万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

何故、北朝鮮はグアムを狙うのか?

2017年08月31日 14時59分43秒 | 国際政治
 8月29日に発射され、日本国上空を通過して太平洋上に落下した中距離弾道ミサイル「火星12号」について、北朝鮮の最高指導者とされる金正恩委員長は、「侵略の前哨基地であるグアム島を牽制するための意味深長な前奏曲だ」と述べたと伝わります。予告していたグアム周辺海域に向けた4発のミサイル発射は、一時は手控えたように見せながら、なおも、グアムに対する執着を示しています。

 それでは、何故、北朝鮮は、遠く大洋を隔たるグアム島を狙うのでしょうか。距離的に最も北朝鮮に近く、開発済みの弾道ミサイルでも射程内に入ることが最もあり得る理由なのですが、それだけではないように思えます。真に交戦状態を覚悟しているのであれば、命中率は低いとはいえ、言葉だけでもアラスカを標的に据えた方が対米脅迫効果は高いはずですし、距離からすれば“前哨基地”は、日本国や韓国の米軍基地であるはずです。グアム攻撃予告は、戦略としては、どこか中途半端なのです。

 グアム島には米軍基地が設けられており、民主党政権時代の米軍再編計画では、沖縄駐留米軍海兵隊の一部もグアム島への移転が予定されていました。トランプ政権誕生後もこの計画は維持されており、今年4月におけるハリス米太平洋軍司令官の公聴会での発言に因れば、移転の時期は、2024年から2028年頃となるそうです。何れにしても、米軍の拠点としての戦略的重要性を増しており、地政学的には太平洋東部海域を睨み、南シナ海にも面する要衝と言っても過言ではありません。

 グアム島の戦略的価値が高いとしますと、これを脅威として感じる国があるとすれば、それは、北朝鮮ではなく、太平洋への進出を虎視眈々と狙っている中国です。グアム島こそ、フィリピンを手懐けた中国にとりましては太平洋上の米軍の“前哨基地”であり、海洋覇権を阻む邪魔な存在なのです。案の定、グアム島では、北朝鮮からの核ミサイル発射実験の表明を受けて、アメリカからの独立運動も起きているそうです。米領であるからグアム島が北朝鮮から狙われる、として…。

 沖縄県でも観察されているように、米軍基地のお膝元では、中国等の工作員の活動により、組織的な独立運動が仕組まれています。この一件が火付け役となって、グアム島において独立運動が活発化するとしますと、北朝鮮の背後には中国があり、北朝鮮は、中国の戦略的目的のため、あるいは、中国からの指令を受けて敢えてグアム島を攻撃の標的にした可能性も否定はできないのではないでしょうか。

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反理性的行動こそ“北朝鮮”の戦略では?

2017年08月30日 16時16分23秒 | 国際政治
金正恩氏「日本人驚がくさせる」=火星12「成功」、米グアムへの前奏曲―北朝鮮
 今般の北朝鮮によるミサイル発射は、北朝鮮側の主観的な立場に立てば、アメリカ、並びに、同盟国である日本国に対する武力による威嚇であり、朝鮮戦争の延長線上にあります。いわば、“北朝鮮の戦争”なのですが、この“戦争”には、常識では理解しがたい幾つかの奇妙な点があります。

 主たる奇妙な点の一つは、北朝鮮の戦争目的です。1950年6月25日に始まる朝鮮戦争の目的は、韓国を武力によって併合し、“赤化統一”することにありました(民族統一戦争)。北朝鮮では、韓国側による侵略を発端と教えているそうですが、38度線を越えたのは北朝鮮側であり、朝鮮戦争は、自らが始めた戦争です。一方、国際社会では、北朝鮮の侵攻を侵略と見なします。‘国連軍’が結成されたのも、北朝鮮の行動を、武力で一方的に現状を変更する侵略と認定したからに他なりません(もっとも、国連安保理ではソ連欠席によって‘国連軍’の結成が可決された…)。

 朝鮮戦争の延長であれば、今般の軍事的威嚇の目的も“赤化統一(今日では金独裁体制の韓国への拡大…)”となるはずなのですが、北朝鮮は、アメリカに対して平和条約の締結を求めております。つまり、今般の“戦争”では、その目的は平和条約の締結に変化しているのです。平和条約が締結されるとなれば、当然に領土に関する条項が含まれますので、38度線を以って南北の国境が画定されることが予測され、事実上、“赤化統一”は断念されます。あるいは、平和条約において、韓国を含む朝鮮半島全域の北朝鮮による併合を求める可能性もありますが、この要求が非現実的であることは、北朝鮮側も百も承知なはずです。

 仮に、北朝鮮が、ある時点で、所期の目的であった“赤化統一”を諦め、平和条約の締結を以って北朝鮮の国家承認と領土画定を求める方向に路線を変更したならば、アメリカに対して積極的に攻撃を仕掛ける必要性もなくなるはずです。休戦協定を誠実に守っている限り現状は維持されますし、韓国に対する“領土要求”が放棄されれば、アメリカも、積極的に戦う理由を失うからです。しかも、公式には、平和条約の締結を求めるべき相手はアメリカ一国ではなく‘国連軍’であるはずです。朝鮮戦争の交戦勢力は‘国連軍’であり、朝鮮戦争の休戦協定でも、アメリカは、‘国連軍’の代表として署名しています。にも拘らず、何故か北朝鮮は、交戦相手であった‘国連軍’の存在を無視し、主要敵国をアメリカに定め、アメリカとその同盟国に絞った対米戦争を仕掛けているのです。

 こうした北朝鮮の態度は、極めて奇妙です。となりますと、今般の北朝鮮の“アメリカ敵国政策”には、別の目的があったとも推測されます。北朝鮮は、アメリカからの自衛を口実に、核やミサイル開発を正当化してきました。言い換えますと、“敵国”を国連からアメリカに巧妙にすり替えることで、国際法で禁じられている大量破壊兵器の保持・開発を正当化するとともに、小国でありながら、予測不能な無鉄砲な挑発を繰り返すことでアメリカや国際社会を揺さぶってきたとも言えます。北朝鮮の背後には、同国を資金、技術、人材等の面で支える“黒幕”が存在する可能性が高いのも、その目的と行動が一致していないからです。そして、永続的な軍事的緊張状態は、国内にあっては国民の危機感を煽り、団結を強制することで、金王朝とも称される軍事独裁体制の維持に悪用されているのです。

 北朝鮮の反理性的、かつ、非論理的な行動は、実のところ、国際法秩序の破壊をも目論んだ、計算し尽くされた戦略であるのかもしれません。そして、この策略は、北朝鮮による単独のものではないように思えます。北朝鮮問題を解決に導くには、背後に潜む闇こそ、見据えなければならないのではないでしょうか。

