万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

ロシアの米朝合意案は‘悪魔の囁き’では?

2018年05月31日 14時42分56秒 | 国際政治
北朝鮮高官と米国務長官 NYで会談 非核化議論か
最近、日経新聞朝刊が連載しているインタヴュー記事「米朝攻防―焦点を聞く」にあって、4番目の識者として本日登場したのは、現在、韓国・国民大学の教授の職にあるロシア人、アンドレイ・ランコフ氏です。‘北朝鮮研究の世界的権威’として紹介されておりますが、同氏の見解は、おそらく北朝鮮問題に関するロシアの立場を代表しているものと推測されます。

 ランコフ氏は、金日成大学への留学経験もありますので、今日の北朝鮮にも残るソ連邦の体質や政治文化を知り尽くした人物でもあります。‘目的のためには手段を選ばす’は、共産主義国家の特徴ですので、こうした政治文化にどっぷりと浸かりますと、詐術的な手法に対する倫理的な抵抗感も失われがちです。それを証明するかのように、同氏は、米朝合意の可能性について‘悪魔の囁き’としか思えないような案を披露しているのです。

 アメリカが要求する‘完全、検証可能かつ不可逆的な核廃棄(CVID)’の実現性を問う質問に対して、ランコフ氏は、北朝鮮は完全核放棄には応じないと否定的な見解を示しつつ、表向きにおいては米朝合意が成立する可能性について語っています。その案とは、「抑止力を確保するに十分ないくつかの核兵器やミサイルを山岳地帯に隠したうえで、残りを保有数として申告。それらの引き渡しをもって名目上の完全非核化の実現を宣言するシナリオ」です。この提案、端的に言えば、アメリカが北朝鮮の自己申告を信じるふりをして北朝鮮の秘密裏の核保有を認め、両国が協力して国際社会を騙すということになります。同氏は、核兵器やミサイルの引き渡しシーンが映像として全世界に発信されれば、中間選挙で有利な得点を稼ぎたいトランプ大統領も外交的な実績を得たことになり、満足するであろうとも語っています。つまり、“北朝鮮偽装核放棄ストーリー”の米朝共同制作の提案なのです。

 しかしながら、この案、既に表沙汰になった以上、全世界を容易く騙し込めるとは思えません。トランプ大統領にとりましても、北朝鮮の核温存を密約によって認めたとなれば、議会や民主党のみならず、米国民からの激しい批判を受けることとなりましょう。トランプ政権を支えているのは保守層を中心とした固定的な支持層ですので、アメリカ国民を演出で騙せなかった場合、自らの政治基盤さえ失いかねず、あまりに危険な政治的な‘賭け’となります。

 加えて、仮に、トランプ大統領が、‘歴史的な和解’の功を焦るばかりに北朝鮮との協力を優先させるとしますと、日米関係には深刻な亀裂が生じます。日本国は、秘かに温存された北朝鮮の核の脅威に晒される続けることになるからです。アメリカ政府は、日本国政府に対して北朝鮮の核は‘完全に放棄された’と説明するでしょうが、嘘や騙しを常としてきた北朝鮮の自己申告を信じよ、と要求されても、拉致問題も含む同国の過去の振る舞いをみれば、到底無理なお話です(核の温存の望む韓国にとっては望ましシナリオかもしれない…)。日本国の対米不信は深まる一方となり、この事態は、あらゆる策を弄して日米離反を画策してきた中国を利する結果となりましょう。

 何れにしましても、ランコフ氏の勧めるアメリカの不誠実と北朝鮮との‘共犯’に期待した妥協案は、国際社会の一般常識、並びに、規範から著しく逸脱しています。そして、こうした詐欺案を平気で提案してくる神経は一般の人々には理解し難く、共産主義の伝統を引く中国、ロシア、北朝鮮等に共通するサタニックとも言える倫理観の欠如と倒錯こそ、これらの諸国を決して信じてはならない理由なのではないかと思うのです。

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移民政策推進なら総選挙を-移民増加は社会を破壊する

2018年05月30日 14時14分30秒 | 日本政治
 イギリスのEU離脱を問う国民投票もアメリカの大統領選挙も、移民政策が重大な争点となりました。両者とも、その結果は移民反対が多数を制したのですが、日本国政府は、前回の総選挙において政策綱領に挙げることなく、単純労働者を含む移民の受け入れを大幅に拡大しようとしているのです。

 本日の日経新聞朝刊の一面には、「外国人、単純労働に門戸」と題する記事が掲載されておりました。同記事に依りますと、日本語能力が十分ではない外国人であっても、2025年頃までに、人手不足に苦しむ分野を中心に50万人を越える労働者を受け入れるそうです。対象となる分野は、建設、農業、介護、宿泊、造船業の5分野ですが、移民の増加には、既存の社会秩序を破壊する作用が伴いますので、国民世論を無視した移民政策の推進は、民主主義の原則に反することは言うまでもないことです。

 しかも、今般の政府の方針において疑われるのは、経済分野における‘人手不足’は口実に過ぎないのではないか、ということです。同政策に対する批判の中には、安価な労働力を求める経済界の思惑があったとする指摘もあります。中韓勢力との熾烈な国際競争に晒されている造船業は別としても(もっとも、日本勢は技術力で勝負する方針なのでは…)、人件費のみを問題とするならば、製造業こそ対象となるはずです。宿泊については、‘人手不足’というよりも、世界各地からの訪日客の増加に伴う外国人スタッフの増員問題として理解されますし、建設分野についても、2020年には東京オリンピックを終わっておりますので、2025年には‘人手不足’の状況も一服しているはずです(中国人の’再クーリー化’?)。否、人口減少時代には、大規模施設や高層ビルの建設よりも、成熟した国に相応しい落ち着いた街並みに景観を整え、かつ、建造物の長寿化を目指すといった発想の転換こそ求められます。おそらく、この50万人超えの外国人労働者で最も利益を得るのは、歴代政府の政策アドヴァイザーの地位にあった竹中平蔵氏が取締役会長を務めるパソナを含む、派遣事業者なのでしょう(現代の奴隷商人?)。

 そして、政府が秘かに‘本丸’と見なしているのは、農業と介護の分野なのではないかと推察されるのです。何故ならば、これらの分野こそ、内部からの社会破壊と直結するリスクが高いからです。農業については、共同体的な要素が色濃く残る農村社会が破壊されますし、介護の分野でも、日本人の一般家庭が外国人労働者の‘職場’ともなるわけですから、一般国民の日常生活にもその影響は及びます。乃ち、人々の生活環境は一変し、一般の国民は、外国人労働者との‘共生’を事実上‘強制’されられるのです。こうした国家喪失的な状況を批判しようものなら、‘ヘイトスピーチ’として取締りの対象にされかねないのですから、一般の国民にとりましては、言論統制を伴う恐怖政治の始まりでもあります。

