万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

日本国民と二階幹事長との温度差

2017年12月29日 19時39分22秒 | 国際政治
与党、中国の「一帯一路」協力に前のめり 慎重姿勢の政府と温度差 訪中団長の自民・二階幹事長「積極的に参加する」
中国が推進している一帯一路構想について、日本国政府と同国を訪問している自民党の二階俊博幹事長との基本姿勢の違いが、政府・与党間の温度差として報じられております。この温度差、日本国民と同幹事長の間でも深刻です。

 二階幹事長が習近平主席と会談し両者が握手する姿は人民日報の一面を飾っており、中国の二階幹事長に対する厚遇ぶりは際立っています。孫子の兵法を生み出した国ですので、当然に、中国が、何らかの目的のために同幹事長を利用していることは疑い得ません。同氏に対し、中国側から一帯一路の言葉を発言に加えるよう要請があったとも伝わりますので、同構想に慎重な日本国政府の方針を積極姿勢に転換させるための、与党内の切り崩し、あるいは、懐柔策の一つなのでしょう。

 あまりに露骨な歓待ぶりに中国側の意図は明々白々なのですが、中国は、日本国について、一つ、重要な側面を見落としています。それは、政党内の政治力学や人脈を操作しただけでは、民主主義国家である日本国の対外政策を動かすことはできないことです。共産党が国家を指導する一党独裁体制の下にある中国は、自らの政治体制の類推から、日本国においても与党を押さえれば国の政治も動くと考えているのでしょうが、民主主義国家の政治では、何にも増して国民の支持が重要です。特に日本国民の多くが安倍政権の対中強硬姿勢が評価し、自民党に一票を投じていますので、この路線の転換は容易ではありません。

 日本国の世論が中国に対して厳しい中、中国が特別待遇を以って二階幹事長の取り込みを図っても、同幹事長に対する日本国民の反感と警戒感を高めこそすれ、与党に対する支持率を挙げる効果があるとは思えません。結局は、与党・政府間のみならず、日本国民と二階幹事長との温度差が開くばかりとなりましょう。否、こうしたあからさまな手段を用いてまで、中国が一帯一路構想に対する日本国側の協力を欲しているとしますと、周辺諸国におけるインフラ事業の頓挫が報告されているように、同構想が、既に行き詰っている可能性が高いのではないかと思うのです。

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 本年は、拙いブログでありながら、お忙しい中をご訪問くださりましてありがとうございます。厚く、御礼申し上げます。本ブログは、父が入院しており、お正月3日頃までお休みさせていただきたく存じます。みなさま方が、良いお年をお迎えなさりますよう、心よりお祈り申し上げます。
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慰安婦問題-本当は韓国側から司法解決を提起すべき問題

2017年12月28日 19時42分55秒 | 国際政治
日本政府、韓国に抗議「日韓合意維持以外、選択肢ない」
 韓国の文在寅大統領が「この合意では慰安婦問題は解決されない」との声明を発表したことから、日本国政府は、「日韓合意の維持以外、日韓両政府に選択肢はない」として、韓国政府に強く抗議したと報じられております。

 しかしながら、日韓合意は唯一の解決の選択肢ではなく、司法解決と言う手段が存在することは、先日の記事で指摘しました。同問題が再燃するならば、日本国政府は、韓国政府に対して司法解決を申し入れるべきなのですが、ここで一つ、疑問点があります。それは、何故、韓国政府は、同問題の解決に際して司法解決を選択しようとしないのか、ということです。

 一般社会では、被害を主張する側が、容疑者を裁判所に訴えるのが常識です。この常識に照らせば、戦時中における慰安婦被害の事実認定とそれに基づく謝罪と損害賠償を求める韓国側が、日本国を相手取って国際レベルの司法機関に訴えるのが筋です。ところが韓国は、この最も常識的な解決方法を決して選択しようとはしません。そしてその理由は、実のところ、“確固たる証拠を以って被害を証明することができないから”としか考えようがないのです。

 実際に、韓国が証拠としているのは元慰安婦の証言のみであり、しかも、その証言内容も二転三転しており、裁判において証拠として認められるレベルにはありません。人間とは、意識的に嘘を吐いたり、また、記憶違いによる無意識の嘘もある生物ですので、元慰安婦の証言が100%の事実であるはずもありません。その一方で、日本国側には、韓国側の主張を論駁する資料が揃っております。また、仮に、人間の証言は100%事実であるとする韓国政府の立場に立てば、旧朝鮮総督府の元官吏による慰安強制連行を否定する証言も正しいこととなりましょう。

 韓国側は、証拠もないのに韓国から罪を着せられている日本国の憤りを理解しているとも思えません。何れにしても、韓国政府は、何としても日韓慰安婦合意を覆したいならば、やはり司法解決に訴えるべきなのではないでしょうか。

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慰安婦問題再燃ならば司法解決で

2017年12月27日 19時43分47秒 | 国際政治
慰安婦合意検証、午後に発表=関連財団の運営調査結果も―韓国
 2015年末の日韓慰安婦合意の見直しを公約として当選した文寅在大統領は、早々、作業部会を設置し、両国の合意に至る経緯を検証する部会を設置しました。本日、同部会による報告書が公表されましたが、同報告書は、慰安婦問題の再燃は不可避と指摘しているそうです。

 日韓慰安婦合意については、韓国側のみならず、日本国側にも不満の声があります。何故ならば、慰安婦問題をめぐる日韓論争は、その事実性が争われているからです。日本国の国民の多くは、政治的妥協としての日韓合意によって、韓国側が主張する“朝鮮人慰安婦20万人強制連行説”が恰も事実の如くに受け止められるリスクを懸念しているのです。

