それでは、何故、北朝鮮は、遠く大洋を隔たるグアム島を狙うのでしょうか。距離的に最も北朝鮮に近く、開発済みの弾道ミサイルでも射程内に入ることが最もあり得る理由なのですが、それだけではないように思えます。真に交戦状態を覚悟しているのであれば、命中率は低いとはいえ、言葉だけでもアラスカを標的に据えた方が対米脅迫効果は高いはずですし、距離からすれば“前哨基地”は、日本国や韓国の米軍基地であるはずです。グアム攻撃予告は、戦略としては、どこか中途半端なのです。
グアム島には米軍基地が設けられており、民主党政権時代の米軍再編計画では、沖縄駐留米軍海兵隊の一部もグアム島への移転が予定されていました。トランプ政権誕生後もこの計画は維持されており、今年4月におけるハリス米太平洋軍司令官の公聴会での発言に因れば、移転の時期は、2024年から2028年頃となるそうです。何れにしても、米軍の拠点としての戦略的重要性を増しており、地政学的には太平洋東部海域を睨み、南シナ海にも面する要衝と言っても過言ではありません。
グアム島の戦略的価値が高いとしますと、これを脅威として感じる国があるとすれば、それは、北朝鮮ではなく、太平洋への進出を虎視眈々と狙っている中国です。グアム島こそ、フィリピンを手懐けた中国にとりましては太平洋上の米軍の“前哨基地”であり、海洋覇権を阻む邪魔な存在なのです。案の定、グアム島では、北朝鮮からの核ミサイル発射実験の表明を受けて、アメリカからの独立運動も起きているそうです。米領であるからグアム島が北朝鮮から狙われる、として…。
沖縄県でも観察されているように、米軍基地のお膝元では、中国等の工作員の活動により、組織的な独立運動が仕組まれています。この一件が火付け役となって、グアム島において独立運動が活発化するとしますと、北朝鮮の背後には中国があり、北朝鮮は、中国の戦略的目的のため、あるいは、中国からの指令を受けて敢えてグアム島を攻撃の標的にした可能性も否定はできないのではないでしょうか。
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