 もちろん、国民の中には、経済的な理由から政府が提示した移民受け入れ政策に賛成の人も少なくないはずです。しかしながら、その長期的な社会破壊作用に思い至った時、どれほどの国民が、この政策を支持するのでしょうか。少なくとも、全国民に直接的に関係する政策なのですから、政府は、総選挙や国民投票を以って移民受け入れの是非を国民に問うべきではないかと思うのです。

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無責任な対北「段階的な非核化」容認の薦め

2018年05月29日 15時12分57秒 | 国際政治
北朝鮮追加制裁見送り 米、首脳会談へ配慮
 昨日5月28日の日経新聞朝刊に、「米朝攻防-焦点を聞く」の第一話として、ブッシュ政権下で東アジア・太平洋担当の国務次官補を務めたクリストファー・ヒル氏へのインタヴュー記事が掲載されておりました。氏は、「段階的な非核化」が現実的とする自身の見解を語っておりますが、些か無責任ではないかと思うのです。

 同氏は、2005年9月に開催された第4回六か国協議において北朝鮮の核兵器放棄を盛り込んだ共同声明案の取りまとめ役として評価されています。同共同声明では、(1)朝鮮半島の南北による検証可能な非核化、(2)米朝国交正常化、並びに、日朝国交正常化、(3)対北エネルギー支援、(4)朝鮮半島の恒久的平和体制の構築、(5)上記事項の段階的実施、(6)第6回六か国協議の開催時期が謳われています。

ところが、米朝国交正常化までのプロセスを‘工程表’に加えた「段階的な非核化」案は、それ以前において既に北朝鮮側から提案されておりした。また、事実を見れば、上記の共同声明案を作成して提案したのは中国であり、アメリカ側が譲歩したことで成立したと言っても過言ではないのです。六か国協議は、その後、秘かに核・ミサイル開発を継続させた北朝鮮がアメリカの制裁強化を理由に離脱することで事実上の‘散会’となりましたが、ヒル氏曰く、この失敗の原因は、徹底した検証が不可能であったことにあるそうです。つまり、今般の危機も、IAEAによる核放棄の検証作業さえ完璧に実行できさえすれば、CVIDの要件を満たす「完全な非核化」よりも「段階的な非核化」の方が現実的であると主張しているのです。

そもそも、2005年当時における北朝鮮に対する認識の甘さが今日の事態を招いているのですから、ヒル氏の見解には首を傾げざるを得ません。仮に、この時、CVIDの要求をアメリカが貫いていれば、おそらく、同共同声明は成立していなかったことでしょう。そして、この時のアメリカの安易な対北、否、対中妥協こそ、北朝鮮の背信的、かつ、違法な核・ミサイル開発を許したとも言えるのです。上述したように、同氏は、今般の危機の打開策としてIAEAによる確実な検証の実行を提案しておりますが(これを実現するには、北朝鮮は、全域を対象とした無条件査察と核放棄の確認を受け入れる必要がある…)、この作業の完了こそCVIDに基づく「完全な非核化」に他ならず、同検証が未達成の段階で北朝鮮に見返りを与えることは、北朝鮮に猶予期間を与えた過去の失敗の繰り返しとなります。ヒル氏が検証作業未完の状態での対北経済支援の実施を勧めているならば、それは、事実上の北朝鮮核保有容認論となりかねないのです。

「段階的な非核化」案とは中国案への回帰の薦めであり、同記事には“中国との対話重要“と銘打ってあるように、ヒル氏は、親中派の立場にあるのでしょう。そして、同氏に限らず、「段階的な非核化」を認めるよう主張する諸国や論者は、その結果に対して責任を負おうとしないという意味において、無責任であるように思えます(この点は、イラン核合意も同様…)。仮に、将来的に北朝鮮が核・ミサイル開発を再開し、その脅威が以前にも増した場合には、この方法を是認した者にも連帯責任が生じるはずです。つまり、同方式を支持する以上、自らが軍事制裁の役割を買って出てでも強制的に北朝鮮に合意を遵守させる覚悟が必要となるはずなのです。こうした覚悟なくして安易に譲歩した結果が今日の危機であるのですから、北朝鮮の核放棄という政策目標の達成ではなく、逃げ道を残した合意の成立を‘成果’と錯覚した妥協には、今度こそ、終止符を打つべきではないかと思うのです。

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中国による5G日中共有提案に警戒を-広域的通信支配の手段か?

2018年05月28日 14時22分43秒 | 国際政治
中国、5G周波数帯の共有提案 日中韓3カ国きょう情報通信相会合
情報・通信技術が急速に発展した今日、国家は、自国の領土、領海、領空と言った排他的な地理的範囲としての領域だけを守備していれば事済む時代ではなくなりました。人々がそれとは気が付かない内に、別の形態での空間支配の魔の手が忍び寄っているかもしれないからです。

 先日も、日中韓3カ国の情報通信相会合に先立って、中国は、第5世代移動通信方式(5G)について、日中間における一部共有を提案してきたと報じられています。提案を受けた野田聖子総務相は、日本国側の技術的協力を以って応じたそうですが、仮に、この案が実現するとしますと、以下のようにリスクがあります。

 第1に、5G技術の分野において広域的な‘日中スタンダード’が確立するとしますと、当然に、5G関連の製品の製造は、主として日中企業に偏ります。となりますと、同市場にあっては、スケール・メリットで常に劣位となる日本企業に勝ち目はなく、G5市場は、中国製品によって占められる可能性があります。これらの製品が複数の中国企業によって製造される場合には、日本国の独占禁止法を以って阻止することもできません。

 第2に、5Gについては、各国・地域において取りまとめ役を担う標準化団体が設立されているそうです。仮に、日中間で技術協力を行うとしますと、両国の標準化団体、即ち、日本国の5GMFと中国のIMT-2020 5GPGを統合するか、あるいは、日中合同団体を設立する必要があります。こうした団体が設立されますと、日本国は、5Gに関する独自技術を開発することは困難となりますし、中国への技術情報の漏洩、あるいは、中国技術の採用を強要されるリスクもあります。

 第3に指摘し得る点は、5Gという小さな分野での‘共有’でありながら、それが、リスクに満ちた日中のサイバー空間の共有、否、中国支配へのステップとなりかねないことです。EUに見られるように、国境を越えた広域的な技術や規格の標準化は市場統合の特徴でもあります。EUのケースでは、加盟国間における価値観の共有があり、また、その大半がNATO加盟国ですので安全保障上の運命共同体です。一方、日中の場合には、中国は非民主的な独裁国家であることに加えて、防衛や安全保障において対立関係にあります。政治的対立を抱える日中におけるサイバー空間の共有が如何に危険であるかは、誰もがすぐにでも理解できるはずです。5Gの共有化によって、機密情報を含む日本側の様々な情報が、中国側に易々と渡ってしまうことになる可能性が高いと言えるでしょう。