 文大統領は、慰安婦問題を再燃させることで、日本国から謝罪と賠償を得ようと目論んでいるのでしょうが、事実性が争われている以上、最適な解決方法は、司法解決をおいて他にありません。1965年に締結された日韓請求権協定の第3条では、外交による解決が不可能となった場合、司法解決として仲裁による解決を定めております。また、同協定に基づく仲裁以外にも、国際司法裁判所や常設仲裁裁判所など、今日の国際社会ででは、様々な司法手段を活用することができます。

 日本国政府は、慰安婦問題の再燃を恐れる必要はなく、むしろ、法廷において慰安婦の実像を明らかにする、即ち、事実関係を明らかにすることで、日本国の名誉回復のチャンスとすべきではないでしょうか。

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国際法に関する中国の理解能力欠如は深刻

2017年12月26日 20時22分47秒 | 国際政治
本日、日経新聞の朝刊一面に、「現実味を増す米朝衝突」と題して北京大学国際関係学院院長の賈慶国氏とのインタヴューが掲載されておりました。この記事おいて驚かされるのは、氏の国際法に関する理解能力の欠如です。

 賈院長は、中国の国政助言機関である全国政治協商会議の常務委員をも務めており、同国の対外政策の策定にも深くかかわっているものと推測されます。いわば、中国を代表する知識人なのですが、こうした知的エリートが、実のところ、国際法を理解していない現状こそ、チャイナ・リスクの本質とも言えます。同記事の隅から隅を読みましても、国際法、あるいは、国際法秩序という言葉は見当たりません。

 例えば、習近平国家主席が主張する「新型の国際関係」については、米中の主権と領土保全の相互尊重を基礎とする協力関係であり、両国共同して国際社会を指導すべきとする立場を示しています。この立場に従えば、国際法の原則でもある全ての諸国の間の主権平等は無視され、米中以外の他の諸国の主権や領土は侵害されても構わないという、国際法で禁じる侵略容認の結論が導き出されます。

 また、南シナ海問題をめぐる米国や国際社会との衝突の可能性についても、権益主張の時期を正当化の根拠とする全く以って頓珍漢な回答を示しております(昔から主張していたことは国際法違反の正当化事由とはならないし、仲裁判決で、その主張は否定されている…)。さらに、中国が強大となった今日、“積極的措置”という言葉でその強硬論を説明し、弱肉強食の世界への回帰を平然と肯定しているのです。“周辺諸国との意見の相違は平和的な方式で処理するべき”とは付け足し程度で述べていますが、この見解も、前言である“積極的措置”との整合性がとれていません。

 本記事の主要テーマである米朝衝突についても、北朝鮮をめぐる4つの危機を挙げ、米中韓の三国が対応について協議すべきとしつつも、対北禁輸措置に対する中国の慎重姿勢や米朝直接対話に関する悲観的な展望を述べるに留まり、米朝衝突時における具体的な行動については口を濁しています。しかも、日中関係の改善については、日本国には「一帯一路」での“助け”、即ち、“補助役”を期待すると述べ、全く以って、虫が良すぎるとしか言いようがないのです。

 賈院長の発言を読んでみますと、ついつい“インテリヤクザ”という言葉を思い起こしてしまいます。一見、知的エリートに見えながら、無法者であると言う意味において…。日本国政府は、中国には、法の支配や国際法を理解する能力が欠如しているという残念な現実を直視すべきではないかと思うのです。

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日本国政府の対中接近は逆効果では?

2017年12月25日 19時47分56秒 | 国際政治
日中与党交流が開幕
報道に拠りますと、中国の習近平政権は、情報統制の一環としてネット情報の取締りを強化し、インターネット当局が、ネット上の1万3000サイトと1000万のSNSのアカウントを閉鎖したそうです。習独裁体制の盤石化が狙いなのでしょうが、この措置は、日本国政府の対中政策にも影響を与えるのではないでしょうか。

 情報統制の厳格化の理由としては、テロ対策といった尤もらしい口実が挙げられておりますが、真の目的が、共産党一党独裁体制や現政権に対する批判封じであるは想像に難くありません。このため、この措置については、中国国内でも国民から不満の声が上がっているそうです。SNSのアカウント閉鎖を見ても、人口規模が13億とは言え、1000万の数は膨大であり、逆から見ますと、かくも多くの人々が、現政権に対して不満を抱いていることの証ともなります。このことは、アカウントを閉鎖された1000万人の情報発信者のみならず、支持者や共感者を併せますと、相当数の中国国民が、中国政府から見ますと“不満分子”となるはずです。

 言論の自由の保障は、近現代国家の基本原則でありますので、中国に対する国際評価は低下することは必至ですが、日本国政府も、ここで、二者択一の選択を迫られることとなります。乃ち、現習近平体制を容認し、それに接近するのか、それとも、自由を求める中国国民を支持するのか、という選択です。

 目下、自民党と公明党の幹事長が第7回日中与党交流協議会主席のために中国を訪問しておりますが、果たして、情報統制の徹底によって国民の言論の自由を弾圧する中国政府に対して融和策を選択することは、日本国の適切な選択なのでしょうか。仮に、日本国政府が、習近平政権との友好関係を深めるとしますと、中国国民の日本国に対する期待は失望に変わり、親日国民増加の期待とは逆に、反日国民を増やす結果となるかもしれません。つまり、逆効果となるかもしれないのです。日本国は、自由で民主的な国として、一般中国国民の側に立った政策を立案すべきではないかと思うのです。

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北朝鮮は国連から除名されるべきでは?

