニ派の組織であって、これまでシーア派のイランとは敵対関係にあったからです。この機に至り、ハマスがイランとの‘軍事同盟’を宣言しても、パレスチナ人をはじめアラブ諸国も当惑することでしょう。敵の敵は味方の論理なのでしょうが、最悪の場合には、ハマスは‘アラブの裏切り者’にもなりかねないのですから、第三次世界大戦のシナリオは、やはり頓挫を余儀なくされるのではないかと思うのです。

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ハマスは誰の味方なのか?

2023年10月11日 12時04分10秒 | 国際政治
 ハマスと言えば、パレスチナにおいてイスラエルに対してテロ行為を加えてきたイスラム過激派組織というイメージが定着しています。今般のイスラエルに対する奇襲攻撃に際しても、人質としての女性や子供の略取や残虐行為が行なわれたともされ、イスラエルは激しい反応を見せています。同国のガラント国防相も‘総攻撃に向かう’と宣言しており、これを受けて日本国の外務省も、現地日本人に対して避難勧告を発令することとなりました。イスラエルでは、僅か2日間で過去最高の30万人の予備兵が招集されており、空爆に留まらず地上戦に及ぶとの情報もあります。

 イスラエル軍の報復空爆により、パレスチナのガザ地区では、既に相当数の犠牲者が生じています。ハマス幹部を狙ったものとされていますが、空爆ともなりますと、民間人の犠牲は避けられなくなります。加えて、地上戦に発展するともなりますと、パレスチナ人の犠牲者の数はさらに増えることでしょう。無辜の市民が集う音楽フェスティバルも標的とされ、イスラエル領内にもロケット弾が打ち込まれ、民間人も殺害されているのですから、イスラエルにとりましては当然の同害報復ということなのかもしれません(もっとも、過去にあってもハマスによるロケット弾攻撃とイスラエルの空爆による応酬が続いてきており、今般の事件が初めてではない・・・)。

 しかしながら、2007年6月以降、ISの如くガザ地区を武力で実効支配はしていても、ハマスは、パレスチナの国家としての正規軍ではありません(パレスチナ自治政府はライバル勢力のファタハを中心とした政府が存在しており、同国は分裂状態にある・・・)。アラブ諸国の首脳が訪問した事例はあっても、自由主義諸国からテロ組織として指定されこそすれ、ハマスを正式に政府承認する国はなく、むしろ、イスラエル政府のみが同勢力を‘戦争’の当事者と見なすことで、‘事実上の政府承認’を与えるような格好となっています(今般、イスラエル政府は、治安閣議でハマスとの「戦争」を正式に承認した・・・)。ハマスに対しては、ロシアやイラン等の諸国が支援しているとの指摘もありますが、これらはあくまでも‘裏道’なのです。

 ここに、国際法におけるハマスの位置づけが問題ともなるのですが、もう一つ、問われるべきは、ハマスという団体の真の姿です。何故ならば、ハマスは、パレスチナではなく、むしろイスラエルを利している節があるからです。1993年に成立したオスロ合意は、期待に反し、第二次インティファーダが起きるなど、同地に恒久的な平和をもたらすことはありませんでした。合意後にあっても、ハマスをはじめとした対イスラエル強硬派の組織は抵抗運動を止めることはなかったのです。特にハマスは、ガザ地区からイスラエルが入植地を撤去した2005年に前後して、パレスチナ国内にあって政治的勢力としても急成長しています(パレスチナ評議会でも第一党に・・・)。2007年には、ファタハを排除してガザ地区を実効支配し、ハマスはパレスチナを分裂させてしまうのです。

 ヨルダン川西岸地区のパレスチナ自治政府と、ガザ地区のハマスという2つの勢力の分立は、イスラエルにとりましては好都合であり、このため、イスラエルのネタニヤフ首相は、ファタハよりもハマスを支援していたとする指摘もあります。また、相次ぐハマスによるイスラエル攻撃は、イスラエルに対してガザ地区に制裁を加える口実を与えることにもなりました(経済封鎖なども実施され、青空監獄とも称されている・・・)。先にも触れましたように、イスラエルはガザ地区の入植地を撤収しています。しかしながら、同撤収は、イスラエルがガザ地区の入植地を放棄したのではなく、むしろ、ガザ地区全域の支配を狙っていたのではないか、とする疑いを濃くするのです。

 そして、今般、ハマスが史上最大規模のテロ攻撃をイスラエルに加えたことで、イスラエルは、ガザ地区全域に対して包囲作戦を実行に移す根拠を得ています。30万という予備兵の招集規模からしますと、同地区は、程なくイスラエルの軍事占領下に置かれることでしょう。占領に際しては、多くのパレスチナ人の命が失われるかもしれません。このような展開が予測される以上、ハマスは、一体、誰の味方であったのか、という疑問も自ずと沸いてくるのです。ハマスによる奇襲攻撃も、情報収集等を怠ったイスラエル側のミスが原因とも指摘されていますが、本当に怠慢による‘ミス’であったのでしょうか。同事件が第三次世界大戦への序曲であるとするならば、より一層、ハマスの正体の解明は重要な意味を持ってくるように思えるのです(つづく)。

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