 資源取引等を介して中国との経済的な結びつきを強めてきたオーストラリアでは、度重なる中国による内政干渉に嫌気がさし、目下、中国警戒論が吹き荒れているそうです。アメリカによる中国ZTNへの制裁の真の理由は、貿易収支の不均衡是正と言うよりも、同社の製品を介した“スパイ”活動の警戒にあるとも指摘されており、対中警戒感は、中国の露骨な覇権主義に起因する抗しがたい政治的トレンドとなっております。こうした中、一部であれ、日中間で5Gを共有するとなりますと、日中のみがグローバル・スタンダードから脱落し(仮に、他の国や地域が5G技術の統一を図った場合…)、日本国は、何時の間にか、中国経済圏に組み込まれる事態に陥るかもしれません。

通信網の把握を通した中国による日本国の空間支配の可能性が否定できない以上、警戒感が薄すぎる日本国政府の対応に、多くの国民が不安に駆られることでしょう(日本国政府は、中国に対して日本国を明け渡すのではないか…)。しかも、G5が使用されるようになると脳腫瘍が増加するとの指摘もありますので、まずもって、その安全性を検証すべきなのではないかと思うのです。

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北朝鮮は面倒で厄介な国

2018年05月27日 15時38分04秒 | 国際政治
トランプ大統領 米朝会談6月12日開催に期待
最近、ネット上の記事で「職場の面倒な人や厄介な人の特徴6つ」という記事を発見しました。この記事では、面倒で厄介な人を1)利己的な人、2)気分にムラのある人、3)批判的な人、4)無責任な人、5)好き嫌いで動く人、6)プライドの高い人の6つのカテゴリーに分類しています。

 同記事ではタイプ別に分類されているのですが、北朝鮮という国を見ますと、これら6つの特徴を全て兼ね備えているかのようです。そして、この6つの特徴の何れもが、突き詰めて行けば自己中心主義に行き着きます。人柄であれ、国柄であれ、自分中心的な考え方の持ち主は、他者を慮ることがありませんので、利用されるか、無視されるかの何れかとなる周囲の人々から見れば、面倒で厄介な存在なのです。社会一般であれば、こうした人々とは関わらなければそれで済むのですが、国ともなりますと、そうとばかりは言っていられません。

 ソ連邦の後ろ盾とした共産主義国家として誕生しながら、北朝鮮がかくも自国中心主義、否、独裁者中心主義に陥った要因として挙げられるのは、同国が独自に編み出した主体思想です。“主体”という言葉が示すように、そこには“客体”の発想が欠如しており、他国の“主体性”を尊重する意識もありません。この思想を単純化すれば、‘主体=国家全体=国家の最高指導者’となり、金一族独裁体制を支える政治的イデオロギーとして作用するのです。しかも、この思想には、カルト的な朝鮮半島の土俗宗教も入り混じっており、金日成、正日、正恩と続く三代の統治者に纏わる奇跡譚や神格化などは、まさしくその前近代性を露わにしています。

 主体思想に依って自己中心主義が増幅された北朝鮮は、一般の現代人から見ますと理解し難く、かつ、面倒で厄介な国です。トランプ米大統領が米朝首脳会談中止の意思を示したのに対して、本日も、金正恩委員長は、南北首脳会談の席で米朝首脳会談開催の「確固たる意志」を表明したと報じられております。会談とは、双方の意思の一致があってはじめて開かれるものですので、一方的な意思表明は無意味でもあります。一方が「確固たる意志」を持っていたとしても、他方が会談の席に就くつもりがなければ御仕舞なのですから。

 もっとも、同会談にあって、金委員長は、「朝鮮半島の完全な非核化」の実現についても意欲を示したとされています。仮に、この意味するところが、従来、北朝鮮が主張してきた「段階的な核放棄(核兵器の温存)」ではなく、アメリカが要求する「即時的(完全)な核放棄」の受け入れであるならば、上記の「確固たる意志」は、トランプ大統領が首脳会談の席に就く理由となりましょう。しかしながら、この表現は、“朝鮮半島の”という言い回しが付いているため、極めて微妙です。何故ならば、“北朝鮮の”ではないからです。つまり、北朝鮮は、基本方針の転換と見せかけながら、その実、“朝鮮半島の”を付すことで、南北両国の非核化路線、即ち、「段階的な核放棄」への誘導路を残している可能性があるのです。

 面倒で厄介な国が核兵器を保有してしまう事態は、北朝鮮以外の諸国にとりましては平和に対する脅威以外の何ものでもありません。果たして、アメリカのトランプ政権は、「段階的な核放棄」へと通じる逃げ道を塞いだ上で、利己主義の塊である金正恩委員長を自国の軍門に下らせることに成功したのでしょうか。6月12日に米朝会談が事無く開かれるとすれば、その可能性は決して低くはないように思えるのです。

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北朝鮮の‘屈服’は信じられるのか?-金桂寛外務次官の談話を読む

2018年05月26日 14時53分07秒 | 国際政治
正恩氏、交渉姿勢維持=中止に驚きも目標変わらず
北朝鮮が米朝首脳会談の開催を申し出た思惑とは、アメリカを‘段階的核放棄’という、同国の核温存戦略に巻き込むためであったと推測されます。しかしながら、この思惑は外れ、現実には、自国を瀬戸際に追い詰める‘悪手’であったのかもしれません。

 同会談の中止をめぐる米朝間の応酬は、結局、北朝鮮が半ば同会談の開催をアメリカに懇願する展開となりました。軍事制裁をも辞さずの態度を以って米朝首脳会談の中止を決断したトランプ大統領に対し、北朝鮮側は、即座に金桂寛外務次官が再考を促す談話を発表しています。

凡そ8つの内容から成る同談話一読すると、北朝鮮の弁明のように解されるのですが、起承転結風に再編集すれば、(1)米朝首脳会談は、世界の平和と安定を願う人類の念願である、(2)北朝鮮は、同会談で解決するための努力を続けてきた、(3)にも拘らず、アメリカは、一方的な核放棄を迫った、(4)それ故に、米朝首脳会談は‘良いスタート’として開催されるべきである、となります。このように整理しますと、北朝鮮が詐術的な詭弁を弄していることは明らかとなります。

第一に、人類の念願は、米朝首脳会談の開催ではなく、あくまでも‘北朝鮮の核放棄’です。北朝鮮は、巧妙に両者を入れ替えることで、同会談の中止を平和に反する反人類的な行為と認定し、‘人類の平和’の名の下でトランプ大統領を断罪しているのです。

第二に注目されるのは、(2)と(3)との繋がりです。ここでも、北朝鮮は、会談中止の責任をアメリカに転嫁しています。北朝鮮側の努力を無にしたのは、アメリカが‘即時的核放棄’を要求したからと述べているからです。つまり、間接的に、アメリカに対して同要求を放棄し、自国が主張する“段階的核放棄”の路線に同意せよ、と迫っているのです。