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北朝鮮の奇襲ミサイル発射問題-注目される緊急安保理での中ロの出方

2017年08月29日 16時38分55秒 | 国際政治
北朝鮮ミサイル 日米両国の連携けん制する狙いも
 本日早朝、グアム沖へのミサイル発射を予告していた北朝鮮は、突如、日本海方面に向けてミサイルを発射し、東北地方の上空を越えて襟裳岬東の太平洋上に落下したと報じられております。通告なしのミサイル発射ですので、事態は深刻です。

 従来のミサイル発射実験では、日本列島を越えることはあっても、通信衛星の打ち上げといった名目で実施されており(2016年2月の実験では地球観測衛星“光明星4号”)、一先ずは、日本国政府への通告もありました。ところが、今般の発射では事前通告はなく、いわば、“奇襲”として行われたのです。それでは、このミサイル発射、国際社会においてどのような意味を持つのでしょうか。この問題は、政治問題なのか、法律問題なのか、という些か固い議論にもなりますが、本件の行為の意味付けは、国際社会における北朝鮮に対する措置にも大きく影響します。

 今般の実験では、ミサイルに核兵器を搭載しておらず、この点からしますと、NPT等の核兵器に関する条約違反とは言い難い側面がありつつも、国連憲章では、加盟国に対して紛争の平和的な解決を義務付けていますし、北朝鮮の行為が、核・弾道ミサイル開発の中止を求めてきた2006年以降の国連安保理決議に違反することは確かです。国際社会としては、北朝鮮を“犯罪国家”として位置付け、国際社会の“警察活動”として対応することができます。国連における常任理事国の役割は、国際社会の“保安官”ですので、本来であれば、ロシアも中国も“警察活動”を担う義務を負っており、国連の枠組、あるいは、米国単独の武力制裁、もしくは、石油禁輸まで含む対北経済制裁の徹底を支持する立場にあります。

 その一方で、北朝鮮は、この問題を政治問題と見なしています。忘れられがちですが、2013年3月11日に、北朝鮮は朝鮮戦争の休戦協定を宣言しており、同国の主観に基づけば、既に米軍とは戦争状態にあります(米国の同盟国である日本国も仮想敵国…)。この立場に立てば、今般のミサイル発射も同国の戦闘行為の一環であり、“戦争状態”にありながら“戦闘状態”に至っていない状況となります。この状況は、1939年9月にナチスがポーランドに侵攻し、英仏も対独宣戦布告をしながら、凡そ8か月にわたって戦闘らしい戦闘がなかった第二次世界大戦の事例と類似しています。戦争初期の無戦闘状態は、当時、“奇妙な戦争”、“いかさま戦争”、あるいは、“まやかし戦争”と称されましたが、政治問題であるとしますと、アメリカが応戦を決意すれば、即、戦闘の火蓋が切って落とされることとなります。

 後者の場合には、中国とロシアの対応は前者とは違ってきます。両国が北朝鮮を背後から支えてきた“黒幕国”であることは疑い得ないことですが、この問題の複雑さは、朝鮮戦争が、国連対北朝鮮・中国・ソ連の対立構図で戦われたところにあります。“国連軍”とは、実質的には米軍であり(並びに、韓国軍・イギリス軍)、朝鮮戦争の休戦協定も、国連軍を代表する米軍、並びに、朝鮮人民軍並びに中国人民志願軍のトップの間で署名されているのです。言い換えますと、この問題を政治問題として扱うと、中国とロシア、特に人民志願軍を朝鮮半島に派兵し、休戦協定に名を連ねた中国は、戦争の当事国とならざるを得ないのです。因みに、1961年に締結されたソ朝友好協力相互援助条約と中朝友好協力相互援助条約は、前者はソ連邦崩壊、並びに、冷戦終結後の1996年に破棄されていますが(2002年2月に締結されたロ朝友好善隣協力条約では軍事同盟条項を含まない…)、後者は2001年に更新され、参戦条項に基づいて武力攻撃を受けた場合には発動されます(もっとも、北朝鮮側がアメリカに対して攻撃を仕掛けた場合には、中国は、参戦を見送る方針らしい…)。

 今般の発射を受けて、日本国政府は、国連に対して緊急の安保理会合の開催を求めています。そして、ここで注目されるのは、同安保理における中国とロシアの出方です。果たして、両国は、上述した二つ内、どちらの立場において振る舞うのでしょうか。前者を選択すれば、陰に隠れて推進してきた北朝鮮支援政策を諦めねばならず、後者を選択すれば、アメリカとの直接対峙を覚悟しなければなりませんし、常任理事国でありながら“国連の敵”という矛盾した立場にも立たされます(中国の常任理事国入りは1971年のアルバニア決議による…)。開催が予定されている緊急安保理は、中国、並びに、ロシアの旗幟の如何が鮮明になると云う意味において、北朝鮮問題の一つの山場となるのではないかと思うのです。

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オバマ前政権が北朝鮮核保有容認路線であった疑い

2017年08月28日 16時02分51秒 | 国際政治
北朝鮮発射は「挑発」=「平和的圧力」継続―米国務長官
 アメリカのオバマ前大統領と言えば、“核なき世界”に向けて積極的に取り組む姿勢が評価され、2009年には、ノーベル平和賞も受賞したことで知られています。米ロ間では、戦略核弾道の削減を約する新戦略兵器削減条約を締結するといった成果を上げましたが、北朝鮮の核開発問題については、同国の保有を容認する路線にあった疑いが拭い去れないのです。

 核兵器の拡散は、特に、無法国家への拡散は、核保有国の核兵器削減にも増して国際社会にとりまして重大な脅威です。オバマ大統領は、“核なき世界”を政策目標として掲げた以上、そのスタンスから言いまして、あらゆる手段を講じてこれを阻止すべき立場にありました。しかしながら、同政権は、“戦略的忍耐”という“もっともらしい”政策方針を打ち出し、武力行使のオプションを仕舞い込むと共に、北朝鮮を刺激するとして制裁の強化にも消極的な態度を取り続けたのです。あくまでも、“話し合い路線”を堅持したのですが、同政権で国家安全保障担当補佐官を務めたスーザン・ライス氏の発言を聞きますと、最初から、核を放棄させる意思がなかったとしか言いようがないのです。

 ニューヨーク・タイムズ紙への寄稿として示されたライス氏の同問題に対する基本的見解とは、北朝鮮の核保有がもたらすアメリカに対する脅威は中ロといった核保有国と同じであり、核の抑止力によって十分に対応できる、つまり、北朝鮮の核保有を容認するというものです。武力行使も辞さないトランプ政権に対する批判が込められているのでしょうが、安全保障担当の大統領補佐官であったのですから、事態の緊迫化を受け、今に至って突然に思いついた見解とも思えません。同職にあった時から、政権内では“戦略的忍耐”の結果は予測済みであり、北朝鮮の核保有は想定内であったと推測せざるを得ないのです。