2017年12月24日 17時04分14秒 | 国際政治
北、安保理制裁決議に反発声明「全面的に排撃」
 国連安保理における新たな対北追加制裁案の全会一致による成立を受けて、北朝鮮の金正恩委員長は、同決議を“戦争行為”として批判したと報じられております。

 仮に、北朝鮮が、国連の仕組みを理解していれば、こうした発言はなかったはずです。安保理決議をはじめ、国連を枠組みとした制裁とは、‘平和に対する脅威、平和の破壊及び侵略行為’を行う諸国に対して課されるものであり、制裁対象国とは、いわば、国際社会が厳しく取り締まるべき‘ならず者’です。今般、北朝鮮に対して安保理で制裁決議が成立したのも、同国の核・ミサイル開発・保有が、国際社会に対する重大なる脅威と見なされたからに他なりません。因みに、国連憲章では、国連を枠組みとした武力行使であっても、“戦争”という表現を避けており、‘軍事的措置’という言葉を使用しています(経済制裁は‘非軍事的措置’の一つ…)。ところが、北朝鮮は、同国外務省の報道官を介して、この決議を「わが国の自主権に対する乱暴な侵害、朝鮮半島の平和と安定を破壊する戦争行為の烙印を押し、全面的に排撃する」と述べ、国連に対する対決姿勢を露わにしているのです。言い換えますと、北朝鮮は、自らが“犯罪国”とならぬよう、国連を枠組みとした国際的な制裁行為を、一般的な戦争レベルへの矮小化を試みているのです(クラウゼビッツ流の戦争観では、戦争には正邪がない…)。

 北朝鮮のこの認識は、国際社会のそれとは真逆であり、刑法に喩えれば、犯罪者が、警察による取締りに対して、犯罪的暴力行為であると糾弾し、警察活動の排除を宣言するに等しくなります。北朝鮮は、1991年9月17日の南北同時加盟により、冷戦終焉を背景とした南北間の雪解けムードの中で、朝鮮戦争における国連の‘敵国’でありながら国連の一員となりましたが、この時の捩じれは、1971年の中国の安保理常任理事国入りと同様、今日に至るまで尾を引いております。国連加盟国の一国でありながら、国連憲章に定める義務を怠る北朝鮮は、国連憲章第6条に基づき、除名されて然るべきなのではないかと思うのです。

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エルサレムの帰属と普遍神の問題-神はユダヤ教徒もイスラム教徒も罰する?

2017年12月23日 15時23分56秒 | 国際政治
エルサレム問題 地位変更は無効 国連総会で決議を採択
 アメリカのトランプ政権がエルサレムをイスラエルの首都として承認したことから、国連レベルのみならず、現地では、ユダヤ人とパレスチナ人との間の衝突も報じられております。宗教紛争が再燃する気配もありますが、この問題、神とは何か、という本質的な問題を問うてもいます。

 この問題と関連して、マックス・ウェーバーは、『古代ユダヤ教』において、混成民族である“ユダヤ人”の戦時における守護神でもあるヤハウェの普遍神への昇格過程を描き出していることは、注目されます。ユダヤ教も、その初期にあっては、一神教ではありながらも、必ずしも普遍神ではなく、「モーセの十戒」に見られる“汝は私以外の何者を神としてはならない”とする神の言葉も、古代の多神教世界にあって、“多数の神々の中から、自らのみを選べ”とする意味にも解されます(恐らく、‘ユダヤ人’を構成する混成民族それぞれが別の神を信じていた)。

やがてユダヤ教においてヤハウェの地位が普遍神へと高められてゆくにつれ、神は、全ての人類に対して公平、かつ、公正な神へとその性格を変えてゆきます。おそらく、その要因は、『聖書』を構成する諸本のうち、‘天地創造の神’が描かれている「創世記」の部分がシュメール由来であり、‘天地創造の神’とヤハウェ信仰とは別系統であり、普遍神に近い存在であったからなのでしょう。アブラハムが、シュメールの都市、ウルの出身であったことから、ユダヤ教において習合が起きたと推測することができるのです。その結果、ユダヤ人自身も、神の啓示に反した行為を行った場合、厳しく罰せられる立場へと転じ、神は、無条件にはユダヤ人を守護しなくなるのです。

 この変化において登場してくるのが、イスラム教です。『コーラン』の「夜の旅の章」は、エルサレムがイスラム教の聖地ともなる根拠とされていますが、マホメットがこの地で神から啓示を受けたとされるのも、『旧約聖書』の“神”がユダヤ教の独占物ではなくなり、普遍化したからに他なりません。しかしながら、イスラム教における神、即ち、アッラーも、全ての人類に対して公平なる普遍神へと純化したとは言い難く、異教徒に対する迫害や排斥は神の名の下で許されているのです。

 中東の地では、宗教紛争の結果として夥しい数の人々が命を落としていますが、両宗教とも、“神”を普遍神と位置づけながらも、自らの集団のみに特別なご加護を与える守護神として捉えています。守護神とは、特に戦争において“霊験あらたか”であることが期待されますので、敵味方が同一の神に勝利を願うという奇妙な構図も発生するのです。ヤハウェもアッラーも戦争神としての性格さえ帯び、それ故に、泥沼の宗教対立から抜け出すことができないのです。

そして、ここで考えるべきは、真に普遍的であり、善なる神が存在するならば、ユダヤ教徒もイスラム教徒も、その行き過ぎた利己的他害性によって、共に神から罰せられる立場となり得ることです。エルサレム帰属問題を機に、両宗教共に、神の普遍性、そして、善性について深く考えてみるべきではないかと思うのです。