そして、北朝鮮による‘即時的核放棄’要求の拒否は、(4)の‘良いスタート’という言葉によっても示唆されます。上述したように、北朝鮮の基本路線は、核兵器温存と経済的見返りの両目的を獲得できる‘段階的核放棄’です。‘スタート’と表現している以上、同会談で全てを決めるわけではなく、北朝鮮は、長期的な継続的協議を想定していることが分かります。第三の指摘し得る点は、北朝鮮が決して自らの主張を諦めていないことです。

以上に主要な論理上の問題点を述べてきましたが、ここから分かることは、金桂寛外務次官の談話は、北朝鮮の路線変更を意味しておらず、その前後において何らの変わりもないことです。しかも、同談話は、同国の独裁者である金正恩委員長が発表したものでもありませんので、逃げ道を残しているとも言えます。否、国家のトップとして正々堂々とトランプ大統領と向き合わず、自分は部下の蔭に隠れているのですから、何とも情けのない独裁者とも言えるかもしれません。

何れにしましても、北朝鮮がアメリカの要求する‘即時的核放棄’を受け入れない限り、同会談が開催されることは殆どあり得ませんので、金桂寛外務次官の談話を以って開催の可能性が高まったと判断するのは早計のように思えます。結局、北朝鮮が、アメリカの要求通りの核放棄か、軍事制裁を含む制裁強化かの、二者択一の瀬戸際にあることには変わりはないのではないでしょうか。

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米朝首脳会談中止-北朝鮮の核実験場閉鎖がテストだったのでは?

2018年05月25日 11時09分33秒 | 国際政治
北朝鮮 核実験場爆破作業 外国メディアが撮影の映像公開
本日早朝、6月12日に予定されていた米朝首脳会談は、トランプ米大統領の決断により中止となった、とするニュースが飛び込んできました。将来に開催に含みを持たせてはいるものの、会談を前にした事前交渉において、両者が決裂したことは疑い得ないことです。

 同大統領は、中止の理由として、アメリカに対して核で脅すなど、「北朝鮮が最近の声明で示した凄まじい怒りとむき出しの敵意を受けて、会談は不適切だと感じた」と説明しております。また、米高官の談に依りますと、北朝鮮は、相次いで約束を反故にしたとも語っています。度重なる北朝鮮側の不誠実な態度が中止決断に繋がったのでしょうが、先の北朝鮮による豊渓里の核施場閉鎖の一部始終も、この決断の要因となったのではないかと推測するのです。

 アメリカが北朝鮮に対して強く求めてきたのは、あくまでも、‘完全、検証可能かつ不可逆的な核廃棄(CVID)’です。しかしながら、この要求に対して北朝鮮が応じたのは、‘不完全、検証不可能かつ可逆的な核廃棄(Incomplete, Unverifiable, and Reversible Dismantlement: IURD)’であったのですから、アメリカが失望しても無理はありません。北朝鮮の国営メディアの朝鮮中央通信も、今般の核実験場の閉鎖について「核実験中止を透明性あるものだと保証するために核実験場を完全に廃棄する儀式を行った」との声明を発表しておりますので、北朝鮮側は、‘完全’、‘検証可能’、‘不可逆性’の三つの要件は満たしていると主張しているのでしょう。少なくとも核実験場の廃棄については、‘これ以上の廃棄措置をとることには応じない’とする、アメリカに対する強い拒絶の意思表示とも読み取れます。

 専門家に依りますと、北朝鮮の主張は‘まやかし’に過ぎず、爆破されたのは南北西の坑道入口の三か所のみであり、一回目の実験に使用された東側の坑道はそのまま残されているそうです(破壊された地上の施設も‘空き家’かもれない)。つまり、今般の措置は、“完全”でもなければ“不可逆性”もありません。また、北朝鮮は、外国メディアの取材受入を以って‘検証可能’と見なしていますが、国際社会では、この用語は、中立・公正な国際機関であるIAEA等による査察の無条件受け入れを意味します。従って、自己中心主義国家である北朝鮮の主観的判断、並びに、恣意的解釈による‘3要件の充足’は、国際基準に適っていないことは言うに及びません。

 今般の豊渓里核実験場の閉鎖北朝鮮の基本的な思考回路が徹底した自己中心という意味において異常であり、あらゆる案件に対して同様の態度が予測されるならば、たとえ日朝首脳会談が開かれたとしても、そこで成立した合意は、無意味どころか、将来的には、イラン核合意のように事態をさらに悪化させる展開を予測させます。トランプ米大統領は、今般、北朝鮮が示した‘具体的行動’の内容を注意深く観察したテスト結果として、米朝首脳会談の中止を決断したのではないかと推測するのです。

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日大アメフト悪質タックル問題-まずは事実確認を

2018年05月24日 16時17分10秒 | 社会
内田氏「指示ない」井上氏「間違った解釈」
先日、日本大学のアメリカンフット―ボール部の選手がゲーム中に極めて危険な反則行為を働き、関西学院大学のQBの選手に対して全治3週間の怪我を負わせる事件が発生しました。事態の深刻さと波紋の広がりから、加害者の学生が事の一部始終を記者会見で語る一方で、日大側も、内田監督と井上コーチによる会見を開いたのですが、同選手に全責任を押し付けんばかりの弁明であったため、マスメディアやネットにおいて‘集中砲火’を浴びています。

 確かに、この問題、組織におけるパワハラ問題を象徴しております。多くの人々が頭に描く構図とは、同チームにおいて絶対権力者として君臨している監督とコーチによる度重なる嫌がらせを受けた選手が、追い詰められた末に已むに已まれず、指示通りに反則行為を実行したというものです。しかも、権力を握る強者の側が、事件の責任を弱者の側に転化しようとしたのですから、この構図は、弱者を苛め抜く許し難いパワハラ以外の何者でもありません。監督とコーチが世間からの‘つるし上げ’に会うのも、理解に難くはないのです。しかしながら、その一方で、犯罪性が問われる事件に関しては、以下の点から客観的な事実確認の作業を経る必要はあるように思えます。

第1に、日大側と選手側とでは、‘潰す’の解釈をめぐって主張が平行線を辿っております。監督とコーチの両者とも‘潰す’という言葉を使ったことは認めながら、それは、‘反則をせよ’という意味ではなかったと説明しています。この事件は、‘潰す’という言葉をめぐる両者の解釈の齟齬、あるいは、選手側の誤解から生じた、いわば、偶発的な事件であったのか、否かは明らかにしなければなりません。

 第2に、第1の疑問を解くには、‘潰す’発言の前後の文脈を丁寧に見てゆく必要があります。何故ならば、同選手は、コーチが「相手のQBがケガをして秋の試合に出られなかったら得だろう」と発言したと証言しているからです。仮に、この‘ケガ発言’が事実であれば、同コーチは、明らかに反則はおろか傷害を教唆しており、選手側が‘潰す=反則’と受け取っても致し方ありません。ところが、日大側の記者会見では、コーチはこの発言を覚えていないとしており、真偽は不明です。