 となりますと、“核なき世界”の表看板とは裏腹に、オバマ政権こそ、否、“戦略的忍耐”という美名の下で北朝鮮の核開発を放任した点において、核の拡散を容認、否、間接的には促進したこととなります。ライス元大統領補佐官の発言は、図らずも、オバマ大統領の偽善を暴いたとも言え、同大統領が被爆地である広島を訪問した現職の米大統領であっただけに、日本国内でも失望が広がることでしょう。北朝鮮の核保有容認が民主党政権下の既定路線であることが分かっていれば、日本国政府にも、淡い期待を抱くこともなく、ミサイル防衛システムの拡充や対北独自制裁の強化、さらには、NPT体制の崩壊を見越した核武装の検討といった相応の準備ができたはずです(北朝鮮には核保有を認める一方で、日本国にだけは、”核なき世界”への協力、即ち、非核保有国であり続けることを厳しく求めていた?)。

 マスメディアでは、トランプ大統領によるバノン主席戦略官等の更迭を受けて、民主党政権時代の“戦略的忍耐”路線への回帰こそ対北政策の“正常化”とする論調も見受けられますが(もっとも、バノン氏更迭の原因は、北朝鮮に対する武力行使の否定にある…)、この路線を是とするならば、マスメディアを含めたリベラル派は、偽善に満ちた“核なき世界”の看板も下げるべきです。そして、今後、トランプ大統領が如何なる決断を下すのか、今の時点では分かりませんが、同盟国に対しては、国家と国民の運命がかかっているのですから、正直であっていただきたいと思うのです。
 
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経済特区の怪しさ-主権放棄を意味するのか?

2017年08月27日 15時45分52秒 | 国際政治
北方領土においてロシア側が経済特区を設置した一件は、経済特区とは何か、という国際社会で考えねばならない新たな問題をも提起しているように思えます。何故ならば、ロシアによって経済特区が設置されれば、日ロ間での懸案となってきた主権問題が解消され、好都合であるとする期待論があるからです。

 プーチン大統領の訪日に際して日ロ間で合意された共同開発案では、両国の何れが行政管轄権(主権)を及ぼすのか不明であるため、仮に、ロシアが徴税権を行使した場合には、日本国が、北方領土の主権がロシア側にあることを暗に認めたことになりかねない、というリスクが指摘されてきました。しかしながら、外務省幹部のものと報じられている上述の期待論では、経済特区の設置と同時にロシアが徴税権を‘放棄’し、いわば、北方領土の“無国籍化”を予測しているのです。

 もっとも、徴税権は、主権を構成する主要な国家の権限とされてはいますが、防衛や安全保障に関する政治的権限や司法・警察等の権限が残されている以上、日ロ間の主権問題が解消するとは言い難く、また、ロシア側が放棄したとしても、即、日本国側に主権が戻るわけでもありません(素朴な疑問としては、徴税権が放棄されるとすれば、同地域の財政はどうなるのでしょう…)。領土問題という性質に鑑みれば、国境画定を含む平和条約の締結は必要不可欠です。こうした点を考慮しますと、期待論は無理筋なようにも思えますが、議論の本筋とは別にここで認識すべきは、“徴税権の放棄”という言葉が、特区の設定と結びついて、何の躊躇もなくするりと出てきていることです。このことは、国際社会の一部においては、経済特区の設定が主権的権限の放棄を伴うとする共通認識が成立していることを示唆しております。

 全世界を眺めて見ますと、日本国を含め、各国とも、先を争うかのように外国人を特別に優遇すると共に、一般の国内レベルよりも規制を大幅に緩和した経済特区の設置を急いでいます。各国が揃って同じ政策を採用するとなりますと、背後にこの政策を推進している国際的な組織が存在していると推測せざるを得ません。そして特区の設置が、国家の主権の及ばない、あるいは、制限されている特定地域の設置を意味するとしますと、今日の特区は、全世界に貿易拠点となる海外領土、租界や租借地を設けて、それらをネットワークで結んだ植民地時代の経済戦略と極めて似通っているように思えるのです。現代のネットワークの形成は、特定の国ではなく、国際経済組織が進めているのでしょうが、国家の側からしますと、自国の法域が侵食されると共に、自国であっても自国ではない一部地域が出現することとなります。

 国民の多くは、経済特区が意味するところについて、政府から正直な説明を受けていません。イギリスのロンドンなどを見ますと、既にイギリスという国の首都というよりも、国際経済組織の拠点の観があります。政府が、国内向けの経済政策の一環として経済特区の設置を国民に説明しながら、その実は、国外向けに、一部であれ主権的権限を放棄し、自国を勝手に国際経済組織の利益のために開放しているとなりますと、この行為は、重大なる国民に対する背任行為となりかねないのではないでしょうか。

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経済優先の誤算-日本国政府の対ロ・対中政策

2017年08月26日 15時59分42秒 | 日本政治
政府、ロシアの北方領土経済特区に懸念を伝達 「共同経済活動に悪影響」
 今月23日に、メドベージェフ首相が北方領土に経済特区を設置する決定に署名したことから、日本国政府は、ロシア側の動きに神経を尖らせております。昨年12月のプーチン大統領訪日に際して合意した共同経済活動に水を差しかねないからです。

 日ロ両国が8項目の経済協力について合意した際に、日本国政府は、領土問題の解決が置き去りにされるとする懸念の声がありながら、経済優先の立場から、北方領土の共同開発に踏み出しています。国民に対しては、経済分野における協力を先行させ、相互に信頼を醸成させれば、やがて領土問題の解決、即ち、平和条約締結交渉も円滑に進むとする楽観的な見方を示していました。これまでの発想にとらわれない“新しいアプローチ”として自画自賛しておりましたが、相手がロシアとなりますと、経済優先の方針は、逆効果となりかねないように思えます。

 何故ならば、経済優先は、あくまでも日本側の方針であり、相手国であるロシアの方針はと言えば、日本国とは逆の政治優先であるからです。両国の間には、基本方針において齟齬があり、上述した平和条約締結に至る見通しも、日本側の一方的な思い込みに過ぎません。日本国政府は、今般のロシア側による経済特区の設置に寝耳に水とばかりに驚いているようですが、政治優先の立場にあるロシアからしますと、自らに有利な条件で日本国と平和条約を締結することこそ優先すべき政治的目的なのですから、日本国との経済協力の合意は、むしろ、日本側に不利な条件を呑ませるために利用すべきカードを手にしたに過ぎないのです。言い換えますと、経済優先の方針に基づいて前のめりになる日本国政府の姿は、対日圧力となる政治的カードが欲しいロシアにとりましては、“ねぎをしょってやってくる鴨”に見えることでしょう。