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“行動する天皇”の問題

2017年12月22日 11時18分47秒 | 日本政治
【天皇陛下譲位】天皇誕生日は2月23日、12月23日は当面平日に…政府検討入り
 天皇の生前退位(譲位)問題が持ち上がった丁度その頃、新聞の紙面に、アメリカ民主党系の識者による象徴天皇に関する見解が紹介されておりました。その記事を読んで驚いたことは、“行動する天皇”にこそ、天皇の存在意義があると述べていたことです。

 実のところ、“行動する天皇”は、日本国の伝統的な天皇観とは真逆となります。何故ならば、神聖さを保つために、御所の奥深くにあって御簾の内に静かにおわしますのが、天皇の伝統的な在り方であったからです。この側面からしますと、統治権を総攬すると定めた大日本帝国憲法下の天皇の役割は歴史的には例外であり、この時期、西欧の立憲君主制を模して、大胆、かつ、革命的に天皇の世俗君主化が図られたと言えます。こうして近代以降は、聖俗の両面を併せ持つ‘天皇’が誕生したのですが、戦後の日本国憲法は、天皇に統合の象徴の役割を付し、“行動しない天皇”に回帰しています。そして、この“行動しない天皇”への復帰は、伝統的な天皇像を是とする国民の多くに安心感を与えたのではないでしょうか。国旗や国歌と同じく、“天皇(すめらみこと)は存在するだけでありがたい”とする考え方は、日本国の伝統に基づいています。

 戦後の出発点にあって、“行動しない天皇”は、GHQの望むところでもあったのでしょうが、今日、アメリカ民主党のリベラル層を中心に“行動する天皇”を求める声があるとしますと、一般の日本国民にとりましては、当惑を覚えざるを得ない事態です。そして、この国際圧力としての“行動する天皇”への転換要望こそが、今日、皇室問題を悪化させている要因の一つとも推察されるのです。近年、皇室の“自由な行動”、あるいは、“私的な行動”が、既成事実として、政府によって強制的に国民に事後承認を迫るケースが頻発しているからです。

 しかも、この“行動”の内容も曖昧模糊としており、“天皇の行動”が象徴の役割と相反する事態をも想定していません。今上天皇にあっての“行動”は、被災地慰問や海外諸国への慰霊の旅なのでしょうが、海外組織との繋がりの深いカルト新興宗教団体をバックとした新天皇の時代に至れば、私的な目的やこうした団体の利益のための“皇室外交”、すなわち、国権の掌握とその行使を伴うような活動をも、“行動する天皇”の一言で是認されてしまうことでしょう。また、伝統的な国家祭祀や慣習の放棄等の破壊行動も、“天皇の行動”の内となるかもしれません。

 乃ち、“行動する天皇”とは、天皇位の私物化に他ならず、一般の国民にとりましては迷惑・不快この上なく、憲法上の統合の象徴としての立ち位置も、それが、全国民の天皇への崇敬心を基盤としている以上、求心力の急速な低下により足元から瓦解することでしょう。

 そもそも日本国の伝統的な天皇像にあっては、天皇の行動=国家祭祀であり、その他の“行動”を論じること自体、あり得なかったはずです。逆から見ますと、“行動する天皇”の薦めとは、歴史や伝統からの断絶を志向し、天皇を自らが理想とする“革新的世界”を率先して実践するモデルとして位置付けたいリベラルらしい考え方なのです(もっとも、期待通りの効果がなければ、手のひらを反して廃止を主張するかもしれない…)。

 この勧めに従えば、“天皇”という公的なポストの名称は残っても換骨奪胎され、過去との継続性はすっかり失われることでしょう(既に、失われているかもしれない…)。因みに、毛沢東思想や“習近平思想”といった革命思想も、論理的な思考よりも直接的な行動を重視する行動推奨主義的な側面を特徴としています。“行動する天皇”の容認は、絶対君主や独裁者の如く、規範や一般常識を無視して自由に行動する天皇の出現を準備することを、決して忘れてはならないと思うのです。

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“パンダ債”は大丈夫?-反米路線に日本を引き込む中国

2017年12月21日 15時30分06秒 | 国際政治
日本企業に人民元債発行を解禁へ、22日に日中当局が合意=関係筋
本日の日経新聞朝刊の一面には、「人民元債 日本に解禁」の見出しが躍っていました。中国政府が日本企業に対して中国本土における人民元建て債券―“パンダ債”―の発行を認めるとする内容ですが、日中金融協力には、手放しでは喜べない側面があります。

 先月、ベトナムのダナンでAPEC首脳会議が開催された際に、日本国の安倍首相と中国の習近平国家主席との間で首脳会談が持たれ、両者が握手を交わす写真が公開されました。これまで仏頂面と打って変わり、笑顔での握手であったことから、中国からの対日関係改善のメッセージではないか、とする憶測も呼んでいました。その後、安倍政権は対中政策を軟化させ、習主席が提唱する一帯一路構想についても協力姿勢に転じたとする指摘も散見されています。しかしながら、中国からの“すり寄り”は、‘孫子の兵法’よろしく得てして一時凌ぎであり、長期的戦略に即した“偽装”であることは、歴史が示すところです。