 そして、第3に、同選手は、内田監督自身が6日の試合後に「こいつの(反則)は自分がやらせた。成長してくれるんならそれでいい。相手のことを考える必要はない。」と、反則支持を認める発言をしたと述べている点です。この発言についても、日大側の記者会見では否定されており、事実の確認を要します。週刊誌では、試合後の同監督のものとされる、「内田がやれって言ったってホントにいいですよ。全然。内田がやれって言ったでいいじゃないですか」という、自らの指示を認めたかのような発言を掲載しております。もっとも、“私が反則を指示しました”というストレートな言い方ではありませんので、‘本当は反則を指示してはいないけれども、自分がしたということでも構わない’とも解されます。つまり、‘勝つためには何をやってもよい’とする、スポーツマンらしくないアンフェアな思考回路が仇となって、同監督が反則指示を認めるような発言を思わず漏らしてしまった可能性も否定はできません。

 関西学院大学の被害選手の父親の方は、刑事告訴を辞さない構えのようですので、そうであればこそ、なおさら他の選手達の証言を含め、事実確認は重要となります。加害選手側の発言に虚偽や思い込みは絶対にない、とは言い切れない以上、この問題は、公平・中立な立場にある司法等の機関の手に委ねるべき案件なのではないでしょうか。もっとも、そうは申しましても、上述したように、仮に同監督が「相手のことを考える必要はない」と心の底から考えているとしますと、負傷した選手の、そして、加害者として生きねばならない選手の人生に対する思いなど微塵もなく、その道徳心の欠如と冷酷さは空恐ろしい限りではないかと思うのです。

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中国モデルの「IT革命」は中国限定では?

2018年05月23日 17時21分48秒 | 国際政治
本日のダイアモンド・オンラインに「中国で「IT革命」が進んでいる3つの理由」と題する興味深い記事が掲載されておりました。この記事を読みますと、他国が‘中国モデル’を採用するのは、大変、難しいように思えます。

 同記事の分析に依れば、中国をして「IT革命」を躍進させた主たる要因は、(1)割り切り・切り捨て的な発想、(2)端末としてのスマホ+個人ID+銀行口座のリンケージ、(3)14億人の巨大市場を背景とした巨額資金の流入の3者なそうです。そのさらに奥には、習近平国家主席を頂点とする一党独裁体制における、強引とも言える国家戦略が潜んでいることは言うまでもなく、「IT革命」も、同体制を支える国家プロジェクトしての性格を帯びています。

 中国の目を見張るような躍進を前にして、「中国モデル」が全世界に広がるとの観測もありますが、これらの3つの要因を見る限り、このモデルは、中国限定のように思えます。何故ならば、3つの要因の何れもが、共産党中国という国家固有であるからです。

 第一に、(1)の割り切りや切り捨て的な発想は、中国人の実利的な国民性もありますが、共産革命によって一党独裁体制を樹立した同国との間に高い親和性を見出すことができます。共産主義では、自らが“過去の悪しき残滓”と認定したあらゆるものを廃絶する、あるいは、消滅させることには躊躇しませんし、むしろ、歴史や過去の否定を肯定的に捉えています。保守派のみならず、弱者への配慮を訴える勢力が存在する自由主義国では到底不可能な割り切りや切り捨てができるのも、中国の国柄によります。

 第二に、中国が実現した(2)のリンケージも、中国共産党による国民の徹底的な監視・管理という政治目的の下で推進されています。否、経済的利便性よりも、むしろ、政治的な有用性の方が、同システムが全国規模で敷かれた真の理由かもしれません。中国では、「物乞いをする人間ですらスマホを所持」しており、スマホを持たない自由がない、といっても過言ではないのです。また、様々な特典を提供することで、重要な個人情報を入力させているとも指摘されていますが、自由主義国であれば、個人情報保護の観点から反発や抵抗を受けることとなりましょう。

 そして、14億の巨大市場を背景とした巨額資金の流入も、中国ならではです。インドを除いては、中国に匹敵する人口規模を有する国はありません。しかも、中国では、政府の後援の下で、‘ネット業界の巨人’とも称される百度、アリババ、テンセントの3社が、海外資本をも含む潤沢な資金力を発揮して新興企業を次から次へと買収し、プラットフォーム型の独占と経済支配に邁進しているのです。

以上に述べたように、3つの要因が中国のみが揃えることができるとしますと、他の諸国がこのモデルを真似しようとしても、真似ができません。むしろ、目下、議論すべきは、中国モデルを自国に導入すべきか否かではなく、拡張する中国中心の経済圏に自国が飲み込まれる危機的事態の回避ではないかと思うのです。

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米朝首脳会談はお流れでも悪くはない

2018年05月22日 15時19分58秒 | 国際政治
トランプ米大統領、北朝鮮の出方次第で首脳会談中止も=副大統領
中央朝鮮通信を介して北朝鮮側から米朝首脳会談再考が表明されて以来、同会談の雲行きは怪しくなってまいりました。アメリカ側からも中止を示唆する声が聞こえております。

報道に拠りますと、ペンス米副大統領は、フォックスニュースのインタビューに応える形で、トランプ大統領には、北朝鮮の出方次第では同会談を取りやめる用意がある旨の発言をしたそうです。同副大統領は、アメリカには北朝鮮に対して譲歩するつもりは一切ないとも語っていますので、米朝双方の応酬によって、北朝鮮が期待していた会談中止の脅しによる対米牽制効果はなかったことが証明されたことにもなります。

アメリカが、‘完全、検証可能かつ不可逆的な核廃棄(CVID)’の対北要求を貫く以上、米朝首脳会談については(1)北朝鮮側が全面的にアメリカに屈し、同国の要求通りに核・ミサイル放棄を実行する、(2)両者の主張が平行線を辿り、会談は決裂する、並びに、(3)会談そのものが中止される、の何れかの展開が予測されます。中国、ロシア、韓国、及び、マスメディア等が期待するアメリカが北朝鮮に譲歩する形での‘平和的解決’となる見込みは薄く、米朝首脳会談が開催されたとしても、相当の高い確率で決裂するとなりますと、核兵器を温存させたい北朝鮮は、米朝会談から逃避する可能性も否定はできません。

仮に、北朝鮮が首脳会談の中止をアメリカに申し出る、または、事前にアメリカの要求を拒絶するとしますと、アメリカもこれを承諾することとなりましょう。米朝首脳会談の中止は、北朝鮮にとりましては逃げの一手なのでしょうが、アメリカにとりましては、この選択は決して不利ではないように思えます。その理由は、長期的な世界情勢の変化を予測すれば、北朝鮮に対する制裁を強化する、あるいは、軍事制裁に訴える方が賢明であるかもしれないからです。

目下、追い詰められた北朝鮮は、後ろ盾の役割を求めるべく、中国に対して積極的なアプローチを見せています。北朝鮮側の狙いは、アメリカから譲歩を引き出すための圧力強化にある一方で、中国側には、鉱物利権の獲得を含む北朝鮮の経済支配という戦略があるのでしょう。米朝首脳会談が開催され、仮に上記の(1)の形で合意が成立した場合には、アメリカが北朝鮮を間接的にコントロールする立場を得たとしても、問題が解決した以上、対北制裁は解除せざるを得なくなります。この展開では、北朝鮮は所謂“開国”を余儀なくされますので、中国に対しても門戸が開かれることは想像に難くありません。