 経済優先の方針が、政治分野においては、むしろ自国にとって不利な状況を齎す事例は、対ロシアのみではありません。中国に関しても、日本国政府の同方針は、共産党一党独裁体制国家の軍事大国化を助長し、技術流出に伴う軍事技術の向上も相まって、中国の脅威を増大化させております。日本国政府は、経済優先の方針には誤算、並びに、逆効果があることを認識し、安全保障を優先した方針に切り替えるべきなのではないでしょうか。

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黒幕の表舞台登場で変わる北朝鮮問題への対応

2017年08月25日 15時52分23秒 | 国際政治
ロシア戦略爆撃機、朝鮮半島周辺を飛行 日韓機が緊急発進
 先日の米韓合同軍事演習の実施、並びに、ハリス米太平洋軍司令官やハイテン戦略軍司令官等の米軍幹部の訪韓に対して、北朝鮮の「北侵核戦争演習反対全民族非常対策委員会」なる団体は、早速、“超強硬措置”なる激烈な表現で威嚇したようです。最貧国でありながら、北朝鮮が、“超大国”とも称されるアメリカに対して強気の姿勢を崩さない背景には、“黒幕説”が指摘されております。

 核兵器にせよ、ICBMやSLBMせよ、今日、国際社会を脅かしている北朝鮮の軍事力は、同国独自で開発したものではなく、他国からの技術支援、あるいは、技術流出の結果であることは明白です。技術の流出元については、先日、ウクライナICBM技術説が浮上しましたが、アメリカ政府は否定的な見解を示しており、“黒幕”の最有力候補は、何と言ってもロシアと中国です。両国とも揃って合同軍事演習を批判し、北朝鮮問題については“話し合い解決”を提唱しています。両国間に違いがあるとすれば、中国が、少なくとも表面的には対米関係に配慮し、対北制裁に協力する“素振り”を見せる一方で(元瀋陽軍問題も絡む…)、ロシアは、公然と北朝鮮との経済関係の強化を図っているぐらいです。本日も、軍事的牽制を狙ってか、ロシアの爆撃機が朝鮮半島周辺空域を飛行したとする報道もありました。

 軍事的な“超大国”が二国も後ろ盾であれば、北朝鮮の国力に見合わない強気も理解に難くありません(あるいは、両国の背後に、さらに中ロ北を操る黒幕が隠れている可能性も…)。と同時に、中ロに対して北朝鮮の核・ミサイル開発放棄への協力を求めても、技術流出の“真犯人”が両国の何れか、あるいは、両国共々である以上、もはや無駄ということになります。

 黒幕の存在が確かであるとしますと、今後、慎重に見極めるべきは、これらの黒幕が北朝鮮の政策決定に与えている影響の程度です。北朝鮮は、最高指導者に全ての決定権が集中している金正恩独裁体制のイメージがありますが、独裁体制=強固な国家の独立性ではありません。否、外部から特定の国を確実にコントロールするには、独裁の方が適してさえいます。たった一人を操ればよいのですから。中ロとも手に負えない“暴れん坊”は演技に過ぎず、この演技指導は、黒幕が行っている可能性もあるのです(所謂“鉄砲玉”の役割…)。

 最近の北朝鮮に関する報道の流れも、ウクライナ説が俄かに関心を集めたように、“黒幕は誰か”に焦点が移りつつあるようにも見えます。そして、北朝鮮問題に対する対応や政策効果も、黒幕が表舞台に登場するか、否かによって変化する可能性もあります。否、むしろ、黒幕を積極的に表舞台に引き出し、北朝鮮の政策決定の関する責任を明確にする方が、問題解決には望ましいかもしれません。従来のアプローチでは、偽善や建前に振り回され、結局は、北朝鮮にとって有利な状況に誘導されてきたのですから。

 黒幕国による国際法や国連安保理決議違反となる技術移転が表沙汰となれば、黒幕国は国際的な批判や制裁の対象となることは免れることはできず、仮に、中ロが黒幕国であるのならば、両国は、もはや北朝鮮を支援することは極めて困難となります。こうして黒幕国の軍事介入を封じた上での圧力であれば、後ろ盾を失った北朝鮮は、核・ミサイル開発を断念せざるを得なくなりましょうし、たとえアメリカが軍事制裁を北朝鮮に課したとしても、被害は最小限に留めることができます。もっとも、支援がばれて開き直った黒幕国が対北支援を停止しない場合には、最終的には、米国陣営対中ロ陣営の対立構図に発展することも予測されます。

 今般の様子を窺っていますと、後者の方の可能性が高く、日本国政府も、これまで経済を優先させてきた中ロ関係を抜本的に見直す必要に迫られるのではないかと思うのです。

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イスラムテロの源流-古代の“戦争恍惚師”

2017年08月24日 13時56分19秒 | 国際政治
スペインテロ、初動捜査に批判 事前察知の可能性指摘
 ヨーロッパ諸国ではイスラム過激派によるテロ事件が相次ぎ、先日、スペインのバルセロナで起きた自動車暴走事件でも、罪なき100名以上の人々が死傷する痛ましい惨事となりました。何故、イスラム教徒は無差別殺人という、かくも残酷な行動がとれるのか、これまで理解に苦しんできましたが、“戦争恍惚師”という聞き慣れない言葉を目にした時、この謎が一気に氷解したのです。

 “戦争恍惚師”という用語は、マックス・ヴェーバーが著した『古代ユダヤ教』(1920年初版)という書物に登場してきます(ホロコースト以前の時代の方が、ユダヤ人やユダヤ教に関する研究は比較的自由であった…)。その存在は、古代ユダヤ社会のみならず、汎人類的に散見されるようなのですが、“戦争恍惚師”の“仕事”とは、戦場にあって神憑り的な能力で自軍兵士の恐怖心を吹き払い、兵士達を恍惚状態へと導くことにあります(破壊神的…)。集団エクスタシスに陥り、我を忘れた兵士達は、狂犬の如くに荒れ狂い、手段を選ばずに敵兵を虐殺し得たのです。ヴェーバーは、旧約聖書の『サムエル記』に登場するイスラエル王国の最初の王、サウルをその典型例としていますが、サウルと並んで挙げているのが、イスラム教の始祖であるかのマホメットの名なのです。