 それでは、中国は、何故、今の時期に日本国に接近する必要があったのでしょうか。中国の人民元国際基軸通貨化に向けた動きは、70年代辺りに始まるようです。朝鮮戦争を機にアメリカの制裁でドルを使用できなくなっていた中国が(この間、英ポンドを使用…)、欧州各国との間で人民元決済を開始したのはこの時期であり、周恩来首相のイニシャチブによるそうです。日本国も、1972年に民間銀行が「日本円と人民幣による貿易決済業務に関する協定」を締結しています。80年代後半以降は、鄧小平氏の下で改革開放路線へと転じたことから、積極的に外資が導入され、2001年のWTO加盟により経済大国へと一気に上り詰めてゆくことになるのですが、その長期的経済戦略においては、人民元の国際基軸通貨化は主要課題であり続けています。対日関係では、2011年に、野田佳彦首相と温家宝首相との間で、人民元建ての中国国債購入と円・人民元決済の方針が約されています。この路線に従い、2012年6月からは、日本円と中国人民元との為替相場はドルを介さない直接取引による制度へと移行し、‘ドル外し’が進行することとなりました。2016年の国際通貨基金(IMF)における人民元のSDR構成通貨採用も、国際基軸通貨化戦略の最終段階へのステップとして位置付けられていたことでしょう。

 しかしながら、こうした中国の長期戦略は、当然に、アメリカを中心としたドル基軸通貨体制との衝突を不可避とします。上述した2011年の野田政権での日中金融協力においても、アメリカの‘虎の尾を踏む’として、既にこの点に関する懸念が示されておりました。先日発表されたトランプ米大統領の「国家安全保障戦略」では、経済面においてもアメリカの地位の維持が掲げられていますが、米ドルの国際的地位も例外ではないはずです。アメリカからすれば、中国は米ドルの地位に挑戦するライバル国であり、日本国を含むアジア、否、ユーラシア大陸全域が人民元圏となることを易々と許すとは思えません。

米中対立が鮮明となる中、中国が、先ずは日本国の取り込みに動いたとしてもおかしくはありません。しかも、為替取引規制も継続されているのでは、到底、国際通貨の要件を満しているとは言えず、人民元の貿易決済通貨としての比率は低いままです。中国国内を見ても、当局による金融引き締め政策によるインフラ建設の激減等により、景気は停滞気味です。苦境にあるからこそ、アメリカとの直接対決を巧妙に避けつつ、当面は対日関係を改善し、日本国への人民元の‘浸透’を図ろうとしているのかもしれないのです。その結果として、日米離反をも引き起こすことができれば、中国としては、一石二鳥なのでしょう。

このように考えますと、‘パンダ債’の発行解禁は、中国が日本国に対して恩恵を与えているとする印象で報じられてはいますが、中国の戦略に日本国が体よく利用されているに過ぎないかもしれません。最初に冷遇し、後から厚遇して相手を感激させ、自らの意図する方向に誘導する手法は政治的テクニックの一つですので、中国側からの笑顔の接近には、冷静に構えて見てゆく必要があるように思えるのです。

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トランプ政権の「国家安全保障戦略」と日本国憲法第9条

2017年12月20日 15時35分31秒 | 国際政治
【米国家安保戦略】中国は「悪意ある中傷は徒労に終わる」と猛反発
  本年12月18日、アメリカのトランプ大統領は「国家安全保障戦略」を公表し、同政権による安全保障政策の基本方針を内外に示しました。さながら“トランプ・ドクトリン”となるのですが、その基調となるのが「力による平和」です。

 同戦略では、とりわけ中国とロシアに対する警戒感を露わとしており、「力による平和」とは、これらの諸国の覇権主義的な行動に対する強い牽制を含意しています。このため、早、中ロからの反発が報じられていますが、「力による平和」は、日本国においても憲法改正に関わる重大な問題を提起しております。何故ならば、憲法第9条、否、日本国憲法とは、その前文に謳われているように、「力による平和」とは正反対の「力なき平和」を前提としているからです。護憲論者からしますと、トランプ政権の基本方針は、その前提を打ち砕く反平和的な危険極まりない方針に映ることでしょう。

 しかしながら、人類史が明らかにしているのは、究極的には、力を以ってしか暴力を押さえることはできないという、厳粛なる事実です。この厳しい現実は、仮に、犯罪組織が政府よりも強力な武器を備えた場合を想像してみればよく理解できます。メキシコでは、既にこの状態が発生しており、麻薬密売組織がメキシコ政府を凌ぐ武力を保持するに至ったため、同国の治安は著しく乱れ、一般の国民は、常に犯罪組織に怯える生活を余儀なくされています。麻薬密売組織が急速に勢力を拡大させたフィリピンもまた、メキシコ化の危機にあると言えましょう。何れにしても、犯罪組織の武力が政府のそれを上回る場合には、同組織による加害行為を止めることは極めて困難となるのです。そして、犯罪組織にとっては、一方的な脅迫や殺傷を可能とする武力こそが“生業”を守り、法を排除する手段なのですから、話し合いや交渉によって放棄するはずもないのです。

 国際社会にあっても、国際法を無視し、他国の主権、領域、国民を一方的に侵害する国は、上記の犯罪組織と変わりはありません。そして、こうした無法国家が、高みから他の諸国に対し軍事力を以って睥睨し、実際にその抜きん出た軍事力を行使するに至れば、全ての諸国の運命は風前の灯となります。

 “力”という言葉は、利己的な目的で他者に対して害を与える暴力と、その暴力を押さえるための正義の力、防御の力とを区別する必要があります。非暴力・無抵抗主義は、高邁な理想ではありますが、両者の違いを認識せず、暴力に対抗する抑止的軍事力や警察力までをも一緒くたに放棄するとなりますと、暴力を是とする犯罪組織に、国家の、そして人類の運命をも掌握されてしまうこととなりましょう。実際に、非暴力・無抵抗主義を是としたチベットは、今なおも暴力主義国家の頸木に繋がれております。

 トランプ政権が示した「力による平和」という基本方針は、それがアメリカ・ファーストの意味であれ、日本国に対しても、「力なき平和」を求める憲法第9条に潜む本質的な問題をも問うております。日本国は、改憲案の策定に際しては二つの力を峻別し、国際法と合致する自国の行動規範のみならず、他国の暴力主義への対抗をも十分に考慮すべきと思うのです。

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“パンダ外交”の危うさ-中国の強かな戦略か?