以上に述べたように、(2)の展開の場合には然程の違いはないものの、(1)の展開にあって米朝合意が成立した際の中国による漁夫の利を防ぐと共に、北朝鮮の金正恩委員長に対して“体制保障”を約束する必要性もなくなります。対イランと同様に最大級の経済制裁を科す、あるいは、軍事制裁を実行に移せば、アメリカは、より確実に北朝鮮の体制移行において直接的に主導権を発揮できるポジションを獲得できますし、経済、並びに、軍事面において中国を抑止することもできます。北朝鮮に対するアメリカの制裁は、既に国連安保理決議等において正当化されていますので、中国やロシアも反対はできないはずなのです。中国が、その常軌を逸した軍拡によって国際法秩序を脅かしている現状を考慮しますと、米朝首脳会談のお流れは、必ずしも‘悪いニュース’ではないと思うのです。

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既に見破られている北朝鮮の‘核施設廃棄ショー’

2018年05月21日 14時55分51秒 | 国際政治
【激動・朝鮮半島】「取材1人当たり300万円」ぼったくり? 北核実験場廃棄“ショー化”の恐れ
北朝鮮の‘金王朝’には、代々演出好きのDANが受け継がれているようです。先代の金正日委員長は、外部から情報を一切遮断する閉鎖国家化を徹底する一方で、ハリウッド映画には夢中になっていたそうです。今日、北朝鮮において独裁者として君臨する金恩正委員長もまた、現実とスクリーンの境界が曖昧な危ういカルト的な世界に住んでいるように見えます。

 来月12日の米朝首脳会談を前にして、北朝鮮は、豊渓里核実験場を廃棄する方針を表明し、その日程等を発表しました。おそらく、経済制裁解除の条件として、アメリカが核放棄に向けた具体的な行動を採るように求めたため、北朝鮮は、この措置を以って、解除条件を満たしたと主張したいのでしょう。しかしながら、“具体的な行動”ではあっても、それが、‘完全、検証可能かつ不可逆的な核廃棄(CVID)’の要件を満たさないことは言うまでもありません。

 そもそも、豊渓里核実験場が北朝鮮国内に建設されている唯一の核実験施設であるかどうかは分かりませんし(他の場所に既に設備等を移動させている可能性もある)、IAEAによる査察も受け入れていませんし、他に核施設があれば不可逆的でもありません。また、既に完成している核弾頭については“具体的な行動”は、全く見られないのです。これでは、経済制裁解除からはほど遠いのですが、何故か、北朝鮮は、‘子供だまし’のショーを演出すれば、アメリカをはじめ、国際社会が騙されると信じているらしいのです。

 この恐ろしいぐらいの北朝鮮の現状認識の低さは、閉鎖空間にあって、常に演出を以って国家を統治してきた北朝鮮という国の宿命なのかもしれません。かつてハリウッド映画に、誕生と同時にドーム状の巨大なセットの中に閉じ込められ、それが現実世界ではなくセットであるとは知らされずに成長し、24時間‘ショー’を演じさせられた青年が主人公の『トゥルーマン・ショー(1998年公開)』という題名の作品がありました。北朝鮮とは、まさに、国そのものがその撮影用の巨大なセットであるかのようです。『トゥルーマン・ショー』では、主人公の青年は、自らが生きている世界が虚偽、虚構であることに気が付き、恐怖心を克服して島から脱出するのですが、一方の金委員長は、自ら率先して虚偽の世界を演じているのですから、‘トゥルーマン’ならぬ、『フォールスマン・ショー』の主人公であるのかもしれません。そして、この『フォールスマン・ショー』の主人公は、『トゥルーマン・ショー』の主人公とは逆に、視聴者に対して自らが演出した虚偽の世界こそ“現実”であると思い込ませようとしているのです。

 しかも、豊渓里核実験場の廃棄に際しては、その取材をアメリカ、中国、ロシア、イギリス、韓国の五か国に限定しつつ、ビザや航空料金を含めて取材記者から一人当たり凡そ300万円の支払いを要求していると報じられています。北朝鮮にとりましては、核放棄を演出する‘政治ショー’に留まらず、実験場の廃棄は国費を投じて準備した‘スペクタクル・ショー’なのですから、入場料を採るのは当然と考えているのかもしれません。今月23日から25日までの間とされる破棄当日は、取材陣が腰を抜かすほどの迫力ある爆破シーンが演出されることでしょう。加えて、その‘興行収入’が、実質的には‘経済制裁の抜け道’ともなるのですから、北朝鮮は、国際社会を愚弄しているしか言いようがありません。

 劇場国家であり、虚実を区別するどころか、国際社会を虚偽の世界に引きずり込もうとする北朝鮮を、どのようにしたら現実に引き戻すことができるのでしょうか。先ずは、既に‘ショー’であることが国際社会から見破られている‘現実’を認識させることが、この問題の解決への一歩となるかもしれないと思うのです。

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中国の副都心計画「雄安新区」は“監視型都市モデル”-共産主義の欺瞞

2018年05月20日 15時48分45秒 | 国際政治
 昨年2017年4月1日、まさにエイプリルフールのその日に、中国の習近平国家主席は、北京の首都機能を補完する新たな都市の建設プロジェクトとして、「河北雄安新区設立に関する通知」を発表しました。完成を2035年に見込み、投入される投資総額は凡そ35兆円ともされておりますが、「雄安新区」とは、如何にも共産主義者好みの“監視型都市モデル”となるのではないかと思うのです。

 中世ヨーロッパでは、“都市の空気は人を自由にする”とされ、自らが生まれた農村や荘園において人々がその一生を過ごした時代にあって、都市こそが人々が自由な空気を吸うことができる限られた空間でした。かつて都市には人々を引き寄せる自由という魅力があったのですが、共産主義国家中国が目下計画中であり、輸出モデル化をも狙う「雄安新区」は、都市=自由のイメージを180度転換させることとなるかもしれません。

 巨大国家プロジェクトとされる「雄安新区」の特徴とは、その技術面における先端性にあります。‘未来都市’とも称されるように、AIをはじめ、あらゆる最先端のテクノロジーが都市設計の段階で組み込まれており、自動運転技術の分野を見ても、個人の乗用車を全て自動化する世界最初の都市ともなりそうです。そして、「雄安新区」の交通システム全般を見ますと、地上にあっては整然と立ち並ぶ高層ビル群と計画的に配置された緑地帯の中を自動運転の巡回バス、自転車、歩行者のための3種の交通路が整備され、地下には地下鉄と自動運転乗用車用の地下道路が敷設されるようです。その完成予想図は、既存の諸都市のように自動車が渋滞に巻き込まれることも、農村からの農民工の流入によりスラム化することも、大気汚染に健康を害されることもなく、緑豊かな広々とした都市空間にあって人々がのんびりと健康的に都市生活を楽しむイメージとして描かれるのです。しかしながら、この「雄安新区モデル」は、13億の人口を抱える中国の現状に照らしますと、中国の一般国民の現実からはかけ離れた‘別世界’となることは想像に難くありません。そして、この‘別世界’は、共産党による徹底した監視と管理なくして維持し得ないのです。