 ヴェーバーが指摘するように、マホメットの基本的な役割が“戦争恍惚師”であったとしますと、イスラム教徒が、剣を以って西はイベリア半島まで破竹の勢いで版図を広げ、広大なるイスラム帝国を建設し得た理由も分かります。また、イスラム教が信者に麻薬の摂取を許し、実際に暗殺等に際して服用させた理由も、恍惚状態を現出させる作用を期待してのことであったのかもしれません。理性の解除こそイスラムの“強み”であるとしますと、マホメットが“戦争恍惚師”として兵士達にかけた魔力は、イスラム教が膨大な数の信者を擁し、世界三大宗教の一角をなしている今日に至るまで、連綿と維持されていると考えられるのです。

 イスラム教の聖典である『コーラン』では、異教徒に対する攻撃や殺害を容認しておりますが、それだけでは説明のつかないテロリスト達の狂気は、マホメットの“戦争恍惚師”としての性質を以ってはじめて理解の範疇に入ってきます。それは、イスラム教が今日の国際秩序・国際平和に対して脅威をもたらしている真の理由、すなわち、イスラム教が内包している本質的問題が明らかになることでもあり、イスラム教は、その生みの親であるマホメットに遡って自らの内にある反理性的な狂暴性に向き合う必要がありましょう。

 そして、この“戦争恍惚師”が『旧約聖書』にあっては職業的預言者集団とも関わり、かつ、人類社会に普遍的に見られる現象でもあることは、イスラム教に限らず、反理性主義の台頭という世界史の裏側を理解する上でも役立つように思えます。アドルフ・ヒトラーも、20世紀に突如として出現した“戦争恍惚師”の一人であったかもしれませんし、“狂人”とも称される北朝鮮の指導者も、今日にあって、その役割を演じているのかもしれないのですから。

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中国企業の日本上陸ラッシュの行方-懸念される二重構造化と中国支配

2017年08月23日 14時15分14秒 | 国際経済
 一昔前の“グローバル化”のイメージとは、全世界が一つの市場に統合され、“無国籍化”した巨大グローバル企業群が自由自在にビジネスを展開する開かれた市場、というものでした。この状態も果たして“理想”と言えるかどうかは疑問なところですが、現実は、このイメージとは違った問題を突き付けております。

 昨今の報道によりますと、最近、中国系企業の日本進出が目立ってきており、8月21日付の日経新聞には、“「紅い経済圏」日本へ”と題して中国企業が続々と日本市場でビジネスを開始する様を伝え、“上陸ラッシュ”と表現しています。スマホ決済の「アリババ集団」、民泊サイトの「途家」、自動車シェアの「摩拜単車」、旅行サイトの「携程旅行網」、通信機器の「華為技術」など、特にアメリカ発のプラットフォーム型の新ビジネスの分野を中心に日本市場への進出が相次いでいるのです。プラットフォーム型の新ビジネスは、“早い者勝ち”の面もあり(最初にネットワークを構築した企業が有利となる…)、商機を掴む中国企業の素早さには驚かされますが、日本国における“グローバル化”の行く末は、日本経済圏に中華経済圏がかぶさってくる二重構造化であるかもしれず、このリスクは、在日中国人や中国人観光客の増加を考慮しますと、上記の“グローバル化”よりも特定の外国による自国の経済支配という面において深刻です。

 グローバル市場の理想像では、特定の国が同市場において支配的な地位を占める状態を想定していません。企業は“無国籍化”されており、国境措置や規制も完全に撤廃されているため、政府の姿も殆ど見えません。ところが、今日、グローバル化の旗手を自認する中国は、この理想とは全く反対に、企業を政府のコントロールの下に置き(定款の変更による企業内共産党組織の設置…)、国境の壁や規制を高めています。グローバリズムを利用して他国の市場は開放させて、自国の企業を海外に進出させる一方で、自国市場については閉鎖性を高めるという手法は、まさに善性悪用戦略の経済版とも言えます(行き過ぎたグローバリズムは善性とは言えないまでも…)。

 このまま、中国企業による日本進出の増加が続けば、今や在日外国人数において最大となった在日中国人、訪日中国人観光客、並びに、帰化した中国系日本人は、中国企業の固定的な顧客となりましょう。日本国内にありながら、中国系の人々は、いわば中国経済圏の中で生きることになるのです。ここに、日本経済と中国経済との二重構造が出現するのですが、さらにその先には、日本経済が中国経済に飲み込まれる可能性も否定はできません。中国系の人々は縁故、即ち、ネポティズムが強いことでも知られていますが、日本企業に就職したこれらの人々は、中国系企業との取引を社内にあって後押しすると共に、華人ネットワークを駆使して中国経済圏の拡大に努めることでしょう。特に、人事権を握られますと、一般の日本人が排斥され、日本国籍の企業とはいえ、社風や経営方針が中国式に一変するかもしれません。東南アジア諸国でも、華人による経済の支配という同様の問題に苦しんでいることに示されますように、共産主義国家のイメージとは違い、本来、中国の人々は商才に長けております。拝金主義的な精神文化はお札を燃やす道教の葬礼の慣習にも見られる通りであり、日本国もまた、中華経済圏に飲み込まれる可能性があると言えるでしょう。

 今日、日本国は、グローバリズムの理想と現実の乖離に直面しております。日本経済が中華経済圏に飲み込まれる未来を、日本国民が望んでいるとは思えないのです。

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憲法第9条に書くべきは無法国家への対応-第9条改正案

2017年08月22日 14時44分11秒 | 日本政治
 憲法改正問題については、安倍首相は、現条文を維持したまま第3項を書き加える加憲の立場にあるそうです。公明党への配慮とも推測されますが、憲法に書くべきは、無法国家への対応ではないかと思うのです。

 国と国民の安全をまもることこそ、国家の基本的な役割の一つであることには、凡そ異論はないはずです。安全の実現とは、他のあらゆる分野と同様にリスクの徹底管理なくしてあり得ず、リスク管理に不備のある憲法は、“欠陥憲法”と批判されても致し方ありません。何故ならば、第9条の第1項も第2項も、日本国政府の行動規範を定めているに過ぎないからです。

 この点に関連して、第9条の改正案として、第2項のみを削除すべしとの案があります。これは、第1項さえあれば、およそ、侵略戦争を禁じる現在の国際法で定める国家の行動規範と一致するからです。ドイツやイタリアをはじめ、侵略戦争を放棄する旨を憲法に明記する諸国は多く、戦後の国際社会の一般的傾向ではあります。日本国憲法の第9条1項も部分も、最低限、(1)侵略のための戦争はしない、(2)武力を自国の意向を他国に押し付けるための威嚇手段としては用いない、(3)国際紛争に際しては平和的解決を最優先とする、(4)国際法を遵守する…といった内容を明記すれば、国連憲章にも謳われている国家のポジティヴな行動規範の基本項目は押さえたこととなり、国際法と国内法がきれいな形で整合されます。