2017年12月19日 14時48分26秒 | 国際政治
シャンシャン「もっと見たい」=公開開始、遊び姿に歓声―ネットで映像配信も
本日、上野動物公園では、6月12日に誕生したジャイアントパンダの赤ちゃんシャンシャンが初公開となり、愛らしい姿をはじめて来園者の前に見せました。同動物公園では、パンダの赤ちゃん公開は29年ぶりともなるため、多くの報道陣も集まり、そのフィーバーぶりを全国に伝えております。

 パンダの赤ちゃんには罪はないのですが、中国を代表する希少動物であるパンダが、“パンダ外交”と称される中国の外交戦略の一環に位置付けられている事実を思い起こしますと、このパンダフィーバーには危うさも漂います。昨日のテレビ報道では、パンダの赤ちゃんの誕生を祝して、子供たちが歓迎の歌まで披露しておりました。「中国からやって来てくれてありがとう」という歌詞で…。また、上野動物公園では、パンダの赤ちゃんの一般公開に合わせて今月12日から全園を禁煙し、来園する子供たちの健康のためであれ、パンダに対する特別の配慮を見せております。こうしたパンダに対する特別待遇は、その貸与主である中国の存在を抜きにしては考えられません。NHKによる頻繁なパンダ報道も、中国に対する阿りとする指摘もあり、日本国内では、パンダについては、腫物にさわるような扱いとなっているのです。

 昨今、中国は、外国からの賓客の訪中に際して、接待の軽重によってその国に対する“格付け”や評価を表すとして注目を浴びています。超国賓待遇を受けたアメリカのトランプ大統領然り、冷遇を受けた韓国の文大統領然りです。中国的発想からすれば、日本国に対して、中国の象徴でもあるパンダに対して格別に丁重なる待遇を求め、圧力をかけてくることは当然に予測されます。つまり、“大人気のおパンダさま”の扱いを要求しているのかもしれないのです。上述したパンダ歓迎の歌は、習近平ソングとも似通っており、パンダフィーバーの‘煽り’には、共産主義のプロパガンダの手法まで用いられているようにも見えます。

 昨日は、中国の戦闘機が初めて対馬海峡を通過し、中国の軍事的脅威は日増しに高まっております。パンダ外交の裏に、日本国民が人民解放軍の進駐を熱烈歓迎して、“中国からやって来てくれてありがとう”という歌まで歌わせる思惑があるのかもしれず、油断は禁物です。かくもパンダの受け入れ国が神経をすり減らし、中国の外交戦略に組み込まれるぐらいならば、むしろ、パンダの受け入れは、最初から丁重にお断りした方がましであったかもしれないと思うのです。

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教育無償化よりも国民の誰もが政治家を志せる国を目指すべきでは?

2017年12月18日 16時08分20秒 | 日本政治
 先の衆議院選挙では、与野党ともに教育分野への重点的な予算配分を訴え、自民党も、幼児教育の無償化を消費税率10%上げによる増税分の使途変更とセットとする形で、公約の柱に据えておりました。

 その際、誰もが等しく教育を受けられ、子供たちが夢を叶えられる社会の実現を目指す、と説明されておりましたが、現状を見ますと、夢が叶えられない、即ち、一部の限られた人にしか道が開かれていない職業があります。そして、この閉鎖的な職業の最たる事例は、政治家なのではないでしょうか。

 国民が政治に参加する権利を有する民主主義国家では、選挙権と同様に、被選挙権もその一つとして憲法において国民の権利として保障されています。全ての国民には、選挙に立候補して政治家となる権利があるのですが、この権利が実現しているとは言い難いのが現状です。小学生等のアンケート調査でも、“将来なりたい職業”の上位にランクインすることはまずありません。

 その理由としては、第1に、政治家を輩出した一族は、公職であるはずの政治家職を身内で継承し易い有利な立場にある点が指摘されます。選挙区が地盤として半ば親族の間で“相続”されるのです。知名度の側面においても一般国民とはスタートラインが同じではなく、“家伝”による選挙ノウハウの伝授もあるでしょうから、有形・無形の“相続”の恩恵を受けることができます。党レベルでは、世襲制限が試みられつつも、一般の国民にとりましては、政治家とは遠い存在であり、日本国の国会議員には世襲議員が多いことは、しばしば指摘されるところです。

 第2に、立候補に際して要求される高額の供託金は、事実上の財産を基準とした制限選挙でもあります。世界トップクラスとされる供託金の設定は、日本国憲法が法の下の平等を定める第14条に抵触する可能性がありながら、日本国の政界には、この制限の撤廃に動こうとする気配は感じられません。

 また、第3の要因としては、中小政党の政治家に多く見られる傾向として、特定のイデオロギー団体や宗教団体等との組織的関係を指摘することができます。共産党が最たる事例ですが、学生時代から左翼活動家であったり、特定の教団の信者であった経歴を有する政治家は少なくありません。世襲ではないものの、その政治信条や世界観において一般国民とはかけ離れているため、こうした思想や宗教に共鳴できない一般国民には、政治家の世界は、近寄り難い“別世界”となるのです。

 そして、第4に挙げられる要因には、韓国系の民団や北朝鮮系の朝鮮総連など、資金力を有する外国系団体が、自らの政治的要求の実現のために、特定の政党や候補者を支援する現状があります。蓮舫議員の二重国籍問題は、日本国の国会議員における二重国籍者の占める比率の高さを露呈しましたが、帰化系議員の数も、人口比からしますと過代表です。今後は、中国系の議員も登場するとなれば、帰化系議員の比率は更に上昇することでしょう。しかも、中国大陸や朝鮮半島ではネポティズムが強く、日本人の一般議員は、政界から徐々に排除されてゆく可能性さえ否定はできません。