 第一に、「雄安新区」は、首都機能を補完するために新設されます。つまり、同都市の住民の大半は、おそらく共産党幹部、及び、その家族に限られており、想定される人口数が200万人以上という、中国にしては少数である理由も、おそらく、当初から特権階級向けの都市を想定しているからなのでしょう。

 第二に、高度な先端技術の導入は、人々に自由を与えることを意味しません。個人用の自動運転車も、その保有は共産党員といった一部の人々に限定されるでしょうし(一般市民は公共交通機関を使用…)、たとえ保有を許されたとしても、行く先、目的、使用時間等、あらゆる個人情報が当局によって完全に掌握されることでしょう。また、自動運転車は、当局が‘好ましくない’と判断した場所には‘自動的に’向かわないはずです。一事が万事であり、「雄安新区」に居住している限り、家庭内に配置されたIoT家電、顔認証システム、並びに、スマホ等による情報収集により、その住民達の一挙手一動は、当局によって監視されることでしょう。この地に足を踏み入れた人は、あたかもジョージ・オーウェルの『1984年』の世界に紛れ込んだかのような恐怖感に襲われるかもしれません。

 第三に、AIやロボットといった最先端技術の導入は、必然的に都市人口の減少をもたらしますが、既に13億を越え、一人っ子政策を廃止した中国にあって、都市人口減は、農村部における人口問題をさらに深刻化します。乃ち、当局は、快適な都市空間を護るために、これまで以上に農村部から都市部への人口移入を阻止すべく、一般の国民の自由移動に対して監視の目を光らせなければならないこととなります。

 以上に、国家による国民に対する管理・管理強化の面から「雄安新区」の問題点を指摘してみましたが、中国発の“監視型都市モデル”は、人々から歓迎されるのでしょうか。自由主義国からは当然に拒絶されるでしょうし、中国国内においても、一般の国民から反発の声が上がるのではないでしょうか。共産主義の欺瞞として(一般の中国国民は、共産主義に騙された‘フール’となるのでしょうか…)。

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米朝首脳会談-奇妙なイアン・ブレマー氏の‘日本単独敗者論’

2018年05月19日 14時55分53秒 | 国際政治
 米朝首脳会談の先行きに不透明感が増す中、5月18日の日経新聞朝刊の「グローバル・オピニオン」欄に、米朝交渉に関するイアン・ブレマー氏の論考が掲載されておりました。ブレマー氏と言えば、『スーパーパワー-Gゼロ時代のアメリカの選択』の著者としで知られますが、驚くべきことに、この記事の中で同氏は‘日本単独敗者論’を展開しているのです。

 ブレマー氏に依れば、米朝合意において日本国を最大の敗者と見なす理由は、アメリカが、核放棄交渉を継続協議とした上で、ICBMの恒久的発射停止を約束しさえすれば、米朝合意は、アメリカのみならず、北朝鮮、韓国、並びに、中国に勝利をもたらすと見なしているからです。この妥協案は、先日、トランプ大統領が離脱を決定したイラン方式に近く、事実上、アメリカが北朝鮮の‘完全、検証可能かつ不可逆的な核廃棄(CVID)’を諦めることを意味します。北朝鮮は、既に保有している核を温存させることができますし、状況次第では、ICBMの開発再開させることができるからです。

 同氏は、この妥協案を以ってアメリカを勝者と判定しておりますが、果たして、北朝鮮に核保有・ICBM開発再開のカードを残した合意は、アメリカにとりまして勝利なのでしょうか。94年の米朝枠組合意や六か国協議の先例を見れば、三度目の失敗となることは目に見えております。北朝鮮は、過去において国際的な合意を悉く破ってきておりますので、たとえ交渉の末にアメリカ側が折れて米朝合意に至ったとしても、それがその場しのぎの‘口約束’となる可能性の方が遥かに高いと言えます。

 ブレマー氏は、ユーラシア事情に詳しい専門家であることを考慮しますと、北朝鮮が合意を遵守する誠実な国ではないことを十分に承知しているはずです。それにも拘らず、北朝鮮に有利な合意を以ってアメリカの勝利と見なすのは、極めて奇妙な見解と言わざるを得ないのです。合理的、かつ、客観的な視点に立てば、この手の妥協は、中途半端な譲歩を以って信じてはならない相手を信じたアメリカの外交的な敗北であり、将来的にはミュンヘンの宥和に匹敵すると評されても致し方のない失策となるのではないでしょうか。

 このように考えますと、仮に氏の想定する妥協案が成立した場合、北朝鮮、中国、韓国の三国が勝者とはなっても、日本国が単独で敗者となるわけではなく、アメリカもまた、敗者に列するはずです。譲歩するのは、北朝鮮ではなくアメリカなのですから。ブレマー氏の見解には、多々、中国寄りの姿勢が見えるのですが、今般の論考も、あるいは中国側の希望的な観測を代弁しているだけなのかもしれません。そして、北朝鮮の中距離核兵器の脅威に晒され続ける日本国に対して、いとも冷淡に単独の“敗者”と言い切る姿にも、中国、並びに、親中勢力の影が見えるように思えるのです。

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トランプ大統領の“体制保障”とは北朝鮮の‘被保護国’化?

2018年05月18日 10時29分17秒 | 国際政治
リビアと異なり金正恩体制保証=北朝鮮の非核化で―米大統領
米朝首脳会談を来月12日に控え、米朝間の駆け引きが活発化してきております。北朝鮮側が同首脳会談のキャンセルを‘警告’したのに対して、アメリカのトランプ大統領は、金正恩委員長に対して‘体制保障’を明言したと報じられております。

 ‘体制保障’に関するトランプ大統領の具体的な表現は、「彼は国にいて、国を支配し、国は豊かになる」というものです。この表現からしますと、アメリカ側が言う“体制保障”とは、おそらく、リビア方式とは異なるプロセスであれ、金委員長が‘完全、検証可能かつ不可逆的な核廃棄(CVID)’を受け入れれば、その‘見返り’として、同委員長が北朝鮮に留まり、引き続き独裁者として統治権を一身に掌握し、かつ、アメリカの経済支援の下で経済改革に取り組む、という意味になります。言い換えますと、アメリカは、同委員長に対して命の保障、即ち、亡命を勧告したわけではなく、アメリカの保護の下で独裁者の地位は保証されるけれども、アメリカの経済的コントロールを受け入れよ、と要求しているのです。