 しかしながら、問題は、必ずしも全ての国が、国際法に定められた行動規範を遵守するわけではないところにあります。現行の第9条2項は、軍隊の不保持と国の交戦権の否定を記したため、神学論争的な解釈論で国政が混乱する原因となってきましたが、それもそのはず、書くべき内容がそもそも逆であるからです。本来、第2項に記すべきは、他国が国際的な行動規範を破る、あるいは、無法国家と化した場合の対応です。国内レベルでも、刑法において行動規範が示されただけでは、治安を維持することはできません。犯罪者が出現するリスクを想定した警察法が制定されて、初めて良好な治安が実現するのです。

 国際レベルでも同様であり、中国が南シナ海の仲裁裁定を破り捨て、北朝鮮が核やミサイルで他国を威嚇しているように、国際問題、外交関係を武力で解決しようとする無法国家が現実に存在しています。現行の日本国憲法は、犯罪者が現実に人々に被害を与えているにも拘わらず、警察権力を放棄し、警察組織も持ってはならないと定めているようなものであり、人間の理性に反するといってもよいぐらいに非常識であり、不合理なのです。

 このように考えますと、第2項の削除案は、逆方向を向いている現行の日本国憲法を正常化する意味においては首肯し得る意見です。それでは、第1項のみ残す場合には、どのような対応が可能となるのか、と申しますと、確かに、憲法に書かれていない以上、武力行使をも含めて無制限、かつ、無条件に如何なる手段も許されます。ただし、これまでの神学論争に終止符を打つ、あるいは、防御面においても国際法との整合性を求めるならば、国連憲章第51条で全ての加盟国に認めている個別的、及び、集団的自衛権の行使の合憲性を明記すると共に、国連等の国際的枠組みにおける侵略国家、あるいは、無法国家への軍事的制裁活動への参加、即ち、“国際警察活動”への軍隊の参加を認める条文を設けた方が、第9条改正に対する国民の賛意を得られるかもしれません。

 日本国が未来に向けて実現を目指すのは、国際社会おける法の支配の確立であり、日本国と日本国民の安全、そして、人類の永遠平和は、この原則なくしてあり得ません。憲法第9条の改正もこの観点から進めるべきであり、第3項の加憲方式よりも、第1項と第2項の改正の方が適切なように思えます。国際法との整合性を保つ形で第1項には自国の行動規範を、第2項には他国の行動に対するリスク管理を割り当てることによって、日本国は、自国の防衛と安全保障をより確かにすると共に、より善き国際秩序の構築にも貢献すべきなのではないでしょうか。

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“ユダヤ人”はユダヤ至上主義を捨てたのか?

2017年08月21日 15時24分56秒 | アメリカ
「人種差別は米国にいらない」4万人デモ
 アメリカでは、シャーロッツビルでの衝突を切っ掛けとして、白人至上主義者に対する抗議活動が活発化しており、マサチューセッツ州のボストンでは、“人種差別は米国にいらない”として4万人規模のデモも発生したそうです。この件に関しては、同様の排斥表現が散見され、“白人至上主義者はアメリカから出ていけ”の声も聞かれます。

 しかしながら、冷静になって考えても見ますと、“○○至上主義者を排斥せよ”という態度は、相当に危うい表現ではないかと思うのです。何故ならば、この原則を一律に当てはめれば、ユダヤ人排斥もイスラム教徒排斥も是認されるからです。しばしばナチスドイツによるユダヤ人排斥は絶対悪として批判されていますが、仮に、○○至上主義という思想を持つ者が排斥の対象となることが許されるならば、ユダヤ人も例外ではありません。ユダヤ人こそ、神から選ばれた民という選民思想の下で、全人類の支配を目指してきたからです。ドイツを舞台としたナチスのゲルマン至上主義とユダヤのユダヤ至上主義の激突が、悲惨なホロコーストを生んだとも言えます。また、イスラム教の聖典である『コーラン』には、明確に他の宗教を信じる者たちを侮蔑するよう勧めており、多神教徒に至っては殺害すら正当化されています。

 実際に、奴隷商人の多くがユダヤ人やイスラム教徒であった理由も、神の権威の盾にして自らを他民族に優越する特別の存在と見なし、他民族の人格、生命、身体等を無視した至上主義にも求めることができます。今日では、奴隷と言えばアフリカ大陸から連行された黒人奴隷を思い浮かべますが、近代以前には、むしろユダヤ人商人やイスラム商人の手によって、白人が奴隷として大量に売られたていた時代もあります。○○至上主義とは、得てして被害者よりも加害者になり易いのです。無防備な人々に対する無差別殺人を容認するテロも、テロリストが自らの出身民族、あるいは、自らが信じる宗教や思想を移民先のそれらよりも優先する心情によって齎されており、○○至上主義の排他性は、白人至上主義に限定されるわけではなく、差別を受けたとされる弱者やマイノリティーの側にも潜んでいるのです(歴史的に見れば、ユダヤ人は弱者とも被害者のみとも言えないかもしれない…)。

 今般の一件では、ユダヤ人の識者達も白人至上主義を厳しく非難しているようですが、果たしてユダヤ人は、他民族、否、全世界の支配を是とするユダヤ至上主義を捨てたのでしょうか。また、イスラム教徒は、『コーラン』に定められた殺人容認のイスラム至上主義を修正したのでしょうか。

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偽旗戦略と“ジパング”-現代への警告か

2017年08月20日 14時43分57秒 | 日本政治

<仙台市議会>新会派「市民ファースト」に都民ファが不快感「連携の事実も連携の予定もない」
マルコ・ポーロの『東方見聞録』と言えば、日本国を金を豊富に産する黄金の国と描き、日本国を初めて西欧に紹介した書として知られています。“ジパング”という国名は西欧諸国における日本の呼称(英語表記では“Japan”)の起源ともなり、14世紀に記された書物でありながら、その影響は今日まで及んでいます。

日本国と『東方見聞録』は縁浅からぬ関係と言えますが、同書には、幾つかの点で興味深い描写を見出すことができます。もちろん、マルコ・ポーロ自身は日本国を訪れたわけではなく、その記述は虚実が入り混じり、必ずしも正確ではありません。しかしながら、別の意味で、何かを示唆するような意味深長な記述が多いのです。