 かくして、国民の側も、職業選択の自由がありながら政治家と言う職を、自らの職業選択の選択肢から外してしまっております。これでは悪循環です。社会の木鐸であるはずのマスメディアも、一票の格差問題に対しては執拗にその平等の実現を書きたてますが、国家の独立性や民主主義の根幹にも直結する被選挙権の“格差”に関しては、だんまりを決め込んでおります。政治家は、常々、規制緩和を訴え、国民に対して“痛みを伴う改革”を強要しますが、自らに対しては、身を切る改革を回避しております。真に日本の国と国民を思うならば、自己改革に躊躇せず、国民に対しても、子供たちが政治家を志すよう範を示し、民主主義国家に相応しく、日本国民に対して皆で善き国を造ってゆくべく、呼びかけるべきではないでしょうか。

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日本国の在韓邦人退避活動への協力拒否-韓国政府は身勝手では?

2017年12月17日 15時16分05秒 | 国際政治
在韓邦人退避に陸自ヘリ 釜山−対馬ピストン輸送 北朝鮮有事を想定した政府計画
朝鮮戦争に際し、日本国内には、済州島等を経由して大量の避難民が密入国したとされております。戦時徴用で来日していた朝鮮半島出身者の大半が戦後に帰国したにもかかわらず、韓国・北朝鮮系の人々が多数日本国内に居住している理由の一つは、朝鮮戦争時の混乱に求めることができます。

 こうした過去の事例からしますと、仮に北朝鮮軍が38度線を越えて南下して地上戦となる、あるいは、ミサイル攻撃や砲撃を受ける場合には、韓国国民の難民化もあり得ないわけではありません。今般の有事に際しては、日本国もまた北朝鮮のミサイル攻撃の射程に入りますので必ずしも絶対に安全とは言えませんが、少なくない数の韓国人が、日本国への避難を試みるのも想定範囲に入ります。折も折、報道に拠りますと、対馬における増加し続ける韓国人による不動産購入の目的には、有事に際しての避難所の確保ではないかとする憶測もあるそうです。となりますと、戦端が開かれた途端に、対馬を目指して多数の韓国人渡航者、あるいは、避難者が押し寄せる事態もあり得る事態です。

 その一方で、有事における在韓邦人の退避策として、日本国政府は、航空自衛隊や海上自衛隊のみならず、陸上自衛隊のヘリコプターをも動員して釜山から対馬へとピストン輸送する計画を検討中と報じられております。ところが、韓国政府は、自衛隊による邦人保護活動に対して極めて非協力的であり、日本国政府が求める事前協議にも応じないため、受け入れ国の同意なき事態に直面する可能性もあるそうです。日本国政府は、有志連合による協議を模索しておりますが、韓国政府の頑なな態度は、身勝手とした言いようがありません。何故ならば、韓国政府の協力が得られなければ、非合法な手段を使ってでも韓国人避難民が対馬等に上陸する一方で、在韓邦人の多くは、危険が迫る朝鮮半島に取り残される可能性があるからです。

 日本国政府は、仮に北朝鮮軍が韓国民間人を虐殺するような場合には、人道上の立場から一時的には収容所などで韓国人避難民を保護するのでしょうが(戦後は帰還措置では…)、一方の韓国政府の態度は正反対です。有事に際しての軍隊を以って民間人を避難させるのは、国際社会において相互に認め合う自国民保護のための一般的な手段でもあります。にも拘わらず、韓国が協力を拒否しているとしますと、その理由として考えられるのは、度を越した反日感情による人道からの逸脱、戦後の朝鮮半島情勢を睨んだ日本国を含む諸外国の影響力の事前排除(外国軍隊の展開を阻止したい…)、あるいは、日米韓同盟を禁じた中国への配慮(自衛隊の上陸を許さない…)などが推測されます。

 朝鮮半島有事が現実味を帯びる中、韓国政府の自己中心、かつ、その挙動不審は、対北朝鮮の足並みを乱れさせるともに、有事に際しての信頼性にも疑問が付されます。在韓邦人退避措置への同意を促す上にも、日本国政府は、韓国政府に対して自国民の難民化を想定した対策を準備しているのか、否かを、問いただすと共に、予め、日本国としての基本方針や具体的措置を策定し、同政府に伝達しておくべきではないかと思うのです。

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敵軍の爆弾よりも友軍の窓枠を危険視する怪しい人々

2017年12月16日 16時09分28秒 | 国際政治
沖縄の米軍ヘリ窓落下、学校上空回避を要請へ 菅義偉官房長官
沖縄県の普天間基地に隣接する小学校のグランドに米軍ヘリコプターの窓枠が落下した事件は、連日のようにマスメディアで報じられ、日本国政府も対応に追われているようです。しかしながら、この騒ぎ、沖縄県民を含む日本国民に反米意識を引き起こすための、反米活動の一環なのではないでしょうか。

 常識的に考えますと、米軍の活動に伴う落下事件は機体の整備に関する問題であり、米軍でなくとも、こうした事件は何れの軍隊でもあり得ます。整備が不良であれば、自衛隊の軍用機でも起きる得る事件なのです。主因が整備不良であれば、その解決策とは、米軍の整備体制の厳格化であるはずです。また、落下リスクを完全に排除できないならば、小学校が隣接する普天間基地の辺野古への移設計画は、リスク軽減の意味からも、沖縄県民にとりましては望ましいはずなのです。(18日の報道に拠りますと、本事件の原因は、整備士ではなく、操縦士のミスなそうです。何れにしましても人為的ミスであり、米軍基地の有無の問題ではありません…)