 アメリカの北朝鮮に対する最大の譲歩はこの意味における‘体制保障’ですが、譲歩の形を取ながらも、それは、北朝鮮に対する‘強い要請’とも読めます。そして、この譲歩案は、北朝鮮が、事実上、アメリカの“被保護国”となることを意味するのではないでしょうか(20世紀まで見られた歴史的な‘被保護国’は、外政に関する権限を保護する側の国に移譲するので、内政に関する権限も委任する今般のケースは、むしろ、‘属国’に近いかもしれない…)。実際に、トランプ大統領は、「我々は多くの事を北朝鮮に提供するつもりだ。もし、首脳会談が行われれば良い関係を築けると思う。北朝鮮は強い保護を受けるだろう」とも述べています。

 また、仮に、トランプ大統領の発言が北朝鮮の被保護国化を示唆しているとしますと、リビアとの比較に関する不可解な言及ついても説明がつきます。何故、不可解なのかと申しますと、同大統領は、核合意後に体制が転覆したリビアについて、当時、アメリカは、‘体制保障’をしていなかったからと述べているからです。リビアのカダフィ政権の崩壊は、民主化運動から内戦への流れの中で発生していますので、仮に、北朝鮮の金正恩独裁体制を保障するとなりますと、アメリカは、以後、国民から湧き上がる自由化・民主化要求運動、並びに、独裁体制の打倒を掲げる反体制派を弾圧しなければならなくなるからです。

 被保護国化のみならず、外国による民主化弾圧の事態は、主権平等、民族自決、内政不干渉といった国際社会の原則にも反するのですが、危機後の‘北朝鮮管理’あるいは‘移行期管理’の文脈から見ますと、一定の安定化の効果は期待できます。何故ならば、北朝鮮は、アメリカの管理下に入るわけですから、その肩書に変化はなくとも金正恩委員長は実質的に‘アメリカの代官’となり、真の統治者はアメリカとなるからです。つまり、真の統治者であるアメリカは、金委員長を介して、自由化を含む北朝鮮の国内改革に取り組むかもしれないからです。もっとも、民主化については、そもそも朝鮮半島には民主主義の歴史が殆ど皆無であり、また、自由、人権尊重、法の支配、公平・公正といった普遍的価値に対する理解も乏しいことから、国民に対して自由主義国への転換に相応しい適切な教育を施すための、一定の期間を設けるかもしれません。アメリカが、永久に金一族世襲王朝を保障するとは考えられませんので、おそらく、保障期間は、長期に亘って受けてきた国民の洗脳を解く期間をも考慮し、金正恩委員長の一代限りとなるのではないでしょうか。

 以上にアメリカによる北朝鮮の被保護国化について推測してみましたが、問題が残されているとしますと、それは、中国問題です。アメリカによる北朝鮮の自由化、特に、経済分野での自由化によって最も恩恵を受けるのは、グローバリズムを自国の覇権主義に活用している中国かも知れないからです。核放棄とほぼ同時に国際的な対北経済制裁網が解かれれば、真っ先に、鉱物資源やインフラを含め、北朝鮮経済の掌握に乗り出すのは、国境を接し、かつ、資金力優る同国に他なりません。そして、北朝鮮もまた、自国経済のモデルを中国とベトナムに求めていると報じられています。アメリカは、虎視眈々と漁夫の利を狙う中国の積極的な動きに対してどのような対策を講じるのか、あるいは、対中抑止の観点から首脳会談の決裂を選択するのか、北朝鮮危機に関しましては、米朝首脳会談に向かってここ暫くの間、関係各国、並びに、国際勢力の思惑が複雑に交差する正念場が続くように思えるのです。

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‘進も地獄退くも地獄’の北朝鮮-アメリカが一枚上手?

2018年05月17日 15時43分30秒 | 国際政治
「米朝首脳会談中止なら圧力続ける」 米報道官
 米韓共同軍事演習の実施を平和路線に対する逆行として批判した北朝鮮は、6月12日に予定されている米朝首脳会談の中止を匂わせております。北朝鮮側の突然の態度硬化によって、米朝首脳会談の行方は不透明感を増すこととなりましたが、この状況で、追い詰められるのは北朝鮮なのではないでしょうか。

 北朝鮮側としては、トランプ米大統領に対するノーベル平和賞授与の声やマスメディアの平和解決ムードの流れから、米朝首脳会談のキャンセルは、効果的な対米カードであると読んだのでしょう。しかしながら、北朝鮮の期待通りとはいかず、アメリカ側の反応はいたって冷やかであり、フォックステレビに出演したホワイトハウスのサンダース報道官は、“米朝首脳会談の開催に向けて準備を進めるが、仮に中止となった場合には圧力を継続するのみ”といった趣旨の説明をしています。つまり、北朝鮮は、アメリカに対して牽制したつもりが逆に牽制され返される展開となったのです。

 ‘進むも地獄退くも地獄’という言葉がありますが、北朝鮮が置かれている現状は、まさにこの状態です。米朝首脳会談の席に就いても、そこでは、アメリカからの厳しい要求が待っており、同会談を蹴っても、軍事制裁に繋がりかねない制裁強化という窮地が待ち受けているからです。どちらを選択しても‘地獄’であり、むしろ、アメリカの巧妙な戦略を前にして、‘より悪くない方’を選ぶしかない状況なのです。

 とりわけ、北朝鮮をして米朝首脳会談のキャンセルを口走らせた要因は、おそらく、半年以内とも報じられている核兵器の国外搬出等を含む‘完全、検証可能かつ不可逆的な核廃棄(CVID)’の要求であったことは想像に難くありません。今般の中止発言でアメリカは、結局、中朝が主張してきた‘段階的核放棄案’を受け入れるのでは、との予測もありますが、イランと北朝鮮とで基準を変えるダブル・スタンダードをとれば、イランからの反発は必至でしょうし、あれほど前政権の‘戦略的忍耐’との決別を訴えてきたトランプ大統領が、過去の失敗を自ら繰り返すとは思えません。そして、非核化受け入れの‘見返り’としての経済支援も、アメリカによる北朝鮮のエネルギー・インフラのコントロールを意味しかねないのですから、米朝合意の成立は、主体思想の下で‘自主独立’を強く内外に誇示してきた北朝鮮にとりましては痛手となりましょう。

かくして首脳会談の開催を選択しても、決裂の可能性を含めて北朝鮮にとりましては‘地獄’なのですが、米朝会談を中止しても、行く先はやはり‘地獄’です。アメリカは、対北制裁の手を決して緩めず、さらなる制裁措置を追加するでしょうし、中国に援けを求めても、ここでも、中国による北朝鮮の経済支配が待ち受けております。

 結局、北朝鮮は八方塞となり、‘進むも地獄退くも地獄’の状態に置かれているとしか言いようがないのです。韓国のみが頼りなのかもしれませんが、米韓同盟が韓国に対する錘となっておりますので、今般の一連の動きを見ておりますと、やはり、アメリカの方が一枚上手なのではないかと思うのです。

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