 同書の日本記述において、黄金の国伝説と並んで特に目を引くのは、元寇の顛末です。マルコ・ポーロは、フビライ・カーンの謂わば“臣下”の立場にあったことから、他の諸国の項でもフビライの征服事業には特別の関心が払われています。フビライの日本遠征は失敗に終わったとしつつも、日本側が思わぬ窮地に陥った状況を詳しく記しているのです。何故、日本側が狼狽する事態が発生したかと申しますと、元軍の将校が逃亡したため、日本国の小島に取り残されてしまった元軍側の残兵3万人が、日本の軍隊を装って都(大宰府?)を占領してしまったからです。事の経緯は、小島に立て籠もっている元軍残兵を掃討するために船団を率いて上陸した日本の鎌倉武士達を煙に巻いて、元軍残兵が浜に停泊していたこれらの船団を奪い、日本の軍の旗を掲げて都に向けて進軍したことに依ります。都の住民たちは、元軍の残兵とはつゆとも知らず、何らの抵抗を受けることなく、元軍は易々と出陣で留守となっていた都を落とすことができたのです(最後は、都を日本軍に包囲され、元残兵側が降伏…)。

 このストーリーは、弘安の役における鷹島掃討戦を下敷きとしてはいるようですが、同掃討戦では、10万ともされる元軍は日本軍によって壊滅されています。元軍の大敗北は、日本側の史料のみならず、『元史』や『高麗史』にも記録されていますので(『元史』では、帰還できた者は南宋人3人のみとある…)、史実と見て間違いはありません。何故、マルコ・ポーロが敢えてフィクションと書き残したのか、まことに謎なのですが、あるいは、日本の征服に失敗した元側が、僅かなりとも日本国に打撃を与えたとする偽情報を国内向けに流していたとも推測されます。

 フィクションではあることは分かっていながら、この文章を読んだ際に、何とも言いようのない難い胸騒ぎがしたのは、『東方見聞録』は、過去ではなく、日本国の未来を語っているような感覚に囚われたからなのかもしれません。一途で他者を信じやすい日本人の国民性は、偽旗戦略に対しては脆弱です。凡そ700年前に、マルコ・ポーロ、あるいは、元朝が既に日本人の弱点を見抜いてフィクションのストーリーを書き上げたとしますと、その洞察力は驚きでもあります。今日、日本国の政界を見渡しみますと、“味方”をアピールする様々な“旗”が掲げられておりますが、『東方見聞録』は、偽旗戦略に対する警告の書のようにも思えるのです。

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民間人の犠牲を忘れた“九条信者”のエゴイズム

2017年08月19日 15時03分43秒 | 日本政治
 憲法第9条を金科玉条とし、交戦権、並びに、軍隊の放棄を以って平和が実現すると訴える人々は、自らに正義があると信じ、平和主義者を自認しております。しかしながら、“九条信者”と称される平和主義者は、真に日本国と国民の将来を考えているのでしょうか。

 過去の戦争の歴史は、九条教の教えが幻想にすぎないことを教えています。第二次世界大戦では、軍事的に脆弱であったポーランドは、1939年9月に東西両方面からナチスドイツ、並びに、ソ連の侵攻を受け、奮闘も空しく分割されます。軍人の死者数は12万人ですが、民間人の犠牲者数は591万人にも上ります。ポーランドの民間人犠牲者の中には、270万人のユダヤ人も含まれており、ホロコーストによるユダヤ人全犠牲者の数が600万人とすれば、国、即ち、組織的防衛を可能とする軍隊を持たない民族の悲劇は、ユダヤ人犠牲者の数によって証明されています。また、フランスは、ペタン将軍の決断の下で無血開城の形でナチスドイツの軍門に下りましたが、軍人の死者数が20万人に対して40万人もの民間人が犠牲になりました。たとえフランス政府がパリに無防備都都市宣言を発し、首都が砲撃を受けなくとも、民間人の犠牲者が一人も出ないというわけではなかったのです。加えて、チベットは、中国との間で『17条協定』を“平和裏”に締結しながら、人民解放軍の進駐を受け、中国支配に抵抗した多くの民間の人々が残酷なるジェノサイドによって命を奪われました。

 不十分な軍備や軍隊の欠如が民間人に多数の犠牲を生じさせる主たる要因としては、当然のことではありますが、第一に、防衛力の喪失と脆弱性を挙げることができます。防衛力を失うことによる民間人の犠牲は、日本国でもソ連参戦以降の満州、並びに、朝鮮半島において経験しております。ユダヤ人の犠牲も、仮に当時、自らの国家を有していたならば、これ程の数には上らなかったことでしょう。因みに、イスラエル建国以来、第一次から第四次(1948~1973年)までの中東戦争における軍民合わせたイスラエル側の死者数は凡そ1万1553人です。

第二の要因は、祖国解放戦線やレジスタンスへの民間人の参加です。これらのケースでは、支配国と敵対している外国政府が支援する場合もあり、武器や資金等の提供を受けるため、事実上の内戦状態ともなり得ます。“九条信者”の人々は、仮に中国の人民解放軍が侵攻してきた場合、“熱烈歓迎”の横断幕を掲げて迎え入れるのでしょうが、多くの日本人は、レジスタンスに身を投じることでしょう。さらに、日本国の自衛隊にあっても、ド・ゴール将軍が亡命先のロンドンで“自由フランス”の組織を結成して戦ったように、中国支配に抵抗する組織が米軍の支援の下で独自の行動を起こすかもしれません。民間人をも巻き込んだ内戦もあり得るわけですから、“九条信者”の主張は、無責任としか言いようがないのです。

 ネット上で“九条信者”を検索すると、Hatena Keywordでは、「憲法9条さえあれば、自分の安全は守られると考える人。」と説明されています。九条教を信じていれば、自分の命と身の安全だけは助かると考えている人々は、平和主義者と言うよりも他者の命や運命を顧みないエゴイスト、あるいは、日本国の滅亡に協力する反日主義者である疑いも拭い去ることができないのです。

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北朝鮮問題-話し合い解決より交渉抜きの徹底制裁の方がまし

2017年08月18日 15時04分28秒 | 国際政治
対北朝鮮外交、軍事的裏付け必要=バノン氏発言否定―米国務長官
 北朝鮮の核・ミサイル開発問題は、北朝鮮側が表明していたグアム沖に向けたミサイル発射実験を停止したことから、一先ずは小康状態が保たれています。しかしながら、実験中止を以って一件落着したわけではなく、今なお着地点が見えない状況が続いております。

 この問題に対する最善の解決策は、北朝鮮側の無条件降伏、即ち、北朝鮮側に戦わずして矛をおさめさせ、核弾頭、並びに、ICBMの開発計画を完全に放棄させることです。アメリカの軍事的圧力はまさにこの目的のためにあり、トランプ政権も、一先ずは、先制攻撃を辞さない構えを崩していません。アメリカの言う“交渉のテーブルにつけ”とは、即ち、無条件降伏の勧告に応じ、“敗戦処理のテーブルにつけ”ということになります(アメリカによる検証可能な形での核施設やICBMの破壊等…)。