 ところが、マスメディア等では、落下事件の原因は、米軍基地の存在そのものにあるかのような報道ぶりであり、現場を視察に訪れた翁長沖縄県知事も、「一番守ってあげなければならないのは子どもたちだ。子どもたちの生命や財産が脅かされている。…」と、怒りを露わにしております。しかしながら、こうした見方は、在日米軍こそが、沖縄県民の命や財産を守っている現実からしますと、あまりにも非常識と言うしかありません。“中国の夢”の実現に向けて、習政権では、尖閣諸島のみならず、沖縄までを領有する計画を有するとされていますが、仮に、人民解放軍が侵攻するような事態となれば、空から落ちてくるのは窓枠ではなく、より強力、かつ、殺傷・破壊力をも備えた爆弾です。その被害は、全住民の命や財産に及びかねないのです。窓枠の落下を怖れるばかりに、爆弾の落下リスクを高める言動をとる人々は、正気の沙汰とは思えません。

あるいは、親中派で知られる翁長知事のことですから、整備問題から人々の関心を逸らしつつ、同事件を基地反対運動と結びつけようとしてい る疑いもあります。朝鮮半島情勢の緊迫化を考えれば、整備不良の原因が、整備士による単なるミスや手抜きではない可能性も潜んでいるからです。ネット情報に依りますと、米軍のCH-53ヘリの整備は大韓航空が請け負っているそうです。過去の事故例からしますと同社の整備が信頼に足るとは言えないものの、北朝鮮等の工作員が整備員として潜入している恐れもあります。文政権の誕生に象徴されるように、韓国には、親北勢力が深く根を張っております。相手国軍隊の整備士を懐柔する、あるいは、整備部門に工作員を送り込み、機体を操縦不能としたり、故意に事故を起こさせる工作活動は、有事における一般的手段の一つでもあります。沖縄県の落下事件には、基地反対派による自作自演の事例もあり、親北・親中ルートを介して、大韓航空の整備士が何らかの工作活動に従事している可能性も否定はできないのです。

 翁長知事の発言やマスメディアの報道に惑わされることなく、沖縄県民の方々には、真の危険とは何かを見抜いていただきたいと思うのです。今般の国際情勢は、最早、無防備こそ平和への道とするユートピア的平和論を許さないのですから。

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北朝鮮には賠償の準備はあるのか?―報復暴発シナリオ

2017年12月15日 10時34分18秒 | 国際政治
【文在寅氏訪中】習近平氏と会談「半島の戦乱は絶対に許さない」トランプ政権の軍事行動に“ノー”
 北朝鮮問題については、12月14日に北京で会談した中韓首脳は、“朝鮮半島での戦争は絶対に容認できない”との見解で一致したと報じられております。

しかしながら、両国は、“北朝鮮の核保有は容認できない”とする立場も表明しており、この二つが両立しない場合、一体、どこに解を求めるのでしょうか。話し合いによる解決は、既に、隘路に陥っているとの見方もあり、アメリカは、軍事制裁による解決を視野に入れた圧力を継続しております。その際、予測される最大のリスクは、日本国や韓国といった周辺諸国に対する北朝鮮による‘破れかぶれ’の攻撃です。米軍の対北攻撃の時期は北朝鮮によるICBMの配備完了以前と想定されますので、報復の対象は、周辺諸国とならざるを得ないからです。となりますと、日本国は、甚大な被害を蒙る可能性が高く、Jアラートの整備や核シェルターの設置検討などは、日本国政府の危機感の表れとも理解されます。

 この暴発シナリオのリスクに関連して疑問に思うのは、北朝鮮には、被害国に対する賠償の準備はあるのか、ということです。ティラーソン米国務長官は、先日、対北無条件対話の提案に際して、北朝鮮の“投資”、即ち、核・ミサイル開発に投じてきた多額の投資に配慮する旨を示唆しておりましたが、北朝鮮から攻撃を受けた側の“投資損害”は北朝鮮の核・ミサイル開発投資の比ではありません(北朝鮮側は、相手国の”投資”など全く眼中にない…)。第一次世界大戦において、敗戦国であるドイツが天文学的な額の賠償請求を受けたのも、連合国側、特に西部戦線となったフランスの被害が甚大であったからです(例えば、ソンム等の国境の地帯の村落は廃墟と化した…)。対日核攻撃ともなれば、都市が丸ごと破壊されるわけですから、北朝鮮に対する日本国側の官民による賠償請求は、北朝鮮が、数百年かけても返済不能なほどの額に上るかもしれません。金正恩体制が崩壊したとしても、後継の北朝鮮政権は賠償責任を負いますし、韓国が同地域を吸収合併した場合にも、韓国の対北請求権が消滅しても、日本国は、朝鮮半島の統一政府に対して、賠償を請求する権利を保持することとなりましょう(因みに、第二次世界大戦では、日本国は、統治時代の35年に亘って朝鮮半島に財政支援(公的投資)を実施し、しかも、インフラや家屋等の破壊行為を行っていないにも拘わらず、戦後、韓国に対して一切の請求権を放棄すると共に、多額の経済支援をも支払っている…)。

 金正恩委員長による報復暴発は、将来に亘って北朝鮮に多大なる債務を残すこととなりますので、北朝鮮国民にとっても望ましいシナリオではないはずです。アメリカによる軍事制裁のタイムリミットが迫る中、北朝鮮は、将来的な負の遺産をも考慮し、即刻、白旗を上げるべきなのではないでしょうか。

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コメント (2)
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