 そして、北朝鮮があくまでも“降伏”しない場合の次善の策は、核施設やミサイル発射基地を爆撃目標とした米軍による限定的な空爆となりましょう。即時的な破壊が実現すれば、北朝鮮による報復攻撃があったとしても、主要基地が破壊されている以上、被害は最小限に抑えることができます。報復の対象として想定されるのは、国境を接し、かつ、通常兵器による攻撃が可能な韓国ですが、北朝鮮が暴走した遠因には、韓国側の歴代政権による対北融和政策がありましたので、同国を増長させた責任、並びに国防を担う韓国には、北朝鮮と戦う義務があります(ただし、中国による軍事介入、あるいは、第三次世界大戦を回避するためには、米韓両軍は防衛に徹し、地上軍は38度線を越えない必要がある…)。

 軍事的オプションには反対の声があるため、第三番手の策は、話し合い解決、即ち、米朝間での交渉の開始、あるいは、六か国協議の再開と見る向きも多いことでしょう。しかしながら、過去二回にわたって話し合い解決路線は北朝鮮の時間的猶予を与えたに過ぎず、結局は、核・ミサイル開発を許す結果となりました。既に核弾頭、並びに、少なくともグアムまでは到達するミサイルを保有し、それらが対米抑止力を有することが証明された以上、北朝鮮がこれらを交渉によって放棄するとは考えられません。話し合い解決を提案する中国もロシアも、いざ交渉となれば巧妙に北朝鮮擁護に回り、石油禁輸までは踏み込まないことでしょう(仮に、中国の要求を受け入れて、アメリカも話し合い解決に合意するならば、中国に対しては、朝鮮半島非核化のための石油禁輸実施の確約を得るべき…)。交渉の行く末が既に見えている以上、この策を採用すれば、アメリカは三度も同じ相手に騙されることとなり、国家の威信にも傷がつきます。

 それでは、話し合い解決ではない、第三番手の策はあるのでしょうか。あるとすれば、北朝鮮とは一切交渉せず、制裁だけを徹底的に強化する策です。ただし、この方法ですと、公式ではないものの、事実上、北朝鮮の核、並びに、ICBMの保有を黙認する結果となります。結局、北朝鮮による核保有はNPT体制崩壊の引き金となり、他の諸国も核保有に乗り出す可能性も否定はできませんし、ウランを産する北朝鮮は、特に反米諸国を対象としてこれらの核兵器、ミサイル、並びに、これらの原料の売り込みを積極的に図ることでしょう。NPT体制は、根底からの見直しを迫られることとなるのです。もっとも、これらの予測される展開は、話し合い解決でも同様であり、時期が早いか遅いかの違いしかありません。

 以上のマイナス面が多々あるものの、交渉抜きの制裁では、話し合い解決の場合に想定される経済支援は皆無ですので、‘あめ’だけを“もらい逃げ”される心配はありません。また、中国に“借り”を作るどころか、対北制裁の一環として対中経済制裁を強化することもできます。今日、北朝鮮よりも総合軍事力において格段に優る中国が軍事的脅威として立ち現われている以上、北朝鮮問題で中国の協力を得るのと引き換えに、南シナ海の軍事拠点化を許し、国際法秩序が崩壊するよりは、中国を制裁対象国に含めていた方が安全です。また、中国やロシアの核攻撃能力を考慮すれば、北朝鮮問題の有無に拘わらず、日米ともにミサイル防衛網の整備は必要不可欠であり、話し合いという“偽りの雪解け”によって警戒感が薄らぎ、対中防衛力が低下する事態を防ぐこともできます。

 アメリカの政権内部を見ておりますと、トランプ大統領をはじめ、ペンス副大統領、ティラーソン国務長官、マティス国防長官、バノン米大統領首席戦略官・上級顧問など、北朝鮮問題への対応については様々な方針や発言が交錯しています。少なくとも、1994年の日朝枠組み合意や六か国協議型の“話し合い解決”の回帰は、悪しき誤りの繰り返しとなりますので、最低でも、話し合い抜きの制裁強化路線とすべきではないかと思うのです。

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中国上場企業の共産党末端組織化の狙いとは-国策企業への転換

2017年08月17日 14時55分29秒 | 国際政治
本日8月17日付日経新聞の第一面には、“中国企業「党の介入」明文化”という見出しが躍っていました。中国共産党が企業経営の意思決定に関与できるよう、四大銀行や通信王手を含む上場企業の288社が定款を変更したというものです。企業側が自発的に定款を変更したとは考えられず、中国共産党、否、習近平主席の“指令”があったことは明白です。

 定款の変更において特に重要な点は、各企業の内部に中国共産党の党組織が設立されることです。この措置により、企業は中国共産党の末端組織として組み込まれ、中国共産党のコントロールの下に置かれるのです。現下の上場企業には、一般の民間株主もおりますので、政府の指令の下で公営企業のみにより運営されていたかつての計画経済よりはソフトなものの、今般の措置は、中国上場企業の国策企業化といっても過言ではありません(国策よりも“党策”と表現した方が相応しいかもしれない…)。それでは、この転換には、どのような狙いがあるのでしょうか。

 第一の狙いは、近年加速化している習近平独裁体制における“ポスト”の新設です。独裁体制の特徴の一つは、人事権を独占し、自らに忠誠を誓う側近や部下にポストを分配するところにあります。今般の定款変更により、権力の源泉となる大企業内部の“党組織ポスト”の人事権を手にすれば、習主席は、以後、これらのポストを自らの権力基盤の強化に利用することができます。

 第二に推測される狙いは、中国に進出している外国企業のコントロールです。定款を変更した企業には、トヨタ自動車やホンダと合弁事業を行っている広州汽車集団等も含まれています。外国企業との合弁企業に対しても中国共産党の組織網を広げることで、外国企業の株式分を取得せずとも、事実上、経営権を握ることができるのです。

 そして第三の狙いがあるとすれば、それは、近い将来において想定されうる戦争への準備です。北朝鮮問題や南シナ海問題をめぐる米中関係の悪化に加え、インドやベトナムとの間での緊張や軋轢も高まっております。また、尖閣諸島周辺海域における中国公船や民間船舶の動きも活発化しており、先日のモンゴル自治区での軍事パレードにも象徴されるように、中国の示威活動は危険水域に達しています。仮に、中国共産党が戦時を想定しているとすれば、当然に、戦時経済への転換を図る必要があり、民間企業の国策企業化は、その一環として理解されます。まさに、ナチスドイツが第二次世界大戦前夜に実行したように。

 80年代以降の改革開放路線において纏ってきた衣は習近平体制の成立によって脱ぎ捨てられ、今や中国は、鎧を見せつつあるようです。北朝鮮問題の先には中国の軍事行動のリスクが控えており、有事に際して中国の戦争遂行に協力させられかねない日本企業もまた、重大な選択を迫れているように思えるのです。

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